2014年07月17日(木)03時12分

(14-14) 関東経済圏とヘリコプタ-による「旅客の2点間輸送」

 

要    約

1.関東経済圏でのビジネ機利用は昨年1月サイトで公開したが内容をアップデ-トした。

2.今回は東京都心での事業中枢機能の「一点集中」と関東各地関係先との交流がテ-マ。

3.その中でヘリコプタ-を中心とした一般企業マンの「2点間移動」が中心主題。

4.利用可能性のある機材や運賃幅に就いては本サイトで種々示唆が為され要点のみ添付。

5.本稿では広い意味での関東首都経済圏の人的交流の重要性と可能性をハイライトした。

6.広域関東首都圏は面積比日本の2割、人口比4割、総生産額の45%を占める。

7.直線距離的には150㎞でカバ-可能な狭い地域内でこの規模の集約は他に類例がない。

8.日本の機能中枢である千代田・中央・港3区は日本での面積比は僅か0.011%。

9.都市圏の経済規模、年間10億㌦以上の大企業本社所在地等で東京は世界的に傑出。

10.経済圏を支える地域の事業所、工場、研究施設迄は公共交通機関が網目の様に発達。

11. 低格帯ヘリコプタ-と言えども高速鉄道、商用機、コミュ-タ-機とは競合は不可能。

12. 然し都心より近郊諸地域或いは目的に近い地方駅から目的地への移動に時間が懸る。

13. ヘリコプタ-の利用料は合理化しても精々地上タクシ-料と競合可能な水準。

14 従って地上タクシ-同様幹線交通機関拠点→訪問先のAir Taxi利用の可能性は残る。

15.タクシ-同様短距離(ヘリで往復50~100㎞)短時間(往復15~30分)の利用。

16.日本の様に短距離、短時間利用であれば高額のビジネスジェット機の出番は全く無い。

 

関東経済圏の規模

 

定    義

1.一般的には1都6県だが山梨県、更に静岡、長野、新潟県を含めて語る場合もある。

2.「道州制」導入案では利根川以南の地域を南関東とする案と埼玉県を編入する案もある

3.東京都は23区と3多摩それに伊豆諸島を含めた島嶼群。

4.但し、主要企業の本社所在地は都心の千代田、中央、港区、これに副都心部に集中。

5.何れにせよ政令で指定される地域と現実の主要経済活動地域は必ずしも一致しない。

6.表示される数値は飽く迄大掴みの全体図を把握する事が目的。細かい数値に拘らない。

7.但し、日本が諸外国に較べ如何に全ての機能が「一点集中」して居るかの認識は必要。

関東圏・首都圏

 

広域関東首都圏

関東1都6県(東京都、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬)に山梨県、更に静岡、長野、新潟県を含めて語られる場合もある。

一般的関東首都圏

関東1都6県時により山梨県を含む。

南関東

11道州制の案では関東は南関東と北関東に分けられ南関東は東京都、神奈川、千葉の利根川南部地区、これに埼玉を加える事も多い。

東京都

東京23区に都下3多摩(北多摩、西多摩、南多摩の32市町村)と伊豆諸島等島嶼群。但し、東京のベットタウンは神奈川、埼玉、千葉から新幹線で1時間程度の通勤圏に拡がって居るので行政的な線引きは実態を反映していないとの見方もある。

東京都心

かなり恣意的な分類だが、最近は環状7号線、6号線、山手線内を指す事もあるが、千代田区、中央区、港区を都心と呼び、品川、渋谷、新宿、池袋、上野・浅草等を副都心と呼ぶ事もある。上記は何れも使用目的に沿った便宜的な選択で厳密な定義ではない。

 

地理区分

 

 

地域内総生産

日本全域

372,924㎢

127.8百万人

495.6(兆円)

広域関東首都圏(含む

山梨・静岡・長野・新潟)

 

70,814 (19%)

 

51.1(40%)

 

221.9 (44.8%)

関東16

32,560 (46%)

42.2 (33%)

186.4 (31.6%)

南関東(1都3県)

13,567 (19.2%)

35.3 (27.6%)

160 ( 32.2%)

東 京 都

23+3多摩+島嶼

23

2,189 (6.7%)

621(28.4%)

13.2 (10.3%)

91.1 (18.3%)

都  心

山手線内

千代田・中央・港3

 

65 (3%)

42.13(1.9%)

 

面積 : 「県勢2014」 矢野恒太記念会編

                                 人口 : 総務省統計局「人口推移」2012年統計

                  総生産額 : 内閣府2010年「県民経済計算」

(1)  広域関東首都圏は面積比日本の2割、人口比4割、総生産額の45%に達する。

(2)  関東1都6県は面積比関東広域の半分以下、人口比1/3. 東京都の面積比は僅か6.7%。

(3)  東京都の中では23区は面積比は東京都全体の3割以下、山手線内は3%。

(4)  千代田、中央、港区の3区は面積比日本の0.011%。この中に国の中枢機能が集中。

(5)  千代田・中央・港区42.13                           即ち0.011%。

(6)  人口は時々刻々変化。東京の昼夜人口の変動は世界一故、人口の比較は意味が薄い。

(7)  これ程の一点集中の是非は本稿では論じないが、災害や有事の際の課題は大きい。

(8)  本稿では、一点集中による、近郊を含む地方との交通の便宜性と意味を考察する。

 面 

日本全域

広域関東首都圏

372,924㎢

70,814

13,567

海外の近似数値国

ジンバブエ 390,580ドイツ357,021(日本61位)

