2014年11月14日(金)08時57分

(14-20) ヘリコプタ-の「共同所有・共同運航」

 

要     約 

1.過去20年官民挙げての努力と海外業界団体支援でも日本でビジネス機は普及しない。

2.特に目的とした「ビジネスマンの足」としての「2点間輸送」は見るべき成果がない。

3.豪奢な高級機種を対象にしたが20億円超の機材は20年後民間に1機も存在しない。

4.逆に「特権階層」が利用するこれら高級機種は近隣アジア諸国で1,200~1,500機存在。

5.「階級・所得格差」が相対的に少ない日本故の「胸を張れる」結果で恥じる事は無い。

6.日本には代りに800機以上のビジネス機と目される小型固定翼・回転翼機が存在した。

7.但し、これら低価格帯機材は「ニ流市民」としてその存在も潜在的有用性も無視された。

8.近年、低価格帯ヘリコプタ-も1機100万㌦と象徴的なHeavy Jetの1/50~1/60。

9.それも、世界の3大ヘリメ-カ-Airbus, Bell, Robinson社の三つ巴の開発競争時代・

10.然も3社の機材は既に日本市場では主要な利用機材でもある。

11.それ故に、日本は重要市場として組立、整備、パイロット養成の基盤も整っている。

12.空の足の「国策」の「大量輸送」メリットを活かした商用便との競合は絶対不可能。

13.幾ら頑張っても低価格帯ヘリでも商用機、コミュ-タ-機の運賃の10~20倍には成る。

14.但し、競合地上交通手段のタクシ-料の1.5~2倍程度に収める可能性は出て来た。

15.ヘリコプタ-は地上タクシ-の如く信号待ちや交通渋滞もなく走行速度は4倍。

16.地上タクシ-同様短距離(片道25㎞)、短時間(25~50㎞利用で8~15分)の活用。

17.利用の可否は高コストの企業マンの「真の人件費」平均¥30~50,000/時との兼合い

18.日本のヘリコプタ-利用料は米国の3~7倍。コスト引き下げの余地は充分ある。

19.利用者の「手の届く」地上タクシ-料の1.5~2倍程度の利用料は工夫次第で可能。

20.それには、「ニ流市民」視されているヘリコプタ-に対して「市民権」を認知・付与。

21.特に、ビジネスマンを含む「旅客の2点間輸送」の手段としての「原点回帰」。

22.地上、空の交通手段が高度に発達して居る日本では「補完」手段としてのヘリの活用。

23.それも、「短距離」「短時間」利用の地上タクシ-との「競合」ではなく「補完的利用」。

24.但し、ヘリコプタ-の利用料引き下げの要は「低価格帯機材利用」と「稼働率向上」。

25.「資本集約的産業」である航空機事業での固定費は利用時間に反比例して下がる

26.此処に、「共同所有・共同運航」の決定的な必然性が存在する。

27.航空事業の集約メリットは、グロ-バルアライアンス、コ-ドシェア-等で実証済み。

28.「ビジネスマンの生産性向上のツ-ル」である以上生産性向上の定量的な立証が必要。

29.これには海外で定石のヘリ利用の時間節減を人件費節減に換算「費用対効果」を検証。

30 「共同所有・共同運航」で関係者の「協働」による「点」「線」「面」の立体化が必須。

31.防災、救急医療、「観光立国」「地方創生」、オリンピック開催のニ-ズを下支えする。

32. 過去20年の努力が結実しなかったのは一義的に市場、顧客の参画が無かった為。

33.ビジネス機の定義を「双発タ-ボ機+ジェット機」として小型機、回転翼機を排除。

34.意図はしなかったが、結果的に800機に近いビジネス機の存在意義は見過された。

35. 「双発タ-ボ機+ジェット機」の利用料が商用機の50~100倍である事も看過した。

36.結果的に利用者は外国ビジネス機訪問客の日本国内移動とVIP等の「特権階層」のみ。

37. 日本の最大の強味の「協働」によるチ-ムワ-ク、コンセンサス醸成も発揮出来ず。

38.サプライ・デマンドサイドの「協働」、縦割り組織の弊の除去が残された最後の道。

39.これが日本に残された最後の然し重要な選択肢として業界が「小異を捨て大同に付く」

 

