2016年03月07日(月)01時38分

(16-05) Heli-Expo 2016

 

航空機業界関連の業界団体主催の各種の会合は年間切れ目なく開催されるが,世界の3大航空機ショ-のParis/Farnborough, Dubai, Singapore, ビジネス機に特化した春に開催されるABACE (上海)、夏の EBACE (ジュネ-ブ)、秋の BACE-NBAA Convention (本年はOrlando, Florida)、更に 業界とは異る熱狂的な「航空機マニア」の「空の祭典」が夏季休暇シ-ズンに開催される。EAA Airventureには自家用機で参加する「航空機愛好家」も多く、家族連れで「冒険野郎」の曲芸技や米国空軍の「空を舞う」エアショ-を楽しむ「夏祭り」として50~70万人の参加者が集う航空業界最大のイベントもある。HAI (Helicopter Association International) が初春に開催するHeli-Expoを皮切りに、初夏のモスコ-やその後欧州でもヘリ業界の集いが続くが、世界の3大エアショ-、3大ビジネス機の Business Aviation Conference & Exhibition でもヘリコプタ-関連の出展や会合はあるが、金額が嵩む軍用機や商用機、ビジネス機の上位機種の陰で地味な存在と成る事は已むを得ない。それでも、2013年のパリ-エアショ-では米国ヘリコプタ-業界を代表するHAIAirbusの地元のフランスのヘリコプタ-協会がグロ-バルな業界発展を目指し「協働」の提携をした事は軍用機・商用機の大型成約の陰で殊更報道される事は無かったが、ヘリコプタ-業界では画期的な出来事であった。90年代末期には、日本も米国、カナダに次ぐヘリコプタ-大国であったが「失われた25年」で世界に於ける相対的地位は大きく後退したとは言え、現在も800機余の民間ヘリコプタ-を擁する「存在感」は維持している。仮に、本サイトで提案されている、業界の「協働」によるAir Taxi導入が実現すれば、日本の関係業界は勿論、地方経済の活性化と言った国民経済への貢献は計り知れず、世界第何位と言った表面的な比較ではなく、業界「協働」による実質的な社会貢献のメリットが視野に入る。

本年のHeli-Expo 2016229~33日の間、商用便の海外幹線空港よりの直行便がないLouisville, Kentuckyで開催された事への多少の不満は出たが、日本からも例年の如く多くの参加者があった。

業界が直面する期近な課題は石油価格の暴落である。石油価格の下落でヘリコプタ-の燃料価格が値下がりし運航費が節減出来ると言うメリットがあるにしても、最近のヘリコプタ-ブ-ムが洋上油田開発によるものである事は周知の事実で、米州、北海、東南ア等はその恩恵に浴して来た。Offshore Activityの鎮静化は業界に量り知れない影響を及ぼして居る。今回の石油価格下落はサウディを盟主とする産油国による米国のオイルシェ-ル(米国はサウディを抜き世界最大の産油国に躍進)との覇権争いが直接の動機、更にサウディ(スンニ派)とペルシャ帝国(シ-ア派)との歴史的対決の様相も帯びて来たので、ヘリコプタ-業界の到底力が及ぶ事態ではない。シェ-ルオイルの生産コストは$60~80/bblと見られるが、$30/bblを割る事態と成った。世界銀行は,何れ$50.bblに戻ると見ているが、この水準であれば、オイルシェ-ルもさる事乍ら、深海油田の生産コストも引き合わなくなる。幸い、日本は台風圏外。石油価格の下落はヘリコプタ-運航の燃料費の節減、Offshore用の大型機の穴を埋める低価格帯軽量機への重点移行で、ヘリコプタ-のAir Taxi用機材の「纏め買い」の好機でもあり、業界「協働」の背中を押す要因とも成り得る。

洋上油田開発用の大型機に注目が集まるHeli-Expoも今年は話題も下火と成りSikorskyの二重羽高速X2機やBoeing-Sikorsky共同開発のSB-1機等軍用機の開発がSingapore Airshow同様注目を浴びたが、此処では日本の民間機と関係ある事項を簡単に列挙する。

 

1.世界の民間ヘリコプタ-業界に甚大な影響のある石油価格の動向も頭の隅に置く。

2.石油危機以降産油国にヘゲモニ-を握られた米国の「逆襲」と言う歴史的転換点でもある。

3.中東でも紛争はサウディ(スンニ派)、イラン(シ-ア派)の覇権争いにも飛び火した。

4.石油、ガスに経済的に大きく依存するロシア、それが権力基盤のプ-チン大統領に大打撃。

5. 米国は産油国に対する「逆襲」を進めると同時にロシアにも壊滅的打撃を与えられる。

6.ヘリコプタ-を含むビジネス機の牽引車のブラジル、ベネズエラ、メキシコも直撃。

7.日本は石油価格下落の恩恵に与れるが世界の地政学的な地殻変動にも留意する。

8.当面日本のヘリ業界の「失われた25年」の挽回に業界は「協働」による結束で対応。

9.日本で利用されない高額ビジネスジェット機は脇に置き低価格帯ヘリの活用を工夫する。

10.日本にも馴染む価格$1.07百万㌦のBell 506 Jet Ranger XExpoでもホットな話題。

11.日本はHeli-Expo 20141社が、20152社が市場に未だ姿がない新鋭機を仮発注。

12.2016年上半期の型式証明取得はデザイン改善で遅れるが、年内取得と出荷が当面の目標。

13.現時点で350機の仮発注を手中にしている。これはBellのブランド名に対する信頼。

14.この為対抗馬Robinson R-66への新規発注は減少したが受注残が多く影響は少ない。

15.生産が受注に追い付かない面もあるが、それ以上に型式証明取得事務に忙殺されている。

17.航空機全般に共通の「安全性」も最重要課題。Expo期間中多種、多様なセミナ-を開催。

18.ヘリ機材が低価格の為、利用者が広範囲に及び自家用機の事故や訓練事故も多発する。

19.機材の安全性は高いが人為的ミスが多く計器の改良も顕著だが「無人機」の開発も進む。

20.自動車の無ハンドル車開発が進みヘリの計器飛行と併行して「無人機」の動向にも留意。

21ヘリ業界を取巻く経済環境も激変、機材も安全性の対応への変化にも目は離せない。

22.あらゆる業界、企業に共通の事乍ら「現状安住」ではなく「変化への対応」が不可欠。

 

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