2015年10月29日(木)02時19分

(15-14) ヘリコプタ-関連業界の会員

 

要    約

1.日本でのヘリコプタ-の利用の歴史は終戦後ではあるが既に半世紀以上の歴史を有する。

2.日本は90年代、米国、カナダに次ぐヘリコプタ-大国であったが最近は世界5位。

3.90年代のバブル崩壊後回転翼機数は大幅に減り2000年代に入りほぼ横這い。

4.最近は救急医療、防災等のニ-ズの高まりから漸増気味だが国際的な地位の低下は続く。

5.但し、この種需要は公益的色彩が強く公的支援も有り経済的自立は確立されて居ない。

6.都心ヘリポ-トの設置許可、IFRの認可等過去20~25年提起されているが実現を見ない。

7.各業界団体の忍耐強い努力も個別の「点」の努力に留まり「3本の矢」として纏まらない。

8.主要企業は複数の業界団体に参画するが何故か業界の横断的・水平的な「協働」は無い。

9.会員企業は業界情報の「耳」として利用するが共通の課題を「協働」で向き合わない。

10.故に四半世紀に亘る活動も内外の行政機関の政策に反映されず具体的成果に繋がらない

11.幸い優れた性能の低格帯機材やアビオニクスの進化で日本での利用機会も期待される

12.天与の最後のチャンスを逃さず関係業界の「協働」による現実的な事業機会に繋げる。

ヘリコプタ-関連業界の主だった企業は複数の業界団体に参加しているが、個々の業界団体が行政に働き掛けても、「3本の矢」のインパクトは望めず、従って見るべき実績もない。首都圏のヘリポ-ト設置の要望は過去四半世紀以前から各業界団体から要望が出て居り、「計器飛行-IFR」による飛行も同様。25年の間の技術革新も著しく、機材の安全性の向上、Garmin器に象徴されるアビオニックスの目覚ましい進歩、一方では都市圏の交通状態の悪化、これに呼応した諸外国の対応等周囲の環境は激変しているが、日本だけが世界の孤児と成る事は避けねばならない。その一方、行政も一業界団体、一企業等の要望に応える事は出来ない。米国では、関連業界が”Coalition” “ Alliance” の「協働」で業界のコンセサスを伝え「官民協働」で現状に即した手直しを行うが、日本もこれに倣う必要がある。

過去多くのビジネス機関連の業界団体が組織化され、後述の如く、既に必要関係企業は何れかの団体に所属して居り、Leading Companyは複数の団体に加盟、業界を横断する水平的な「協働」の枠組みは出来上っている。更に、海外とも業界相互の乗り合いも行われて居り、グロ-バルな「連携」「協働」の地盤も過去20年の歴史の中で培われている。欠如して居るのは、個々の業界、或いは参加企業の「3本の矢」として総力を結集した「協働」の意志が確立していない事。多くの業界関連企業が団体として結集、情報の交流、率直な意思疎通と対話を行ない、業界の発展に繋げるケ-スと、逆に同業他社の集まりとして、個々の企業が持つ情報を「企業秘密」「個人情報」として秘匿し、寧ろ業界として入手した情報を得る為のListening Postとして、受身の聴衆に徹する事例が多く、ビジネス機の関連業界は後者の色彩が濃厚。海外のIBAC,NBAA,EBAA, HAI等の国際的な業界団体に日本の業界団体や、個別企業も参加、年次総会や関連会合にも出席するが、多くの場合、グロ-バルな動きの情報収集源として利用されるが出席者から帰国後、業界に情報の伝達や解析を行う事は少なく、況して日本側がこの様な場で「情報発信」をして国際場裡で業界に貢献する事は無く、オブザ-バ-としての地位に甘んじている。

然し最も重大な欠陥は、関連企業は業界団体の会員として、大半が網羅されてはいるが、サプライサイドの代表であり、デマンドサイドの利用者の参画は顕著に欠けている。大手商社の名前も見られるが、商社の航空機部門や傘下の航空機取扱いの仔会企業で、大手商社の名は冠しているが商社本体の営業部門で内外の出張が多い社員層や況して幹部・トップのサポ-トは無く、これら商社マンのビジネス機の利用者は殆ど皆無状態。海外ではジェネアビ以外に交通の選択肢が無く、然も利用料は日本に較べ格段にに安いので必要に応じ利用される。何れにせよ、如何なる運賃水準で利用されるのか(米国では地上タクシ-代の1.5~2倍が顧客負担力の限界と言われるが)又如何なる事例で利用されるのか(地方の横から横への移動は意外に不便)、デマンドサイドの顧客層の意向の汲み上げが絶対に不可欠。顧客である利用層から遊離して、利用者の真のニーズに見合わないプランは所詮「机上の空論-”Desk-top Planning”で実際の成果に繋がらない事は過去20年の業界の歴史が雄弁に語っている。

 

