2012年12月08日(土)12時31分

はじめに 02

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1973年の石油危機は日本の高度成長期のピ-クを過ぎた時点で世界を襲った。ニクソン大統領のドルと金の兌換停止、円/ドルの為替交換率の変動相場制への移行が石油危機と重なり、日本企業は未曽有の危機に直面した。事態打開の対応策としてTQCの確立と実行により危機を脱する事に成功した。米国は日本に追い抜かれそうに成り、日本のTQCを逆輸入し、企業の再生を図った。日本のビジネス機事業は欧米は勿論、新興国に比しても世界より大幅に取り残された様にも見える。これへの対応は日本のお家芸であるTQC手法で考察して見た。利用した主なTQC手法の簡単な解説は下記。

「当り前の事」を「当り前に行う」

おそらく、千万人を超す運動の参加者が最も基本的な原則として耳にタコが出来る程聞かされた事

ジェネアビの市民権の確立とこれに見合った法制の整備(諸外国では当り前)

利用者が利用可能なビジネス機の利用料を提供出来る方策を利用者の積極的参画で工夫する

問題の発掘「問題の認識」-Plan-Do-See PDAC (Plan-Do-Action-Check) 計画立案実施行動結果の検証と計画の手直し逆行への歯止め

目的の明確化、目的の設定、情報の収集、情報の分析・評価、実行案の作成、計画の実施、結果の評価・手直し

方向性の不明確、言い放し、遣らず仕舞い、遣り放しよりの脱却

「会して議せず、議して決せず、決して行わず、行って省みず」よりの脱却

「在るべき姿」と現状のギャップの認識

何が問題なのか?何故そうなのか?何を遣りたいのか?何が求められて居るのか?どうあるべきか?どんな遣り方が有るのか?どんな方法を選ぶのか?どんな手順で進めるのか?

本稿で或る程度問題点を摘出したので読者が夫々の立場から考えて戴く

アイディアの発掘 “創造とは目的達成に必要な過去の経験・知識の解体・新たな結合による新しい効用の実現”

ブレ-ンスト-ミング

善悪の批判は禁句、自由奔放なアイディア歓迎、質より量 (アイディアで実現するのは千三つ)、他人のアイディアに便乗・付加・合成  「百家争鳴、百花斉放」

頭の壁の撤去

「認識の壁」  固定観念、暗黙の仮定、与件の見落し、手段と目的の取り違え、木を見て森を見ず

「情緒の壁」  自信の欠如、劣等感、臆病さ、意欲の欠如、変化への抵抗

「思考の壁」  枠に嵌った考え、他人の考えを受け入れない、統計の鵜呑み、知識の有り過ぎ

全ての人間、特に知識人の持つ生来の弱味を如何に克服するか

アクションプラン 一般論、観念論、当為論 (かく在るべき論)の排除

“議論の為の議論”、“言葉の遊び”、“言葉を飾る“悪習の一掃。「論より実行」「事実を以って語らしめる」

「プロセス・結果を定量化出来なければ管理は出来ない」 “One cannot manage what one cannot measure”

現実直視 「鏡に映った自分の真の姿と向き合う」白雪姫に出て来る醜い魔女が魔法の鏡に世界一の美女は誰と問うと煙が立ち醜い老婆が美女に変わる。米国では”Smoking Mirror”と呼ぶ己の真の姿を見ない人の弱さを表現。

本稿では読者に日本のビジネス機事業の真の姿を見据えて考える為、裸の姿をお見せした

Market-In”と”Products-Out”

ユ-ザ-・市場志向の考え方が”Market-In” メ-カ-の製品の押し付け、市場のニ-ズを慮らない箱物の氾濫に対する反省より生まれた言葉。性能も良く、価格低廉、遣い勝手に配慮した日本車がBig 3に勝利。LCCが利用者のニ-ズを掴み、全ての大手航空会社が破産法の適用を受けた。日本でのビジネス機事業を成功裡に普及させるには、ユ-ザ-グル-プの巻き込み、参画が絶対不可欠。

本稿でもLCCと、「ビジネス機LCC

のビジネスモデルの類似点に就いて言及。

小集団活動 “何でも、自由に、安心して、気兼ねなく、楽しみながら“の実践行動 “Small is Beautiful”

リ-ダ- : ”聞き上手、掘り出し上手、纏め上手”、示唆・助言(岡目八目)、激励 (共に夢を語り合う)、教育(自己啓発、相互啓発、体験研修)

