2016年03月30日(水)10時54分
(16-05) 日本のビジネス機の実態と課題
総 括
ビジネス機関連の統計
1.近年ビジネス機関連のデ-タ-べ-スの整備は質・量共に長足の進歩が見られる。 2.グロ-バルに利用される権威あるデ-タ-も10指に及びその更新も早く成っている。 3.包括的なデ-タ-ベ-スは8万機余のビジネス機を網羅している。 4.これと裏腹に異るデ-タ-間の喰い違いが目立ち10,000機余の差異が見られる。 5.登録機数、実際に稼働している実数、統計を洗った時期、途上国の統計不備等の要因。 6.日本のジェット機は過去7年新規購入は低価格のLight Jet 4機で「誤差範囲」内。 7.グロ-バルには「大海の一滴」で2000年半ばより日本はレ₋ダ₋スクリ₋ンより消えた。 8.2016年末予測で世界のビジネス機数85,000機、アジア・太平洋圏は1割の8,500機。 9.日本の民間機は約2,000機。この内ビジネス機は800機でアジア・太平洋圏の1割弱。 10.日本のビジネス機の9割弱が低価格のプロペラ機と回転翼機。ジェット機は24機。 11.日本のビジネス機の圧倒的多数を占める低価格帯機材は25~30年前より現存する。 12.世界の中の日本よりアジアの中の日本と日本内のビジネス機の取扱に焦点を合わせた 13.「狭義のビジネス機」60機前後以外の800機近い低価格帯機材は「二流市民」扱い。 14.アジア・太平洋圏ではAsian Sky Groupが豪州、ニュ-ジランドも網羅信頼性が高い。 15.日本は国土交通省登録デ-タ-を民間企業が出版した「日本航空機全集2016」を重用。
各種交通機関の利用コストとビジネス機の利用コスト
1.日本は海外の航空機ショ-に出展される格好良いビジネス機に憧れたが価格は等閑り。 2.デマンドサイドの利用者側は経済合理性の無いビジネス機には関心がなくスレ違い。 3.ビジネス機の運賃は商用機の50~100倍と桁違いに高く生半可なものではない。 4「ステータスシンボル」としての高額機材の利用か経済合理性に則った機材かの選択。 5.両サイドの是非の論議は避け競合交通手段の補完として利用可能な利用コストを提示。
ビジネス機の機材コスト
1ビジネス機もAirbus A-380の4億㌦Robinson R-22の30万㌦迄1300倍の値差あり. 2デマンドサイドが市場の現実に合せて低価格帯機材を利用して来た経験則に学ぶべき、. 3. 結論は米国での実践による体験智より地上タクシ-料の1.5~2倍が許容範囲限度内。 4. これを可能に成らしめるのは日本のビジネス機の9割を占める低価格帯機材の活用。 5.これら低価格帯機材は日本で30年以上も利用され大半の機材は償却済機材。 6.然も多くの機材所有者が割安の中古機(Preowned Aircraft) の形で購入利用して来た。 7.日本でビジネス機の未開発市場として利用可能な機材は経験則でこの種低価格帯機材。 8. 同時に公開した(16-06)「日本の回定翼機のグロ-バルの立ち位置」も参照にされ度い。 9.同様(16-07) [日本の回転翼機のグロ-バルの立ち位置」も参照にされ度い。
コスト合理化の方策
1.1機1億円程度の機材でもそれなりの工夫や仕掛けが必要だが特に斬新な考えは不要。 2.個人所有機は古くから複数人の「共同所有」やフライトクラブが存在今日迄続いて居る。 3.業界は異なるが、リゾ-トマンションやカ₋シェアリング等の慣行も類似のコンセプト。 4.海外ビジネス機のFractional Ownership、メンバ-カ-ド制も共同所有・利用の産物。 5.大手商用機運航企業の集約、アライアンス結成はサバイバルの為の知恵と施策の果実。 6.日本の低価格機材所有者は孤立・分散化され業界はあってもサプライサイドの団体。 7.結果として機材の稼働率は採算分岐点と言われる300時間/年の半分の150時/年。 8.好みで多種多様な機材を利用、保守・修繕のコストも高く整備士・パイロットも不足。 9.「協働」でコストの合理化を図りサプライ・デマンド両サイドの「協働」が不可決。 10.最後に具体的方策を簡単な一表に纏めたが民間企業では「誰でも知る」当り前の方策。 |
ビジネス機関連の統計
1.ビジネス機関連のグロ-バルな統計は欧米の業界団体、業界誌、コンサル企業等が公表。
2.無償で入手可能な物、業界誌の購読者に提供される物、$10,000以上する物もある。
3.主として欧米で纏められるが、中国/東南アはAsian Sky Group,日本は登録機統計がある。
