2014年11月17日(月)03時03分
(14-27) 中国関連トピックス2題
2030年迄に航空機利用客数は中国が米国を抜き世界一位に
IATAが最近発表した20年予測では;
(1) 中国の航空機利用客は年率5.5%で伸びているが、米国は3.2%/年。2030年迄に中国の利用客は13億人に達し米国を抜いて世界最大の市場と成る。米中2ヶ国は他の市場より「抜きん出た市場-”by a wide margin”」と成る。
(2) 2031年にはインドが英国を抜き世界第3位に浮上する。
(3)アジア・大洋州は地域的に年率4.9%と最も高い成長が期待される。日本は1.3%/年。
(4)逆に最も成長が鈍いのは欧州でドイツ、フランス、スペインは特に成長が鈍化。
(5)無論成熟国は成長率換算母数が大きく途上国は母数が小さいから当然の結果。
(6)国内需要の成長が期待される国はBrazil, Colombia, Mexico, Philippines, Turkey, Vietnam. 最も高い成長率が期待されるのはIndonesia-East Timorの15%/年。
(7)中東の伸びはアジア・大洋州に次ぐ。中南米、アフリカは夫々4.7%/年。
(8)世界全体の航空機利用客数は20年間で現在の2倍の73億人に達する。
(9)IATAが最も強調したかったのは各国が「空の開放」とインフラ整備を着実に実施。
(10)特に強調したのは「空港なくして航空機は飛ばない」と途上国を意識した指摘。
以上の如き市場予測は航空機業界だけでなく凡る分野で並行的に行われるが下記に留意。
(1) 斯かる予測は特定の成長率が右肩りで20年先迄継続する事が前提。
(2) 様々な要因でこの様なリニア思考は現実と乖離する。中国も将来20年間安定成長を続けるか、その間政治・経済の大きな変革が有るか予測出来ないが、大きな「谷」を予知する各種予見も巷に氾濫している。
(3) 石油危機が一段落、逆に供給過剰で石油価格が低落した折に、各種一流の国際機関、各国政府、エネルギ-関連業界、調査機関等の予測と市場の実際の推移を比較したレポ-トが出されたが、僅か5年間さえも適確な予想をした先はなく、殆ど全てが大きく的を外した。
(4) 最近では「シェ-ルオイル革命」が叫ばれ石油価格も大きく下り特に米国の天然ガスの価格は2008年6月の$13.3百万BTUが2012年3月には$2百万BTUを割ったが、原油換算$24/バ-レルに相当する。一方原油価格は6月のWTI先物価格$107/バ-レルが$80を割りシェ-ルオイルは採算割れの事業も増え投資をした某日本商社は巨額な投資損失計上を強いられる一方、エネルギ-価格の変動に備えた日本の原発は殆どが停止、足元を見られて高い天然ガス、石油を掴まされた日本は需要の増加、高い原料、国策の安い円のトリプルパンチで貿易収支は記録的な赤字が続いている。原発停止を訴える環境保護支持派は「地球温暖化防止」の切り札であった原発の有用性にに就いては、その後口を閉して一切触れる事は無い。
(5) 以上を本サイトのテ-マである「ビジネス航空」に引直すと「木を見て森を見ざる」と各種要因が夫々相互に関連して居る事の広い視野と総合的判断が欠除。それ以上にこの種長期的予測は「天気予報」の如く当然参考にはするが「予側精度」も念頭に置く。ビジネスではPlan(企画・立案)→Do (実行)→Check(検証)→Action(手直し)のサイクルを不断に廻す基本動作をTQC運動で植え付け、今日の日本経済の基礎体力を育成した。「ビジネス航空」の日本での一般普及もこのプロセスを意図的に看過して来た故に、20年の官民挙げての努力も全く実って居ない。近代医学は「早期発見・早期予防」。計画と市場の乖離の予兆が見えた時点で次々とファインチュ-ニングで航路を外さぬ様努める事が関連業界の航空機運航の基礎中の基礎。
(6) 「空に国境なし」。グロ-バルな市場、特にアジア・大洋州は最大の成長市場。日本のチャンス。日本の「主権国家」としての「排他的水域」等を云々する狭窄的視野に捉われず、大きなグロ-バル市場で雄飛すれば良い。「観光立国」も出番。Boeing, Airbus社も日本の機材に大きく依存、インフラ構築は日本の新興国での経済支援の格好の材料。前向きに受け止めれば日本には最良のビジネチャンスが到来する。
(7) 但し、本稿の日本の国内のビジネス機の「成長戦略」としては、これも絶好のチャンスの「低価格帯ヘリコプタ-」の世界3大メ-カ-の開発競争の機会を捉え、「共同所有・共同運航」でのAir Taxiの育成で「地方創生」「観光立国」、更には防災、緊急医療等幅広い領域での利用を考案・工夫すれば宿願のヘリコプタ-の一般利用も現実のものと成り得る。
中国でのヘリコプタ-市場開発のトピックス
(1) 中国は2013年末よりAirbus社のEC-120を現地企業との合弁で生産開始。
150機の中国側の確定発注が合弁の前提条件でこれは中国側が履行済み。
(2) 米国Enstrom社を買収、本年より中国仕様の機材を中国が米国より輸入開始。
(3) 10月中旬、中国のBeijing Automotive Industrial Corp (BAIC) がAgusta- Westland 社の各種機材50機を纏めて発注。Agusta-Westland社は同社のヘリコプタ-60機の中国への過去の納入実績も強調。
(4) 中国のSTAR AEROはBell社が Heli-Expo 2014に出展し話題を呼んだBell 505 Jet Ranger X 3機を4月に発註している。
(5) Robinson社は年初に中国を重要市場と位置付け重点的に市場開発に乗り出した。
(6) これらは、2015年の中国の民間による低空域利用の抜本的な見直しと空域開放を見据えた動き。
(7) 本年末で中国のヘリコプタ‐所有機数は日本に追い付き2015年には追い抜こう。
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