「大義名分」「プロジェクトの目的」

 

何事を成し遂げるにも求心力と成る「大義名分」が明確化され然も「実践」が伴わないと実現化しない。フランスは革命の後「自由・平等・博愛」を、米国は独立以来「宗教・信条・民族・出自」を問わず「自由・平等」に扱う民主主義のソフトパワ-で世界のリ-ダ-と成って居る。日本は明治開国以来、文明開化と自国のアイデンティティ-を守る為「天孫民族」と「富国強兵」の2本立の旗印を掲げた。終戦後、日本神話は否定され平和憲法が施行されたが、「富国」は、80年代のバブルで世界第2位の経済大国に成長する原動力と成った。日本の経済パワ-の最盛期の80年代後半、ワシントンで日本は目標を達成する一方、目標が無くなったので今後は成長の推進力を失い国の衰退が始まると言われたが事実 「失われた四半世紀」に突入した。ビジネス機の導入に就いては高額、豪奢な「ステ-タスシンボル」と言う事では「大義名分」に欠けるので、日本は賢明にこれを避け下記とした。

 

日本ビジネス航空機協会(JBAA-Japan Business Aviation Association)の設立

1.1996年5月設立。三菱商事を除く全ての大手総合商社が結集・参加。

2.トヨタ豊田章一郎会長、大賀ソニ-会長、増田三菱重工社長が顧問就任。

3.同年9月JCAB (国交省航空局) が成田空港でビジネス機の離発着枠3枠/日を認可。

4.成田、羽田の首都圏空港の外国機への開放が課題で、東京都のNPOとして認可。

5.定款に謳われた目的は下記だがこれが今日に至る迄の「大義名分」「錦の御旗」。

「国際的なビジネス航空機構の一員として、世界の同種団体との緊密なる国際協力の下、ビジネス航空の更なる安全かつ運航の為、我が国の一層の行政改革と規制緩和を求める提言活動を行い、一般市民がビジネス航空を利用する事により、もって我が国の経済発展、並びに、一般市民への生活向上をもたらす社会貢献に資する。」

6.中国及び近隣アジア諸国は急速にビジネス機の保有数を増しているが「特権階層」用。

7日本は当初より超富裕層、セレブ、VIPの「特権階層」以外の一般市民への普及が目標。.

8.設立時既に日本には低価格帯の小型機・回転翼機のビジネス機が800機近く存在した。

9.既存ビジネス機所有者、運航業者の大半は高額の機材等大手企業の「遊び」と不参加。

10.他方、JBAAの設立は海外の要請によるもので、当初より海外の業界団体と提携。

11.従って、定款でも海外の同種業界団体との交流・連携はJBAAの主要活動と規定。

12. 海外の関連諸団体はビジネス機を「企業の生産性向上のビジネスツ-ル」と定義。

13. ビジネス機を利用する事で業務効率化による「生産性向上」が基本的な目的。

14. 海外ビジネス機の受入れは首都圏空港の開放、法整備等で2013年度に粗方達成。

15. 大義名分は整って居り、国交省、東京都、関連企業、海外関連諸団体も広く支援。

16. 以上の「大義名分」はJBAA設立約19年後の今日も変りない。

17.但し、本サイトで指摘して居る様にコスト的に「旅客2点間輸送」に利用されない。

18.「原点に戻り」一般ビジネスマン或いは市民への普及を図るのが本サイトの主目的。

 

ビジネス機普及に資する各種業界団体

1.JBAAは海外のビジネス機メ-カ-及び所属団体の強い要請と支援で設立された。

2.日本側の発起人企業も海外のビジネス機代理店の大手商社の航空機部門が中心。

3.従って、海外の業界諸団体との連携の絆は今日でも堅い。

4.JBAAはNBAA (全米ビジネス航空協会)とは相互乗り入れの会員と成っている。

5.NBAAにはビジネス機関連企業、個人が8,000人以上参加している。

6.年次総会として開催されるConventionには26,000人を越える参加者が居る。

7.ICAOの下部組織でNBAAの上部組織のIBAC にはJBAAも2001年に入会。

8.EBAA (欧州)、NBAAの年次総会に併せた理事会にはJBAAも欠かさず出席。

9.AsBAAは今では中国のビジネス航空協会だが、元は日本が共同発起人でもあった。

10.   AsBAA (Asian Business Aviation Association)の名の通りアジア15ヶ国の団体。

11現在はNBAA/AsBAA協賛のABACEがアジア最大のビジネス機関連のイベント。.

