2014年10月27日(月)07時05分
(14-18) 首都圏空港トヘリポート
要 約 1.東京は全ての機能が一点集中、国際的にも巨大な人口を抱え慢性的に空港容量が不足。 2.オリンピック招致が決まり、2週間の開催期間中の訪問客の対応が焦眉の急と成った。 3.オリンピックの成功は招待国日本の責務だがこれを機会に航空インフラを考え直す。 4.国土狭小、人口密度が高い日本の首都圏でこれ以上の空港建設の余地は無い。 5.無論、既存の空港の新たな滑走路建設や飛行空域の見直しは当然行われ様。 6.但し、それ以前に持てるインフラを如何に活用するか見直す時期に至っている。 7.茨城空港の軍民共用は実現して居り、横田基地の共用も検討されている。 8.先進諸外国では内外商用便の玄関口空港と非定期便との棲み分けが行われている。 9.これは、行政指導と言うより自然に棲み分けが行われた結果である。 10.日本は世界の政治・経済中心地より遠く「大量輸送」による低廉な商用便が発達した。 11.定期商用便の50~100倍するビジネス機を利用する事は大手企業幹部とてない。 12.他方、海外の限られた超富裕層、セレブ、VIP, カリズマ経営者の利用者はいる。 13.ビジネス機の利用者、運航業者の最も嫌うのは混雑した空港。 14.離発着枠、滑走路の利用待ち、それ以上に空港の雑踏によるセキュリィティー問題等。 15.結果として、玄関口の都市圏主要空港より周辺の二次空港が利用される。 16.本稿では、出来るだけ具体的な統計値を示し、その実情を提示した。 17.茨城空港開港時にANA総合研究所が首都圏4空港併用の提言したが一部引用した。 18.茨城空港開港、羽田第4滑走路の完成後、国交省も同様の提言を行っている。 19. 茨城空港は都心より最も遠いが、ヘリコプターなら都心迄25分程度。 20.某運航会社が都心迄のヘリコプター運行の用意が有る事を公式の場で明言した。 21.にも拘らず、都心よりの交通のアクセスが悪いと「一刀の下に切り捨て」られた。 22.ヘリコプターの利用は高額故に現実的ではないとの理由もあった。 23.欧米より往復4千万円払いビジネス機で飛来する利用者にはさしたる金額ではない。 24.赤坂アークヒルズー成田間のヘリコプター利用料は片道5万円/人。 25.茨城空港はそれより高く成ろうが超富裕層、セレブ、VIPには「雀の涙」。 26.横田の共用が可能に成っても都心へのアクセスには同じ問題が横たわる。 27.ビジネス機が混雑した空港を嫌う事も勘案すれば日本も棲み分けを考えるべき時期。 28繰り返し述べて来た様に.本稿は企業の「一般利用者」に資する事が目的。 29.欧米では「特権階層」以外もアクセスが悪い空港の送迎にAir Taxiを利用する。 30.New Yorkは企業が集中するMidーTown ウオール街にヘリポートが用意されている。 31.それ以前に、ヘリコプターが利用出来ない禁止区域は有るがそれ以外は離発着自由。 |
首都圏4空港構想
(羽田、成田、茨城、横田共有)
「茨城空港は同じ首都圏に位置する羽田・成田・横田空港と連携し、「定期航空需要」のみならず、首都圏の経済・観光の更なる発展につながる「幅広い形態の航空輸送」に対応出来る空港として建設・発展させるべきである。とりわけ、他の空港が十分に対応出来ないと考えられる「国際チャーター輸送」、「格安航空輸送」、「ビジネス航空輸送」、「ヘリコプター」等に重点を置いた機能・役割を分担すべきである。」
「2010年を境に、首都圏の空に劇的な変化が訪れる。羽田空港・成田空港の拡張に加え、茨城空港の民間共用化が現実のものと成り、更には横田基地の軍民共用の可能性も高まりつつある。そして、この茨城空港を単なる地方空港ではなく、「首都圏空港の一翼」とみなす時、巨大な航空需要を有する日本の首都圏を、羽田・成田・茨城、さらには横田を加えた4つの民間空港でカバーすべき時代が目の前に迫っていることに気づく。」
「日本の首都圏は、欧米の大都市圏(ロンドン、ニューヨークなど)に比べ、その人口に対して著しく空港の数が不足しており、その結果、慢性的に発着枠が不足する状況が続いている。然し、「首都圏4空港時代の到来」により、これら4空港を計9本の滑走路(総延長26㎞)を持つ一つの巨大な空港として捉えれば、日本の首都圏にロンドンやニューヨークにも匹敵する世界有数の空港インフラが整うことになる。日本および茨城県の航空政策担当者や航空・空港関係者は、コペルニクス的発想の転換が必要と成る時代が目前に迫っていることを強く認識すべきである。」
「茨城空港の利活用に関する提案」 ANA総合研究所 2008年3月
(東京都心よりの距離)
羽田空港 |
成田空港 |
茨城空港 |
横田空港 |
16㎞ |
64㎞ |
85㎞ |
32㎞ |
飛行距離はANA総合研究所の数値を流用。ヘリコプターの巡航速度200㎞/時と置けば、茨城空港ー都心間26分、成田空港ー都心間20分。横田空港ー都心間10分、羽田空港ー都心間5分間と成る。