シェラレオネ77,474, アイルランド70,280 (118位)

バハマ13,940, バヌアツ12,200 (158位)

人口

日本全域

広域関東首都圏

127.8百万人

51.1

35.3

ロシア142.9, メキシコ118.4 (日本10位)

南ア53, 韓国50.2 (広域関東首都圏26位)

ウガンダ 36.8,カナダ 35.1(南関東36位)

地域内総生産

日本全域

広域関東首都圏

495.6(兆円)

221.9

160

(数値単位は10億米㌦。\100/$で換算対比)

ドイツ3,636、フランス 2,737.4、英国2,535.8

ブラジル2,242.9, ロシア2,118.

豪州 1,505.3、スペイン(13位) 1,358.7

 

都市圏の人口順位          都市圏の経済規模

Demographia 2012        ブルッキングス研究所2012

順位

都市圏

人口

順位

都市圏

総生産

1

東 京

37,126千人

1

東 京

1,520/10億㌦

2

ジャカルタ

26,036

2

ニュ-ヨ-ク

1,210

3

ソウル

22,547

3

ロサンゼルス

786.7

4

デリ-

22,242

4

ソウル

773.9

5

マニラ

21,951

5

ロンドン

731.2

 

年間10億㌦以上の大企業本社

                         マッキンゼ-資料

順位

都市圏

企業数

1

東 京

613

2

ニュ-ヨ-ク

217

3

ロンドン

193

4

大 阪

174

5

パ リ-

166

企業の交流で対面コミュニケ-ションが最も重要である事は誰でも経験的に理解している。本社-地方支店、工場、研究施設、物流センタ-の社内間の人的交流もあるが、それ以上に各種取引上の関係先との交流は一層重要。高度に発達した各種低コスト公共交通機関が使われ、今後も主要な交通手段として利用され続ける事は当然乍ら、意外な間隙もあり、これを埋める補完手段として、利用料は高くても、短時間、短距離利用でAir Taxi的利用の方が「費用対効果」上有利と言う事例もあろうが、一般論より個別の踏込んだ検討が必要。

    

東京丸の内よりの距離  (ヘリ速度200/時)

距離

主 要 地 点

所要時間

コスト

15

浦安、市川、西荻窪、狛江、羽田

5~7分

¥5~11,700

20

松戸、鳩ケ谷、新座、三鷹、調布、鶴見

6~8

6~13,400

25

船橋、柏、大宮、横田、府中、町田、横浜

8~10

8~16,700

30

千葉市、柏、大宮、横田、国立、日野、町田、横浜

10~12

10~20,000

(1)  ヘリの飛行速度を200㎞/時と置いた場合の所要時間。

(2)  利用コストは1億円の低価格帯機材を利用、\60~100,000/時と仮定。(努力目標値)

(3)  現在の日本での相場は\200~250,000/時するので、努力目標値達成には工夫が必要。

(4)  3人乗合いでは20㎞で\2,000~2,500/人、\30㎞で\3,400~6,700/人と成る

(5)  機材の所有と運航を集約、機材の稼働率向上でコストを下げる工夫をする事が鍵。

(6)  近郊へは公共交通機関が網目の様にあるが緊急時或いは時間節減のコストも勘案。

 

欧米の距離感覚

 

米国

New York-Washington 379㎞, Boston 333,Pittsuburgh 606, Detroit 407

欧州

Frankfurt-Zurich 306㎞, Wien 594, Milan 515, Paris 475 (欧州金融センタ-)

(1)  国土面積の小さい日本と米国、欧洲の大陸国とは「2点間」の距離感覚が全く異る。

(2)  米国で一寸そこ迄と言っても、New York近隣の諸都市でも400㎞以上はする。

(3)  New York-Washingtonは鉄道で4時間半、飛行機で45分。

(4)  鉄道は航空機より運賃は安いが企業マンが近郊諸都市への出張に利用する事はない。

(5)  欧州の近距離の金融センタ-廻りも時間的に航空機以外は使われない。

(6)  日本は700㎞程度位迄は鉄道の方が時間・便宜的にも有利で運賃格差も殆どない。

(7)  その一方訪問先が都心30㎞圏内でも公共交通手段を利用すれば1時間は要する。

(8)  此処に、30㎞なら10~12分のヘリの補完的利用の余地が残されている。

(9)  欧米では300㎞以上の移動が必要で高速の小型ジェット機が多く使われる。

 

東京昼夜人口比率

 

