2015年08月17日(月)11時52分

(15-09) 米国に於けるAir Taxi,EMS等人員輸送の利用状況

 

 

要   約 

 

1.日本のビジネス機は一部の「特権階層」用を除き、低価格機材に集約されて来た。

2.過去四半世紀、日本のビジネス機の大半は0.3~2.5億円範囲の低価格機材で推移。

3.「旅客の2点間輸送」に絞れば低価格帯(0.5~3億円)の回転翼機に絞られる。

4.更に、一般が利用可能な運賃を提供出来る“Yellow Cab” は1機1億円前後の機材。

5.無論、より限られた利用者の「ワンランク」上の上位機材の利用も当然考えられる。

6.公共交通機関の高度展開、「大量輸送」による低コスト運賃との競合は避けられない。

7.この様な、日本の置かれた厳しい環境に就いては本サイトで縷々述べて来た。

8.今回は、多少切り口を替えて、米国に於けるビジネス機の利用実態を描いて見た。

9.無論、広大な大陸国として、公共交通機関を全国に網目の様に発達させる事は出来ない。

10.故に、高速の空運に頼るが、中小規模の空港に定期便が就航するのは1/3程度.

11.それ以外の空港へのアクセスは、自家用機か、ビジネス機の利用に頼るしかない。

12.更に空港より目的地への足としてのオンデマンドAir Taxiの利用も「当り前」の慣行。

13.遊覧も広い地域を限られた時間でカバ-するには航空機の利用が必要。

14.救急医療も遠距離を短時間で医療機関に患者を届けるにはジェット機も援用される。

15.国情が違うので、日本が真似をする合理性に欠ける事例も多いが米国の実情を洗った。

16.公共交通機関が乏しく選択肢が少いとの事由はあるが日本が参考に出来る側面もある

17.日本では見られないAir Taxiは低価格帯回転翼機が市場に出回り始め現実味を帯びた

18.海外客の急増、遊覧、救急医療のコスト合理化には機材の「共同所有・運航」が必要。

19.米国では、1,000機近い回転翼機がAir Taxiとして利用されている。

20.タ-ビン単発と双発機が中心だが日本では低価格帯単発機やピストン機が中心と成ろう。

21相対的に飛行距離や飛行時間が長いが、日本では飛行距離・時間共短かくて済む。

FAA Database 2013年実績                                On Demand FAR Part 135 Use

機 種

総機数

商用利用

救急医療

遊 覧

Air   Taxi

救急医療

遊 覧

ジェット機

11,637

7,179

9

0

2,607

168

0

タ-ボ機

9,619

3,227

19

0

1,452

257

99

ピストン機

137,655

14,859

128

375

2,177

67

185

回転翼機

ピストン

タ-ビン単発

タ-ビン双発

9,765

3,137

5,032

1,596

669

190

292

187

208

0

63

145

131

95

36

0

992

62

596

324

1,054

0

596

456

316

17

296

4

合 計

168,676

25,934

156

506

7,228

1,546

600

  •   ビジネス機の定義を営利事業に供される民間のジェネアビ機とすれば米国で約17万機。
  • lビジネス機の定義のキ-ワ-ドは「民間」「ジェネアビ」「営利事業目的の利用」。
  •   「民間」である以上軍用機、官庁所有機、警察、消防等の ”Para-Public” 機は除外。
  •   自家用機でマイカ-的な個人の所有機は除外しているがこれが133,875機と最も多い。
  •  「ジェネアビビジネス機」は民間機の「商用機」と「コミュ-タ-機」を除いたもの。
  •   レジャ-用の自家用機は除外されるが「遊覧」用の営利目的の航空機は含まれる。
  •   目的と紙面の都合上記載分野は商用、救急医療、遊覧、Air Taxi等人員輸送に絞った。
  •   訓練機は13,401機。物資輸送、測量、空撮等の馴染みの深い用途も当然別途にある。
  •   救急医療、遊覧、Air Taxiに利用された航空機はオンデマンドを入れて9,896機。
  •   約1万機として、ジェネアビ機約17万機の5.9%。

