2014年10月24日(金)07時30分

(14-19) デザインベースでの利用可能な運賃の割り出し

  •  
  • 過去20年ビジネス機の利用が叫ばれ乍ら、何故か新規事業立ち上げに絶対不可欠なF/S (Feasibility Study) が行われて来なかった。デザインベ-スとは「ゼロ発想」で市場・利用者が利用可能な運賃を割り出すプロセスである。他方、これにミ-トする機材の提供の現実性がなければ単なる「机上の空論」或いは “Day Dreaming” に終わる。
  • 要   約
  •  
  • 1.ビジネス機の利用に就いては過去20年国際的にも日本での利用の遅れが問題視された

2.様々な論議が交される中で本来の焦点が暈け論議が拡散する中で目標が見失われた。

3.本サイトは、論議を原点に戻す事を目的として開設された。

4.真の中心課題は如何にしてビジネス機を「一般企業マン」の足として普及させるか?

5.言葉を替えれば、企業マンの「2点間移動」に供し「生産性向上」に繋げる事。

6.現実は、当初目論んだビジネスジェト機は利用料が高過ぎ誰も利用者は居なかった。

7.最近の検証では最も安いヘリコプタ-でさえも「旅客の2点間輸送」には使われない。

8.海外ではビジネス機が利用される交通の便の悪い処でもコミュ-タ-機が飛んでいる。

9.コミュ-タ-機の場合は、自治体の手厚い優遇制度に加え損失補填迄行われる。

10.民間のヘリコプタ-は営利事業である以上損をして「旅客の2点間輸送」は行わない。

11.本サイトはコミュ-タ-機や地上タクシ-との「競合」を避け「補完」「共存」を狙う

12.コミュ-タ-機は全ての空港に飛んで居るのでビジネス固定翼機の出番は限られる。

13.逆にコミュ-タ-機は固定翼機が中心であり都市周辺や地方の25~50㎞飛行はしない

14.この様な短距離、短時間の輸送は地上タクシ-の出番だが交通渋滞を含め時間が懸る。

15.ヘリコプタ-は2点間を直線で結び地上の交通渋滞に左右されない。

16.走行速度も自動車の4倍で、此処に移動時間短縮の機会が伏在する。

17.ビジネス機は「時間を金で買う」ビジネスモデルで地上タクシ-と補完関係が出来る

18.節減された時間を人件費節減に換算すれば多くの場合「費用対効果」は正当化可能。

19.この場合地上タクシ-料\330/㎞の1.5~2倍程度の\500~700/㎞が心理的障壁の限界。

20.これを時間当りのチャ-タ-料に換算すると\100~150,000/時と成る。

21.これがデマンドサイドのおそらく限界。これに近付けるサプライサイドの努力が必要。

22.予測される道筋とシナリオは示唆したが、年末迄に煮詰めてリポ-トとして纏める。

23.どうしても越え難い溝を埋める緩衝剤も示唆したが安易に流れぬ様暫時脇に置く。

24.本サイトも纏め段階に入り過去20年タブ-であった利用料問題に最後に切り込んだ。

25.利用料へのサプライ/デマンドサイド両者の合意接点無くしては何事も成就しない.

26.コミュ-タ-機やドクタ-ヘリは公的補助もあるがAir Taxiの採算は自立が鉄則。

27.民間の営利事業である以上利用者が払える利用料と運航業者の合意点を割り出す。

サプライサイドの考察

(1)    中/遠距離飛行用のMid~Heavy Jetは商用機と同等或いはそれ以下の飛行速度しかなくビジネス機を利用しても時間の節減は図れない。利用料は商用機の50~100倍で利用メリットは全くない。日本の大手企業トップ、幹部と言えども過去四半世紀海外出張にビジネス機を利用した実績は無く、ビジネス機の利用を声高に叫ぶ関係者も利用しない。

(2)    国内でのLight Jetも同様。Light Jetの飛行速度は商用機より2割程度遅く利用による時間節減は殆ど望めない。利用料も商用機の50~100倍で大手企業の幹部も利用を喧伝する関係者も利用実績はない。

(3)    逆に機材価格が0.3~2.5百万円のビジネス機が800機以上が使われているが、「旅客の2点間輸送」はビジネス機の範疇外のコミュ-タ-機が利用され、機材価格が最も安いヘリコプタ-でも日本全国での年間の利用は20時間程度と実際には無きに等しい。

