2012年12月23日(日)11時52分

ビジネス機利用のメリット

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要  約

1. ビジネス機利用のメリットに就いては、数多くの資料が出回って居るが、NBAAは簡潔に“UBVと言う標語に凝縮させている。即ち、ビジネス機を戦略的に使う事(U-Utilization Strategies)によりベネフィット(Benefit)を産み出し,企業価値 (Enterprise Value) を高める事を目標に置いて居る。これをマトリックスに纏めた物が下記。

2.ビジネス機を利用する企業と利用しない企業の業績比較評価を行ったデ-タ-結果も添付した。

3.ビジネス機の利用選択肢としての自家所有、分割所有、タイムシェアリング、メンバ-制カ-ド、オンデマンド・チャ-タリング、エアタクシ-等の解説も添付した。

 

Utilization Strategies

Benefits

Enterprise Value

Transportation of Employees Employee Productivity Market Share Growth
Transportation of Customers Strategic Transaction Acceleration Profit Growth
Transportation of Suppliers Improved Customer Relation Asset Efficiency
Transportation of Cargo, Parts, Mail Supply Chain Improvement Customer Satisfaction
Transportation for Charity Product Cycle Improvements Employee Satisfaction
Direct Application Employee/Property Security Innovation Effectiveness
Improved Personnel Relation Improved Compliance
Improved Risk Management
Acceleration in Innovation
Direct Travel Expense Savings

 

これを数値化したものが下記。S&P500社の内ビジネス機を使わなかった会社を1.0とし、使った企業の2003~7年と2008年の業績を指数で表した場合、ビジネス機を使用した企業の方が全ての項目で優れた業績を挙げた事が実証された。但し、ビジネス機の利用に全ての業績向上の成果を帰すのはやや身贔屓。寧ろ、ビジネス機を活用する先駆的な企業文化がビジネス機利用との相乗効果を挙げて居ると見るべき。

 

未利用企業

利用企業2003~7

利用企業2008

売上高成長率

1.0

2.16

1.73

収益成長率

1.0

5.34

5.94

市場価値成長率

1.0

5.96

2.70

資本収益率 (ROE)

1.0

3.62

3.45

 

日本として見習うべき点は、上記の様な「事実」(Hard Facts)を中立の第3者にキチンと纏めさせ、空理空論を排して「事実を持って語らしめる」処に本質がある事を理解すべきである。上記の数値は、2009年のNBAA Conventionで発表された、NEXA Avisors, LLC. Business Aviation An Enterprise Perspective The S&P 500 From “003~2009と題する34頁のレポ-トでNBAAのウエブサイトから誰でも無料でダウンロ-ド可能。NBAAは相当多額のレポ-ト費用を支払ったであろうが、これをメンバ-会社に限らず、広く全ての人に無償で情報を提供する事でビジネス機市場の拡大を図って来た事に特に留意すべき。GAMAGeneral Aviation Statistical Databook & Industry Outlookと言う資料を毎年纏め、全世界のジェネアビ関係の統計、過去の推移、将来予測を発表しているが、これも誰でもGAMAのホ-ムペ-ジより無償でダウンロ-ド可能。「公平」「偏らない」「情報開示」こそ健全な市場発展の最大の武器と言う概念が確り定着している。

 

ビジネス機の利用選択肢

一般利用者がビジネス機を利用する為には過去四半世紀,様々な方策が提示されこの様な利用者が使い易い (User Friendly)モデルは 現在でも改良や考案の努力が日々続けれて居る。

自 家 所 有

1.車で言えば自家用車を持つ事。自分のニ-ズに合せ何時でも使えるが、車と違って運転(運航)免許が簡単に取れないのでパイロットを雇う必要があり、機種により副操縦士も雇う必要がある。駐機もハンガ

が必要と成り、空港の許認可取得も必要。従って、自家用機でも、運航会社に保守・修繕も含めた運航業務を委託する事も多い

2.企業でも社有車を廃し、運転手付きの社有車はトップ以外は廃止してハイヤ-を使う企業も増えて来た

3.航空会社も航空機を自社所有せずリ-スする会社も多い。買替えのニ-ズがあればその方が便利な場合も多い

4.一般論であるが、ビジネス機の場合、年間500時間以下の利用、ヘリコプタ-で有れば300時間以下の利用で有れば自家所有に代えて下記の諸選択肢が推薦される。

分割所有 (Fractional Ownership)

1.ウオ-ル街で、航空機のリ-スを担当して居たRichard Santulliは個人がプライベ-トジェット機を購入しても有効に使い切れないのではないかとの疑問を抱き1986Executive Jet Inc.を設立、この会社がジェット機を購入の上利用者に分割販売するFractional Ownershipのビジネスモデルを構築した事で米国のビジネス機市場は急速に成長した。分割所有は1/2~1/18迄有るが、稀に36分割する事もある。割り易い様に機材価格を$36百万㌦と置いた場合1/18にすれば2百万㌦、1/36で1百万㌦と個人でも手の届く価格と成る。1998年、米国の株式投資で大富豪に成ったWarren BuffettSantulliの説明を20分聞いて即座にExecutive Jetを買収したとの伝説的な話を産み、2002年にNetJet Incに改称今日に至って居る。

