2014年03月04日(火)08時19分
(14-03) ビジネス機の機材コストと利用コスト I
(14-03) ビジネス機の機材コストと利用コスト
ハイヤ-・タクシ-でも大型車、中型車、小型車では料金が異る様にビジネス機も機種の価格により利用料金も異る。違いは、自動車の場合,車種間の価格格差は数倍程度だが、ビジネス機の場合は1,000倍以上の価格格差があり、米国の地方のエアハイヤ-・エアタクシ-では低価格帯の中古機が使われるので価格格差は更に拡がる。本稿は「一般論」を離れより踏み込んだ検討を行う。
要 約 機 材 コ ス ト 1. ビジネス機では最高価格機材は300億円強より3千万円弱と1000倍以上異る。 2. 欧米では富裕層は1機20億円以上、一般利用者用は1~4億円を選好する2極化。 3. 日本では最も安いビジネスジェット機でも利用料は一般商用機の50~100倍はする。 4. 従って、日本では「特権階層」以外ビジネスジェット機を利用する事は無い。 5.歴史的実績では日本で使われるビジネス機の機材価格は0.3~2.5億円の低価格帯機材 6.この種低価格帯機材が日本のビジネス機の太宗で本年度はここに焦点を絞る。 |
機材コストと利用運賃の相関性 1.高い機材では利用運賃が高くなる事は直感的に分るが素人分かりする定量化を試みる。 2.固定費は機材価格に比例。但し稼働率、利用乗客数で単位当リコストは大幅に変動する。 3.変動費は利用時間・距離と連動するが、個別項目の見直しで引下げの余地はある。 4.基本的な一般的採算性デ-タ-は何故か日本では一般に公開されない。 5.海外でこの様なデ-タ-抜きでビジネス機の普及は考えられず凡る情報が提供される。 |
変動費・一般管理費 1.変動費は主として燃料費、パイロット費、空港利用料等の運航実費。 2.変動費」は利用時間、距離に比例して変動するが\㎞/時の単価としては相対的に一定。 3.一般管理費は運航会社の運航管理費、税金、保険、金融コスト、企業利益等も含む。 4.一般管理費は機材の稼働率、運賃収入の増加に比例して或程度低減可能な項目もある。 5.何が見直せるか?実行可能な事は何か?「ゼロ発想」での検討が必要。 |
ビジネス機のコスト競争力強化とその為のモデル 1.低価格帯機材の「広義のビジネス機」をビジネス機と認知・再評価する。 2. 資本集約的航空産業では「規模の経営」(集約と統合)が不可欠。 3.低価格帯回転翼機の利用場所(地方の横の移動)や利用法(短時間、短距離)の整理。 4.大手航空会社は過去35年、集約/統合/コスト合理化努力を続け多くの先例は存在する 5.ビジネス機も一般普及の為様々な手法を開発、選択肢を顧客に提供されている。 6今一つ留意すべきは低価格帯でも「固定翼機」が持つ「構造的限界」で別項で言及する。 |
発 想 の 起 点
比喩として妥当・適切ではないかも知れないが、庶民には全く無縁と思われて来た宝石のダイヤモンドを例に挙げる。先般、大粒のピンクダイヤモンドが競売で60億円余で競り落された。一方、最近は、若者がダイヤの婚約指輪を婚約者に贈る事も稀では無くなった。ビジネス機も1機300億円する商用機の最上位機種Airbus A-380を「空飛ぶエグゼチブオフィス」として発注した中東の超富豪も居るが、その千分の1以下の価格の中古小型機をAir Taxiとして運航している米国の業者も存在する。
富裕層が好んで選ぶ2千万㌦(20億円)以上のビジネスジェット機 日本の民間には1機も存在しないので本サイトでは深く取り上げない。 一般利用者が利用可能な1~4百万㌦(1~4憶円)の低価格帯機材 日本は過去四半世紀0.3~1.5百万㌦(3千万~1.5億円)程度の低価格帯機材を利用・実践。 上記の低価格機材も顧客の「2点間輸送」には殆ど使われない 何故か?使う為の方策は?具体的道筋を読者と模索するのが本サイトの目的
