2015年09月15日(火)11時52分

(15-10) 準公用機 (Para-Public Aircrafts)

 

要     約

1.今回は民間のビジネス機と機種・用途でも重なり合う準公用機をテ-マに取上げた。

2.「準」でも「公用機」はビジネス機では無いが「共同所有・運航」で関連が出よう。

3.2012年8月末でEMS(救急医療)SAR(捜索救助)防災で224機が存在尚増加傾向。

4.他方民間もこの種用途には「有事」の際には所有機を提供「協力」「協働」する」

5.東日本震災で回転翼機メ-カ-最大手のAirbusがヘリコプタ-12機を無償貸与した

6.低価格帯のAir Taxi機材のRobinson R-66は海外で警察用機種が大きく伸びている。

7.民間同様、洋の東西を問わず自治体もコスト削減の為低価格帯機材を重用する。

8.単発のタービン機でも新鋭機は性能・安全面でも低価格帯機で充分用が足りる。

9.今回は、海上保安庁、警察、消防・防災が所有する224機の機種を1表に纏めた。

10.これの対比で民間で利用する低価格帯の単発タ-ビン機175機も同様1表に纏めた

11.更に、日本に現存する低価格帯回転翼機のRobinson機182機も1表にした。

12.「低価格帯機材」の意義を強調する為ビジネス機上位機種との価格と対比を試みた。

13.Robinson R-22は1機$285,000.上には上でAirbus A-380は$346,000,000。

14.日本にある72機のR-22の1,214倍のA-380をドバイ首長が自家用機として発注。

15.日本市場に無縁のビジネスジェット機の中/上位機種は外し現存する機材を列挙。

16.又、全日本航空事業連合会ヘリコプタ-部会加盟30社の機種・飛行実績も記載。

17.やや乱暴だが、2014年会計年度の飛行実績を2012年8月の所有機数で割って見た。

18.その後所有機増加で母数は増えているが、それ以前の機数でも低稼働体質は歴然。

19.損益分岐点は300時間/年と言われ乍ら全事連30社でも100時間を割る企業も居る。

20.固定費コストは年間稼働時間に反比例して下がるのでコストは海外に比し3~5倍、

21.分散化され高コスト体質を是正するには業界の集約化による稼働率改善が不可欠。

22.航空業界は内外での業務集約、アライアンスの結成メリットを衆知徹底している。

23.「共同所有・運航」の枠組みで運航業者も利用顧客の双方がその果実に与る。

24.中期的にはPara-Public機も枠組み内に包摂する可能性もビジョンの視野に入れる。

 

Para-Public Aircraftsと言う言葉は海外ビジネス機業界で使われて来たが、最近は業界の慣用語として定着した。慣用語故に、正確な定義は無く極めて曖昧な語彙ではあるが、軍用機を除いた公用機故に、厳密な意味ではビジネス機の定義から外れる。然し、利用される機種が民間のビジネス機と共通して居るものが多く、民間機との境界線も曖昧で、Para即ち「準」に相当する接頭語が冠されている。一番分かり易いのはドクタ-ヘリで、日本でも民間の所有機もあるが、自治体も所有して居る。民間機も補助金で賄われたり、逆に自治体機は民間に運航や保守・修繕を委託したり、利用される機種も民間のビジネス機と重複するものが多い。地方財政負担の軽減、官民「協働」の防災、救助作業等では両者の境界線の線引きは益々難しく成る。日本で使われている官公庁所属のヘリコプタ-は下記224機 (2012年8月末現在) だが、年々増加の傾向。

 

  

機種別計

海上保安庁

警察

消防・防災

Agusta   AW109

Agusta   AW139

EH-101

Agusta  

24

18

1

43

11

11

24

4

1

29

3

3

Airbus   AS-332

Airbus   AS-350

Airbus   AS-365

EC-135

EC-155

Airbus   EC225

Airbus 

6

1

30

6

1

3

47

3

2

5

1

7

6

1

15

2

1

23

1

27

Bell   206

Bell   212

Bell   412

Bell   429

Bell 

20

19

53

1

93

3

19

5

27

17

18

1

36

30

30

川﨑 BK-117

32

13

19

Sikorsky   S-76

9

3

3

3

合  計

224

46

96

82

 

