2014年06月30日(月)11時29分

(14-17) 米国のULCC (Ultra-Low Cost Carrier)

 

LCC(格安航空)は世界の先進国で最も遅れた日本も導入、未だ市場占有率は諸外国に較べ格段に低い。日本がLCCの定着に苦慮して居る間、米国は早くも ULCC (超格安航空)が育ち始めている。国土が広く、鉄道を含む公共交通機関が日本に較べ格段に劣る米国と日本を比較する事は必ずしも適切ではないが、日本の参考と成る側面もありトピックスとして取り上げた。今話題と成って居るのは、Allegiant Air とSpirit Airlinesで共に超格安運賃を提供し乍ら業界誌のAviation Weekが2013年度のTop-Performing Airlinesのトップに選んだ。如何にして「超格安運賃」を提供し乍ら居並ぶ航空会社を尻目に収益面でも確り稼いでいるのかと言う一見「二律背反」的要因を乗り越えている点に注目が集まっている。先ず、世界の航空市場で大きく成長したLCCのビジネスモデルを思い起す必要がある。下表の上段 1. は伝統的な航空会社( Legacy Carrier) 中段 2.は格安航空会社 (LCC)、更に参考として下段3.にビジネス機の参考事項を付した。

 

運 航 航 路

1.中/遠距離の幹線航路を「大量輸送」によるコスト競争力で強味を発揮。象徴的モデルは湾岸航空会社が潤沢な余剰資金でAirbus A-380のジャンボ機を一括大量購入し、本来高価な機材を割安価格で購入、産油国としての割安の燃料費を武器に幹線「2点間輸送」で市場シェア-を大きく伸している。

2.短距離を「2点間輸送」で頻繁に往復する事で機材の稼働率を上げ「資本集約的事業」である航空業の間隙を突いている。

3.此処2~3年、(ステ-タスシンボル)として高かろう良かろうと金に糸目を付けず最高機種を買い漁る超富裕層、産油国、中国・アジアの特権階層とビジネス機とは全く無縁の一般利用者の2極に分化。前者はUltr-Long Distanceの最高額機材に人気沸騰、後者は低格帯機材を短時間、短距離利用する工夫をすると言う対極の進展が見られる。

利 用 機 材

1.伝統的な商用機価格は150億円程度だが1括纏め買いによる大幅なデイスカウントを得ている。JAL,ANAもBoeing社一辺倒からAirbusからの複数購買と長期纏め買いで業界の常識と成っている 4割前後のデイスカウントを得たと報じられている。この結果、Airbus, Boeingは大量の受注残を抱えバブル崩壊の懸念も囁かれている。

2.就航航路が比較的短距離、然も「2点間輸送」で機材の稼働率向上が至上命令でそれに適した機材を発注。航空機は保守・整備コストが嵩み、パイロットも機種毎に養成する必要があり、機種は最低限に絞り、1機種に絞り込む時例も見られる。

3. 60~70億円するビジネス機の最高機種に加え、商用機をビジネス機仕様に改装した機種も出回っている。極め付けは商用機の最高機種Airbus A-380をドバイの首長がビジネス機として360億円で購入したと噂される。低価格帯機材は2~5億円の機材開発が進み、ヘリコプタ-は1億円を挟む攻防戦が激化。日本は伝統的に0.3~2.5億円のビジネス機が大半。極端な2極分化が見られる。

利 用 時 間

1.伝統的な航空会社は全てのニ-ズに対応。コスト競争力強化の為Hab-and-Spokes制を導入,ハブ空港での乗継ぎの不便さの虚をLCCに突かれ、二次空港を利用した2点間輸送のLCCに市場を奪われたが、中/遠距離では飛行時間も長く「大量輸送」によるコスト格差の利点が活かされている。

2.最近は、LCCも中距離輸送に乗出したが、短距離、短時間利用で本領が発揮される。

3.金に糸目を付けない「特権階層」は長時間飛行には快適性を求めスペ-スに裕りがあり、横に成るベットや豪奢な内装を好む。対極は短距離、短時間で利用費用を抑える。米国ビジネスマンの平均往復利用時間は1.8時間/回。日本では遊覧飛行で平均12分。6分、3分の分刻みの利用でコストを抑えても利用は限定的。

利 用 空 港

1.伝統的な航空会社は主要空港の離発着枠の「既得権」を有し、コ-ドシェアリングでアライアンスメンバ-同志の相互融通が行われる。

2.主要空港の離発着枠やそれ以前の問題として空港タ-ミナル内のゲ-ト権の獲得も儘ならない。更に、主要空港の利用料が高い為主要空港完成で寂れた旧空港や周辺二次的空港を利用。利用料が安い上、最大のメリットは混雑が少なく、離発着での滑走路待ちによる時間のロス回避や定時の離発着が出来る事。

