2014年03月28日(金)03時16分

(14-09) Cessna社と Beechcraft社との統合

Cessna社の親会社であるTextron社は経営破綻し一旦中国資本、更にカナダに身売りしたBeechcraft社を昨年12月26日買収する事で合意した事は本サイトのトピックスでも取り上げたが、買収手続は本年夏と見られていた処、3月14日14億㌦での買収が完了し両社はTextron Aviationとして新規発足する事が発表された。リ-マンショック後の経済低迷で、ビジネス機業界は1930年代の「大不況」以来の深刻な不況に見舞われた。

現実は、世界的な経済低迷の中で富裕層はそれ程の影響を受けず、産油国や中国等の新興富裕層がビジネス機の上位機種を買い捲った為、上位機種メ-カ-のGulfstream社、Bombardier社はそれ程のダメ-ジを受けず、中低位のCessana,Beechcraft 社が大きな打撃を受けた。特にHawker-Beechcraft社は経営破綻、Hawkerのビジネスジェット機の生産より撤退、伝統的なBeechcraft社のタ-ボ機の生産に集中する事と成った。Cessna社のジェット機との補完的なシナジ-効果は夙に指摘されていたがこれが実現した。当面、経営はTextron Aviationとして統合されるが、Cessna, Beechのブランドや営業は従来通り独立して進められると言われる。但し、今回の統合で、新会社のTextron AviationのCEOにはCessna社の社長が就任、Beechcraft社のCEOは退職。新会社の副社長14人の内11人はCessna社出身。Beechcrft社は事実上Cessna社に吸収合併されたと見られている。GAMA (General Aviation Manufacturers Association) のビジネス機の出荷実績を見れば如何にリ-マンショックのインパクトが業界に打撃を与えたか一目瞭然。

 

会社名

2008

2009

2010

2011

2012

2013

08年比

Gulfstream

156機

94

99

99

94

144

-8.7%

Bombardier

245

173

150

182

179

180

-23.7

Cessna

466

289

178

183

181

139

-70.2

Beechcraft

172

119

90

92

89

135

-21.6

 

Gulfstream社は機数は落ち込んだが、最上位機種が売れて居り、販売額には影響が無く、Bombardier社もGulfstream社には及ばなくても打撃は軽い。逆にCessna,Beechcraft 両社は経営基盤を揺るがす大きなインパクトを受けた。CessnaはそれでもTextronと言う支えが有ったがBeechcraftの2012年の出荷機数は2008年の半分と最早自立不可能な状態に陥入った。上記のコントラストは企業間の体質の強弱以上に、ビジネス機は矢張り富裕層、セレブ、VIPの「特権階層」の持物と、ビジネス機業界が必死に擁護して来た「一般ビジネスマンの経営ツ-ル」との論理矛盾が表面化し、オバマ大統領自ら富裕層の持物であるビジネス機に課税して予算不足を補う動きを見せた為、NBAA等ビジネス航空協会の最も懼れた悪夢が政治問題化した。幸い日本では上位機種は民間企業では一切所有/運航せず、ビジネス機の圧倒的多数が低価格帯機材なので暴風圏外にあるが「対岸の火」視せず「他山の石と」として今後の対応の糧にすべきである。

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