何故ダイヤモンドを庶民も買える様に成ったのか?(一般がビジネス機を利用するヒント) 1.ダイヤモンドは富裕層の占有物と言う神話「固定観念}が打破された。世界のビジネス機業界も四半世紀以前よりこの神話打破に注力して来た、 2.ダイヤモンドは供給地の多様化(アフリカ各地、カナダ、ロシア、豪州)によりデビア-ス社の一社独占市場支配体制が崩壊。 3.供給地の多様化で低価格帯品質の石も市場に出回った。 4.価格の低下、品質の多様化、供給の増加で需要は拡大、小売価格は益々下がる。 5.需要の増加で研磨・加工・宝飾業者も急増、一部高級宝飾店による寡占体制も崩壊。 6.品質、カットは無論高級品に劣るが、一般グレ-ド用との価格差は100倍以上に。 7.更に、ダイヤモンドはサイズにより級数的に価格が変動、低価格の小粒品の需要増加。 8.小粒であれば、上質の大粒品のカット屑も利用可能。小粒でもキラリと光る。 9.80~90年代には、モ-ルの量販店でダイヤの宝飾品が数万円、1万円以下の物迄販売。 10ブランド高級宝飾店はアポイントオンリ-、量販店は赤札販売、需要に合せて多様化 11.富裕層は高級宝飾店、庶民は量販店、その中間もあり財布と相談多様な選択肢がある。 ビジネス機のモデルとしての利用 1.ビジネス機メ-カ-も基本的には寡占体制では有るが競争原理は機能して居る。 2.特に日本が利用可能な低価格帯機材はベンチャ-企業が新鋭機で既存メ-カ-に対抗。 3.Air Taxiで利用可能な低価格然し必要機能を備えた新鋭機がここ数年開発されている。 4.Garmin機器に象徴される小型機用GPS利用のアビオニックスの出現と普及。 5.ビジネス機の大衆化を可能にした分割所有、リ-ス金融その他各種ソフトの開発と利用 6.欧米の大手航空会社、航空業に於ける集約・統合によるコストカットの先例・実例。 7.市場拡大に伴う供給力の増大、機種・機能の多様化 8.途上国を含めた中間所得者層増加に伴う市場の拡大と更なる各種顧客選択肢の多様化。 9.これに伴う海外の各種公的規制の緩和。 10.以上の追い風を利用した低価格帯機材による日本での「2点間輸送」の可能性見直し。 11.但し機材は低価格帯でも高いので、大衆化には短距離、短時間利用が中心と成ろう。 12.如何なる可能性があるか現場のニ-ズを知る運航業者・潜在利用者の参画が最重要。 13.本サイトは叩き台を提供、一方的な発信では無く対話・交流の場を提供する事が目的。 |
機 材 コ ス ト 1.ライブラリ-の(27)日本に馴染む低価格帯ビジネス機を参照。 2.ビジネス機の最高価格は300億円強より3千万円弱と1000倍以上異る。 3.欧米では富裕層向け1機20億円以上と一般利用者用の1~4億円に需要は2極化。 4.日本には軍用・公用以外、民間が所有・運航する20億円以上の上位機種は存在しない。 5.日本の圧倒的な機材は0.3~2.5億円の低価格帯機材。故に、元々一般利用者用機材。 6.7~18億円程度のLight Jet 24機が存在するが一般がチャ-タ-可能な機材は3~4機。 7.但し、Light Jetは航続距離が短く、基本的に国内用で海外飛行への利用は限定的。 8一番コストの安いCitation CJ2でチャ-タ-しても、\1,000/㎞以上はする。 9.国内の商用機の平均利用運賃\12~15/㎞、コミュ-タ-機\30/㎞で競合は不可能。 10.従って、国内ではビジネスジェット機の利用はコストと無関係の「特権階層」に限定。 11.「特権階層」の多くは、海外ビジネス機利用者の日本国内での移動の足に使われる。 12.昨年10月カボタ-ジュ制限が緩和され海外飛来機の国内移動も可能に成った。 13.国内の超富裕層、セレブ、VIPはコストに関係なく利用するが、極めて限られた事例。 14.歴史的実績では日本で使われるビジネス機の機材価格は0.3~2.5億円の低価格帯機材 15.従って、本稿は現実に即して低価格帯機材に焦点を当てる。 |
機材コストと利用運賃の相関性 1.誰でも高い機材を使えば利用運賃が高くなる事は直感的に分かるが定量化を試みる。 2.本年度は潜在的利用者の参画を期待して居るので思い切って単純化した説明を行う。 3.利用運賃には様々な要素が織り込まれるが機材コスト(固定費)が大きな要素。 4.機材コストを10億円(Light Jet),1億円(低価格帯軽回転翼機)、5千万円と置く。 5.年間固定費コストを20%と見た場合(5年償却)夫々2億円、2千万円、1千万円。 6. 機材コスト10億円の場合、2億円/年、1億円で2千万円、5千万円で1千万円。 7. 機材コスト10億円、固定費コスト2億円/年、稼働時間500時間/年で\400,000/時。 