(4)    「ゼロ発想」の「デザインベ-ス」の思考では対応には下記の要件が必要。

a.機材価格は0.3~2.5百万円の範囲内。

b.仮に百万㌦の機材で有れば\100/$の為替レ-トを適用して一億円前後。

c. 計算を簡便にする為機材価格を1億円と置き簡便法の試算を試みた。

d.これにリ-ス料年間12%と保険料3%/年を加えた15%を加算する必要有り。

e.年間100時間利用で\150,000/時、200時間\75,000/時、300時間利用で\50,000/時。

f.これに、変動費と適正利潤を含めたOverheadがサプライサイドの限界コスト。

g.鍵はリ-スによる固定費負担軽減と「共同運航-コ-ドシェアリング」による稼働率向上。

h.日本のヘリコプタ-は採算分岐点300時間/年の利用を下廻り、稼働率向上が絶対不可欠。

i.これには商用便同様、共同運航の枠組みを整える必要がある。

 

本体価格

100,000,000

㎞当りコスト

リ-ス料 12/

保険料3%/

合  計

¥12,000,000

¥3,000,000

¥15,000,000

稼働時間当りコスト

100時間/年 利用者1

25~50㎞利用

利用者3

25~50㎞利用

利用者5

25~50㎞利用

200時間/年 利用者1

25~50㎞利用

利用者3

25~50㎞利用

利用者5

25~50㎞利用

300時間/年 利用者1

25~50㎞利用

利用者3

25~50㎞利用

利用者5

25~50㎞利用

400時間/年 利用者1

25~50㎞利用

利用者3

25~50㎞利用

利用者5

25~50㎞利用

¥150,000/時

\18,750~37,500

\50,000

\6,250~12,500

\30,000

\3,375~7,500

¥75,000/時

\9,375~18,750

\25,000

\3,125~6,250

\15,000

1,875~3,750

¥50,000/時

\6,250~12,500

\16,700

\2,063~4,125

\10,000

\1,250~2,500

¥37,500/時

\4,688~9,375

\12,500

\1,563~3,125

\7,500

\938~1,875

\750㎞/時/人

\250/㎞

\150/㎞

Y375/㎞

\125/㎞

\75/㎞

 

\250/㎞

\84/㎞

 

\50/㎞

\188/㎞

\63/㎞

\38/㎞

 

  •   運航業者はリ-スにより機材の自己ファイナンスの必要が無くなる。
  • リ-スはバランスシ-ト上の資産計上の必要が無く(オフバランス)資産の圧縮が図られ、リ-ス料は経費処理が出来る。
  • リ-ス会社或いは「共有機構」は機材の共同購入、付保でバ-ゲニングパワ-を強化。

 

変 動 費

 

(1)   空港利用料 : 固定翼機は空港の利用が必須。空港の利用料以外にFBOの費用等も加算されかなりの金額に成る。Gulfstream G-550が羽田を利用すると一時期65万円懸るとの試算もあった。ヘリコプタ-は共用のヘリポ-トでも1回¥2,000以下で済むし、私設の「場外」ヘリポ-トは無償でコスト問題はない。

(2)   燃料費 : 機種により使用する油種や燃料消費量が異るので一般論では語られないが、往復50㎞程度の利用で¥3,000以下(\60/㎞)とさしたる費用では無い。

(3)   パイロット費用 : 運航費で最も高いのはパイロット費用である。従業員10~94名の運行会社で年収は平均836万円(国労省統計)で大手企業の管理職とさして変わらないが、企業は年間勤務時間2,000時間で計算するがパイロットの平均年間勤務時間は155時間。物理的、肉体的負担の限界と言うより仕事のニ-ズ不足と言うのが実状かと思われるが、これも日本のヘリコプタ-のコストが海外と比較して桁違いに高い要因と見られる。後日機材・運航の集約化のレポ-トを纏め敷衍言及する。米国のAir Taxiのパイロットは退職者が小使い稼ぎに働いたり、退役空軍パイロットが安い費用で運行を引受ける等様々な工夫が為されている。日本はパイロット不足が叫ばれ乍ら既存のパイロットはフル稼働して居ない様にも見受けられる。

低価格帯ヘリコプタ-

(低額且つ日本での利用実績、機材の入手可能性、ア-フタ-サ-ビス体制整備が重要)

                                  Jetnet 資料

機 

Robinson R-44 Raven II

Robinson R-66

Bell 505

Eurocopter

EC-120

Eurocopter AS-350 B3

リスト価

$442,000

830,000

1,100,000

1,400,000

2,605,000

航続距

556㎞

602

667

710

641

飛行速

215㎞/時

232

232

223

226

乗 客 

3人

4~5

4

4

4~6

登録機数(日本)

99

6

0

3

87

生産機数(世界)

9.974

500機強

0

604

1,030

運航機数(世界)

3,452

約500機

0

389

(2,313)

