2014年04月01日(火)09時44分

(14-10) Airbus, Boeing社の受注残

商用機の業界はAirbus,Boeingの2社並立状態が続いて久しい。この寡占市場への参入の試みは様々為されているが、莫大な資本と、部品のサプライチェ-ンを構築し顧客の信頼性と安全性を保証する事は 机上で考える程容易なものではない。この2社体制に挑戦するのはロシアと中国であり、国防上の配慮より、国策として最優先に育成して来た。世界市場を抑える事は無理としても現に国産機の生産計画を着々と進めている。大型商用機以外に、100人前後の中型商用機のリ-ジョナルジェット機の生産はカナダのBombardier社、ブラジルのEmbraer社が実際に行っている。ロシア、中国もこの分野への進出を進めている。日本は三菱重工がYS-11の生産を打ち切り、米国でMRJの生産を行う事でFAAの型式証明を取る最終段階に入って居る事は広く知られている。その一方、大型商用機の日本での国産は、商業ベ-スに乗せるには市場規模が小さく、日米間の軍事・貿易摩擦回避の観点よりも、日米合同での新機開発が90年代後半に本決まりと成り、Boeing 787として結実、ANA,JALがラウンチカストマ-として商業化に漕ぎ付けた。787の35%の部品がが日本企業より供給されているが、主翼のコンポジット材料より、一体成型の座席、ユニット厨房・トイレ迄幅広い部品が供給されている。自動車工業同様、航空産業は組立産業故に質の高い部品供給が航空機の信頼性と安全性確保に不可欠で日米の持つ夫々の利点のシナジ-効果が良く発揮されている。無論、質の高い部品はAirbus, Bombardier社にも供給されている。ミネベア等世界の航空機が利用するベアリングの6割を抑える企業もある。

話を本題に戻し、昨年のパリ-、ドバイ、本年2月のシンガポ-ルのエアショ-等で大型商用機の大量成約が報じられ、昨年JALがAirbus機を発注、今月ANAがリスト価格で1兆7千億円計70機の機材を「纏め買い」した事がマスコミの話題を呼んだ。然も、Airbus機30機が発註され、Boeing社の「金城湯池」の日本市場の半ば瓦解したとか、Boeing社の必死の巻き返しで、1,700億円の内1,300億円はBoeing社が抑え面子を保ったとも報じられる。処で、気に成るのはこの様な大型成約で両社の受注残 (Backlog) はどの程度で世界経済の先行きに多くの懸念材料がある中でこれをどの様に見るべきか話題を提供している。最近の業界誌によれば、2013年末のBoeing社の受注残は5,100機、4千億㌦、Airbusの受注残は5,560機、両社共に向う7~8年分の受注残を抱えて居ると報じている。2014年中の受渡予定機数はBoeing社725機、 Airbus社630機。本サイトはビジネス機のサイトでこれ以上両社の「力の均衡」、中長期的な業界へのインパクトを論じる事はしないが、日本が直面している、「ビジネスマンの足」としてのビジネス機の利用の工夫のヒントに就いて最後に纏めて触れる。

(1)「纏め買い」が示唆するのはBoeing, Airbusの熾烈な市場シェア-争いであるが、顧客もそれを見越して機材購入のデイスカウントを引き出している。ANAも10年分の購入機材をコミットする代りに、業界が通常期待する4割以上の値引きにBoeingが応じたのではないかと憶測されている。不況に喘ぐビジネス機業界ではFractional Ownershipの運営企業NetJets等は20年位前からGulfstream社,Bombardier社等より200機以上の「纏め買い」で大幅なデイスカウントを引き出し利益の源泉としている。最近は、航空機のリ-ス会社も「纏め買い」して機材を顧客にリ-スする「金融派生商品」を提供している。

(2)日本のビジネス機市場も、もし「ビジネスマンの足」或いは「旅客の2点間輸送」の市場を開発するのであれば機材価格も1億円前後に抑えざるを得ない。世界の「特権階層」が100億円以上するBoeing, Airbusのビジネス機を買い捲る折に、1億円程度の機材をバラ買いしても相手にもされない。更に、個人・企業のニ-ズや嗜好で機材を選んでも運航・保守・修繕のコストが割高と成る。機種を絞り運航・保守・修繕等の業務を集約化せざるを得ない。機材を個人、企業、自治体等が個々ばらばらに所有・運航・保守するのではなく共同保有機構が一括購入、機材のリ-ス、運航業者への運航受託、保守・修繕、パイロットの養成・訓練を機材メ-カ-にアウトソ-シングする等「集約と分業」の「適切な役割分担」が必須と成る。

(3)この様な提案は本サイトでも順次提案するが、その「伏線」として上記のトッピクスを提供した。

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