          州別のトップ10位の回転翼機の利用状況

                                              FAA Database 2013年実績

順位

州 名

登録機数

推定稼働機数

推定稼働機率

年間稼働時間

1

California

26,141機

20, 560機

78.7%

2,330,575時

2

Texas

22,851

16,811

73.6

2,242,652

3

Florida

18,162

14,450

79.6

1,867,698

4

Washington

9,507

6,612

69.5

513,388

5

Alaska

8,161

5,528

77.7

244,039

6

Alizona

7,470

5,658

75.7

718.378

7

Georgia

7,198

5,932

82.4

571,362

8

North   Carolina

7,175

5,627

78.4

558,843

9

Illinois

7,021

5,169

73.6

529,640

10

Pennsylvania

7,144

5,091

71.3

509,932

 

意外に不稼働機材が多い。「推定値」の誤差範囲は1~2%

l  Californiaの南北、Texasの東西は優に1,100㎞を越える。

l  日本で1,000㎞と言うと東京-北海道北部、東京-鹿児島県南部。距離感が異る。

l  州内でも商用機定期便を含め公共交通手段のアクセスが無い処が多い。

l  全航連纏めの2014年度小型ピストン機稼働実績8.7万時/年、ヘリ7.8万時/年。

l  全航連の会員運航会社の実績が全てでは無いが、米国の最も少い州で40万時/年。

l  この様な単純比較は無意味だが、日本は日本に馴染む方策を考案すれば良い。

l  低価格機材の「共同所有・運航」,Air Taxi用の短距離・短時間利用が残された選択肢。

 

日本の2014年会計年度回転翼機稼働実績

                       全航連2014年実績資料

稼働時間総計

運送事業計

2点間旅客輸送

遊 覧

人員輸送

その他

他各種事業

回転翼機

77,706時/年

27.901

953

1,984

14,119

10,845

49,805

比 率

35.9%

1.2

2.5

18.2

14.0

64.1

飛行機

87,335

54,645

52,266

340

2,039

32,690

62.6%

59.8

0.4

2,4

37.4

 

