2014年04月12日(土)10時36分

(14-08) 日本と中国のビジネス機事情の比較

要    約

1.凡る政策立案・推進には背景の時代の潮流、長期展望、国家固有の国情の認識が必須

2.日中のビジネス機普及の目的は対照的。それが産んだ結果の単純比較は意味が薄い。

3.中国が本気でビジネス機普及に乗り出したのは2007年、日本は1996年。

4.中国は香港、マカオ、シンガポ-ル、マレ-シア等欧州植民地時代の慣習を引継いだ。

5.欧米の「特権階層」がビジネス機で往来するのを見聞、インフラ・ノウハウも継承。

6.ビジネス機は「ステ-タスシンボル」として定着「富の集中」で利用可能な顧客も多い。

7.中国は歴史的不況の欧米ビジネス機業界の救世主的存在。不況下での市場と顧客を提供

8.中国のビジネス機育成に当る関係業者、「お雇い外人」は欧米のビジネス機関連出身者。

9.「ステ-タスシンボル」を求める中国人と不況の脱出に懸命な欧米関係者のドッキング。

10.より深く踏み込めば広大な国土の防衛と空運育成の国家戦略のニ-ズが背景にある。

11.但し、最近民間イニシアチブで低価格帯ビジネス機の開発も進んでおり注目すべき。

12.低価格帯の小型機、回転翼機も中国内での組立・生産もが昨年より開始されている。

13.又CirussやEnstrom社を買収米国で中国仕様の機材を生産させ輸入する事も始めた。

14.トップのニ-ズが一巡、充足されれば二番手の地方官僚、オ-ナ-企業が控えている。

15.更に欧米に留学金融工学や高度の専門知識を習得、東西を駆け廻る高所得者も居る。

16.一方日本は国策で商用便による「大量輸送」で空運の便宜性向上と低コスト化に成功。

17.戦後の社会主義的政策で世界に誇れる「階級・所得格差」の少ない社会構築に成功した。

18.「特権階層」の「ステ-タスシンボル」は「格差誇示」とネガチブな印象を与える文化。

19.国民の「遵法精神」も手伝い高級官僚・サラリ-マン経営者もビジネス機は利用しない。

20.商用機のビジネスクラスの50~100倍する運賃を払う顧客は例外で一般人にはいない

21.20億円以上の上位機種は2000年半ばには全て姿を消し民間には1機も現存しない。

22.チャ-タ-業者も2000年初めにこれを見越し雪崩を打って近隣諸国の業者と提携。

23.日本の極く限られたビジネス機の利用者は近隣諸国からの取寄せでニ-ズを充足。

24.中国での上位機種の買捲りで機種・運賃の選択肢が増え日本は漁夫の利が得られる

25.この様な事態は中国と提携関係にある日本の業者の当初の狙い通りの進展と言える。

26.他方日本は米国との政治・防衛・経済の緊密関係から航空業は競合を避け戦略的提携。

27.象徴的事例はBoeing 787の日米共同開発、三菱MRJ,ホンダジェットの米国企業進出。

28.日本企業は欧米の幹線空港には商用機、必要に応じそこから現地のビジネス機を利用。

29.海外進出企業はニ-ズに応じビジネス機を現地自社所有、運航委託、チャ-タ-する。

30.斯かる商慣習は四半世紀~半世紀継続、経済的合理性、業務遂行上の妥当性も立証済。

31.日本は「貿易立国」を国是に世界市場は一つとニ-ズに適した使い分けを行って来た。

32.結果は、商用便は世界的な合併・統合、アライアンス、LCC誕生で選択肢が増えた。

33.商用便利用者に嬉しいのは、競争激化による運賃低下とビジネス客へのサ-ビス向上

34.従って、日中双方が目標とした方向に進み実質的な実務上の問題は生じて居ない。

35.日本の限定された「特権階層」のニ-ズは同じ顧客層が遥かに厚い近隣諸国に委託する

36.訪中の際には中国主要空港迄商用便、そこから便の悪い奥地にはビジネス機を利用。

37.中国のビジネス機の保有、インフラ整備、運航ノウハウの充実は日本企業を利する。。

38.東京-北京/香港は商用便ビジネスで往復20/30万円、ビジネス機で8~15百万円。

39.欧米向同様、日本-中国/アジア航路は商用便、必要に応じ現地のビジネス機を活用

40.国内も商用・コミュ-タ-機の50~100倍のビジネスジェット機は実際上使われない。

41.これも海外飛行同様到着先空港より目的地迄必要に応じ現地のビジネス機を利用。

42.但し、短距離、短時間然も訪問目的地に着陸可能な回転翼機の利用が主体と成ろう。

43.残る課題は国内の地方の横移動、都市-地方の短距離移動でAir Taxi的ニ-ズが残る

44.日本は小型機・回転翼機の基盤があり「地頭力」で対応を工夫する事が本サイトの目的

45.2013年末の中国のビジネスジェット機数は390機でその内Heavy~Midが95%強。

46.商用機仕様の最高額19機を除くと371機、2012年末307機、2014年末推定445機

47.日本は2013年末24機。全て20億円以下の低価格帯機材で今後もその傾向が続こう。

48.日本のビジネス機の純増は小型固定翼機・回転翼機の低価格帯機材に特化。

49.世界的に市場は「特権階層」用の20億円以上の機材と以下の低価格帯機材に2極化。

50.それが其の儘中国/日本の市場選好に繋っている。日本は100%低価格帯機材に特化。

 