Air Taxi導入に関連成る主要業界団体と会員

 

業界団体名(かな順)

複数団体に跨る会員

そ の 他 会 員

全日本航空事業連合会

飛行機・ヘリコプタ-部会

朝日航洋、アルファーアビエーション、エクセル航空、中日本航空、静岡エアコミューター、ヒラ

タ学園、本田航空、

アイラス、アカギヘリコプター、天草エアライン、エスジーシ―佐賀航空、オールニッポンヘリコプター、大坂航空、鹿児島国際航空、九州航空、四国航空、ジャネット、新日本ヘリコプタ-、ジャパンフライトサービス、セコ・インターナショナル、セントラルヘリコプター、第一航空、つくば航空、ディーエイチシー、東北エアサービス、東邦航空、西日本プ空輸、日本フライチセーフテイ、ファーストエアートランスポート、ヘリサービス北海道航空、北清ヘリシス、雄飛航空、0-ゼン航空、

日本ヘリコプタ-

事業推進協議会

朝日航洋、ITCエアロスペース、アルファーアビエーション、エアバスヘリコプターズジャパン、エアロパートナーズ、エクセル航空、川崎重工、全日本航空事業連合会、東京海上日動火災保険、中日本航空、ナビコムアビエーション、日本航空宇宙工業会、日本航空技術協会日本ビジネス航空協会、三井物産エアロスペース、三井住友海上火災保険、

東運開発(日本ヘリポート協会)

、、、

日本ヘリコプタ協会

ITCアエロスペ-ス、朝日航洋、川崎重工、静岡エアコミュ-タ-、ジャムコ、セントラルヘリコプタ-、なび込むアビエーション、日本アロスペース、富士重工業、三井物産エアロスペース、三菱重工業、三菱商事、ヤマハ発動機、ユーロコプタージャパン

島津製作所、ジーエイチクラフト、新東亜交易、ダイセル、タクトワン、多摩川精機販売、中菱エンジニアリング、テクノブレーン日立国際電気、古賀電池、ベストテック、、三菱プレシジョン、横川電機、

日本ビジネス航空協会

朝日航洋, エアバス・・ヘリコプターズ・ジャパン、岡山航空、川崎重工、静岡エアコミューター、東京海上日動火災保険、中日本航空、日本ヘリコプター事業促進協議会、ヒラタ学園、三井住友海上火災保険、三菱重工、

愛知県地域振興部航空対策課、神戸市港総局空港事業室、空港施設、静岡県空港総務室、スイスポートジャパン、中部国際空港、東京都都市整備局都市基盤部、成田国際空港、日本空港ビルデイング、福島県商工労働部観光交流局空港交流課、

ANA成田エアポートサービス、ANAベースメンテナンステクニクスIHI、伊藤忠アビエーション、エアバスジャパン、エアロワークスインターナショナル、エ-ジ-ビ-,海外物産、兼松、協立航空撮影、コクサイエアロマリン,コーナン商事、ジャムコ、ジャプコン、全日本空輸、全日本商事、双日、東京航空計器、トヨタ自動車、ノエビア・アビエーション、日本エアロスペース、富士重工業、ホンダエアクラフトカンパニー、富士ドリームアビエーションエンジニアリング、丸紅エアロスペース、三井物産エアロスペース、森ビルシテ-エアサービス、ユニバーサル・アビエーション

CKTS, T Japan Aviation Service,extron Aviation,、 Wings of Life

関連業界団体

備    考

 

 

 

 

 

 

国内関連団体

日本ヘリコプタ-事業推進協議会と日本ビジネス航空協会は相互相乗りと成って居り主要会員は重複しているが、前者はヘリコプタ-事業に特化して居り、後者は2013年より「ジェネアビ(ビジネスジェット機)」に重点を移行、ヘリコプタ-は他の業界団体があり関わらない事を基本方針とし、両者の交流や「連携」「協働」は見られない。他にも多くの関係団体が存在するが夫々に事務局間の接触はあっても同一目標を目指して足並みを揃えて事に当ると言う重要な点が不在で、それなりに個々には努力を続けても成果に繋がらない。

関連団体リストの一部 : 自民党、民主党夫々のビジネス機促進議員連盟、全国地域航空システム推進協議会、全国民間空港関係市町村協議会、各空港の事業促進機構。全日本航空事業連合会飛行機・ヘリコプタ-部会、日本ヘリコプタ協会、日本ヘリポ-ト協会、日本ヘリコプタ-事業促進協議会、日本ビジネス航空協会、日本航空協会、航空振興財団。日本航空宇宙工業会、日本航空技術協会他、ア-ク航空情報センタ-の「日本航空行政・公的機関のサイトには180余の団体が挙げられている。重複した会員も数多く居る故に相互のパイプは存在するが「点」として個々の活動は為されているが、「線」「面」としての「連携」「協働」に見るべき実績は無く、従って成果に繋がらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海外業界団体