4.日本の場合、新規登録、登録移転、抹消は国交省が月遅れで月次の状況を公開している。
5.年次統計は民間の出版社に渡され、通常翌年の3月末頃に有償で出版される。
6.ビジネス機関連のHeli-Expo, ABACE, EBACE, NBAAで業界関連の統計が配られる。
7.これらの統計は過去15年様々な工夫が施され、公表数値も詳細且つ精度を上げて来た。
8.日本の登録機統計は500頁弱の出版物だが、海外は統計をサイトよりダウンロ-ド可能。
9.数年前より有料の情報はCDにデ-タ-を収録顧客に提供顧客がニ-ズに応じ加工する。
10.過去2∼3年、デ-タ-はリアルタイム(と言っても約1か月遅れで更新)で提供される。
11.更にIT技術の進歩でクラウドで大容量のコンピュ-タ-に自分のファイルも保存可能。
12.Virtual Fileと「仮想」のファイルが地球上の何処かに存在自分でメモリ-保存も不要。
13.と言う事で情報の収集・検索・編集・保存の手間暇の削減、情報量も格段に向上。。
14.その一方、デ-タ-ベ₋スは収録の時期、ビジネス機の選択方法等で大きな差異が生ずる。
15.本サイトは2015年末の日本のビジネス機の総数を「広義のビジネス機」826機と記載。
16.日本ビジネス航空協会はジェット機+双発タ-ボ機36機。最近はジェット24機に注力。
17.国土交通省の飛行実績はジェット機+単/双発タ₋ボ機+双発プロペラ機60機前後を流用。
18.全事連は「2点間旅客輸送」実績の大半はコミュ-タ-機、低価格帯回転翼機は収録外。
19.何れの是非は問わず、統計に利用した前提で提供される数値に大きな差異が生ずる。
20.世界の著名な統計間でも10,000機程度の差異が生じ日本の機材の増減等は誤差範囲内。
21.今回はグロ-バル、アジア・太平洋圏の日本の立ち位置を記載したが大まかな「鳥瞰図」。
ビジネス機を含む各種交通手段の利用コスト
交通手段 |
移動区間 |
運 賃 |
移動距離 |
㎞当り単価 |
倍数 |
商用航空便 ファ-スト ビジネス席 ビジネス機 ビジネス席 ファ-スト ビジネス機 |
羽田―北京往復 羽田―北京往復 羽田―北京往復 成田New York往復 成田New York往復 成田New York往復 |
300,000 200,000 15,000,000 400~800,000 1.1~2,000,000 40,000,000 |
¥4,200/㎞ 4,200 4,200 20,000 20,000 20,000 |
¥71/㎞ 48 3,571 20~40 55~100 2,000 |
0.02 0.02 100 0.01~0.02 0.03~005 100 |
新幹線グリ-ン 山手線 商用航空便 商用航空便 ビジネス機 コミュ-タ-機 コミュ-タ-機 |
東京―大阪片道
全国平均 (国交省) 羽田―新千歳往復 羽田―新千歳往復 全国平均 (国交省) 八丈島–青ヶ島片道 |
18,960 \250
50,000 1.5~2,000,000
11,530 |
553 15.1~20
1,660 1,660
70 |
34 12.5~17
30 904~1,205 30 165 |
0.03
0.02 0.025~0.03 100 0.03 0.16 |
成田Express 地上タクシ- 定額タクシ- ハイヤ-普通車 |
成田∸東京片道 地域により格差あり 成田-都心間片道 目安平均 |
14,450
20,000 |
552.6㎞ ¥30/900m 70㎞ ¥90/280m |
26.1 367 286 321 |
|
機材コスト
機 種 |
機材価格 |
備 考 |
ジェット機 商用機改造型 Heavy Middle Light Very Light Jet |
$100~400,000,000 $50~68.000.000 $18~26,000,000 $7~16,000,000 $2~4,500,000 |
1機2百万㌦から4億㌦迄200倍の開き 日本は「政府専用機」2機。民間機は皆無 欧米等遠距離用で日本は軍用を含む「官公需」のみ 東南ア、中国奥地等中距離飛行用。日本は2機 日本のビジネスジェット機の大半を占める ビジネス機としてはエスケ-プラントが1機 |
タ-ボ機 単 発 双 発 |
$2~4,700.000 $2.5~8,500,000 |
2015年末総機数30機。内ビジネス機27機 2015年末総機数102機、内ビジネス機12機 |