運航企業別2点間旅客輸送実績

全航連2014年実績資料

回転翼機

年間稼働実績

比率

飛 行 機

年間稼働実績

比率

東邦航空

949.35時/年

99.6%

オリエンタルエアブリッジ

4,140,22

7.9%

セコインタ-ナショナル

4.14

0.4

新中央航空

5,097.22

9.8

合 計

953.49

100

琉球エアコミユ-タ-

10,592.51

20.3

北海道エアシステム

5,989.05

11.4

天草ライン

2,429.12

4.6

アイベックスエアラインス

24,017.01

46.0

合  計

52,265.53

100

  •   回転翼機による「2点間旅客輸送実績」の99.6%は東邦航空1社が独占。
  •   東邦航空は伊豆諸島の離島を繋ぐコミュ-タ-便でビジネス機の範疇より外れる。
  •   従って、ビジネス機の利用実績はセコインタ-ナショナルの年間4.14時間のみ。
  •   低価挌機材の裾野の回転翼機でこの有様故、一般人のジェット/タ-ボ機の利用はない。
  •   他方、ピストン機は6社合計5.2.万時間/年の実績はあるが全てコミュ-タ-便。
  •   ピストンビジネス機に依る「2点間旅客輸送実績」実績は皆無と言う事に成る。
  •   だからと言って、日本でビジネス機が「2点間旅客輸」に使われて居ない訳ではない。
  •   国交省は前年の飛行実績を集計している。2013年の発着回数は約13,000回
  •   約1/4が海外機で3/4がJA機。羽田・成田空港の利用は約3,000機で全体の1/4程度。
  •   最近は欧米より中国を始めとする近隣諸国からの飛来機が多い。
  • l これらの送迎/国内移動(2013年10月末カボタ-ジュ制限緩和)にJA機を利用。
  •   JA機はLight Jetのみで海外飛行は10回/年程度。国内運航は10,000回/年弱。
  •   但し、これら情報は限れた関係者の間ではシェア-されるが、一般には公開されない。
  •   過去10年以上実績の筆頭はトヨタ社員の名古屋-旭川空港間の定期飛行。
  •   傘下の朝日航洋がCitation 560で運航を受託して来たが2年以上前廃航と成った。
  •   全航連の飛行実績にはジェット+タ-ボ機は除外されて居るので示される事は無い。
  •   全航連の会員である中日本航空、静岡エアコミュ-タ-の同様実績も除外されている。
  •   大手利用企業のエプソンはタ-ボ機を松本より庄内、鳥取、八尾に運航して居た。
  •   何れも国交省の飛行統計の2大目玉ではあるが「知る人ぞ知る」で一般情報では無い。
  •   エプソンは当初ジェット機を所有、これを売却タ-ボ機のB-200/B300に切り替えた。
  •   こちらも、2年前松本-鳥取路線を廃航、庄内、八尾の便数も年々減少。
  •   同時期に、エプソンは日本ビジネス航空協会より退会した。
  •   エクセル航空は六本木ヒルズ、昨秋よりア-クヒルズ-成田空港間でヘリを運航。
  •   全航連の実績からは読み取れず。エクセル航空は日本ビジネス航空協会よりも退会。
  •   読み取れないのは全航連の「貸切人員輸送」「運航受託」実績に埋没して居るから。
  •   更に、低価格帯ヘリ運航のRobinsonグル-プの実績は全航連の実績には含まれない。
  •   当初より一般ビジネスマンのビジネスツ-ルを目指し乍らその利用実態は五里霧中。
  •   以上の様に嵌め絵パズルの如く個々の情報を拾う事は可能だが「全体像」は描けない。
  •   経済先進国で自国のビジネス機の運用実態を適確に把握する統計が無いのは日本のみ。
  •   事由はビジネス機の圧倒的多数を占める低格帯小型機、回転翼機が除外されて居る為。
  •   従来国交省の統計に記載されて居るのは、ジェット+タ-ボ+双発ピストン機約60機余。
  •   業界は高額なビジネスジェット・タ-ボ機に注力、低価格機材は「眼中にもなかった」。
  •   焦点の60機余は日本のビジネス機全体の800機余の7.5%で一般の利用者は居ない。
  •   日本のビジネス機は少く見積っても800機余で大半が低格帯機材の「ニ流市民」扱い。
  •   9割を軽く越えるビジネス機は正当な位置付けも評価も与えられず実態も不明瞭。
  •   市場の実態と向合い、低価格帯機材にビジネス機としての「市民権」を認知する事が先決。
  •   行政、個々の業界団体の個別の数値はあるが「整合性」が無く有機的な繋がりもない。
  •   「個」の段階での努力が「線」「面」として立体的・俯瞰的に組み上がらない。
  •   実績に結び付けるには個々の努力の集積だけでは無く関係者全員参画の「協働」が不可欠。
  •   一般利用者の利用可能な運賃提供が必要だが、それには機材の「共同所有・運航」が必要。
  •  分散した業界の「集約・統合」によるコスト合理化に加え「参画意識の共有」の涵養が鍵。

日本の主要ヘリコプタ-運航会社所有機数

                                              HELIWORLD Data 2013

順位

会社名

所有機数

順位

会社名

所有機数

1

朝日航洋

64

9

アルファ-アビエイション

12

2

中日本航空

60

10

小川航空

10

3

アカギヘリコプタ-

25

11

佐賀航空

8

4

東邦航空

24

11

東北エアサ-ビス

8

5

西日本空輸

20

13

鹿児島国際航空

7

6

新日本ヘリコプタ-

15

14

四国航空

7

ヒラタ学園

14

14

北海道航空

6

7

オールニッポンヘリコプター

14

備    考

 

  1.   全航連(全日本航空事業連合会)ヘリコプタ-部会の会員企業は30社。
  2.   30社の内訳は専業17社,併営13社だが10位以下の所有機数は1桁。
  3.   地方で「旅客2点間輸送」に従事して居るのは上記30社の外枠の小企業。
  4.   社長がパイロット兼任の三ちゃん零細企業も存在する。
  5.   2014年度の全航連記載の「ニ地点間旅客輸送」は953.49時/年。
  6.   東邦航空1社で949.35時/年。セコ・インタ-ナショナルが残り4.14時/年。
  7.   東邦航空は伊豆諸島の離島を繋ぐコミュ-タ-便でビジネス機の範疇外。
  8.   朝日中日本航空航洋の寡占的業界大手2社は「ニ地点間旅客輸送」実績はゼロ?
  9.   ア-クヒルズ-成田空港間のAir Taxiを運航するエクセル航空も実績ゼロ?
  10.   Robinsonの低価格帯機材を運航するアルファ-アビエ-ションも実績ゼロ?
  11.   同グル-プの佐賀航空、大阪航空も実績ゼロ?
  12.   岡南空港を拠点とするロ-ゼンもRobinson機を駆使するが全航連の枠外。
  13.   一方小型固定翼機の「ニ地点間旅客輸送」の実績は52,265.53時/年。
  14.   旅客運送業8社、飛行機専業13社、航測業4社、ヘリ兼業12社計37社の合計実績。
  15.   37社中旅客6社の実績が全てで6社共コミュ-タ-便でビジネス機の範疇外。
  16.   従って、ビジネス飛行機による「ニ地点間旅客輸送」の実績はゼロと言う事に成る。
  17.   ビジネス機の「ニ地点間旅客輸送」の実績としてはヘリ年間4.14時間のみ。