日中のビジネス機利用環境の相違

ビジネス機普及の目的の相違

1.中国は当初より世界の経済大国と国内での地位を誇示するステ-タスシンボルが目標。

2.2007年にこの目標が設定され2009年以降NBAA Conventionでもこの目標を誇示。

3.2011年、世界の超富豪の30%がアジア、アジアの超富豪の資産の31%を中国が所有。

4.個人資産15兆円の中国人超富豪は3~5,000人。香港のみで超富豪年間成長率は33.3%。

5.中国は米国をも抜いて世界最大の「ビジネス機大国」と成るとの予測も公開。

5.日欧米からは「富と権力」の誇示は慎むべきとの指摘も為されたが中国は意に介さない。

6.実際は日本、欧米でもステ-タスシンボルとしてビジネス機が利用される事例が多い。

7.世論の反発に配慮目立たぬ様企業の「ビジネスツ-ル」と言うオブラ-トに包んでいる。

8.NBAAを含む各国のビジネス機普及業界団体はこれを「錦の御旗」として掲げて来た。

9.強ち偽りでは無いが長引く経済停滞で「特権階層」の高額機材の買い捲りで問題顕在化。

10.一般企業マンが利用する中低格帯機材の激減で格差の現実が明瞭化市場は2極に分化

11.米国ではオバマ大統領が富裕層の「奢侈品」のビジネス機への課税強化に乗り出した。

12.NBAAやビジネス機関連業界、関連企業は連合して反対のロビ-活動展開に躍起。

13.同時に企業の「正当なビジネツ-ル」としての理論の再構築に懸命。

14. “No plane, No profit” (ビジネス機無くして事業収益なし) が当面キャンペ-ン標語。

15.その一方0.5~5億円程度の低価格帯機材の開発も活発。回転翼機は1億円の攻防戦。

16.日本は国策で海外への要人、企業マン輸送に「大量輸送」の低運賃の商用便を提供。

17.急成長する日本経済に狙いを付けた海外主要航空会社も幹線航空路サ-ビスを提供。

18.航空会社の競合、企業間統合、アライアンスで運賃航低下と航空路線網の拡大が実現。

19.更にLLCへの対抗策としてビジネス・ファ-スト向けのサ-ビスの高品質化に注力。

20.これでビジネス機と商用便利用の運賃面、サ-ビス面の格差は決定的と成った。

21近隣諸国を含む海外のビジネス機の充実で日本的「合理的使い分け」は益々有利に。

22.限定的な「特権階層」用の取寄せも近隣諸国の機材・サ-ビス充実で便宜性も向上。

23.因みにNewYork往復は商用便ビジネスで40~50万円、ビジネス機で35~40百万円。

24.簡便法では商用便ビジネス¥20~25/㎞、ビジネス機\1,750~2,000/㎞、往復20,000㎞。

25.日本に機材が無く香港より取寄せた場合\1,750/㎞ x 6,000 ㎞ x 0.8 = \8,400,000。

26. 運賃単価に往復距離6,000㎞を乗じ、から運航料として通常運賃8割の加算が必要。

27流石に利用者は限定された「特権階層」。大手企業幹部も社内規程の縛りで使えない。

28.New York往復商用便ファ-ストのフルで2百万円、香港より取寄料だけでその4倍。

29.商用便ビジネス運賃の数倍程度なら兎も角50~100倍ではまともな検討対象外。

30.結果は20億円以上の高価格機材は民間に1機も無く1000機近い低価格機材が太宗。

31.日本のビジネス機の機材価格は過去20年0.3~2.5億円の低価格帯で推移。

32.斯かる過去四半世紀の日本の伝統的商慣習の合理性、妥当性は時代を先取りしていた。

33. 国内競合交通機関豊富な日本の低価格帯機材利用の永い慣行の妥当性も実証された

34.海外でも 「特権階層」用の上位機と一般企業利用の安い機材の2領域が混在していた

35. 長期化するビジネス機不況がオブラ-トに包んで来たこの矛盾を顕在化させた。

36.日本は1996年より外国機受け入れの様々な施策が講じられ2013年中に大枠目的達成

37.日本でビジネス機が利用されないのは一義的に桁はずれな利用運賃格差。

38.日本の厳しい各種規制と言う口実も規制緩和、法制整備が完了最早使えなくなった。

39.今後は厳しい現実と正面から向き合い企業マンが利用可能な方策を模索する以外ない

日本と中国の目標達成度

1.中国はABACE 2013とABACE 2014でアジア或いはグロ-バルでの存在感を示した。

2.中国のビジネス機は高額の上位機種に集中、超富豪、権力掌握階層の占有物と狙い通り。

3.ビジネス機の保有数1,500~3,000機は「白髪三千丈」的表現と思われたが実現化の方向。