2015年予

11,604

785

0

697

1,546

(1)    Robinson 社は当初$276,000のR-22を世に出し、業界に大きな衝撃を与え、日本でも相当機数が利用された。然し、その後R-44の上位機種を$442,000で販売開始した為、R-22からの乗り替えが起き、日本市場でも同様な現象が見られ、ここ何年か、日本に於けるR-22の登録機数は減少、R-44は逆に増加、近年登録機数は逆転した。2013 年末の登録機数はR-22 66機, R-44 99機。R-22は個人が所有したり、訓練機として利用されたりで、厳密なビジネス機の定義としては範疇外の物が多く、本サイトで触れる事はあっても軸足はR-44以上のビジネス客の「2点間輸送」の便に供し得る機材に移す。但し、R-22は乗客1人しか乗せられないが、地方の出張でAir Taxiとして手軽に利用出来る潜在的なポテンシアリティ-は残されている。米国での利用料は\25,000/時 ($250/h)。50㎞往復の利用料は固定費\6,250、変動費その他諸経費を入れても利用者の(手の届く)利用料には収められ様。

(2) Robinson R-66は2010年末に受渡しが開始、日本への初輸入は2012年、日本での型式証明が取れたのは2013年6月。世界で最も注目されている、百万㌦を割るタ-ビン単発機だが、Robinson社自体が新興ベンチャ-企業で生産能力に限界があり、供給が需要の後追いの状況が続くと見られている。Bell 社の206シリ-ズは競合出来ず生産を打ち切った。今回Heli-Expo 2014で後継機Bell 505 Jet Ranger Xを1.1百万㌦で出展したが市場に出回るのは2016年、日本で型式証明が取れるのは2017年に入るで有ろう。それでも日本某運航会社が本年5月、1機を確定発注した。Bell社はこのグレ-ドの機材は最も価格にセンシチブ(Price Sensitive) と機材価格の重要性を認識するコメントを出した。

(3) Eurocopter社はこの種低価格帯ヘリコプタ-の対抗機種としてEC-120を上市したが安い機種でも1.4百万㌦を越え競争力が乏しい為、製造費の安い中国に進出、ハルピンで2013年末より生産開始。進出の前提条件として150機の確定発注を条件としたが、この条件は満たされたが、暫くは中国市場の需要の充足に追われ様。

(4)但し、Bell SLSの前身であるBell 206B (2012年末で日本での登録機は49機) Eurocopter EC-120, Robinson R-66は何れもEntry LevelのLight Helicopterに分類されるが、日本では単純な「旅客の2点間輸送」以外の多様な業務をこなせる上位機種のAS-350の需要も大きく、今後も利用と伸びが期待される。

(5) 日本では、低価格帯機種で実績のあるRibinson機と上位機種としてこれも実績のあるEurocopter AS-350機を中心に利用が進み、その間中国で生産されるEC-120の日本市場への供給の可否、価格、又Bell 505機の「費用対効果」と日本への供給可否等を勘案した展開と成ろう。何れにしても、Bell, Eurocopter, Robinson社の三つ巴の競争の幕開けを迎え日本もこの好機を利用しない理由は無い。市場で未知の新鋭機がどの様に市場を席巻するかは予測出来ないが、Foecast International社の2011年半ばの予測資料は下記。この時点ではBell社は206Bの生産を打切って居り、後継機の505の生産計画は発表されて居ないので、3社三つ巴の市場予測は2015年位迄は「推測」「憶測」の域を出ない事は予め念頭に置く必要がある。尚、Airbus, Bell, Robinson3社は日本での保守・修繕を含めた各種サ-ビス施設・機能を整備しているが、これも将来の機種絞り込みの重要な検討要素。

                      Forecast International 2012年予測値

機 種

Bell   206B

EC-120/130  

AS-350

R-44

R-66

生産予測(2012~21)

155機

856

2,257

3,982

1,735

市場シェア-(2021年)

2.4%

13.2

34.7

ピストン機の

(68.6%)

27.5

(1)  米国Bell社は206シリ-ズの生産を打切って居り、表記の数値はBell Helicopter Textron Canada, Ltdの生産・販売予測。Bell社は2013年のパリ-エアショ-で後継機505の企業化計画を発表、詳細は2014年2月のHeli-Expo 2014で明らかにすると述べ、この約束は果たされたが、実際に市場がどの様に受容するかは市場に出回るのが2016年と成るので、現段階では未知。

(2)  Eurocopter EC-120はRobinson社の低価格ヘリコプタ-を念頭に置いたものでは有るが、価格的には競合出来ず生産コストの安い中国での生産に踏み切った。中国でのコストが幾らに成るのか、その低コストを利用して日本を含む海外市場でも販売するかは現段階では未定。但し、日本には悪い話ではない。