12.日本からも多くの業界関連参加者が居るが次回は2015年4月14~16日上海で開催。

13世界最高級ビジネス機メ-カ-Gulfstream社は1989年より対日市場開拓に着手。

14.日本ではJBAA設立遥か以前より各種業界団体が存在、低価格帯小型機を運航。

15.組織内に小型機やヘリコプタ-部会を有する全日本航空事業連合会も存在する。

16.全航連2013年統計で「旅客の2点間輸送」は小型固定翼機3時/年ヘリ10時間/年。

17.ヘリだけでも日本ヘリコプタ-協会、日本ヘリコプタ-事業促進協議会等が有る。

18.日本航空協会、航空振興財団、日本航空宇宙工業会、日本航空技術協会も存在する。

19.国政レベルでは自民党、民主党のビジネス機促進議員連盟が存在する。

20.全国地域航空システム推進協議会は全国の都道府県知事が正メンバ-。

21.これと並行して全国民間空港関係市町村協議会、各空港の事業促進機構が存在する。

22.これだけの20年以上の官民挙げての努力と海外業界支援でも見るべき実績は無い。

23.全航連の統計で小型固定翼機・固定翼機の利用は有るが合計13時間/年弱と「論外」。

24.「日本の常識は世界の非常識」「ガラパゴス症候群」の象徴で世界と隔絶した現象。

25.「木を見て森を見ず」で各組織の個別、縦割り努力では具体的な成果は生まれない。

26.「結果が全て」。国際的、全国的な大規模な組織的活動より「足元の実践」に着手。

27.規模は小さくとも全国的展開にも繋げる機材の「共同所有・運航」を先ず手掛ける。

28.最初の段階は関東経済圏内で一般の「手の届く」Yellow Cab運航に着手順次拡大。

 

一般的な「大義名分」 

1.緊急災害時での利用。警察、消防、人命救助等広く利用されて来た。

2.但し、官公庁、自治体の利用は「公用」でビジネス機の範疇外。

3.東日本大震災で米軍が空母を派遣ヘリで救援活動をしたがこれも軍の介入で範疇外。

4.天皇陛下、菅首相も現地見舞いにヘリを利用。これは公用機でビジネス機の範疇外。

5.企業関係者の現地訪問、救援物資・原材料・部品の輸送に使ったヘリはビジネス機。

6.人命救助も自治体所有機か民間運航会社所有機の利用かで線引きは難しい。

7.典型的な事例ではドクタ-ヘリも自治体所有機は厳密にはビジネス機ではなく成る。

8.離島への旅客輸送もコミュ-タ-機(商用機)と民間運航会社間の線引きは難しい。

9.伊豆7島のコミュ-タ-便会社東邦航空は八丈島-青ヶ島、三宅島-御蔵島も結ぶ。

10.これ以外の多様なニ-ズは民間運航会社のAir Taxiでも充分補完し得る輸送業務。

11.直ちに利用可能なのは空港迄の送迎で欧米ではAir Taxiが現実に多数使われる。

12.地方の交通の便の比較的悪い地域の横から横の「2点間移動」のニ-ズもある。

13.「大義名分」は「共有機構」による柔軟・弾力的機材の相互融通によるコスト合理化

14.一般の企業社員の「手の届く」利用料提供は協働利用での機材の稼働率アップが鍵。

15.米国ビジネス協会も “No Plane, No Gain”とビジネス機による生産性向上を強調。

16.これのバックアップ資料として著名調査機関の調査資料も存在する。

17.日本で、欠如して居るのは建て前の「大義名分」と「現実・実行」が乖離して居る事。18.如何に立派な「大義名分」が有っても「実践」無くしては内外の評価は得られない。

 

「共有機構」の大まかなイメ-ジ

 

目  的

「固定費負担の大きい航空運送事業において、小規模地域航空会社の経営は高コスト構造である。設備投資面で連携を強化することで、固定費比率を低減、経営の改善を図る事が重要である」「我が国に置いても、複数の地域や行政が連携し、保有機材の稼働率を上げ収益を増加させる様な、自由度のある仕組みを創設することが求められる。」 (地域航空の問題解決への共同保有機構の提案‐三菱総合研究所2007年の提言論文)

