2013年03月12日(火)01時22分
(19) 米国主要都市空港と周辺二次空港との棲み分け
ビジネス機が利用する空港は、空の交通が多忙な主要空港では無く、寧ろ二次的な周辺空港で在る事は本サイトのレポ-トの欄で述ベて来たが、米国の場合、空港数が多過ぎて、二次的周辺空港の統計迄発表されない。日本を含めグロ-バルな空港統計はカナダMontrealに本拠を置くACI (Airport Council International) が世界179カ国、1,650空港の統計を発表して居るが、ビジネス機が利用する米国の主要都市の二次的周辺空港の統計迄は発表されない。然し、統計そのものは把握して居るので、これを拾って提供して貰い下記の表に纏めた。ビジネス機の利用客は、セキュリティ-に問題が多い混雑する空港で離着陸も滑走路の待ち時間が長い主要空港は避け、比較的利用度が低い二次的周辺空港を利用する事が慣し (法規制や行政指導では無く自然な棲み分け) に成って居る。日本では、首都圏空港として、成田が国際線 (夜間は羽田を利用)、国内線は羽田に航空便が1点集中する。現在は容量拡張後でスロットの余裕もあるが、早晩又容量不足に陥る事が予測されるので、二次的周辺空港の茨城、横田の利用を検討し、更に両空港より都市への足としてのヘリコプタ-輸送 (Air Taxi) と都心のヘリポ-ト設置の課題に取り組まねばならない。米国でも周辺空港への交通のアクセスが必ずしも良い訳では無く、周辺空港の顧客の送迎にビジネス機やAir Taxi が利用される。
Air Taxiも2点間輸送で利用料を取る営利事業である以上、立派なビジネス機。GA機(General Aviation-ジェネアビ機でもビジネス機として使われて居ない物も多数ある)と並行してAir Taxiの利用状況のデ-タ-も貰い受けた。商用便が多く集まる主要空港ではGA機の利用は少ないが、GA機も商用便の利用客を送迎する機材も在り、それ以上にAir Taxiによる送迎が多い。本統計より、商用便とビジネス機等のGA機の主要空港と周辺二次空港との自然な棲み分けが行われ、主要空港から商用便を利用する、おそらく高単価利用客は、ビジネス機乃至はAir Taxiで空港にアクセスして居る実態が読み取れる。日本では周辺二次空港と言っても限られて居るので、より簡便な都心、都市周辺の簡易ヘリポ-ト (高層ビルの屋上利用を含め) の代替利用を工夫する必要がある。
ACI 2012年統計 (機数は離着陸合計)
都市名 |
空港名 |
商用機 |
GA+Air Taxi |
GA機 |
Air Taxi |
New York 主要空港 |
J.F. Kennedy
Newark La Guadia |
350,866 277,853 275,568 |
58,412 142,747 98,344 |
7,919 9,858 6,680 |
50,493 132,889 91,664 |
周辺空港 |
Farmingdale
Teterboro Westchester Islip Caldwell Morristown Trenton Bridgeport Stewart |
129 164 16,122 12,255 24 11 35 8 3,999 |
116,602 158,733 136,583 60,563 49,207 98,379 39,218 33,081 28,527 |
107,007 97,466 90,499 54,242 48,186 37,981 35,254 30,604 19,721 |
9,595 61,267 46,084 6,321 986 11,226 3,964 2,477 8,806 |
Chicago 主要空港 |
O’Hare Int’l
|
508,769
|
369,089
|
8,016
|
361,073
|
周辺空港 |
Midway Int’l
Pal-Waukee Duparge County Waukegan Memorial Rockford Int’l Peoria Spingfield Capital Bloominton Quad City Willard Univ. |
184,253 17 21 0 8,731 2,684 235 3,652 4,508 103 |
63,917 63, 807 50,322 25,932 20,110 29,631 20,577 17,440 26,791 26,221 |
37,421 49,465 43,124 22,787 16,896 13,713 13.305 12,032 11.822 10,420 |
26,496 14,342 7,198 3,145 3,214 15,918 7,272 5,408 14,969 15,801 |
Houston 主要空港 |
George Bush Int’l
|
282,049
|
228,735
|
12,186
|
216,549
|
周辺空港 |
David Wayne
Hobby Sugar Land Montgomery Scholes Field |
4 107,260 0 28 0 |
87,901 87,833 47,127 34,048 21,554 |
83,279 53,451 41,519 33,578 10,034 |
4,622 34,382 5,608 470 11,520 |
Los Angeles 主要空港 |
Los Angeles Int’l |
481,338 |
121,493 |
18,334 |
103,159 |
周辺空港
|
Van Nuys
Long Beach John Wayne Torrance Santa Monica Chino Fullerton Municipal Hawthorne Bracket Fields Whiteman Bob Hope El Monte Riverside Memorial El Monte Oxnard George Air Field Ontario Int’l Palmdale |
253 29,623 83,528 22 45 17 3 0 30 0 344,591 23 0 1 0 1,357 54,315 130 |
165,004 105,206 106,798 69,431 68,905 59,316 41,008 40,522 38,509 38,082 58,640 38,082 37,533 29,333 28,312 15,474 15,126 9,255 |
154,419 100,256 97,542 68,969 62,218 58,891 40,841 39,942 38,357 38,082 37,577 36,700 36,530 27,811 24,233 14,061 11,059 9,080 |
10,585 4,950 9,256 462 6,687 425 167 1,580 152 0 21,063 833 175 1,522 4,079 1,413 14,021 175 |
国土が広い米国と日本とを単純に比較するのは無理があるが、空港より商用便であろうがGA機であろうが、Air Taxiが出発点/目的地間の補完交通手段として利用されて居る事は理解出来るであろう。
日本では六本木ヒルズと成田を結ぶヘリサ-ビスが有り、新木場、芝浦も利用されるが、補完交通手段としては一般的ではない。将来、日本でもマイクロジェット機が利用されたとしても、首都圏の場合、調布、阿見、大利根、竜ヶ崎、ホンダ、茨城、横田と言った周辺空港を利用するとしても都心からの補完的交通手段が必要。更に、関東甲信越一円で有れば、都心より周辺空港にヘリコプタ-で飛ぶより、直接目的地に都心より直行した方が時間的にも費用的にも合目的。仮に周辺空港が近く交通のアクセスに問題が無くとも、関東域内にGA機の着陸点が無く近隣の、福島、新潟、富山、松本、静岡に飛んでも、そこから又目的地迄の足が必要と成る。従って、低価格帯のマイクロジェット機或いは新鋭の小型ピストン機でも中々使いこなせない。スイスのPilatus PC-12 (単発タ-ボプロップ機) は全世界で1,000機が販売され、2011末、340機が運航されて居る理想的な小型ビジネス機と言われ日本にも導入されたが、上手く使いこなせず姿を消した。
上記の米国のGA機の運航状況は多くの示唆に富むが、日本の如く、国土狭小故に地上交通機関が高度に発達して居る国では、ビジネス機と言っても、Air Taxi的な地上交通手段の補完として、交通渋滞が激しい都市部-地方間或いは地方から地方への横の移動に短時間、短距離(地上タクシ-と同じ)利用され、然も地方に新たな空港を建設する経済的合理性が無いので、地方の目的地に場外へリポ-トを設置し、ヘリコプタ-をビジネス機として活用する方が、物理的にも経済原則にも適った利用法では無かろうか?
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