2.最初ビジネス機メ-カ

Gulfstreamと提携した為、他のビジネス機メ-カ-も遅れじとFlexjet (Bombardier),Flight Options (Raytheon), Citation Shares (Cessna)と次々と同様なプログラムを売り出し、これが90年代後半~2000年前半のビジネス機ブ-ムに火を付けた。JBAA1996年に設立されたのもその一端。

リ-マンショックの2008年位迄、年間120機位のビジネス機の受渡しが有った。

3.一方、機材を分割所有しても個人では運航は出来ないのでNetJetがこれを代行したが、1機を18人が所有するのでは、その管理や運航代理の業務は複雑化し、所有者からも様々なクレイムが付き、寧ろ下記の様なビジネスモデルが次々と考案された。NetJet自身、100%子会社のMarquis Jet Partners, Inc.を設立カ-ドの販売・管理・運用等を任している。他の、ビジネス機メ-カ-も夫々自社のカ-ドを発行し、利用者の囲い込みに血道を挙げている。

4.2008年の段階でNetJet702機のビジネスジェト機を保有し、子会社のMarquis Jetはカ-ド保有者の70%を傘下に抱え込むに至った。

5.NetJetは潜在的市場としての中国に期待し中国にNetJet Chinaを設立、目下Aviation Authority of Chinaに事業許可申請中。

タイムシェアリング (Block Chartering, Time Sharing)

1上記Fractional Ownershipに対する不満に応えて、運航会社が機材を所有し、必要利用時間を予め契約するタイムシェアリングのビジネスモデルが登場した。.企業は年間200時間ビジネス機を利用するとすれば、年間200時間を纏めて契約するBlock Chartering ,一般的な利用枠は有っても、実際の利用時間に応じたコスト負担をするタイムシェアリング等種々の形態が混在している。

2.予め一定時間の利用をコミットすれば有利な利用が得られる代わりに利用者は拘束されるが、大枠の中で弾力性を持たせ様とすればコストに反映されるとか一長一短が有るが利用者のニ-ズに合せた選択が為される

3.料率が利用機種別に決まっているが、全てのコストと運航会社の利潤も包含されて居るので、利用者も予算計画が立て易く予期しなかった請求書を受け取って慌てる事もない。

クラブ制メンバ-カ-ドによる利用

1.利用者の期待と現実に乖離が生ずる事は間々ある。話が違うではないかと利用者とトラブルに成るのは避けける為にも、メンバ-カ-ド制は日本でも様々な業種で採用されている。利用者の囲み込みが出来る一方、利用者はプリペ-ドカ-ドと同じく、カ-ドを乗降の際提示すれば一切の精算業務の手間が省かれる。

2.日本でのSuica等典型的な例だが、ゴルフコ-ス、リゾ-トマンション等は古くから、分割所有、タイムシェアリング、クラブメンバ

制、メンバ-カ-ドの流用等様々な複合利用形態に成って居り、米国でのビジネスモデルも日本で従来より利用されて来た形態と原理的にはさして違いは無い。

On Demand Chartering (必要に応じた随時チャ-タリング)

1.必要時に必要な要件にマッチした個別のチャ-タリングを行う形態で敢て説明を要しない。

2.米国では日本と違い、ビジネス機のOn Demand Charteringのニ-ズは桁違いに多い。従って、オンラインのブッキングも簡単に出来る為、日本の定期商用便同様ビジネス機運航会社のサイトで予めニ-ズを満たす最適の機種と料金を調べ複数のサイトの結果を比較して好みのブッキングを行う利用者の選択保証が確保されている

エア・ハイヤ-/エア・タクシ-

1.筆者の記憶では最初にエアタクシ-を利用したのは1960年なので、国土の広い米国では数十年前より一般化して居たのではないかと思われる。

2.最近は、3百万ドル台のマイクロジェット、1百万ドルを割るタ-ビン機のヘリコプタ

R-66等が上市され、この業界の新しい担い手との期待も高まって居る。

3.日本では未だエア-タクシ-と呼べる程のビジネス機は存在しないが、遊覧飛行等利用客がスポットで航空機材をタクシ-的に利用して居る事例はある。週末、に成ると筆者の自宅の横を東京より伊豆、箱根に飛ぶヘリコプタ-が見られるが、根府川の小田原ヒルトン、箱根翠松園、箱根プリンス等への逗留客、紅葉の頃は空からの観光等のサービス提供はハイヤ-的利用と見做す事も出来る。

 

後述するが、日本の場合地上交通機関が高度に発達して居る事、国土狭少で大型ビジネス機が利用される可能性は低いし、企業や個人がビジネス機を所有しても持て余す事になろう。恐らく将来の日本でのビジネス機の利用はOn-Demand Charteringが中心と成ろう。

参考迄にGAMAが纏めた2009年のOn-Demand Chartering用ジェネアビ機の実数は下記。

 

エアタクシ-

遊覧飛行

医療・救急

ピストン機

2,117

71

85

タ-ボプロップ

1,079

50

197

ジェット機

2,489

7

145

回転翼機

1,267

229

753

合  計

6,392

357

1,180

 

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