4空港より25㎞(所要時間8分)、50㎞(所要時間15分)で首都圏・南関東の大半がカバーされる。又首都圏のベットタウンと空港間、郊外工業団地、テクノパーク間の足としても利用可能。
空港名 |
巡航速度200㎞でカバー可能な地域 |
羽 田 25㎞ 50㎞ |
都心よりdoorーtoーdoorで30分、下記地点からは乗継ぎで更に時間を要する。 金沢八景、戸塚、町田、府中、川口、船橋、市原、木更津 三浦、大磯、厚木、八王子、川越、柏、東金、大多喜、富津 |
成 田 25㎞ 50㎞ |
都心よりdoorーtoーdoorで90分、下記地点からは乗継ぎで更に時間を要する。 鹿嶋、八千代、習志野、東金 羽田空港、川口、野田、春日部、茨城空港、銚子、大多喜 |
茨 城 25㎞ 50㎞ |
都心よりdoorーtoーdoorで100分、下記地点からは乗継ぎで更に時間を要する。 ひたちなか、水戸、土浦、稲敷 日立太田、真岡、古河、野田、我孫子、成田空港 |
横 田 25㎞ 50㎞ |
都心よりdoorーtoーdoorで90分、下記地点からは乗継ぎで更に時間を要する。 練馬、川越、上野原、相模原、町田 浦安、春日部、久喜、熊谷、勝沼、逗子、横浜、羽田空港 |
飛行区間 |
距離 km |
距離概算 km |
ヘリ200㎞/時 |
仙台ー東京 |
311 |
300 |
90 |
名古屋ー東京 |
308 |
300 |
90 |
富山ー東京 |
289 |
300 |
90 |
新潟ー東京 |
278 |
280 |
85 |
福島ー東京 |
200 |
200 |
60 |
松本ー東京 |
178 |
180 |
55 |
静岡ー松本 |
178 |
180 |
55 |
大島ー東京 |
104 |
100 |
30 |
茨城ー東京 |
80 |
80 |
25 |
木更津ー東京 |
40 |
40 |
20 |
横田ー東京 |
40 |
40 |
20 |
ロンドン市中よりの距離(巡航速度200㎞/時のヘリ利用のケース)
空 港 名 |
飛行距離 |
概算距離 |
所用時間 |
FarnboroughーLondon |
55㎞ |
60㎞ |
18分 |
StanstedーLondon |
48 |
50 |
15 |
LutonーLondon |
44 |
45 |
14 |
GatwickーLondon |
40 |
40 |
12 |
HeathrowーLondon |
26 |
30 |
9 |
CityーLondon |
5 |
ロンドンオリンピック開催中のビジネス機による周辺空港の利用状況
空港名 |
Heathrow |
Luton |
Farnborough |
Biggin Hill |
Stansted |
Oxford |
着陸回数 |
使用禁止 |
2,285 |
1,800 |
1,231 |
770 |
600 |
オリンピック開催前後3週間の実績。HeathrowはIOC関係者、選手団、訪問客用で満杯。
ビジネス機のHeathrow空港の利用は禁止され6,700機弱が周辺二次空港を利用した。
New York, London, Parisのビジネス機利用空港(国交省資料)
New York |
JFK 4,312, La Guadia 5,443, Teterboro 86,696, Westchester 77,196 |
London |
Heathrow 2,690, Luton 15,628, Farnborough 10,768, Stansted 8,082 |
Paris |
Charles de Gaulle 4,321, le Bourget 26,791 |
2010年3月茨城空港開港後も国交省の指適に関らずその利用も真剣の検討されて居ない。
マンハッタン中心よりの距離(巡航速度200㎞/時のヘリ利用のケース)
空 港 名 |
用 途 |
概算飛行距離 |
所用時間 |
La GuadiaーManhattan |
国内航空玄関口 |
13 ㎞ |
5 分 |
JF KennedyーManhattan ー |
国際航空玄関口 |
27 |
8 |
NewarkーManhattan |
New Jersey州側玄関口 |
24 |
8 |
WestchesterーManhattan |
高級住宅地空港 |
43 |
13 |
FarmingdaleーManhattan |
住宅地空港 |
43 |
13 |
IslipーManhattan |
郊外別荘地空港 |
71 |
22 |
Teterboro |
ビジネス機専用空港 |
19 |
6 |
Morristown |
New Jersey州側周辺地 |
43 |
13 |
Cadwell |
New Jersey州側周辺地 |
22 |
7 |
La Guadia, Kennedy, Newarkが主たる商用機空港。Westchester, Islip, Cadwell Morristown等は郊外のベットタウン乃至郊外オフィスが有り近郊諸都市へのコミューター機が運行している。La Guadia, Newark迄自動車で1時間位は掛るので、近隣の空港より近郊諸都市コミューター機を利用出張する
