2016年03月30日(水)11時05分
(16-07) 日本の回転翼機のグローバルな立ち位置
総 括
1.ビジネス機を一般(やや金に裕りがある利用者)の用に供すると言う原点に回帰。 2.一般の「手の届く」料金の供与は低価格帯ヘリコプタ-の活用以外に選択肢は乏しい。 3.Air Taxi的利用であれば、地上タクシ-料の1.5∼2倍程度が運賃負担能力の限界。 4.地上タクシ-料は多少の地域的差異はあっても\350/㎞が一つの目安。 5.目標は\350/㎞ x 1.5~2倍 = \525~700/㎞と成るが幅を持たせて\500∼800/㎞。 6.ヘリコプタ-の巡航速度を200㎞/時と置けば\100∼160,000/時と成る。 7.米国での現行運賃は日本に現存する同機種のチャ-タ-料で\60∼100,000/時程度。 8.燃料費、パイロット代はそれ程差異は無いので機材の稼働率が決定的要因。 9.低価格帯ヘリコプタ-と言えども300時/年稼働が採算分岐点で日本はその半分程度。 10.運航の集約による稼働率向上が決め手。150時/年が300時/年で固定費負担は半減。 11.集約による保守・修繕コストの合理化、集約先へのリ-ス供与による金融負担軽減。 12.機材の共同購入による機種の絞り込み、リ-ス 付保等の集約によるコスト合理化。 13.これら集約によるメリットは航空業界での統合・合併、アライアンス等で実証済。 14.日本の業界は分散化、既存業務への依存で「旅客の2点間輸送」はなおざり。 15.競合する交通手段の選択肢が豊富でコスト的に厳しい競争力強化の施策が不可欠。 16.それでも交通手段が乏しい地方での足として短時間、短距離のタクシ₋的利用は可能。 17.ビジネスマンや観光客の足として「地方創生」「観光立国」にも貢献する。 18.この様な新たな領域/市場の開拓無くしてグロ-バルな地位の低下は喰止められない
日本のヘリコプタ-業界のグロ-バルな立ち位置
1.グロ-バルな視点では日本は90年迄900機余を擁する米・加に次ぐヘリコプタ-大国。 2.バブルの崩壊と「失われた25年」で700機台で横這い最近は800機台に回復。 3.公開の統計間の整合性は薄く比較は避けるがFlight International Dataで世界8位。 4.日本は2016年中に躍進著しい中国に抜かれるが、ここ数年間中国の保有機数が急増。 5.これに対し、日本では過去10年間保有機数は横這い・微増で機材が高齢化している。 6.単発タ-ビン機の85%が15年以前登録されたもので買い替えが行われていない。 7.言葉を換えれば、償却済の機材 (7年償却) が85%だがその割にコストが高い。 8.償却済の機材で米国に比しチャ-タ-料が3∼5倍と言うのが改善を要する最大の課題。 9.最大の課題は個々の企業の「点」の事業活動で機材の稼働率は損益分移転の半分程度。 10.業界の「共同機構」による「協働」で現状打開が図れるかが課題。 |
グロ-バルな国別回転翼機保有機数ランキング
Forecast Int’l 2015
順 位 |
国名 |
保有機数 |
シェア- |
1 |
米 国 |
17,132機 |
52.2% |
2 |
カナダ |
2,373 |
7.2 |
3 |
豪 州 |
1,796 |
5.5 |
4 |
南 ア |
793 |
2.4 |
5 |
ニュ-ジ-ランド |
756 |
2.3 |
6 |
フランス |
753 |
2.3 |
7 |
ドイツ |
682 |
2.1 |
8 |
日 本 |
677 |
2.1 |
9 |
イタリ- |
670 |
2.0 |
10 |
ブラジル |
555 |
1.7 |
|
その他 |
6,643 |
20.2 |
|
世界合計 |
32,830 |
|
1.日本は保有機数677機で8位だが日本での登録機数は2015年末で801機。
2.これで比較すれば4位に浮上するので差替えの誘惑はあるが異る統計の差替えは危険
3.集計の前提を無視した差替えは無意味。集計時期、実稼働機の数等前提が異る。
4.此処では素直に公開資料を修正する事なくその儘流用・記載した。
アジア・大洋州圏の回転翼機の地域シェア-
Forecast Int’l 2013
|
北米 |
欧州 |
アジア・大洋州 |
中南米 |
その他 |
合計 |
機 数 |
18,501 |
5,475 |
4,624 |
