2013年01月03日(木)02時12分

(7)世界/アジアに於ける日本のビジネス機の位置付け

7)世界/アジアに於ける日本のビジネス機の位置付け

 

要    約

 

1,過去15年中身の入替えは有っても、日本の航空機保有数はほぼ横這い。(下記統計参照)

2. 逆に発展途上国特にアジア地域の成長が今後期待され、日本の相対的地位は低下の傾向。(下記統計参照)

3.軍用を含めた世界のジェット機とタ-ボプロップ機約3万機、日本は166機、軍用・公用を除くと44機でグロ-バルなレ-ダ-スクリンより数年前から姿を消した。(下記統計参照)

4.2000年半ばより、海外迄飛行可能な大型ジェットは全て海外に拠点を移したので極く近間に飛べる機材しかなく、コスト競争も無い為,2010年の海外機の日本への飛来3,544回に対しJA機の海外飛行8回と完全な一方通行。

5.海外での日本企業のビジネス機の登録も地場のビジネス機を活用する等減少が続く。

6.これらの諸統計を見る限り、日本のビジネス機の存在感は諸外国から見れば全く視野の外に在り、近隣のアジアと比較してもその格差は年々歳々拡がる僅りで読者も暗澹とするであろうが、これはビジネス機の数を双発タ-ボプロップ機とジェット機に限った視点に捉われるからで、本稿を継続して読まれれば、日本は狭い国土に適合した小型プロペラ機、単発タ-ボプロップ機、回転翼機等軍用、公共を除いて950機位を擁して居り、本稿を読み進む中に全く異った風景も見えて来る筈。

 

日本の世界市場に占めるビジネス機の保有機数は過去15年相対的に低下を続けて居る。これは、日本が横這い乃至は漸減の傾向が続いて居る中で世界のビジネス機の保有機数が増加して居るからで、その中でもBRICs (Brazil, Russia, India, China) の成長は著しく、ロシアも極東ロシア(広い領土に僅か7百万人が住み、豊富な天然資源の開発には航空機以外合理的な交通アクセス手段が無い)を念頭に置けば、アジアのビジネス機の今後の成長ポテンシャルは世界的にも抜きん出て居ると考えるべき。

 

航空振興財団統計による日本の登録航空機数の推移

年度

2005

2006

2007

2008

2009

2010

ピストン単発

561

561

565

562

568

570

タ-ボプロップ

18

21

23

23

23

24

ピストン双発

51

46

45

43

46

54

タ-ボプロップ双発

110

112

111

111

109

113

タ-ボジェット

368

394

419

436

455

474

タ-ボジェット多発

117

106

90

76

68

36

飛行機計

1,207

1,219

1,230

1,228

1,246

1,247

回転翼機

791

778

773

768

777

781

総 計

1,998

1,997

2,003

1,996

2,023

2,028

 

英国のFlightglobal社の2012年版のjp Biz-Jet年鑑 (2011年度数値)による日本の位置付けは下記。(軍事用、海上保安庁、の保有機を包含するので、JBAAのビジネス機の推定数値より大きく成るが、相対比較で他国も同様なので、同列に扱う)

 

地 域

ジェット機数

タ-ボプロップ

総 機 数

シェア比率(%)

アメリカ

北 米

中 米

南 米

14,824

13,591

220

1,013

9,229

7,706

116

1,407

24,053

21,297

336

2,420

78.2

(71.2)

欧 州

2,836

1,054

3,890

12.7

アジア

東/西アジア

中 東

949

635

314

434

331

103

1,383

966

417

4.5

(3.1)

その他

アフリカ

オセアニア

602

426

176

820

512

308

1,422

938

484

4.6

合 計

19,211

11,537

30,758

100.0

 

l  地域別の保有機数でもカナダ、米国の北米がグロ-バルシェアの71.2%と圧倒的

l  東西アジアのシェアは3.1%、日本はその内の17.2%なので、グロ-バルシェアは0.53%と存在感は殆ど無くなった。然もその7割以上が軍用・公共用機。

l  中国は昨年50機程を買い付け「白髪三千丈」的な誇張はあろうが、2020年には1,500~3,000機と言って居るので、海外のビジネス機業界での日本の存在感は失われ、2005年頃からレ-ダ-スクリ-ン上からも消えた。海外業界誌の日本関係の記事は三菱重工のMRJ,ホンダのホンダジェットの米国での起業化程度の記事に留まって居る

l  日本の登録機数は今後共ほぼ横這いで大きく伸びる予測は無い。

 

アジア地域の主要ビジネス機保有国

 

国 名

ジェット機数

タ-ボプロップ

総 機 数

シェア比率(%)

インド

153

90

243

25.1

中 国

194

24

218

22.6

日 本

90

76

166

17.2

インドネシア

27

28

55

5.7

フィリッピン

26

26

52

5.4

タ イ

24

24

48

5.0

韓 国

30

12

42

4.3

パキスタン

26

15

41

4.2

マレ-シア

16

16

32

3.3

カザキフスタン

25

6

31

3.2

その他

24

14

38

4.0

合 計

635

331

966

100.0

 

尚2012年版 jpBiz-Jet年鑑には軍用・公共の機材も包含されて居ると述べたがこれを下記の様に軍用・公共の機材を除き補正すると、日本航空機全集2011年版に記載のある44機と大差はない。(拾った時点と資料により多少の誤差が生ずるが大勢に影響は無い)又、アジア5カ国との補正を加えた比較値は下記。日本は、ビジネス機と分類される双発タ-ボプロップ機とジェット機の合計は166機。この内軍用。公共に供される機材は123機と全体の74%を占めるがこれは世界的に見て圧倒的なシェア-で他の諸国では類を見ない。