4.長引く不況に喘ぐビジネス機業界の弱味を突き中国での現地組立・生産の譲歩を獲得。

5.破綻した中小ビジネス機企業も買収、各種ビジネスモデル、運航ノウハウも取込み中。

6.明治初期同様、ビジネス先進国より経営、技術、ノウハウ等をお抱え外人より一括導入。

7.日本は国策の商用機の「大量輸送」の安い運賃を利用海外飛行にビジネス機は使わない。

8.例外的な「特権階層」の利用は除き大手企業幹部を含めビジネス機を利用する事はない。

9.但し、海外では到着空港より交通のアクセスの悪い目的地にはビジネス機を利用する。

10.交通の便の悪い地域への日本の現地進出企業はニ-ズに応じビジネス機も所有する。

11.この種の使い分けは日本の先進海外進出企業では早い処で半世紀前より定着した慣習

12.日本企業は厳格な「費用対効果」の経済原則に則った判断で現地のビジネス機を活用。

13.日中間でビジネス機の利用判断基準の「物差し」が異り善悪是非の比較判断は無意味。

14.結果として、2013年末の20億円以上の機材の保有数は中国319機、日本は0機。

15.日本のチャ-タリング関係業者は2000年初期、一斉に中国/近隣諸国の業者と提携。

16.中国、グアム、フィリッピンと合弁、戦略提携で日本に必要な機材は取り寄せている。

17.成田の駐機制限緩和によりこの種機材が日本の顧客のスケジュ-ルに合わせ待機可能

18.何れにせよ、極く限られた日本の「特権階層」のニ-ズは過去十年充足されて来た

19.日本と中国夫々の目標を忠実に追求した結果で優劣勝敗を論ずる類の問題ではない。

20.「強者の原理」で無ければ統治不可能な大国と「和を以って貴しと為す」国情の差。

21.上位機種購入競争も「面子」もあろうが企業の存在感を示す広報活動の一環でもある。

中国の今後の目標と施策

1.中国は航空機産業の育成による広大な領土の空運による交通インフラの整備は不可欠。

2.それ以上に国防上の最重要課題は航空機産業の早期育成・強化。欧米への依存度緩和。

3.既に弾道ミサイル開発や衛星の打ち上げでは日本は中国に水を開けられている。

4.空軍力は保有機数以上に現存軍用機の質・機能・パイロットの技量が重要。

5.この面では、日本+米国の在日・近隣地域保有の空軍力は中国に対し現在優位性はある。

6.米国、ロシアも2020年頃には中国が現体制を維持・存続出来れば優位性の逆転も予測。

7.商用機に於いても中国は世界の最成長市場で欧米に機材の供給を全面依存したくない。

8.中国は2015年には商用機、リ-ジョナルジェット、ビジネス機の国産を目指している。

9.この為、2015年には軍用機最優先の利用空域の見直し作業も行う。

10.国家支援によるビジネス機興隆も以上の大きな背景・枠組みを視野に入れ考える。

11.ビジネス機利用推進の中核であるCaigaも政府の息が懸った組織。

12.米国政府がCaigaのBeechcraft社買収を許可しなかったのは国防上の懸念から。

13.ビジネス機に焦点を絞れば、機材の中国での組立て、合弁による生産は端緒に就いた。

14.民間機利用空域の拡大、ビジネス機利用のインフラ、各種のノウハウ導入も進行中。

15.諸作業には欧米諸企業、「お抱え外人」も深く関り海外との連衡合従・整合も視野の中。

16.集権的国家事業と超富裕層の「特権階層」との「協働」で目標達成に向け着々前進中。

17.ビジネス機の保有数の多寡以上にあらゆる面で日中格差は決定的に拡がりつつある。

18. CitationのLight Jet機、Airbus Helicopterの回転翼機の現地組立・生産も始った。

19.Caigaが買収したCirrus社のSF50ジェット機が試験飛行を開始、2015年出荷予定。

20.低価格帯(1.96百万㌦)航続距離2,220㎞、速度550㎞/時。既に550機を受注済。

21.低価格帯機材の市場の開発は投資資金豊富なベンチャ-精神旺盛な民間企業が推進中

22.日本は低格帯機材の調達でも、将来中国製の機材供給に依存する可能性さえある。

日本の今後の予測進路

1.日本は欧米との角遂は避け、機材の海外メ-カ-との共同開発、部品供給を図る戦略。

2.Boeing   787の日米による共同開発、部品の35%の日本よりの調達は象徴的な事例。

3.但し、787の真中の8は中国を意識し「末広がり」の漢字の「八の字」がヒント。

4.三菱重工はリ-ジョナルジェット機、ホンダはマイクロジェット機を米国で生産・販売。

