2016年02月03日(水)02時35分

(16-01) 2016年を迎えて

 

要    約

 

は じ め に

 

過去20~25年の各界の努力が結実しなかったのは実態市場・顧客と推進業界団体の思惑の齟齬・食い違いが主因。「解」としてのサプライ・デマンドサイドの「協働」を提案して来たが、本年度は「机上の論議」より実態市場との直接対話による「実行」へと軸を移す。

 

グロ-バルな航空機業界の再編劇

 

1978年米国で端を発した「空の自由化」とこれによるグロ-バルな地殻変動と結果としての大手航空会社の集約・統合、アライアンス結成と「協働」によるメリットを簡単に総括。

 

ビジネス機業界の変革

1984年に編み出されたビジネス機の分割所有の”Fractional Ownership”とその派生商品としてのタイムシェア-、会員制のプリペ-ドカ-ド等の新商品が開発され、これに触発されビジネス機の本格的な普及始まったが、その経緯と要因を総括。

上記の教訓を活かした日本のビジネス機の在り方

本サイトの目的である「日本でのビジネス機の在り方」として、低価格帯ヘリコプタ-の「共同所有・共同運航」によるサプライサイドの業界と実際の市場・利用者の「協働」「ドッキング」によるビジネス機のAir Taxi形態での利用を提案。目的であった日本でのビジネス機の一般普及にはより大規模、複雑な過去30~35年のグロ-バル規模での良き範例と成果を示し日本でのビジネス機の一般普及に繋げる事を提案。

信用力の創出

1.Air   Taxiの採算性は機材のリ-スファイナンスが前提だが多くの運航業者は信用力不足。

2.「共同機構」が機材メ⁻カ⁻より機材を購入リ⁻ス会社からリ-スバックの上サブリ-スする。

3.「共同機構」は国際機関の安全管理基準IS-BACの認定を受け遵守をサブリ-ス時義務化。

4.「共同機構」と言うサプライ・デマンドの共同体組織で関係先への信用力と説得力確立。

 

は じ め に

 

「日本におけるビジネス機の在り方を考える」と言う個人サイトを開設したのが2012年12月、早くも3年余が経過した。過去のレポ-ト、トピックスは年度別にライブラリ-に保存されているのでホ-ムペ-ジ上段のライブラリ-をクリックすれば閲覧可能。当初2年はビジネス機の定義や、機種・価格、世界・アジアに於ける日本の立ち位置等基礎的な情報を整理して公開した。個人的な見解であり異議・批判・コメントフリ-のサイトとしたが、3年過ぎた今日迄ネガチブなコメントは一切寄せられていない。当初2年の公開情報は、関係者には衆知の事実であり特に目新しい情報は無いが、ビジネス機の利用を一般に普及させると言う所期の目的を達成するには、状況に精通している関係者以外に些かの関心を抱いて居る読者に、出来るだけ全体的、俯瞰的な鳥瞰図を描く事を試みた。昨年は、提起した「在り方を考える」の総論から結論へと絞り込み、具体的な方策の示唆と焦点を絞り込んだ。本年度は更に一歩進んで、サイト上の論議より、これを実行に移す「実践」に軸を移す。但し、「木を見て森を見ず」の弊に陥らぬ様、「全体の中に於ける位置付け」を見失わぬ様マクロ的な背景も提供し続けるが、情報量は必要なボリュ-ムに留め、寧ろ「実践」「実行」に必要な具体策の提起を中心としたサイトとしたい。民間企業では業務のABCである「問題の発掘と提起」(過去3年の情報公開で問題点は粗方掘り起こし提起更に焦点を絞り込んだ)、「提言の実行」更には実行段階で直面する様々なチャレンジへの対応としての手直しやファインチュ-ニングを行う、「Plan-Do-See」「PDCA-Plan-Do- Check-Action」による業務遂行の根本に戻る。最後に、これを完成度の高い「提言書」に纏め且つ市場や顧客のニ-ズを汲み上げ、過去の最大の反省である実態市場との乖離を避ける様努力したい。絞り込んで来た焦点の課題を簡単に列挙する。