1,775 |
1,758 |
32,133 |
比率% |
57.6% |
17.0% |
14.4% |
5.5% |
5.5% |
100% |
アジア・大洋州圏内の回転翼機の国別シェア-
Asian Sky Group 2016 Report
順位 |
国 名 |
2015年末 |
シェア- |
2014年末 |
前年比% |
1 |
豪 州 |
2,094 |
34.8% |
2,028 |
+3% |
2 |
ニュ-ジランド |
841 |
14.0 |
758 |
+7 |
3 |
中 国 本 土 香 港 台 湾 マカオ |
764 694 30 39 1 |
12.7 (11.5) (0.5) (0.6) (0.1) |
648 576 30 41 1 |
+12 +20 0 -5 0 |
4 |
日 本 |
762 |
12.7 |
782 |
-3% |
5 |
イ ン ド |
304 |
5.1 |
304 |
0 |
6 |
韓 国 |
216 |
3.6 |
212 |
+2 |
7 |
フィリッピン |
200 |
3.3 |
186 |
+8 |
8 |
インドネシア |
199 |
3.3 |
185 |
+8 |
9 |
マレ-シア |
165 |
2.7 |
169 |
-2 |
10 |
パプアニュ-ギニア |
114 |
1.9 |
105 |
+9 |
11 |
タ イ |
112 |
1.9 |
111 |
+1 |
12 |
グアム |
29 |
0.5 |
28 |
+4 |
13 |
ベトナム |
27 |
0.4 |
27 |
0 |
|
その他 |
188 |
3.1 |
215 |
-3 |
|
合 計 |
6,015 |
100.0 |
5,758 |
+1 |
1. 上位5カ国のシェア-は79.3%、上位10カ国94.1%。
2. Asian Sky GroupとFlight Int’l社の統計数値は夫々の前提不詳故に整合化は図らず。
中国のヘリコプタ-保有機数推移
Asian Sky Group 2016 Report
2009 |
2010 |
2011 |
2012 |
2013 |
2014 |
2015 |
2016予測 |
260 |
302 |
357 |
419 |
511 |
648 |
764 |
840 |
+16.2% |
+18.2 |
+17.4 |
+22.0 |
+26.8 |
+17.9 |
+10.0 |
+11.0 |
日本の単発回転翼機の機材年齢
日本航空機全集2016/
|
総機数 |
7年内 |
シェア- |
8∼15年 |
シェア- |
15年以前 |
シェア- |
ピストン機 |
172機 |
29 |
16.8% |
87 |
50.6 |
56 |
32.6 |
タ-ビン機 |
170 |
27 |
15.9 |
39 |
22.9 |
104 |
61.2 |
合 計 |
342 |
56 |
16.4 |
126 |
36.8 |
160 |
46.8 |
1. 中国は7年の短期間で260機が764機と3倍に増え2/3が7年未満の新鋭機。
2. 逆に日本は7年内の新鋭機は16%で84%がそれより古くタ-ビン機は6割が15年以前。
3. 然し、逆に見れば、日本は84%の機材が償却期間7年と置けば償却済機材とも言える。
4. 「共有機構」が「現在値」で買上げリ-スバックすれば固定費コストは大幅に下がる。
5. 更に、運航面の「協働」で稼働率300時/年目標で提供運賃も欧米並みに近付こう。
日本の回転翼機保有機数推移
航空振興財団、日本航空機全集2016/03/05
|
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
2010 |
2011 |
2012 |
2013 |
2014 |
2015 |
総機数 |
778 |
773 |
768 |
777 |
781 |
777 |
789 |
805 |
811 |
801 |
ピストン機 |
160 |
169 |
171 |
177 |
181 |
184 |
182 |
179 |
177 |
172 |
タービン機 単発 双/多発 |
618 258 360 |
604 237 367 |
597 220 377 |
600 201 399 |