米国主要都市周辺二次空港を含めた空港数
都市名 |
Chicago |
NY |
Denver |
LosAngel |
S.Francisco |
Miami |
Dallas |
空港数 |
17 |
15 |
15 |
12 |
11 |
10 |
8 |
都市名 |
Pittsburgh |
Miami |
Detroit |
Seattle |
Minneapolis |
Atlanta |
Houston |
空港数 |
8 |
8 |
8 |
8 |
7 |
7 |
6 |
米国の首都Washington DC(コロンビア特別区)は16km四方の狭い街。空港はVIP専用のAndrews海軍基地(ホワイトハウスよりヘリで数分)、Reagan, Dulles, Baltimoreの3商用空港に周辺二次空港が5か所。米国は「車社会」と同様鉄道に代り「航空機社会」。
New York周辺二次空港のビジネス機利用状況
ACI 2012年統計(機数は離着陸合計)
都 市 名 |
空 港 名 |
商 用 機 |
GA 機 |
Air Taxi |
New York主要空港
二次空港 |
J.F. Kennedy Newark La Guadia Farmingdale Teterboro Westchester Islip Caldwell Morristown Trenton Bridgeport Stewart |
350,866回/年 277,853 275,568 129 164 16,122 12,255 24 11 35 8 3,999 |
7,919 9,858 6,680 107,007 97,466 90,499 54,242 48,186 37,981 35,254 30,601 19,721 |
50,493 132,889 91,664 9,595 61,287 46,084 6,321 986 11,226 3,964 2,477 8,806 |
l
|
商用機はKennedy, Newark, La Guadiaの3空港に集中。Westchester, Islip,
Stewartの3空港にはコミューター機定期便が運行している。
l ジェネアビ機は通常二次空港を利用するが,中/遠距離飛行のビジネスジェット機はマンハッタン島対岸のTeterboro空港を利用する。2点間直線距離は20㎞弱でヘリコプターでマンハッタンの国連ビル裏のヘリポートと南端の金融の中心地ウオール街の河沿いのヘリポート迄数分。車であれば河底のリンカントンネルか北端のタッパンジー橋を利用して約1時間、ラッシュアワー、事故車が居れば所要時間は「神頼み」。
l Kennedy空港は空いて居ればタクシーで45分。交通渋滞時には2時間以上を要する。
l 時間が大切ならAir Taxiを利用。玄関口の3大空港のAir Taxi利用が多い事に留意。
総 括
首都圏の航空インフラに就いては過去20年様々な論議が交わされ、昨秋オリンピック招致が本決まりと成り、競技会開催期間中前後3週間に内外の訪問客が首都圏を訪れる事が予測され俄かに首都圏の航空インフラが問題視されて来た。無論、この様な論議は不可欠且つタイムリーでは有るが、目先の問題のみに捉われず既存の航空インフラの活用を含め各種課題を包括的に見直す時期に至った。
(1)首都圏4空港の有効的棲み分け活用を真剣に検討する。
(2)関東圏近隣空港から首都圏への訪問客輸送の方策。首都圏4空港はVIP, IOC関係者、選手団、訪問客で満杯。近隣空港からの受入れはヘリコプター以外無かろう。
(3)ヘリコプターとても都心周辺の離発着可能なヘリポート設置の認可の柔軟性が必要。
(4)海外では「当り前」に成って来ている「計器飛行」の認可も必要と成って来る。
(5)中国は来年抜本的な低空域の利用見直しでヘリコプターの利用や現地生産に弾みを付ける事を計画している。日本もこれ以上世界より取り残される事は許されない。
(6)東日本大震災、御嶽山噴火でのヘリコプターによる防災の有効性は再認識された。
(7)EMS (救急医療)でのドクターヘリの利用はヘリコプターの最成長分野。
(8)「観光立国」「地方再生」の為、「旅客の2点間輸送」を重要成長戦略と位置付ける。
(9)最も肝心な利用コスト合理化の要と成る「共同所有・運航」は年末迄に纏め提言。
(10)低格帯機種の選別・集約、纏め買いによるコスト低減と運航業者へのリース。
(11)共同運航による機材の稼働率向上。採算分岐点の300時間/年以上の稼働目標。
(12)短距離(片道25~50㎞)、短時間(往復分)15~30分)で利用者負担を軽減。
(13)ヘリ利用による時間節減を利用者人件費節減に換算「費用対効果」を評価。
(14)上記の複合的な組み合せでヘリコプターの「一般利用」の道を開く。
(15)「不作為」では世界に益々取り残される。「為せば成る」「論より行動」に移す。
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