  1.   経済先進国でビジネス機の利用が顕著に遅れているのは日本だけ(20~25年前の認識)
  2.   日本は世界の政治・経済の中心より距離的に最も離れて居りHeavy Jetの利用が必要。
  3.   20年前よりビジネス機の国際的Conventionにも参画、目を見張る機材や盛会に驚嘆。
  4.   1996年5月JBAA (日本ビジネス航空協会)が発足日本も本腰を入れた対応を始めた。
  5.   20~25年前の時点で日本には低価格(0.3~2.5億円)ビジネス機は700機余存在した。
  6.   既存市場は高額機材には関心がなくJBAAを構成する大手企業は上位機種拡販に注力。
  7.   この時点で市場の実態とニ-ズ、大手企業の思惑の間に大きな乖離が生じ今日に至る。
  8.   大手商社、当時の上位機種利用者も現実を認識、その後上位機種の利用は行われない。
  9.   2008年以降民間の上位ビジネス機は全て姿を消し、大手企業のビジネス機所有は皆無。
  10.   上位機種は無論存在するが、防衛省、国土交通省、海上保安庁所有の軍用・官公需機。
  11.   国交省も2013年検査機のHeavy Jet 4機の退役を決め, 昨年代替のLight Jet 3機を受領。
  12.   他方、低価格帯小型機、回転翼機は現在800~1000機がビジネス機として運航する。
  13.   特に、0.5~2.5億円の回転翼機は着実に輸入されて、その有用性と存在感を増している。
  14.   日本で中/遠距離用のHeavy JetやLight Jetが使われないのは運賃が高く付くから。
  15.   商用便、コミュ-タ-便比50~100倍位高い故ステ-タスシンボル以外には使われない。
  16.   上場企業がビジネス機を所有も利用もしないのは職務上の「善管義務」に忠実な為。
  17.   高額ビジネス機利用の原理的信拝者も居るが過去25年の歴史的事実がこれを否定。
  18.   他方Airbus, Bell, Robinsonの3大回転翼機メ⁻カ⁻は日本で一貫サ-ビス体制を整備。
  19.   地上タクシ-の補完として利用出来る充分な機能を備えた低価格帯機材も増えて来た。
  20.   価格はHeavy Jetの1/100, Light Jetの1/10と言った競争力のある低価格帯機材。
  21.   低価格機材は過去10年以前より日本に輸入されアフタ⁻サ⁻ビス体制も充実して来た。
  22.   海外では過去50年「当り前」に利用されて来たAir Taxiの日本での不在は顕著。
  23.   昨年低価格機材を利用したフィ-ジビリティスタディ-を実施事業採算性は存在する。
  24.   本年度の課題はデマンドサイドとの対話で利用普及を可能にする運賃水準の割り出し。
  25.   米国では時間節減等のメリットでAir Taxiの運賃負担力は地上タクシ-料の1.5~2倍。
  26.   日本の地上タクシ-料\350/㎞に対して幾らならAir Taxiを利用して呉れるか?
  27.   「当て推量」ではなくデマンドサイドの旅行代理店、利用者との直接対話が不可欠。
  28.   コスト低減の最大要因は機材の年間稼働時間。回転翼機でも採算分岐点は300時/年。
  29.   日本の回転翼機の平均年間稼働時間は150時/年でその倍の機材稼働が必要。
  30.   結論的には年間300時間稼働を可能とする運賃水準と価格弾性値の割り出し。
  31.   現実的なデマンドサイドとの対話の為低価格帯ヘリの体験的試乗の運航も可能。
  32.   サプライ・デマンド両者を利する運賃を割り出すには業界/利用者の「協働」が不可欠。
  33.   「協働」のニ-ズと現実的な実現の実例は航空機業界の集約・アライアンス等で実証済。
  34.   更にビジネス機の急成長を支えた”Fractional   Ownership””Time Sharing”の記述参照。

グロ-バルな航空機業界の再編劇

1.1978年米国で始まった「空の自由化」の経過は広く報道されて来たので簡略化する。

2.Pan-Am,TWA等著名な航空会社は姿を消し、全ての大手航空会社が破産裁判所入りした。

3.現在はDelta,Ameican,Unitedの3企業を中心に米国の航空業界は集約・再編された。

4.欧州でも同様にAir France, British Airways, Lufthansaの3社を中心に再編が進んだ。

5.米国、欧州の3グル-プはOne World, Sky Team, Star   AllianceのメガAllianceを結成。

6.世界の航空企業の多くが何れかのAllianceに参加ANA Star Alliance JAL はOne World

7.JALのまさかの経営破綻やAmerican, Deltaとの提携の迷走も上記の背景の中での寸劇。

8.結果としてANA,JALも外国航空機企業との「協働」で大きなメリットを享受した。

9.自由化の波の中で台頭したLCCの低価格運賃で一般が楽しめる旅行市場も大きく拡大。

10.Alliance   に参加した日本企業は「情報の相互交流」の「開かれた世界」を体験した。

11.歴史の流れに抗する事は如何なる企業も出来ないし、流れに乗れば利する処も大きい。

12.グロ-バルな不透明な視界、且つ「複雑系」の世界では企業間の「協働」は不可避。

 

