2016年11月05日(土)05時53分
(16-14) BACE 2016-NBAA Convention 2016
BACE (Business Aviation Convention & Exhibition) は NBAA (全米ビジネス航空協会) Convention として親しまれて来たが、最近は欧州のEBACE (European Business Aviation Convention & Exhibition-初夏スイスGeneveで開催)、アジアのABACE (Asian Business Aviation Convention & Exhibition-春中国上海で開催) の年次総会に合せた Conventionで呼称に共通性を持たせる為、アジアでのABACE、欧州のEBACE,そして1年の締め括りは米国のBACEとした。グロ-バル時代、何処のConventionにも関係者が世界中より参集するが、ABACEで8,000人前後、EBACEで13,000人前後、BACEで27,000人前後 (最盛期30,000人を超えた事もある) と、或る程度地域毎の関係者の多寡を反映して居る。本年のBACEは11月1~3日フロリダ州Orlandoで開催された。
2016年BACE開催の業界を取り巻く環境と過去の経緯を含めその軌跡を辿って見た。
1.第二次大戦終了後軍用機のパイロットの雇用救済策として民間機への転用が進んだ。
2.技術の民間移転とパイロットの活用で民間の商用便が長足の進歩を遂げた。
3.更に、軍用、商用便以外の民間企業や個人の私有機のGeneral Aviationの発展も齎した。
4.1947年2月、医薬界大手Bristol Meyersの主導で民間企業19社でNBAAが設立された。
5.この19社は業界横割りの代表的大企業で重要な点は皆ビジネス機利用の大手企業。
6.約70年後の今日会員は10,000で会員企業の売上高は5兆㌦と日本のGDPに匹敵する。
7.但し、正会員はビジネス機のオ-ナ-に限定されて居るデマンドサイドの業界団体。
8.1951年朝鮮戦争勃発に伴い政府との密接な協力が必要と成り本拠をワシントンに移した。
9.今日デマンドサイドの見解を代弁し政府と折衝する圧力団体30,000の-つとの位置付け。
10.最大の責務はAdvocacy (業会擁護) でビジネス機は「特権階層」の持物との偏見打破。
11.”No Plane, No Gain” を旗印に、ビジネス機の利用で企業の生産性向上への貢献を強調。
12.ビジネス機の利用による時間節減を人件費の節減に換算「費用対効果」を算出する。
13.必要な計算ソフトも市販、ビジネス機の利用の経済合理性を内外にアッピ-ルした。
14.又自らも会員企業の利用実例やコスト計算も公開しビジネス機の一般普及に注力した。
15.ビジネス機の普及に必要なFractional Ownership, Time Sharingを精力的に支援。
16.結果として90年後半~2008年の10年間にビジネス機市場は劇的な急成長を見せた。
17.2008年秋のリ₋マンショックで急ブレ-キが掛かり需要は半減中小機メ-カ-は大打撃。
18.Beech-Hawker は破綻.Citation, Beech, Cessna はTextron傘下で統合Learjetも買手模索。
19.但し、業界は石油・ガス資源国、中国の「特権階層」の旺盛な需要で上位機種は安泰。
20.これがサウディによるシェ-ルルオイル潰しの石油価格の暴落と中国汚職撲滅で様変り。
21.産油国と中国の上位機種買い控えでバブルは弾け好調を謳歌した上位機種の需要も減少。
22.石油価格は底離れしたが、$50/bbl水準での低価格推移が予測され中国経済も成長鈍化。
23. 但しビジネス機業界が心血を注いだ「特権階層」の持物との通念払拭は裏目に出た。
24. 「特権階層」の上位機種買い漁りと中小機種の需要激減が厳しい現実の姿を露呈した。
25.ビジネス機の売却で中古機在庫も増えこれが新型機の販売圧力の重しと成っている。
26.日本はビジネスジェット機の上位機種は皆無大手企業のジェット機所有も無く嵐の圏外。
27. この様な業界としての逆風下で2016年のBACEが開幕した。
1.当然の事乍ら派手な広報的上位機種の大口成約はなく、過去の先喰い成約発表も影響した。
2.投資銀行Jefferiesはビジネス機販売機数が2015年714機/年より2018年628機に減少予測。
3.毎年将来の販売予測を発表するHoneywell社は2018年迄市場の回復は無いとの悲観的予測。
4.Ascendは2014~15年は出荷720機/年程度の足踏みで2016年の9ヵ月は前年9%ダウン。
5.リ-マンショック以前の2008年時のピ-クで1300機/年のペ-スから今昔の感がある。
6.中小型機は5%増9機の改善は有ったが、好調を謳歌した大型機は18%ダウンの惨状。
7.希望が持てるのは18~25百万㌦のSuper-Midsizeジェット機で新鋭機の登場が注目の的。
8.Falcon 2000,G-280,Callenger 350にEmbraer Legacy 500、 Cessna Latitudeが挑戦。
9.Cessna社はLongitude 航続距離6,400㎞、Hemisphere航続距離8,500㎞を開発中。
10Longitudeは2017年出荷、価格23.9百万㌦、Hemisphereは2020年出荷、価格30~35百万㌦予定。
11.Cessna HemisphereでRome-Orlando直行可能。「高かろう良かろう」から経済合理性追求。
12.Cessna M2の本年現在の受渡26機、ホンダジェット14機で市場参入の滑り出しを開始。
13.本年末出荷予定のBell 505は価格1.1百万㌦、VIP用高級内装で安物のイメ-ジ払拭。
14.低価格、性能アップで「特権階層」以外の一般の利用普及と言う「原点回帰」で需要回帰。
15.ビジネス機の本年成長予測は地域的には米国10%、アジア30%ダウン、欧州はゼロ成長。
16.Gulfstream社は1100人をレイオフBombardier社はLearjet社の体制見直しに入った。
17.Textron社は価格次第でLearjet社の買収を示唆。中小型機の業界再編も最終段階に入る。
18.ブラジルEmbraer社は1500人の希望退職者を募り2億㌦のコスト圧縮を図る。
19.Dassault社はFalcon 5Xの市場投入を2017年より2020年に延期。各社共開発計画を延期。
20. ビジネス機のバブルが弾け「過剰奢侈」より「経済合理性」への重点移行の健全性重視。
21. 日本は元々「経済合理性」に徹底した利用、世界の潮流も本来の経済合理性重視に回帰中。
22.寧ろ本サイトで指摘した日本でも上位機種も利用される作為的な「虚像」捏造は不要。
23.日本は上位機種の1/50~1/100程度の低価格帯機材が主流で一般普及に不可欠な事を再認識。
24.日本から12機発注が行われAir Taxiへの期待が高まるBell 505は高級感機種を発表。
25.ビジネス機の不況下で今後の業界見通しを探り意見交流を図る為参加者数は多く活況。
26.又、低迷する市場へのビジネス機の販売を策しStatic Displayは114機で陳列場満杯。
27.何れにせよ「冬の時代」は長引くが、日本が求める低価格帯機材の開発は拍車が懸ろう。
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