600 193 407 |
593 177 416 |
607 176 431 |
626 179 447 |
634 175 459 |
629 170 459 |
1. 日本の保有機数は「横這い」かやや漸増。世界の伸びより大きく遅れ相対的地位は低下。
2. 特に成長の著しいアジア・太平洋圏での日本の相対的地位低下は顕著。
3. 国土面積、代替交通機関の発展度より短絡的に良否の判断は避けても一考を要する。
4. 指摘して来た通り、コストを合理化すれば「旅客輸送」の新規市場の開発が可能。
5. “Yellow Cab Air Taxi” は需要の開発で大きなポテンシアリティ-が残る未開発領域。
日本の2015年末の登録機数
日本航空機全集 2016
|
2015年末 |
シェア- |
2014年末 |
前年比% |
ピストン単発 |
172 |
21.5% |
177機 |
-2.9% |
タ-ビン単発 |
170 |
21.2 |
175 |
-2.9 |
タ-ビン双発 |
459 |
57.3 |
459 |
0 |
合 計 |
801 |
100.0 |
811 |
-1.3 |
1. ITの進歩でグロ₋バルな情報共有が進んでも日本の情報は日本の情報源が一番正確。
2. 上記の表は日本の2015年度末の登録機より集録したもので海外の数値とはやや異る。
アジア・太平洋圏市場の機材製造メ-カ-別機数
Asian Sky Group 2016 Report
Robinson |
Airbus |
Bell |
Agusta |
MD |
Sikorsky |
Others |
1,882 |
1,599 |
1,195 |
303 |
248 |
206 |
582 |
アジア・太平洋圏ではRobinson, Airbus, Bell 3大メ₋カ₋にAgusta, MD, Sikorskyが続く。
上位5カ国保有機種
Asian Sky Group 2016 Report
|
豪州 |
ニュ₋ジ₋ランド |
中国本土 |
日本 |
インド |
Robinson |
1,061 |
308 |
233 |
149 |
17 |
Bell |
447 |
100 |
91 |
130 |
88 |
Airbus |
298 |
222 |
151 |
340 |
120 |
Agusta-Westland |
48 |
9 |
35 |
87 |
38 |
Sikorsky |
35 |
4 |
52 |
31 |
5 |
その他 |
205 |
198 |
132 |
25 |
36 |
総 機 数 |
2,094 |
841 |
694 |
762 |
304 |
1. 上位5カ国でもRobinson, Airbus, Bell 3社の存在感と優位性は変わらない。
2. “Yellow Cab Air Taxi” 用には Robinson R-44, R-66, Bell 505が太宗を占めよう。
3. 但し、Airbus AS-350はワンランク上のAir Limousineとしての利用領域は残る。
4. 将来、地方の水平移動、観光等で他人数の「旅客輸送」には双発の大型機の利用もある。
5. 大型機は機材のコストを含め高くなるが積載人員も増え「大量輸送」のメリットがある。
6. 地上車同様、リモジン、大型VAN、ミニバス等移動人員による補完手段も必要。
2015年末の回転翼機と所有者分類 (日本登録記録)
日本航空機全集 2016
機種 |
総機数 |
ビジネス機 |
官公需 |
商用・コミュ-タ- |
個人所有 |
ピストン機 |
172 (12) |
110 |
0 |
0 |
62 |
タ-ビン機 単発 双/多発 |
170 459 |
152 272 |
8 174 |
8 13 |
2 0 |
合 計 |
801 |
534 |
182 |
21 |
64 |
日本のビジネス機としての単発回転翼機数
日本航空機全集2016
機 種 |
総 機 数 |
機材価格 |
比 率 |
ビジネス機 |
比 率 |
ピストン単発 R-22 R-44 Robinson その他 |
172 (177) 62 (61) 100 (95) 162 (156) 10 (17) |
$288,000 $461,000 |
94.2%(90.5) 5.8% (9.5) |