リ-ダ-シップの養成 : 動機付けの上手さ、役割配分の適切さ、纏め役としての手腕と信望

未来志向型組織 : ネット型、平面的・横割り組織、プロジェクトチ-ム、マトリックス組織、弾力的ソフト組織、チ-ムワ-ク、連係プレ-、ネットワ-キング

Legacy Carrier (大企業病の没落)、LCCの台頭、Alliance (ネットワ-キングの成功)等はこの辺に根差す

 

国政では、官僚の無駄の削減、民営化、「小さな政府」が叫ばれるが、これらの「行政改革」が悉く失敗、骨抜き、逆戻りするのは、「組織文化・風土の変革」を成し遂げる為の具体的なツ-ルが与えられて居ない為、改善は幹部も有るが、裾野の改善も必要で組織の「全員参画」が原則。ツ-ルを与え使いこなすノウハウを伝える「改善屋」の存在も不可欠。(TQCの七つ道具の駆使)「民」と「官」と言う言葉が良く使われるが、「民間」でもピン錐。福島原発事故で「規制産業」東京電力の「官体質」が露呈したが、卑近な例としては、航空産業で見られた「官」体質の米国大手航空会社が全て経営破綻。そして日本のフラッグキャリア-JALもその例外では無かった。航空会社の経営幹部に批判が集まり勝ちだが、日米共に最大の「抵抗族」は底辺組織を代表する組合であった。日本のTQCが成功したのは「全員参画」のボトムアップ運動として組合員を含めた裾野の組織構成員に自主管理・自助努力による企業体質の改善・強化を図った為。TQCに参画した人は、「年齢、性別、職位」を問わず、成果を産む事で、達成感、一体感、「夢の実現」、「協働」による成長感、「喜びの共有」と言う、物質的な充足感とは異った次元の「自己充足」と「自己実現の喜び」と言う人生の究極的な目的を肌で感じ取らせたから。ビジネス機の一般普及を根付かせるには(コストに無関係な富裕層や特権階層は別にして)上記の様な発想と日常業務のコペルニクス的転換・見直しが必須。民間企業の中でも「勝ち組」と「負け組」が混在するが、「勝ち組」は「環境変化への対応」をそれなりに果したからで、それさえ「終わる事無き改善の努力」を続けない限り「盛者必衰の理」より逃れる事は出来ず淘汰される。自身の真の姿と向き合わねば、日本のビジネス機事業は今後もどんどん世界より取り残される。

近年、原子物理学、量子論の急速な進歩で「神の粒子」或いは「生命の根源」と言われる「ヒッグス粒子」の存在がほぼ確定化の段階に至り、「生命」とは何かと言う事が改めて問われている。決定的な定義は存在しないが、米国NASA (1994) Oliver & Perry (2006)の定義を紹介する。

  • 「生命とは、ダ-ウイン進化を受ける事が可能な、自己保存的な化学体系」 (NASA)
  • 「生命とは、外的および内的変化に対応し、自己の存続を推進する様な方法で自己を更新する自立系を可能にするような事象の総和である」 (Olive & Perry)

何れの定義にも共通して居るのは、「自己保存の為の環境変化への対応」と言う事である。日本も「失われた四半世紀」を迎え様としている。TPP, FTAの対応でもグロ

バル化と言う環境変化への対応に戸惑っている。」 環境への適応能力を失えば恐竜同様死滅する。日本が今日直面している諸問題の核心に迫れば、「アイデンティティ-の喪失」と言う根本問題に直面する。高度成長期、ジャパンパワ-の威力が世界を震撼とさせた折、ワシントンで何度か聞かされた事は「日本は何れ国家の目標を見失い漂流する」と言う事。明治開国以来「西洋に追い付き追い越す」事を国家の目標として来たが、これを達成する事で次の目標を見失った。克ち得た洋風文化と物質的な豊かさに対し、日本人は何か大切なものを見失い、物質的な豊かさのみで幸福は買えない事を認識した。

本論に戻り、立ち竦んで世の盛衰を傍観して死滅する選択肢は日本にはない。ビジネス機の世界で、日本と海外の間に決定的な格差が生じ、成長するアジアのバスにも完全に乗り遅れて居るやに見受けられる。遅蒔きの誹りを受けても、環境への対応を図らねば成らない。半島の変化に触発された大化の改新、鎖国の遅れを取り戻した明治維新、民主国家として敗戦より立ち直った新生日本等日本の驚異的な環境適応能力は広く世界に知られている。本稿ではブレ-ンスト-ミングの為、敢て挑発的、刺激的な記述が散見されるが、意の有る処をお汲み取り戴き度い。

 

1996JBAAが発足、日本のビジネス機普及の動きが組織化されて早16年、多くの現実が浮き彫りに成った。「事実が語った」鏡に映し出された真の自己の姿に向き合わねば、日本のビジネス機事業は今後もどんどん世界より取り残される事に成ろう。

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