3.ビジネス機利用者の最も嫌う事は空港での混雑でチェックイン、セキュ-リテイ-、入出国審査、空港内移動、更には滑走路の混雑による離発着待ち。玄関口の主要空港より周辺2次空港の利用が圧倒的。日本では何故か首都圏の二次空港である茨城空港の利用は国交省、識者の示唆にも関わらず検討されない。交通の便もあるが、海外ではヘリ等のAir Taxiが利用され、日本でもヘリの利用料が下がれば解決可能な課題。

機内サ-ビス

1.航空会社間の熾烈な競争、LCCの追い上げで「大量輸送」のメリットを維持する為機材の利用率を高める必要性から、エコノミ-の団体客には格安の運賃を提供、高単価のビジネス客は機内サ-ビスの高品質化で運賃低下を抑えバランスを取っている。料金格差の苦情の応え、機内サ-ビスはビジネス機を上回るものに成って来た。

2.短距離、短時間飛行で機内サ-ビスは無くNo Frillが原則。要望で軽食等は有料で提供。荷物の持込み制限は厳しく超過分は追加料金を支払う。LCCの草分けSouthwestは当初より発券は機内、チェックインやゲ-ト維持のコストも合理化。

3.2極化で「特権階層」は特別タ-ミナルで入出国手続を始め全ての顧客への負担、煩しさを極限に軽減。機内サ-ビスは全て実費精算故、青天井のサ-ビス提供が可能。一般企業者の利用は機内に清涼飲料程度は用意。Air Taxiなら地上タクシ-同様短時間利用で機内サ-ビスは不要。

そ の 他

1.伝統的な航空会社は高い給料のパイロット、機内乗務員、大きな組織とオ-バ-ヘッド、それ以上に退職者の年金コスト負担が多く、米国の大手航空会社は例外なく破産裁判所で資本金の減資、借入金の大幅減免、従業員の削減、給与・年金カットの大掛かりな外科手術と統合・合併によるコスト合理化を実施。

2.LCCはこの様な過去の巨額な負の遺産がなく、固定化された観念が無い新興企業故にゼロ発想で自由奔放な創造的、革新的な事業展開が可能であった。

3.金に糸目を付けない「特権階層」はコスト合理化には無縁。日本では機材価格0.3~2.5百万円の機材でさえ「旅客の2点間輸送」に使われず、僅かに遊覧で3~12分の分刻みでの限定的利用。次回のトピックスで地域航空を担うコミュ-タ-機の項で言及するが、地方の横の移動には、利用運賃のコスト合理化工夫は無論必要だが、回転翼機による地上交通手段の補完としてのAir Taxi的利用の可能性は残されている。

ULCC (超格安航空)

本題のULCCは一般利用者の手の届くビジネス機の利用運賃を求める日本のヒントにも成るので商用機・LCC・ビジネス機の解説を行った。ULCCはLCCより派生したが、LCCが商用便の虚を突いたと同様、ULCCもLCCの虚を突いたと言える。

1.ULCCが対象とするのはレジャ-客で拠点はバケ-ション訪問先。顧客の対象を地方の低収入層対象のレジャ-ツア-と言う非常に限定された顧客層に絞った。

2.従って拠点はDisneyが有るOrlando, Los Angelesに加え Las Vegas Honolulu等。

3.レジャ-客の大半は日本人が聞いた事もない無名都市の低所得者層。

4.即ち、名もない都市から人気のバケ-ションランドに2点間の直行サ-ビスを提供。

5.季節による需給変動を勘定に入れオフシ-ズンは運航路線を変更・休航する柔軟性。

6.この為、機材は中古機を含め低価格を維持、季節的な運航コスト変動を吸収する。

7.51機の商用機MD-60 (リスト価格41~49億円)の中古機を1機3億円で調達。

8.150人輸送の商用機を超低価格で調達然も商用機の「大量輸送」のメリットも併用。

9.LCCモデルを採り入れ乍ら大企業化した既存のLCCより安い利用料を提供。

10.機内サ-ビス皆無。機内持込み荷物も料金徴収。実費徴収サ-ビス料が収入の1/3.

11.結果として、成長率、収益力、顧客満足度等の総合点で既存LCC企業さえも凌駕。

12.最大の貢献は、既存市場のシェア-を奪わず市場の底辺の需要を喚起パイを拡大。

13.航空機のレジャ-利用はビジネス機定義より外れるが観光輸送は立派な営利事業。

14.日本の地方の横の移動は予想外に不便。観光立国やオリンピック招致の準備も必要

15.日本は山岳が多く、6,800以上の島嶼を空港、橋梁、海底トンネルでは繋げない。

16.低価格帯機材に創造的な発想と工夫を加え一般利用者が「手の届く」利用料の提供

17.結果として一般企業マンと内外観光客の足を提供未開発市場の開拓と地域活性化。

18.日本は1,000機余の低価格帯ジェネアビ機を有しその有効活用が本サイトの目的。

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