110(106) (32) (58) (90) (16) |
59.2
84,9% 15.1 |
タ-ビン単発 AS-350 Airbusその他 Airbus Heli 計 Bell Helicopter Robinson R-66 その他 |
170 (175) 86 (88) 15 (17) 101 (105) 49 (58) 6 (5) 14 (11) |
$2,500,000
$869,000 |
59.4%(58.7) 28.8(32.4) 3.5%( 2.8) 8.3% (6.1) |
152 (156) 84 16 100 42 4 10 |
87.2
64.1% 26.9% 2.6% 6.4% |
1.ピストン単発市場はRobinson機の独占市場。その他は個人所有の何十年前の高齢機材。
2.Robinson機の日本代理店はアルファ-アビエ-ション、大阪航空、佐賀航空の3社。
3.R-22は乗客1名だが、最近2名乗りのCadetをR-22/R-44の中間価格帯で発売開始。
4.タ-ビン単発のR-66は引張凧。生産能力の限界以上に型式証明取得の事務繁忙もネック。
5.R-66の2015年度出荷機数は347機と前年度329機を上回ったが2013年は523機。
6.昨年700機の出荷を達成、ロシア、中国等からの受注も多いが市場は対抗機の出荷待ち。
7.R-66の対抗機種Bell 505の米国型式証明取得・出荷は2016年末を予定350機を仮受注。
8.Robinson機を運航しているセコ・インタ-ナショナルもBell 505 10機を仮発注した。
9.中国はEnstrom社を買収Airbus EC-120 150機を2013年末より現地で生産を開始。
10.「旅客の2点間輸送」には競合交通機関との対抗上この種低価格帯機材が不可欠。
11.日本はAirbus AS-350が86機現存、一部ワンランク上のAir Limousineの利用も可能。
12.括弧内の数値は2014年末 (前年) の数値で前年との比較の為挿入。
アジア・太平洋圏市場の利用用途別シェア-
Asian Sky Group 2016 Report
多目的 |
Corporate |
Private |
Training |
Offshore |
SAR |
Chater |
EMS |
45% |
16 |
12 |
6 |
6 |
4 |
3 |
3 |
SAR (Search and Rescue∸捜索と人命救助)、EMS (Emergency Medical Service∸緊急医療)
日本の利用用途 (2014年暦年実績)
全日本航空事業連合会纏め 単位:時/年
|
旅客輸送 |
遊覧 |
貸切 |
国内運送 |
撮影 |
視察調査 |
報道 |
その他 |
運航受託 |
合計 |
専業17社 |
4 |
1140 |
8563 |
9709 |
2673 |
5438 |
4902 |
3270 |
2859 |
28853 |
併営13社 |
949 |
843 |
1965 |
18192 |
3153 |
6514 |
7216 |
6257 |
7519 |
48852 |
29社総計 |
953 |
1982 |
2036 |
27902 |
5847 |
11952 |
12118 |
9507 |
10379 |
77706 |
1. 併営13社953時間の旅客輸送実績は東邦航空のコミュ₋タ₋サ₋ビスでビジネス機範疇外。
2. ビジネス機より除外されるコミュ‐タ-機の実績が混同、それが実績の大半を占める。
3. 運航会社29社の年間旅客輸送実績は僅か4時間と言う事に成るがこれは正確ではない。
4. 大手運航会社は企業の人員輸送も行うがおそらく運航受託等他の項目に分類される。
5. Robinson機等低価格帯機材の輸送実績も「旅客輸送」として記載される事は無い。
6. 業界は過去20年「旅客の2点間輸送」を目標としたがそれに沿った統計整備は未着手。
7. 将来は「共同機構」が関係各業界団体の統計を整理分類より正確に纏める必要がある。
8. 全事連の年度実績は翌年7月頃公開されるが各種の統計は3月中には公開される。
9. 公開時期が遅れで「賞味期限」も切れ「共同機構」による統計の整備/迅速化も課題。
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