IBAC ; International Business Aviation Council -国際ビジネス航空評議会は15ヶ国のビジネス航空協会の国際的な業界団体で本拠はカナダMontreal。年2回の理事会はNBAA, EBAA Conventionに合せて開催される。本年はスイスのGeneveと米国のLas Vegasで開催。JBAA (日本ビジネス航空協会)は2001年11番目の会員として参加が認められたが、その後、ロシア、中国、中東、メキシコ等が参加、日本は欠かさず理事会に参加して居り、IBACとの連携によるビジネス機の運航・安全基準の普及 IS-BAC (International Standard for Business Aircraft Operation), SMS (Safety   Management System) の教育、トレ-ニング、認証カ-ドの発行等多岐に亘る活動に参加している。

NBAA : National Business Aviation Association-米国ビジネス航空協会は米国の名を冠しているが、グロ-バルなビジネス航空協会の中心的存在。JBAAは設立時の90年代後半より会員と成っているが、NBAAはJBAAの会員で相互乗り入れと成っている。毎年秋に催されるConventionには全世界より25,000人程度の関係者が参加、日本よりも多くの参加者が見られる。年1回の会合で有りNBAA側の業界情報、参加企業よりのプレゼンテ-ション、会期中あらゆる場での情報交換が行われるが、日本は過去20年ビジネス機市場の「均衡縮小」が続き発信すべき話題・自己表現力に乏しいので「参観者」の地位に留まり、参加者からの帰国報告会も開かれ無い儘、貴重な情報は参加者個人の知見に留まり、日本の業界に殆ど伝わらない。正会員はビジネス機オ-ナ-が原則で8,000人の会員が居り正にデマンドサイドの業界で有り、日本のサプライサイドの業界とは対極の立場にある。従って顧客本位で日本で有れば「企業秘密」「個人情報」として囲い込まれる情報は寧ろ積極的に開示される。Convention閉会後2週間程度で主要な参加者のプレゼンテ-ション資料がネット上で公開されるので日本に居乍ら全てを知る事が出来、参加者の帰国報告が無くても不便は無くなった。米国或いは世界の「開かれた業界」と日本の「閉鎖的慣行」との差異はConventionに実際に参加すれば直接肌で感じ取る事が出来る。

EBAA : European Business Aviation Association-欧州ビジネス機協会で欧州の会員が多い。初夏に開催され理事会は欧州版のビジネス機のディスプレ-や各種会合に合わせるので12,000人強の参加者が集まる。NBAA同様JBAAと相互乗り入の会員と成っている。

GAMA : General Aviation Manufacturers Association -ジェネアビ製造業者協会はサプライサイドの協会で世界のビジネス機供給メ-カ-とアビオニックスを含む部品メ-カ-で構成され会員は現在約80社。サプライサイドの業者80社に対し、川下のユ-ザ-業界のNBAAビジネス機利用者8,000人と圧倒的に「ユザ-・顧客本位」で有る事が日本との顕著な差で有り、日本では低価格帯ヘリコプタ-でさえ使用が根付かない根本的な理由でも有る事を認識する必要がある。一方GAMAは年次統計をサイトで無償で提供するが膨大な情報が入手出来る。日本の業界は会員のインサイダ-間ではそれなりの情報が開示され、メンバ-フィ-の見返りとしての情報提供は行われるが、海外では情報を開示する事により市場が成長するとの「長期的」且つ「広い心」で「社会貢献」の成果に繋げて行く。日本でも業界、企業間のエゴを抑え思い切った情報公開をすれば、低価挌帯機材を利用したAir Taxi的市場が開発されれば、更に観光、防災、緊急医療、救助作業のコスト低減に繋がり業界全体のパイが拡がり、利用者の利便に繋がると言う波及効果に配慮すべき。

HAI : Helicopter America International-米国ヘリコプタ-協会。上記同様米国で開催される年次のHeli-Expoには20,000人強の参加者が参集、日本からも業界の関係者が参加する。Heli-Expo 2016は2月29日~3月3日ケンタッキ-州Louivilleで開催が予定されている。名門Bell社はRobinson社が単発タ-ビン機R-66を85万㌦で2012年末より発売した為、名機206 の生産を中止、捲土重来を期してHeli-Expoに対抗機Bell 505のモデルを出展、型式証明取得は2016年と先の話であるが、R-66よりやや高い1.07百万㌦に価格を設定、既に300機以上の仮発注を受けている。日本での型式証明取得と受渡しは2017年後半に成ろうが、日本からも3社が15機を仮発注して居る、世界の市場は繋がって居り、日本市場も世界に繋がって居る事をサプライ・デマンド両サイドが良く認識すべきである。何れにせよ、海外の協会とは永年の付き合いがあり、市場の情報はネット上で全て公開されて居る今日、日本も「顧客本位」の「開かれた市場」へと進化する必要がある。

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