 ビジネス機世界の変革

 

1.1964年にビジネス機のチャ-タ-業が始ったが1984年Goldman Sachsの役員が買収。

2.Richard   Santulliは富豪がビジネス機を経済合理性に無関係に利用して居る事に着目。

3.高価なビジネス機は最低500時間/年利用が採算分岐点だが、一個人では消化し切れない。

4.ならばビジネス機を個人の年間利用時間に合せて分割所有すれば良いとの結論に達した。

5.彼が考案した「分割所有―Fractional Ownership」はビジネス機業界に革命を齎した。

6.アイディアそのものは日本でも会員制のゴルフクラブ、リゾ-トマンションでお馴染み。

7.大規模な事業展開で機材を割引で纏め買いして標準価格で分割販売するビジネスモデル。

8.それには多額の資金が必要なので会社を米国の大富豪Warren Buffettに売り付けた。

9.Santulliの僅か20分のプリゼンテ-ションでBuffettはその場で即断・即決買収に応じた

11.トップが即断即決する米国でも伝説的な逸話として語り継がれている。

12.機材の分割販売は1/2.1/4/1/8/1/16、稀に1/32もあるが多過ぎると利用時の重複が課題。

13.この為、Fractional Ownershipでは多少の予備機の遊軍プ-ルが必要と成る。

14.その後、他社の参入で時間売りのタイムシェア-、プリペ-ドカ-ド等の派生商品も流布。

15.時間制の貸し切り、JRのSuica等同様なビジネスコンセプトで東西考える事は同じ。

16.但しSantulliが始めたNetJets社の規模は現有機で上位機種のジェット機が650機。

17.2012年6月Bombardier社に100機の確定発注と175機のオプション契約を締結。

18.同じ日にCitation社にCitation Latitude 125機のオプション付きで25機を確定発注。

19.つまりデマンドサイド側が供給メ-カ-を膝下に置き機材を割安で購入。

20.ビジネス機所有者は分割購入で32百万㌦の機材を1/32の分割所有で1機百万㌦で済む。

21.大量購入のディスカウントと通常の価格での分割販売との値差がNetJetsの収益源泉。

22.Bombardier,   Citation社もFractional Ownershipに手を出したが両社共資金難に悩む。

23.Cesna,   Citation, Beechcraftを傘下に収めたTextron社がこれらを統合・集約。

24.ビジネス機業界もNetJets, Texron社の2大グル-プに業界が集約、再編された。

 上記の教訓を活かした日本のビジネス機の在り方

1.航空機は低価格帯と言っても高価な機材。機材の年間利用率でコストが大幅に下がる。

2.数千万㌦のビジネス機の上位機種の3~4倍位の価格の商用機も多数使われている。

3.商用機の平均運賃単価は\⒛/㎞弱だが、その1/10の価格のLight Jetで\1200~1500㎞。

4.その秘密は、商用機は何百人の旅客を連日往復輸送「大量輸送」のメリットを活かす。

5.航空業界の関係者なら誰でも知っている常識。プライベ-トジェットでは使い切れない。

6.航空機機材で最も低価格のヘリコプタ-でも損益分岐点の300時/年の半分の150時/年。

7.過去35年世界で吹き荒れ収斂した「集約」「統合」「協働」が解決策。

8.但し如何に安くても商用便ファ-スト、新幹線グリ-ン車の\35/㎞の運賃には及ばない。

9.公共交通手段で最も高い\350/㎞の地上タクシ-料に合わせるにも多くの工夫が必要。

10.公共交通手段が日本より格段に劣る米国でAir Taxiの運賃負担力はタクシ-料の1.5~2倍。

11.\350/㎞x 1.5~2倍 = \525~700/㎞ 範囲に収めるには「共同所有・運航」の「協働」が必要。

12.地上タクシ-もタクシ-会社が利用する自動車を共有、運転手がこれを共同で運航。

13.タクシ-会社は自動車を一括購入個人が買うより安く入手、保守・修繕費も然り。

14.運航も利用客の待ちの多い処に待機するが、無線で利用希望の情報も伝達・共有する。