(3)  尚上記の市場シェア-は2012~21年の10年間でピストン単発ヘリコプタ-の生産/販売予測の5,803機を加算した母数で算出。ピストン単発ではRobinson社は既に市場の85~90%を抑えほぼ独占的供給者。対抗馬のEnstrom社は中国に買収された。

 

デマンドサイドの考察

 a.競合交通手段で最も高い利用料は地上タクシ-で\330/㎞。

b.ヘリコプタ-は1.5~2倍のメリットが有ると言われ\500~700/㎞が限界。

c.これを短距離(片道25~50㎞)短時間(往復で15~30分)利用する。

d.緩衝剤(Sweetner) は利用客数による頭割コストの低減と人件費コスト節減メリット。

 

ヘリコプタ-利用による時間節減の人件費節減額への換算

       ヘリコプタ-利用料\500/㎞、100,000/時の場合

往復50㎞(片道25㎞)

利用時間15

往復100㎞(片道50㎞)

利用時間30

利用者1

\25,000/人

\50,000/人

利用者2

12,500/人

25,000/人

利用者3

8,333/人

16,670/人

利用者4

6,250/人

12,500/人

利用者5

5,000/人

10,000/人

利用者人件費\10~50,000//人の人件費節減額

往復1時間節減

往復2時間節減

往復3時間節減

利用者1

\10~50,000

\20~100,000

\30~150,000

利用者2

20~100,000

40~200,000

60~300,000

利用者3

30~150,000

60~300,000

90~450,000

利用者4

40~200,000

80~400,000

120~600,000

利用者5

50~250,000

100~500,000

150~750,000

 

  利用料-人件費1万円/時)節減額 = 費用対効果額(50100㎞往復1時間節減)

             往復50㎞            往復100

 

利用料

節減額

差引収支

利用料

節減額

差引収支

利用者1

¥25,000

¥10,000

\15,000

\50,000

\20,000

30,000

利用者2

12,500

20,000

(\7,500)

25,000

40,000

(15,000)

利用者3

8,340

30,000

(21,660)

16,700

60,000

(43,300)

利用者4

6,250

40,000

(33,750)

12,500

80,000

(67,500)

利用者5

5,000

50,000

(45,000)

10,000

100,000

(90,000)

 

代表的企業人件費

                        東洋経済 会社四季報 2014年春号

企 業 名

東京電力

東京ガス

KDDI

日本テレビ

ソフトバンク

売 上 高

5,976 10億円

1,916

3,662

326

3,378

ネット益

-685 10億円

102

241

25

289

総コスト

6,661 10億円

1,814

3,421

301

3,089

従業員数

46.874人

17,179

27,172

3,259

24,598

1人当りコスト

142,104千円

105,594

125,902

92,360

125,579

就業時間/年

2,000

2,000

2,000

2,000

2,000

コスト 時/人

\71,052

52,797

62,951

46,180

62,790

 

  • 人件費と言うと通常、時間給、年収を頭に思い浮かべるがこれは「氷山の一角」
  •   直接費用としては旅費、庶務費、会議費、接待費、広告宣伝費等が有る。
  •  更に福利厚生費、企業側年金拠出金、財形貯蓄補助費等様々な形態の補助が有る。
  •   間接費の典型は経営管理費で大手企業では直間比率30~40%の処が多い。
  •   資金調達コストは配当、社債を含む借入金コスト等、相当額に上る。
  •   製造業の場合は設備コストの償却、更には設備更新、旧設備の廃棄コストが有る。
  •  原発の停止で操業停止コスト、廃棄・賠償コストは天文学的な数値と成ろう。
  •  これら全てを従業員数で割ったものが従業員1人当りの真の企業人件費コスト。
  •  実際には、職位による年収格差、各種経費の割り掛けを算出して居る企業もある。
  •  当然の事乍ら、航空機を利用するのは上級職員が多く人件費は企業平均より高い。
  •   先進企業では70~80年頃より実用化。末端に浸透するのに10年以上を要した。
  •   大手企業の90%以上の現業の実務クラス社員は真の人件費を把握出来ていない。
  •   故に、米国ではビジネス機利用の「費用対効果」評価の簡易ソフトを提供している。
  •   日本版では企業の真のコストをインプトするソフトの制度設計をする必要がある。
  •  上場企業の売上高、ネット益、従業員数の公開資料でコストは自動的に算出可能。
  •  ヘリコプタ-の利用料を\150,000/時内に収めれば「費用対効果」は正当化可能。
  • これは、飽く迄緩衝剤(Sweetner)で有り緩衝剤抜きの厳しいコスト計算が必要。
  •  「費用対効果」の辻褄がどうしても合わないギリギリの採算の時緩衝剤を援用する。

 

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