8.Light Jetの巡航速度を700㎞/時と置けば\400,000 9.以上は単純化した固定費コストでこれに変動費(燃料、運航費)管理費等が加算される 10.一番安いCitation CJ2の公表利用料は\480,000/時、Citation 560で\600,000/時強。 11.これも全てのコストを網羅して居らず、CJ2でも総計で\1,000㎞/時は割れない。 12.国内商用便で支払運賃実績は¥12~15㎞/時、コミュ-タ-\30/㎞で対抗手段はない。 13.機材コスト1億円、固定費コスト2千万円/年、稼働時間100時間/年で\200,000/時。 14.軽回転翼機の巡航速度を200㎞/時と置けば\200,000
16.採算分岐点は300時間/年と言われ、日本は200時間強と採算分岐点にも届かない。 17.反対に米国では平均稼働時間は700時間/年と言われこの程度なら採算性は見込める。 18.更に、1億円の軽回転翼機は3~4人が同乗出来るので頭割のコストは更に下がる。 19.現在はパソコンでも複数の与件を投入シュミレ-ションで短時間で評価結果が出せる 20.目標は商用機、新幹線との競合は無理でも、地上タクシ-との競合水準が目標。 21.地上タクシ-の標準運賃は\300/900m或いは\330㎞/時。 22.1億円の機材で巡航速度、年間利用時間、搭乗員数の変数を替えオプテイマムを模索。 23.更に最も重要なのは、利用者がどの程度の利用料水準なら使って呉れるかを知る事。 24.利用が高まると言う事は年間稼働時間が高まり利用コストは反比例して低下する。 25.この様なシュミレ-ションは事業立上げの基本動作だが何故か看過、公開されない。 26.特に時間・手間を要しない作業で、この種作業に「協働」する有志の参画を望まれる。 |
変動費・一般管理費 1.企業ではこの種コスト計算は日常行われるが一般利用者対象に単純化した説明が必要。 2.変動費は主として燃料費、パイロット費、空港利用料等の運航実費。 3.後日機材提供メ-カ-、運航業者が持つ正確な数値でコスト試算を詰める事は不可欠。 4.「変動費」は利用時間、距離に比例して変動するが\㎞/時の単価としては相対的に安定。 5.一般管理費には運航会社の運航管理費、税金、保険、金融コスト、企業利益も加算。 6.日本で残る規制撤廃のニ-ズは; l 小型機・回転翼機の計器飛行の容認。欧米ではGarmin器の出現で一般普及。 l 都市圏でのヘリポ-ト設置許可。(自治体マタ-) l 海外保険会社の利用(日本の航空保険は海外の約3倍でTPPでも標的化) l パイロット養成費用(回転翼機の場合、日本は一人1500万円、米国100万円) l 日本でも多くのパイロット志望者が海外で免許取得の為渡航。 l 日本の人件費は割高。(農業を始めとする規制保護、治安、国民皆保険等のコスト) 7.一般管理費は機材の稼働率、運賃収入の増加に比例して或程度低減可能な項目。 8.何が見直せるか?実行可能な事は何か?「ゼロ発想」での検討が要請される。 |
ビジネス機のコスト競争力強化と強化法のモデル 1.日本は過去20年ビジネス機の一般普及を叫び続けて来たが実現していない。 2.最大の事由は、欧米のビジネス機の上位機種の代理店主導で下位機種は検討対象外。 3.欧米ではリ-マンショック以後の不況で20百万㌦以上の上位機種は「特権階層」用に。 4.「平均化社会」の日本でも「特権階層」は存在するが相対的に極くマイノリティ-。 5.従って、利用者が少なく日本で上位機種の保有は防衛省、海上保安庁、国交省に限定・ 6.民間には20百万㌦以上の上位機種は1機たりとも存在しない。 7.日本の「広義のビジネス機」は約1,000機。0.3~1.5億円の低価格帯機材。 8.海外も一般利用者用は1~4億円程度に収斂、中小機材メ-カ-も開発を進めている。 9.日本として遣るべき事は「広義のビジネス機」をビジネス機として見直し活性化する事 10.海外で開発中の低価格帯新鋭機種への段階的シフト。 11.不特定多数の中小所有者・運航会社の整理・統合・集約化による競争力強化。 12.航空機は所詮地上交通機関とは競合出来ないとの諦観からの脱却。 13低価格帯回転翼機の利用場所(地方の横の移動)や利用法(短時間、短距離)掘下げ。 14.モデルは1978年より始まった世界的な業界再編劇。 15.