2016年09月20日(火)01時32分
(16-12) UAV 3 ( 無人機-Unmanned Aerial Vehicle )
UAVをトピックス欄で昨年より2回取上げたが、日本でもかなり昔より農業分野での「薬剤散布」で利用され、総理大臣官邸屋上へのドロ-ン墜落でマスコミに話題を提供した。最近は宅配でのドロ-ンの利用や千葉県は湾岸の工業地帯での利用試験も取り沙汰されている。米国でもホワイトハウスの庭園にドロ-ンが墜落、ワシントン内での利用は規制されたが、商業的な利用の試みには政府も前向きに対応している。前回はこの辺の動静にも触れたが、過去2~3年、UAVは独立した航空産業の一分野として各種の業界の会合や業界誌でも積極的に取り上げられる様に成った。
小型UAVはFAA Part 107が8月29日に発効し最初の日に、3,300人が運航許可資格取得の申請を行った。FAAは新規ル-ル発効の初年度に600,000機のドロ-ンが登録・利用すされると予測している。
1. 人間の頭上の飛行 : 既に報道、イベントの撮影、集会の参加者のモニタ-へのドロ-ンの応用は、12月迄にル-ルが決まると見られて居ろ。利害関係者 (Stake-Holders) を含む委員会よりの提言書は4月1日にFAA が受領済。250グラム以下の小型ドロ-ンは事実上飛行自由で、より重い物は一定の規制が設けられるとの予測。CNNはGeorgia Tech Research Instituteの助力で8月にCNN AIR (Aerial Imaging and Reporting) の為のUASユニットを発足させた。
2. 運行範囲の拡大 ; 2017年末を目処にPart 107の一部免除項目が規定される。免除項目である以上、個別審査の対象と成るが、夜間飛行、EVLOS (Extended Visual Line of Sight-視界距離の延長)BVLOS (Beyond Visual Line of Sight-視界外飛行)等が検討対象。具体例としてCNNの報道情報蒐集、農業分野 (3.5~7㎞範囲)、鉄道路線の検査等への応用が検討対象。
3. 飛行空域 : 高度400フィ-ト以下の空域をブロックに分け運航許可を出したり、運航許可を必要としない場合はDAA (Detect-and∸Avoid) システムの装備が必要と成ろう。新たな基準のMOPS (Minimum Operational Performance Standard ) はRTCAが準備中で12月迄に公表予定。従来の500フィ-ト以下の空域を飛行する25g (55ポンド)以下のUAVは適用外。
4. 小包の配送 : AmazonやGoogleの親会社Alphabetが試みているが多くの検討課題があり、NASAがUTM (UAS Traffic Management System) の開発を主導、来年度の予算が付けば(本年10月)、9か月以内に2年間の検討を行う。この間AlphabetはFAAが指定する空域でProject Wingと称する試験飛行を始める。Seven ElevenやZipline Internationalによる輸血用血液の配送等も検討されている。これらはPart 107やそれに先行したSection333の免責項目の柔軟な運用で運航可能と言われている。
5. Micro-UAS : 250g(55ポンド)以下のUASにもPart 107が適用されるが、現在飛行中のUASは2㎏以下の物が多い。FAA/米国議会もPart 107 とは別個にMicro-UAS用の緩い規制の作成も考えたが、2017年に再検討する事と成った。焦点は人間の頭上飛行を許可する事。
6. 大型-UAS : 当面Part 107の免責条項の適用例外管理とする。実例として挙げられているのがヤマハが開発した農業用散布機207ポンドのR-Max, 森林消火用にLockheed Martinが開発した12,000ポンドのK-Max, Elliot Systems of Americaが開発した農地用の地図作成、電力線の点検を行う990ポンドのHermes 450等がある。農業用空中散布、森林火災の消火、空撮・測量、電力線点検等は従来の日本のヘリコプタ-の主要任務でありUAVがこの分野への進出を図り開発が進み、法制が整備されれば、コスト的には大きなメリットが出て来よう。
7. 模型飛行機・趣味・レクリエ-ションとしてのUAV ; Micro-UAVと趣味的に飛行させるUAVの境界線や線引きは難しい。米国議会は2012年にSpecial Rule for Model Aircraftsを策定、レクリエ-ション用のUAVに対する「過剰規制」の歯止めとした。FAAにUALの登録が必要に成ってから550,000機が既に登録済。「規制強化」と「過剰規制抑制」の二つの相反する調整も今後の課題。
8. Privacy : 小型UAVによるプライバシ-の侵害に対する一般の懸念が大きいFAAは現段階で規制は行わずプライバシ-尊重の為の勧告ル-ルを出すのみに留めている。
UAVの今後に就いては2018年で26億㌦、2025年エ109億㌦との予測も出されているが、2022年頃には一般大衆市場への商業的利用も普及するとも見られている。然も、その影響は航空産業のみに留まらず、社会インフラ全般への現在は予測も出来ない広汎なインパクトがあると見られて居る。ドロ-ンによる宅配を取っても、現在の地上宅配便、小売業、郵便インフラ、顧客の消費パタ-ンにも大きなインパクトと変革が予測される。
元々無人機はベトナム戦争での森林への薬剤散布に利用され、現在は紛争地域での偵察や無人爆撃に利用されている。この様な軍事技術の民間への移転は将来商用機の無人飛行(最近の航空機事故は操縦士のミスによるものが多い)、日本であれば小型固定翼機・回転翼機の主要用途である貨物の搬送、電力線検査、報道取材、空撮・測量、消防、警察、遭難捜査、防災等の全ての分野に大きな変革を齎す。米国では、そのインパクトを重く見て、此処2∼3年航空機産業の重要テ-マとして真剣に取り上げて来た。
1.米国は建国以来240年の若い国。変革を怖れず果敢に実験に挑む。駄目なら「ダメ元」で他の方法を試せば良いと言う開拓者精神、チャレンジ精神が今でも残っている。
2.元々政府等なく自主的に国を作って行った。社会ル-ルは秩序維持に必要だが過剰規制や民間への官僚の過剰介入は嫌う。
3.日本は様な文化の差を認識し乍らも「変革への対応」への準備も整える事が求められる。
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