 

上記提言は航空規制緩和による参入・撤退の自由化により地方航空路線は減便・廃止傾向、地方財政逼迫による自治体の補填策の限界、シ-ムレスアジア実現の為の多様なネットワ-ク構築のニ-ズ等様々な要因が重なり合っているが、回転翼機のビジネスマンの「2点間移動の足」としての喫緊のニ-ズを充足するには;

(1)低価格帯でも航空機事業は資本集約的産業で集約による合理化の余地は大きい。

(2)低価格帯でも一般が利用するにはコストが高く大幅なコスト低減が求められる。

(3)日本は高コスト体質と片付けず、欧米の利用コストに近付ける努力が必要。

(4)コスト高なのは「規制コスト」と言われるが「既得権擁護コスト」の側面もある

(5)共同所有・運航で一般が利用可能な運賃提供とコスト合理化は避けられない。

(6)地方の横から横の移動は難しく、鉄道・バスも路線廃止の危機に直面している。

(7)地方創生の為、又一般の足を確保する為、回転翼機の補完的な交通手段が必要。

(8)共同所有・運航にはサプライ/デマンドサイド両者のインプットと参画が不可欠。

「叩き台」としてのラフなイメ-ジ

1.分かり易く、仮に1機1億円の機材を200機所有すると仮定。所要購入資金200億円。

2.運転資金100億円として総所要資金300億円。100億円は資本金、200億円は借入金。

3.借入金は主としてリ-スファイナンス。200億円は商用機1機よりも多少多い程度。

4.100億円の資本金は1社で賄えるが最も肝心な点は出来るだけ広く浅く分散する事。

5.金額の多寡では無く一株500万円で2,000株、これを出来るだけ多くの株主に分ける。

6.大手株主は機材、リ-ス・金融機関、運航・整備会社、保険会社等直接的な受益企業。

7.自治体、地域の事業会社等の受益者。地方工場、研究施設、事業所を有する利用企業。

8.投資目当ての地方の資産家、一般投資家等。株主優遇制度提供で魅力を付ける。

9.要は集金が目的では無く多様・多岐の株主を集め、参画意識と多様なニ-ズを糾合。

10.株主には地域貢献、利用者への便宜性の提供、生産性向上に資する矜持を持たせる。

11.「適正な投資リタ-ン」を享受し乍ら社会貢献、連帯感共有の内的満足感を充足。

12.機材の共有、柔軟な融通・運航により稼働率採算分岐点の1機年間300時間/年利用。

13.民間企業に限定せず、各自治体も機材を共有する事で稼働率を上げコストを合理化。

14.災害時等の広域利用、人命救助、救急医療で自治体・民間の「協働」は既にある。

15.将来一部消防、警察、海上保安庁への補完的な機材の緊急融通等の仕組みも視野に。

16.災害発生による一時的な需要の急増、オリンピックの様なイベント開催も同様。

17.観光立国も季節的要因で需給の変動が大きく柔軟な対応で機材の稼働率向上を図る

18.当初の目的であるビジネスマンの「2点間輸送」に結び付け宿年の夢を実現化する。

19.観光の「遊覧飛行」は現存し、選挙時期の政治家の流用も一部では慣行化して居る。

20.地方出張でタクシ-の利用状況を精査すればヘリ利用料金の限界も推測特定可能。

21.地方の代表的企業、工場・研究施設・配送センタ-・店舗よりニ-ズを汲み上げる。

22.このデマンドサイドのニ-ズと現実的な利用に関わるコストのマッチングが必要。

23.デマンドサイドの「手の届かない」利用料を幾ら提示しても利用者は現れない。

24.逆に、サプライサイドに無理な皺寄せを強いれば、肝心な安全性問題に影響が出る。

25.サプライ/デマンドサイドのニ-ズを満たせるオプチマムポイントの模索が不可欠。

26.これには関係者全員参画の踏み込んだ、計画的・組織的なFeasibility Studyを実施。

27.ワ-カブルな一致点の溝を埋める緩衝剤 (Sweetner) の用意も為されている。

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