低価格帯回転翼機のチャ-タ-料金

機  種

R-22

R-44

R-66

Bell   206

AS-350

米国 (\/時)

\/㎞当り単館(\100/$)

($/時)

\25~30,000

\125~150/㎞

$250~300

50~60,000

250~300

500~650

95~110,00

475~550

950~1,100

110~170,000

550~850

1,000~1,700

140~170.000

700~850

1,400~1,700

日本ヘリ(\/時)

ヘリ(\/㎞)

巡航速度200㎞/時

地上タクシ-(\/時)

地上タクシ-\/㎞)

走行速度50㎞/時

\100~120,000

500~600

175,000

350

200,000

1,000

175,000

350

175,000

350

200~300,000

1,000~1,500

175,000

350

600,000

3,000

175,000

350

競合交通手段

鉄道 新幹線平均単価

定期商用航空便平均単価

コミュ-タ-機平均単価

\20~30/㎞

\20/㎞以下

\30/㎞以下

 

備    考

1.米国でのチャ-タ-料はAir Charter Guide Jul~Dec/2015版より抽出。

2.機材の装備、年齢、地域の需給状況で大きく変わるので飽く迄一般的な参考の目途。

3実際には利用希望地域のチャ-タ-業者に利用日時、区間、員数を提示見積りを取る。

4.利用者の希望する条件とチャ-タ-料の折合いが付けば即利用が可能。

5.Charter   Guideは全世界の運航業者、ブロ-カ-を網羅した700頁余のDirectory。

6.地域別、機種別のチャ-タ-料を調べるには一般的な参考資料に留まるが極めて重宝。

7.2015年後半版は57 th Editionで28年前から年2回アップデ-トされている。

8.日本はビジネス機のチャ-タ-料は「企業秘密」等と口を濁すが全て公開されている。

9.10年以上前から日本の内外チャ-タ-業者が機種別の料率ををサイトで公開して居る

10.官民挙げての努力で成果が出ないのは利用可能な料率を利用者と詰めて居ない為。

11.鉄道や航空便の運賃は全て利用者に公開されて居るが故に利用者が比較選択出来る。

12.ビジネス機で最も安い回転翼機やピストン機でも一般の利用者の「手は届か」ない。

13.ならば何故米国でAir Taxiが使われるかと問えば米国では利用料が「手の届く」範囲。

14.VIP用の高級リモジンから “Yellow Cab” 迄広い選択肢が有り夫々の利用者が居る。

15.日本では従来裾野の利用選択肢が欠如していたが故に一般の利用者は居なかった。

16.Air   Taxiは地上タクシ-よりは高くなるし、公共交通機関とは絶対に競合出来ない。

17商用便、コミュ-タ-便の実質運賃収入より割出した単価は国交省が公開している。

18.国内98の空港には商用便、コミュ-タ-便が\20~30/㎞で運航し競合は絶対不可能。

19.然し、地上タクシ-の補完としては限られた範囲ではあるが利用機会が残されている

20.98空港より最終目的地や、アクセスの悪い「2地点間輸送」の補完利用の余地は残る。

21.地方で有れば工業団地、テクノパ-ク、個別企業、工場等にヘリパットは設置可能。

22.「個人情報」「企業情報」と情報を抱え込まず「共有」する「開かれた文化」が必要。

23.こんな情報迄と思い勝ちな情報でも、日本を一歩出れば一般に公開されている情報。

24. 本サイトも「公知の情報」に限定して提供して居り「機密」の「企業情報」は無い。

25. 現実の数値と向合い利用者との対話と相互工夫により新しい事業機会が産まれる。

26.厳しい現実を直視し「利用者の利便向上」を念頭に「地頭力」で障害を乗り越える。

27.戦後荒廃よりの復興、グロ-バル時代の国際競争力強化を成し遂げた日本には出来る

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