5.日本での国産より海外の現地で「協働」による技術・市場開発での事業基盤確立を狙う。

4.ビジネス機の利用同様、世界市場を一つと見て地域特性を活かした、分業、「使い分け」

5.当面の必要目標は一般企業マンの「ビジネスツ-ル」としての国内の「移動の足」提供。

6.それには、0.3~2.5百万円程度の低価格機材で無ければ利用されない現実と実績を直視。

7.それでも、この儘では所期の目的の企業マンの「輸送の足」としては殆ど使われない。

8.理由は簡単明瞭。低価格機材でも現行競合交通機関に競合する運賃は提供出来ない。

9.本サイトの目的はこの障害を如何に乗り越えるか読者の参画を得て考案する事。

10.既に過去幾つかの示唆は行って来たが今後より踏み込んだ提言を順次行う。

11.日本を取巻く世界的環境変化に常時注意を払う必要はあるが振廻されぬ事も肝要。

12.日本の固有の文化、交通インフラ、ビジネス機利用の商慣習を冷静に分析実践に移す。

13.現状分析に必要な最新の情報(中国はABACEでの公開数値)を下記の様に記載した。

14.世界、アジア・オセアニアの数値はJETNET社の2013年末統計を流用。

世界/アジア・オセアニア・日本・中国の保有機数シェア-

                                JETNET資料

世界全体

アジア・オセアニア

 

 

機数

83,461

7,872

1,148

948

シェア-

100%

9.4

1.375

1.136

 JETNET,日本航空機全集2014、Asian Sky Group2014資料

機  種

世界全体

日本

シェア-

中国

シェア-

ジェット機

22,673

24

0.11%

390

1.72%

/双発タ-ボ機

17,091

36

0.21

狭義のビジネス機

39,764

60

0.15

ピストン機

6,030

273

4.53

回転翼機

37,667

505

1.34

広義のビジネス機

83,461

838

1.00

 JETNET,日本航空機全集2014、Asian Sky Group2014資料

機  種

世界全体

日本

シェア-

中国

シェア-

Heavy   Jet

7,343

0

0%

303

4.1%

Mid-Jet

5,809

1

0.02

57

0.98

Light   Jet

9.096

23

0.25

30

0.33

未 詳

425

ジェット機総数

22,673

24

0.11

390

1.72

 

 

日本/中国サイズ別ビジネスジェット機保有比率

Heavy

Mid-Jet

Light   Jet

合 計

中 国

303

57

30

390

シェア-%

77.7

14.6

7.7

100.0

日 本

0

1

23

24

シェア-%

0

4.2

95.8

100.0

日本は18億円のCitation 680 1機を所有するが20億円以上の機材はゼロ。中国は95%強。

ビジネス機を「特権階層」の所有物とするか一般利用の普及をするのか目標の違い。元のコンセプトが異るので結果の優劣比較は無意味。両者夫々の目標を反映したに過ぎない。

                                                    Asian Sky Group2014資料

 

中国本土

香 港

マカオ

台 湾

合 計

機 数

248 機

97

11

15

371

市場シェア-%

66.8%

26.1

3.0

4.1

100.0

中国保有の総機数390機より商用機仕様の19機が除外され371機を母数として流用。

 

中国に於ける主要ビジネス機メ-カ-の市場シェア-

                           Asian Sky Group2014資料

 

Gulfstream

Bombardier

Dassault

Cessna

Hawker

Airbus

Embraer

Boeing

機数

142

111

31

27

19

18

16

7

38%

30

9

7

5

5

4

2

中国保有の総機数390機より商用機仕様の19機が除外され371機を母数として流用。

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