2015年03月18日(水)10時03分
(15-06) 石油価格崩落による大手航空会社への影響
1973年の「石油危機」以来石油価格は乱高下し乍ら着実に高騰して来た。石油の埋蔵量より資源の枯渇は四半世紀と叫ばれ続けて来たが生産量は寧ろ増加、資源枯渇の時期もどんどん先延ばしに成っている。需給関係で供給が逼迫すれば原油価格が高騰し、価格が高騰すればそれ迄採算に合わなかった石油・ガス田が開発され、原子力を始めとする代替エネルギ-も商業化される。石油価格の乱高下には将来の予測、過剰資金の受皿、マネ-ゲ-ムの一環等様々な要素が絡むが、本サイトはこれを論じるのが目的では無いので、現在の石油価格崩落の最大要因である石油輸出国と米国の「覇権争い」と言う切り口で単純な解説に留める。世界の超大国で石油の最大の消費国である米国は、自身が石油生産大国であり乍ら中東よりの原油輸入に大きく依存している。「石油危機」以来産油国はOPECを結成団体交渉で石油価格の決定権を握った。多額の石油代金の支払いは、中東に大量の武器輸出を行う事で資金還流が図られているが、一方では中東の不安定な状況をも助長している。この不安定な均衡を破ったのが米国によるシェ-ルオイルの開発で石油価格が$100/bblを越える価格に定着すれば十分採算に乗る生産が可能と成る。3~4年程前から開発が進められて来たシェ-ルオイルの開発で本年度米国はサウディ、ロシアを抜いて世界最大の産油国に躍り出る事も現実味を帯びて来た。様子見をして来たサウディも産油国の穏健派として需給調整のスウィング役を捨て過剰生産の現状を放置した為、石油価格は一時期$150/bbl を超える高値が$40/bblと1/4近く暴落した。シェルオイルの生産コストは$80/bbl位と言われ、最近ではコスト競争力が有る先は$60~70/bblと言われているが、$40/bblに成れば生産を停止せざるを得ないとのサウディの思惑で有ったが、顕著な生産量の減退は見られない。一旦巨額の投資をすれば、変動費だけでも稼ぎたいと言う心理が働き、石油価格の暴落とオイルシェ-ルの生産縮小や況して開発計画の放棄の間にタイムラグが有ると見られている。米国は産油国でもウクライナ問題で対立するロシアの危機的な金融情勢やベネズエラの如き反米国も窮地に追い込まれた事で事態を静観している。暫く長期戦に耐えるだけの余剰資金を有するサウディと米国の我慢較べと成って来たが、何時新たな展開が現れるかその道の専門家でも予測出来ず、航空業界は成行きに任せる以外ないが、この程、IATAが発表した予測では大手航空業界の大幅な収益の改善、殊に米国大手航空会社の一人勝ちは2015年も続くと見られて居る。
IATAデ-タ
地 域 |
2014年利益 |
2015年予測 |
North America |
$11.9 bil. |
13.2 |
Asia-Pacific |
3.5 |
5.0 |
Europe |
2.7 |
4.0 |
Middle-East |
1.1 |
1.1 |
Latin America |
0.7 |
1.0 |
Africa |
0.0 |
0.2 |
Total |
$19.9 bil. |
$25 bil. |
(1) 短期的には産油国の思惑とは逆に米国の大手航空企業が最大の受益者。
(2) 既に業界も3大グル-プに集約され需要を越える機材の拡大は見られない。
(3) 従って、2015年は世界の半分以上の利益は米国航空会社が稼ぐ。
(4) 欧州は、Air France-KLM, IAG, Lufthansaの3大グル-プへの集約が図られているが、中小航空会社も存続するパッチワ-ク。ポルトガル、クロアチア、スロヴェニア、ポ-ランド各国の弱小企業の集約・連衡合従が課題。
(5) 並行的にLCCの市場シェア-は拡大して居り、逆に大手航空会社は労働問題を抱える。
(6) アジア・太平洋圏は競合が激しく、本年第一四半期5%、第二四半期7%の座席数拡大が見込まれている。
(7) 東南アジアでの過当競争は自制により一時的に終息しているが、LCCの旗手Lion Airも域内の飽和状態を認識し始めた。Philippine Airlines, Malaysia Airlines は一部供給力削減も行った。
(8) 中東は石油格の下落で自国の安い石油価格を武器とする強味が大幅に減退する。
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