 

国 名

年鑑記載機数

タ-ボ (軍用他) ジェット(軍用他) ビジネス機数

イ ン ド

243

9

19

215

中 国

218

15

35

168

フィリッピン

55

2

0

53

日 本

166

60

63

43

インドネシア

52

3

7

42

 

資料の出典により多少数にずれが有るとお断りしたが、日本航空機全集2012年版では下記。

年鑑記載機数

総機数

海上保安庁

JCAB

公共計

民間商用機

民間ビジネス機

タ-ビン双発

101

22

3

25

59

17

ジェット双発

527

2

4

6

494

27

合  計

628*

24

7

31

553

44

* 628機は軍用機を除いた機数

 

 

 

 

 

 

日本航空機全集2012記載航空局登録航空機(平成24131日現在)

(飛行機タ-ビン双発)

 

所有年月日

登録所有主

機 種

1

1969.08.09

三菱重工業

三菱MU-2B-36

2

1989.02.11

毎日新聞社

パイパ-PA-42-1000

3

1994.05.31

中日本航空

ビ-チB200

4

1997.07.09

ベル・ハンド・クラブ

パイパ-PA-42-1000

5

2001.04.01

電子航法研究所

ビ-チB99

6

2003.04.28

大安建設

ビ-チC90A/B

7

2006.01.06

セイコ-エプソン

ビ-チB300

8

2006.03.23

ノエビア

ビ-チB300

9

2006.10.18

アジア航測

コマンダ-695

10

2007.04.01

伊藤忠アビエ-ション

ビ-チC90A/B

11

2007.06.29

エム・エッチ・アイファイナンス

ビ-チ200T

12

2007.09.04

ラベルダ

ビ-チC90A/B

13

2008.04.30

エアリサ-チ

ビ-チC90A/B

14

2008.05.27

ズ-ム

セスナ425

15

2008.12.18

三井リ-ス(アジア航測)

コマンダ-695

16

2010.06.09

中日本航空

ビ-チB200

17

2011.07.22

川崎重工

ビ-チB20

 

(飛行機ジェット双発)

 

18

1978.12.13

三菱重工業

三菱MU-300

19

1997.06.12

中日本航空

セスナ560

20

1997.11.13

朝日航洋

セスナ560

21

1998.06.05

中日本新聞

リアジェット31A

22

2001.11.17

ダイヤモンドエアサ-ビス

三菱MU-300

23

2001.12.06

ダイヤモンドエアサ-ビス

グラマン-1159

24

2002.08.21

朝日新聞

セスナ560

25

2002.11.17

ダイヤモンドエアサ-ビス

Gulfstream II

26

2005.04.17

読売新聞東京本社

セスナ525

27

2006.08.31

読売新聞東京本社

セスナ525

28

2006.10.13

アルペン・東建コ-ポ

セスナ525A

29

2007.08.17

朝日航洋

セスナ560

30

2008.02.12

ロイヤル化粧品

セスナ525A

31

2008.07.01

グロ-カルジャパン他2社

セスナ525A

32

2008.09.01

コ-ナン商事

セスナ525

33

2008.11.10

安藤商会

セスナ525A

34

2008.11.28

オ-トパンサ-

セスナ510

35

2009.04.10

オ-トパンサ-

セスナ525A

36

2009.11.26

オ-トパンサ-

セスナ525

37

2010.06.25

三菱重工業

ビ-チ400A

38

2010.09.30

中日本航空

セスナ560

39

2010.12.06

ダイコ-インタ-ナショナル

セスナ501

40

2010.12.20

東京センチュリ-リ-ス(朝日航洋)

セスナ680

41

2011.02.21

いであ

セスナ560

42

2011.04.11

タケダ

セスナ510

43

2011.09.20

日立キャピタル(中日本航空)

セスナ560

44

2011.12.19

東京センチュリ-リ-ス

セスナ525A

 

l  2000年半ば頃、日本のビジネス機が海外に拠点を移したがこの一部リストも添付した。

 

企 業 名

機 材

駐機場所

Sony Aviation Leasing

Sony Corporate Services

Falcon 900EX

Falcon 900C

Falcon 2000EX

Teterboro, NJ

Nissan North America

Gulfstream G-550

125-800XP

Smyrna, TN

Subaru of New England

Citation Sovereign

Norwood, MA

Toyota Motor Marketing

Learjet 60

Brussels, Belgium

 

l  海外では膨大な登録が行われて居るので見落としはあり得るが、毎年日本のオ-ナ-と思しき登録は減少の一途。

l  これは日本企業がビジネス機の利用を止めたと言うより、コスト・手間的に自家所有する意味が無くなった為と推測される。トヨタはカリフォルニア、テキサス等に数機のビジネス機を所有して居たが、おそらく現在は、運航会社に委託して使うとか、Fractional Ownership, Block Chartering 或いはTime Sharing等の便法を利用して居ると思われる。以前は、ソニ-は独ベルリンに拠点を設け、トヨタも欧州に拠点を設けて居たが、2008年の登録ではソニ-が消え、トヨタはベルギ-に1機と成って居たが、2010年ベルギ-の登録も抹消された。米国でもソニ-はSony Aviation Leasing や Sony Corporate Services等本体よりビジネス機の管理・運航を切り離して居り、早晩日本企業が海外で利用するビジネス機は共同所有や運航会社よりのチャ-タ-形態を取り、日本企業による登録は殆ど無くなるのではなかろうか。アジアで日本企業が利用する、或いは所有するビジネス機も現地企業との共同所有・運航により日本企業名は登録面上現れない。これを以って、日本企業がビジネス機を利用しないと結論付けるより合理的な利用形態に移行したと考えるべき。この辺は別途触れる事にする。

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