2014年02月04日（火）12時47分

（14-03）Ｎextant G90XT

オハイオ州クリ－ランドに本拠を置くNextant Aerospace社は旧式のタ－ボ機を改良、低価格帯のビジネス機の需要に応える為、性能はビジネス機としての使用に堪えるアップグレ－ドを施して販売する為のベンチャ－企業として2007年に発足した。
長引く世界的経済低迷の中で市場は20百万㌦以上の上位機種を購入する富裕層や「特権階層」と1~4百万㌦の低価格帯機材を望む市場の2極分化が鮮明と成り、昨年5月EBACEでも熱い論議が交わされた。
その前後に、Nextant, GE, Garminの3社が2~3百万㌦の低価格帯機材の”Sweet Spot”を狙い撃ちする新機種開発で合意し、Beechjet 400A/XPを改良したNextant 400XTを競合同性能機種の半値で販売すると発表して業界に衝撃を与えた。
今回は世界で1,412機利用されているBeech C90にGEが開発した新型エンジンとGarmin 1000のGPS対応機器を備えた改良機でBeech社の Beech C90GTxのリストプライス3.8百万㌦を1.5百万㌦下回る2.3百万㌦に価格設定した。
巡航速度は500㎞/時、航続距離は2,400㎞、乗客数11人。更なる詳細は、本年5月のEBACEで明かにされる。

Nextantは昨年のEBACEでNextantXT/iのビジネス機を4.9百万㌦で発売開始したが、2013年中に13機の受渡しを完了、更に24機を新規受注した。
以上の様に最近の業界エピソ－ドを紹介したが、深層の底流はNextant AerospaceはKenneth Ricchiが創業、同氏が経営するDirectional Aviation Capitalが所有しているが、Directional Aviation Capital社は昨年末Bombardier社の傘下のFractional Ownership運営会社Flexjetを195百万㌦で買収した。
Kenneth RicchiはRaytheon社傘下のFlight Option社とビジネス機利用用のプリペイドカ－ドSentinentの所有者でもある。
意味する事は、長引くビジネス機業界の不況の中でTextron社がFlexjet/Flight Optionの統合を果し、Beechcraft社を14憶㌦で昨年12月に買収、回転翼機メ－カの大手Bell社も傘下に収めている。
又、昨年のEBACEで発表されたNextantXT/iの購入先はFlight Optionである。
つまり、低価格帯ビジネス機の惨憺たる大不況を逆手に取り、風雲児Kenneth Ricchiが仕掛けた統合劇である。
戦国、群雄割拠の時代、各地の大名が地域を統一した様に、ビジネス機はNetjetsの創始者Richard Santuliと同様,名も無き風雲児により舞台転換が進められている。
日本のビジネス機市場開発にも思い切った発想の転換が求められる。
尚、Textron社はFlight Option+Flexjet, Sentinent, Beachcraft, Bell, Nextant Aerospaceを今後統合する意思はなく、夫々の特色を活かした個別運営に任せると明言しているが、賢明な選択である。
日本も横割りの「協働」は求められるが、過度の統制は控えるべきである。

尚、（14-01）013年末のトピックス4題とレポ－ト(14-01) 末尾の国内での小型固定翼機利用の限界の記載と併せて参照されたい。

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