             全事連加盟の運航企業の回転翼機所有数

 

                 2012年8月末時点

企業名

機数

企業名

機数

企業名

機数

朝日航洋

70

佐 賀 航 空

8

セントラルヘリコプタ-

中日本航空

60

東北エアサ-ビス

8

第 一 航 空

アカギヘリコプタ-

25

鹿児島国際航空

7

大 阪 航 空

3

東 邦 航 空

24

北海道航空

6

本 田 航 空

3

西日本空輸

20

四 国 航 空

6

九 州 航 空

2

新日本へリコプタ-

15

静岡エアコミュ-タ-

5

ファ-ストエアトランスポ-ト

2

ヒラタ学園

14

つくば航空

5

愛 媛 航 空

1

オ-ル日本へリコプタ-

14

エクセル航空

5

天草エアライン

1

アルファ‐アビエ‐ション

12

日本フライトセ-フテイ-

5

オリエンタルブリッジ

1

小 川 航 空

10

雄 飛 航 空

4

アドバンスドエア

1

 

  •   朝日航洋(トヨタ傘下)、中日本航空(名古屋鉄道、中部電力)の2社寡占業界。
  •  10~25機所有が8社、10機以下が20社、この下に3ちゃん零細運航業者が居る。
  •  下記トップ4社を含め年間機材稼働率は採算分岐点と言われる300時間を割る。
  •  「共同所有」機構よりのサブリ-スによる「共同運航」以外損益分岐点に達しない。
  •   斯かる分散経営では効率が悪く集約による平準化が必要。安全性確保の懸念にも配慮。
  •   大手企業の顧客の「2点間移動の足」には高い信頼性に支えられたシステムが必要。
  •  「協働」による確固たる経営基盤、稼働率の向上、保守・整備の集約と安全性確保。
  •   海外並みの運賃提供には低価格機材でも年間300時間以上の稼働率実現が必要。

 

          民間回転翼機運航会社トップ4社所有機

                            2012年8月31日現在

  

機種別計

朝日航洋

中日本航空

アカギヘリ

西日本空輸

Airbus   AS-332

Airbus   AS-350

Airbus   AS-355

Airbus   AS-365

EC-135

5

41

17

4

14

2

13

10

2

3

16

7

1

14

5

7

1

Bell   206

Bell   412

Bell   427

Bell   429

Bell   430

23

6

3

1

13

9

4

6

6

1

1

6

8

1

1

3

川﨑 BK-117

15

8

7

MD900

9

9

Sikorvsky   S-76

6

6

そ の 他

18

1

5

11

1

合  計

175

70

60

25

20

  • 大手トップ運航会社6社は低価格帯のRobinson機は所有して居ない。
  •  「市民権」の認知以前に、「旅客の2点間輸送」は採算に乗らないと諦めている。
  •   全事連の2014年実績では朝日航洋、中日本航空の「2点間旅客輸送」の実績はゼロ。

  •   実績の大半が東邦航空の伊豆7島でのコミュ-タ-サ-ビスでビジネス機の範疇外。
  •   Robinson機165機の運航実績は全事連の実績統計の枠外で統計にも記載されない。
  •   「旅客の2点間輸送」を過去20年官民挙げての目標とに掲げて来た矛盾と向かい合う。
  •   高額のビジネスジェット機の販売から低価格帯機材の実際的な利用への発想の転換。

  •   目標の「旅客の2点間輸送」の実現には低価格帯回転翼機の集約的利用が不可欠。
  •   競合する交通手段で一番運賃が高い地上タクシ-の「補完利用」でさえもこれが必要。

 

              回転翼機の年間稼働率

 

 