順位

区  名

昼夜間人口比率

1

千代田区

1,738%

2

中央区

493.6

3

港区

432.1

4

渋谷区

254.6

5

新宿区

229.9

政府機関、企業オフィスが集中する千代田区の昼間人口は夜間の17倍、中央区、港区で4~5倍と昼夜人口の変動はグロ-バルにも断トツ。ニュ-ヨ-ク マンハッタン島の4倍と言う記事も見られるが数値の比較は兎も角、人口の一点集中で東京は世界的にも断トツ。公共交通機関が世界的に最も高度に発達し乍ら「通勤地獄」「酷電」等と言う表現に象徴される様に地域内の移動は大きな問題。郊外のベットタウンより近郊への出張には住居地より訪問先へのAir Taxiの直行利用が効率的にも、経済的にも合理的と言う事例も考え得る。

低価格帯ヘリコプタ-

                                         Teal Group資料

機 種

価 格

機 数

航続距離

巡航速度

Airbus Helicopter

EC-120

AS-350/EC-130

191百万円

250

4機

82

771㎞

632

228㎞/時

225

Bell Helicopter

206L

505 Jet Ranger X

229

220

55

0

595

644

203

232

Robinson Helicopter

R-22

R-44

R-66

27

44

83

66

99

3

422

557

648

176

216

230

メ-カ-

Airbus,Bell,Robinson社は何れも日本市場での実績が有り整備等の施設も完備。海外調査機関の10年予測でもLight HelicopterではAS-350, R-44, R-66が将来の成長株。又、本年2月、Bell 505が披露され注目を引いた。

価 格

価格はメ-カ-の標準装備のリスト価格で実際の取引価格とは異るし、日本の場合は2割程度の輸入コストや特に購入時の外国為替相場で円表示価格は大きく変動するが、低価格帯とはこれらを含め1機3億円以下程度。

新規買替えに伴い低価格の中古機も出回るが、これの有効活用も視野に。

欧米では保存状態の良い中古機を丁寧に保守・修繕しAir Taxiとして活用。

JA機数

Bell 206L, R-22は古い機種でAS-350,R-44,R-66に買替え進行中。Bell 505

は2016年以降の商業受渡しで現在実績は無く実能力は未知数。但し、日本企業も5月に1機発注済み。Bell社は既に数百機を受注している。

航続距離

日本での「旅客2点間輸送」は往復50~200㎞程度で問題なし。

巡航速度

難しい事は考えず200㎞/時、地上タクシ-50㎞/時の4倍。2点間を直線で結ぶので、米国では距離的メリットは自動車の1.5倍と見る。直線距離で100㎞30分,50㎞15分、25㎞8分と見れば大幅な時間短縮が見込まれる。

乗客数

3~5名程度の乗客を輸送、利用人数により機種を選べば良い。利用料金は通常は利用時間単位なので利用客数が増えれば頭割の運賃は大幅に下がる。

メリット

ビジネス機の利用は「時間を金で買う事」。地上タクシ-でも同じ理屈。但し、自動車と、航空機では機材価格が異るので低価格帯と言っても高く成る。時間節減を人件費節減として定量化し周囲の納得が得られる「費用対効果」を立証出来なければ出張費としての経費処理は出来ない。米国では常識に成っている、一般的な「費用対効果」の定量的評価法を確立・定着させる事が必要。

関東地区の主要交通拠点

空港

成田、羽田、茨城、(横田)私有 : 調布、大利根、竜ヶ崎、阿見、ホンダ

ヘリポ-ト

新木場、栃木、高崎/前橋、市営・私有 横浜、芝浦、六本木、浦安他多数。

新幹線駅

品川、横浜、小田原、静岡、甲府、大宮、高崎、長野、新潟、宇都宮他多数。

(1)  新幹線主要駅付近のビル屋上をヘリポ-トとして利用出来ればAir Taxi による25㎞圏内の移動は既存交通機関との共存・共栄的相互補完が実現可能。

(2)  広域関東首都圏の主要ヘリポ-ト、新幹線駅より25㎞の等心円を描けば全地域は隈なくカバ-される。

(3)  言葉を換えれば、上記主要交通拠点より25㎞以内に目的とする訪問地が位置する。巡航速度200㎞/時のヘリのAir Taxiで25㎞8~10分。15㎞程度なら数分。

(4)  努力目標の\60~100,000/時のチャ-タ-料で1分間 \1,000~1,700、\300~500/㎞。地上タクシ-料は\330/㎞。利用距離に単価を乗じれば運賃総額が出るが、ヘリは3~5人の乗合いが可能なので複数の利用者で1人当りの運賃負担は利用者数に反比例して低減する。

(5)  海外の一般企業マンが利用するAir Taxiはこれ以下の相場もあるが、それより離島で利用されるコミュ-タ-便の同種の機材利用運賃は \300~500/㎞の半値。

(6)  今後精査の必要は残るが、機材の稼働率と利用客数との兼合いをシュミレ-トする。

(7)  航空機運航事業の採算は「資本集約的事業」故に機材の利用頻度と1機当りの利用客数がコスト決定の鍵。抜本的な対策は機材の共同購入・所有・運航で1機1億円と言う低価格帯機材(と言っても安くない)の「遊び時間」を減らし有効活用でコスト低減を実現する事。航空機では機材の年間稼働時間、座席利用率が収益の決定要因。

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