ピストン機 単 発 双 発 |
4360~1,200,000 $840~1,400,000 |
2015年末総機数488機。内ビジネス機240機 2015年末総機数488機。内ビジネス機240機 2015年末総機数55機。内ビジネス機15機 |
回転翼機 ピストン単発 タ-ビン単発 タ-ビン双発 |
$288~460,000 $868~3,500,000 $3.6~22,000,000 |
2015年末総機数801機。内ビジネス機508機 2015年末総機数172機。内ビジネス機113機 2015年末総機数170機。内ビジネス機142機 2015年末総機数459機。内ビジネス機263機 |
1.ビジネス機で最も安いRobinson R-22は$288,000で2015年末日本の保有機数62機。
2.最も高い機材はAirbus A-380の4億㌦のビジネス機改装機材でR-22の1,389倍。
3.無論以上は新機のメ-カ-のリスト価格。中古機ならR-22で$50,000からある。
4.自動車に喩えれば最高額車は「ランボルギ-ニ・ヴエネ-ノ」の4億円で生産は3台。
5.日本の中古車のサイトで安値価格を検索すれば5万円と8000分の一の物件もある。
6.但し、日本は競合交通手段が高度に発達しているので競合より不足する谷間の補完に注力。
7.既存の交通機関の「置換」ではなく「補完」と言う「協働」で一層の強化を図る。
8.必要な機材は償却済の低価格帯機材も全て揃って居り集約・協働でコストの合理化を図る。
9.必要とされるのはステ-タスシンボル用の高額機材でなく既存低価格機材の有効活用。
コスト合理化の具体的方策
種々の機材が既に存在永年使われ償却も進んで居るが敢てコストは米㌦表記のリスト価格を100と置き指数化。償却済機材は「現在価値」を年間リ-ス料以下の項目に当て嵌め算定すれば良い。
コスト項目 |
指 数 |
備 考 |
機材価格100 |
100 |
機材を「共同機構」が纏め買いで割引価格で購入 |
輸入コスト20% |
120 |
輸入商社の得意部門でそのノウハウで費用合理化 |
為替 ¥100/$ |
12,000 |
¥80~120/$の中間値。商社・銀行のノウハウを活用 |
リ-ス料 12%/年 |
1,440 |
航空機リ-ス企業も多くそのノウハウをフルに活用 既存機材の現在値で買上げリ-スバックすれば大幅なリ-ス料節減と運航者の金融支援の「一石二鳥」も果せる |
保険料・税金 5%/年 |
1,512 |
海外より割高の航空機保険も「共同付保」で合理化 |
保守・修繕15%/年 |
2,268 |
機種の集約と「共同化」でコストは大幅に下がる |
固定費総額 |
2,268 |
日本のAir Taxiに利用可能な低価格帯回転翼機は現存 |
パイロット費 |
|
国労省の航空機パイロット平均年間収入は8百万円強 |
販 管 費 |
|
大手企業で直間比率は30%前後。「共同機構」で負担。 |
機材の固定費、パイロットの年間報酬、販管費等は機材の稼働率で劇的に引き下げ可能。
機材の固定費、パイロットの年間報酬、販管費等固定費的項目と稼働率の関係は下記。
年間稼働時間 |
0時/年 |
100時/年 |
200時/年 |
300時/年 |
400時/年 |
時間当り指数 |
1,000 |
10 |
5 |
3.3 |
2.5 |
1.固定費的コストの総額を1,000として指数化すれば年間300時間位迄急速に下がる。
2.低価格帯回転翼機の採算分岐点は一般的に年間300時間稼働以上と言われる。
3.日本運航業者の最大手朝日航洋、中日本航空で250~260時間/年。
4.日本の運航業者の平均は150時間/年、小規模な運航業者で100時間を割る先さえある。
5.自治体等の防災、緊急医療、捜索・人命救助用機材は事が無ければ民間より稼働率は低い。
6.その反面、東日本大震災の様な不測の災害時には地域の自治体では賄い切れない。
7.米国では石油の洋上開発等機材稼働率700~1000時間と言う事例さえある。
8.日米のヘリコプタ-のチャ-タ-料の差は偏に機材の年間稼働率の多寡が決定的要因。
9.商用機同様「共同運航」によるニ-ズの平準化による全体の稼働率の底上げが喫緊の課題。
10.変動費の最大支出項目の燃料費は機種・油種により異るが¥100/㎞以下で影響は少ない。
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