運航業者名

稼働時間

所有機数

稼働時間/年

運航業者名

稼働時間

所有機数

稼働時間/年

朝日航洋

16,730時/年

70

239

ヒラタ学園

487

14

35

中日本航空

13,785

60

230

大阪航空

267

3

87

アカギヘリ

2,954

25

118

東北エア

746

8

93

東邦航空

7,047

24

294

エクセル航空

487

5

97

西日本空輸

4,911

20

246

静岡エア

725

5

128

  •   上位5社の年間稼働率は188~246時/年で損益分岐点の300時間を大きく割る。
  •  無論各社共益出しはするが、その分運賃は米国の3~5倍で一般利用者は居ない。。
  •   東邦航空はコミュ-タ-機で八丈島、青ヶ島、御蔵島等を結ぶライフライン。
  •   従って、地元の手厚い補助で成り立って居り経済的自立が原則のビジネス機とは異る。
  •   地上タクシ-\350/㎞。八丈島-青ヶ島\156/㎞、三宅島―御蔵島\224/㎞間の運賃設定。
  •   2014年会計年度「2点間輸送」は952時間で東邦航空1社が949時間とシェア--99.9%。
  •   コミュ-タ-機はビジネス機の定義の枠外で民間のビジネス機とは認知されない。
  •  最大手朝日航洋、中日本航空の「2点間人員輸送」の実績はゼロ。
  •  2社共「人員輸送」の実績はあるが「貸切人員輸送」や「運航受託」等他項目に埋没。
  •   表右側の稼働時間は「自己申告」で有ろうがこれでは地上タクシ-の補完たり得ない。
  •   2014年会計年度の全事連発表の実績では稼働時間ゼロの運航会社が2社居る。
  •   その一方、低価格帯のRobinson機165機の実績は外されている。
  •   2014年会計年度の全事連ヘリコプタ-部開30社合計は年間77,706時間。
  •   「建前」は一般の「2点間輸送」だが実績はセコ・インタ-ナショナルの4時間のみ。
  •  現状を正確に反映する実績統計が必要だが国交省を含め現状把握の統計は存在しない。

 

ビジネス機の価格

ビジネス機の一般利用と言っても市場、利用客は価格に非常に鋭敏である。海外の様に日本では想像も出来ない桁違いな富豪や独裁国の権力中枢の関係者のいわゆる「特権階層」が相対的に少ない日本で”Yellow Cab” Air Taxiを運航するには、”Price Sensitive”な米国市場同様、ヘリコプタ-の場合は1機1百万㌦の機材の攻防戦と成っている。ファミリ-レストランでシャンペンとキャビア、高級懐石料理等供する事は無く、一般が利用するAir Taxiに贅を尽くした高額の上位機種が使われない事は単純に常識を働かせれば誰にでも分かるが、今一度参考の為ビジネス機の価格帯を整理して記述する。

 