15.Air Taxiは地上タクシ-程の需要は見込め無いので業界/利用グル-プの「協働」が必要。

16.機材メ-カ-、運航会社、金融機関、保険会社そして保守・修繕・部品メ-カ-等。

17.これら川上のサプライサイドは夫々の業界団体として既に組織化されている。

18.これら業界団体は「点」として個別に行動して来たが、「共同機構」への参画で組織化。

19.一方利用者側の組織化されたグル-プ不在が過去20年成果に繋がらなかった主因。

21.個々の利用客の組織化は難しいが、利用客に対応する旅行代理店は全国組織を有する。

22.企業/地方自治体/工業団地/テクノパ-クの「共同機構」参画で構成員が利用者に成る。

23.医師、弁護士、研究者、コンサルタント等のプロフェッショナルは所属する組織がある。

24.「共同機構」へ企業や組織された団体の構成員も会員メンバ-にすれば裾野は広がる。

25.米国のビジネス機運航企業もメンバ-カ-ド制等で顧客の拡大を図って居る。

26.如何なるメカニズムでもデマンドサイドの参画なくして事業基盤が確立される事はない。

27.最後にサ-ビス提供側が事業採算と顧客のaffordableな運賃の折合いを付ける事が必要。

信用力の創出

 

1.  Air Taxiの利用者のAffordableな運賃提供や安全性には「信用力の創出」 が不可欠。

2.  Affordableな運賃提供を行うには「共同機構」による機材のリ-スファイナンスが前提。

3. リ-スは航空業界では「当り前」の商慣行だが対象は信用不安の無い大手航空会社。

5. 1機1億円の低価格帯ヘリを150~200機購入しても150~200億円の商用機1機の価格。

6. 然し1機30万㌦の機材でもリ-スファイナンスが供与可能なヘリ運航会社は数少ない。

7. 大多数のヘリ運航業者はリ-スファイナンスを受けられるだけの信用力を持たない。

8. 「共同所有」では「共同機構」が機材を纏めて購入、リ-ス会社よりリ-スバックする。

9.これを「共同機構」が中小運航会社にサブリ-スして信用力不足を補完するメカニズム

10.中小運航会社の資金調達の軛よりの解放、月額のリ-ス料支払で運賃収入でカバ-可能。

11.逆にリ-スファイナンス提供者は相手が「共同機構」なので信用面での不安はない。

12.機材コスト等固定費の単位当りの負担は機材の稼働時間に反比例して逓減する。

13.これによる運賃の低減が、利用者誘致の更なるインセンチブとして作用する。

14. 他の重要な配慮事項は利用者側は「共有機構」による安全性の担保を期待する。

15.「共有機構」が機材をサブリ-スする際運航業者の安全管理体制を見極めるのが前提。

16.航空機の安全性には工業製品のISOに相当する国際標準のIS-BACが存在する。

17.IS-BACは国際ビジネス航空評議会が認定、日本でも認定された運航会社も現存する。

18.「共同機構」がIS-BAC認知を受け機材をサブリ-スする際安全規制順守を義務付ける。

19. 「安全性」確保の為機材の保守・修繕のアフタ-サ-ビスも担保されなければならない。

20.Airbus   Bell, Robinson社も日本市場に直接企業進出アフタ-サ-ビス体制も既に整備。

21.機材の組立、保守・修繕、部品管理、パイロット養成迄一貫したサ-ビスが提供出来る。

22過去、フライトクラブ的な「共有」団体は存在したが経営管理体制が杜撰な物が多かった。.

23. 大手企業、金融機関等の参画でコンプライアンス・コ-ポレ-トガバナンスの基盤構築

24.「共同機構」が供給者・利用側の「協働」による「公益性」も認知される必要がある。

25. この様な「信用力の創造」により始めて関係各社の積極的な支援が得られる事と成る。

26. 過去20~25年個別の「点」の活動が実らなかった反省に基ずく「協働」がキ-ワ-ド。

27. 関係者相互のWin-Winのメリット享受のメカニズム構築無くして何事も作動しない。

 

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