資本集約的航空産業では「規模の経営」(集約と統合)が不可欠。 16.グロバ‐ルアライアンスで機種・部品・整備の統一、コ-ドシェアリングに参画。 17.ビジネス機も「分割所有」、「タイムシェアリング」、「オンデマンドチャ-タ-」が普及 18.日本でもゴルフクラブ、リゾ-トマンション、カ-シェアリングではお馴染みの方式。 19.趣味的・同好者のフライトクラブも現存する。 20. 航空機のリ-スファイナンス等の金融ソフトも一般普及している。 21. 従って、全て基礎的なコンセプトは既に存在し、認知されている 。 22「広義のビジネス機」への市民権と有用性の認知と高い目線より見下す事を止める。 23.上位機種を利用しなければ、「人に非ず」、日本は「利用最貧国」のコンプレクス脱却 24.大手企業は「社員の足として」として「信頼性」「安全性」「費用対効果」を最重要視。 25.低価格帯新鋭機材活用、利用者のニ-ズ汲上げ、企業が信用する経営管理体制の整備。 26.本サイトはこれらの諸要素の結合・実行・協働の起動力としてのアイデアを提供。 27.今一つ留意すべきは低価格帯でも「固定翼機」が持つ構造的限界で別項で言及する。 |
国内での小型固定翼機利用の限界
日本でも多くの小型/低価格帯固定翼機が営利事業目的(ビジネス機)として使われて来た
ピストン単発 |
ピストン双発 |
タ-ビン単発 |
タ-ビン双発 |
ジェット双発 |
総計 |
503機 |
52 |
26 |
97 |
513 |
1,191 |
ビジネス機の利用の論議の中で大きく抜け落ちて来た点は機材の価格や性能に論議が集中し勝ちだが、ビジネスマンの足として「2点間輸送」に利用する事の限界に対する検討が等閑にされて来た点である。具体的には、
(1) ジェット機、タ-ボ機、ピストン機の何れを問わず、「固定翼機」を利用するには離発着する空港が必要。日本には98空港が存在するが企業マンが訪問する名の知れた企業の大半は幹線空港乃至はコミュ-タ-便が就航している空港の周辺都市にある。商用便・コミュ-タ-便の運賃は\30/㎞以下で、「狭義のビジネス機」の運賃が\1,000/㎞を割れない状態では小型機でもビジネス機として企業は利用しない。
(2) 主要都市には鉄道の幹線駅があり、企業の大半は鉄道駅の周辺に事業所がある。空港―都市中心部への交通アクセス時間・手間を考えれば、鉄道を利用するのが常識。鉄道と競合出来る運賃を提供して居る商用便でさえ700㎞範囲以内であれば利用者は鉄道を選ぶ。
(3) ビジネス機の巡航速度は商用機より遅いが、低価格帯小型機は商用機の1/2~1/4程度の巡航速度で、「時間を金で買う」ビジネス機の持味は活かされない。
(4) 関東で有れば、首都周辺空港へのアクセス、ビジネス機利用の便宜の良い時間帯の利用も問題と成るが、離陸しても茨城県、埼玉県北部以北の群馬県、栃木県、或いは神奈川県、山梨県に空港そのものが存在しない。従って離陸しても着地点が無い。
(5) これが全国30,000のヘリポ-トを有する回転翼機とは根本的に異るインフラ事情。
(6) 出発空港が利用者の至近の距離にあり、訪問先の近くに着地点の空港がある時に限り固定翼機のビジネス機の利用が正当化される。幹線鉄道駅は出発点も、到着地点も空港に較べれば遥かに訪問先への交通アクセスが便利な処に立地する。然も、鉄道運賃はビジネス機と比較に成らない程安く、航空機の様にセキュリティ-や乗降の為の煩瑣な移動は必要とされない。
(7) ビジネス機利用の目的が利用ビジネス客の「2点間移動」の手段として時間的、コスト的に利用メリットがあるのか?又航空機の場合は都市中心部より空港へのアクセス、搭乗手続等の煩瑣さを考えれば、鉄道の方が利便性が高いと言った点も勘案される必要がある。総合的に固定翼機利用のメリットは限界的。
(8)セスナ機に象徴される小型固定翼機は優に30年以上の利用歴史を持つが、公開されている小型固定翼機の旅客の「2点間輸送」飛行実績は非常に少ない。意外なのは、地上タクシ-代\330/㎞以下の\275/㎞の利用コストも提供される事例もあるが、利用が普及しないのは運賃以外に、上記の様な複合的諸要因が伏在するとも考えられる。
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