ステ―タスシンボルとして人気の上位機種

Boeing

BBJ 3

Airbus

ACJ 318

Gulfstream

G-650

Bombardier

Global Express 6000

$99,300,000

72,000,000

62,000,000

60,500,000

日本で運航しているLight Jet

Citation 680

Citation 560 Encore

Citation CJ2

$17,070,000

8,720,000

6,370,000

日本で多く使われるPara-Public回転翼機

Agusta 139

Airbus AS-365

Bell 412

Agusta 109

Bell 206

$10,000,000

8,900,000

6,700,000

6,300,000

1,400,000

日本でAir Taxiとして利用が期待される低価格帯回転翼機

Robinson   R-44

Robinson   R-66

Bell 505

Airbus AS-350

$456,000

855,000

1,090,000

2,500,000

  •   超富裕層/中国/産油国で人気の上位機種は石油価格の崩落と中国の汚職摘発で陰りが。
  •  日本では18百万㌦以上の上/中位機種は民間には1機も存在しない。
  •   Light Jetは運航するが商用機、コミュ-タ-機運賃の50~100倍で一般の利用は無い。
  •   Para-Public機は各種のニ-ズに合せた性能が必要で高額に成るが税金で賄われる。
  •   Air Taxiは「2点間旅客輸送」の単純なオペレ-ションだが “Price Sensitive”
  •   それ故にヘリコプタ-業界では1機百万㌦の攻防戦が展開されている。
  •   Robinson社はヘリコプタ-業界にLCC機を提供革命を起こした。
  •   商用便同様Legacy Carrier対LCCの構図だが、ヘリ業界ではRobinson機が圧倒。
  •   Airbusは対抗機EC-120を中国で生産、Bellは206の後継機505を2016年末発売。
  •   当然日本ではRibinson機とBell 505がYellow Cab用にAS-350はAir Limosine用。
  •   幸い日本には、2014年末でR-44 88機、R-66 5機の93機が現存し尚増加の一途。

  •   市場・利用者のデマンドサイドとしてはこの好機を逃す手は無い

              ピストン単発機の日本市場

            「日本航空機全集」2015

総 機 数

Robinson   R-22

Robinson   R-44

その他4

177機

72

88

17

シェア-

40.7%

49.7

9.6

  •   ピストン単発はRobinson機がほぼ独占。その他4社機は旧式の個人所有機。
  •   川﨑ベル機は’63~’69登録。シュワイザ-、エンストロ-ム、ヒュ-ズ機は25年前登録。
  •   海外でも3年前、Robinson社は10,000機を出荷、ほぼ独占的供給メ-カ-。
  •  これにより、Robinson社は民間転翼機ではAirbus社を抜き出荷機数で世界1位。
  •   日本でも古いR-22は28年前登録され、各種機種165機が現存するが「ニ流市民」扱い。
  •   然し上位機種R-66が出現、対抗馬のBell 505も出てAir Taxiの可能性が産まれた。
  •   R-66も本年初め500機の出荷が終わり、Air Taxiとしての用途も確固と成った。
  •   Robinson機は「ニ流市民」扱いではあるが、日本の中小運航業者が活用している。
  •   ビジネスジェット機はステ-タスシンボルのロ-ルスロイスであってこちらが実用機。
  •   Bell社が対抗機Bell 505機を発表、2014年は市場は様子見でRobinson機の販売低迷。
  •   現実の市場は必要とする性能を備えて居れば機材価格に最も敏感に反応する。
  •   市場や顧客を見縊ったり、高い目線で見下ろすと世界の潮流から益々遅れを取る。

              Robinson機保有先

                               2012年8月末現在

総機数

R-22

R-44

R-66

アルファ-アビエ-ション

10

8

1

1

佐賀航空

2

6

大阪航空

2

2

ロ-ゼン

7

3

4

つくば航空

3

2

1

第一航空

2

1

小川航空

2

2

セコ・インタ-ナショナル

1

雄飛航空

オ-ナ-企業所有機

54

15

39

ヒラタ学園

3

3

帝京大学

2

2

個人他

70

34

32

4

合  計

165

72

88

5

  •   通常Robinson運航企業グル-プと呼ばれるのはアルファ-アビエ-ション、佐賀航空、大阪航空。ロ-ゼン、つくば航空だが、他の4社を含めても総機数165機の22%。8割弱が中小オ-ナ-企業或いは個人所有機。
  • l  これらの運航実績は全事連ヘリコプタ-部会の統計の枠外で実態は把握されて居ない。
  • 大半の機材は自己資金調達で賄われるが纏めて購入、リ-スする方が遥かに合理的。
  •   機種が絞り込まれ、経済合理性、安全性確保の為にも保守・修繕の集約化が望ましい。
  •   Air Taxiとしての利用は殆ど無いが機材の稼働率が向上すればコストも大幅に下がる。
  •   将来の夢では無く、既にRobinson機165機を含む回転翼機811機が現実に存在する。
  •   「市民権」を認知、集約化による「組織化」で運航会社/利用者両者が恩恵に与れる。

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