2013年03月27日(水)11時30分

(20) 中東の航空会社

要    約

1.1978年より米国で始った航空会社の規制緩和は、グロ-バルな業界再編成に発展、米国、欧州夫々が3大グル-プにグロ-バルには3大アライアンスに集約された。

2.当時全く予測されなかった事は、既に誕生はしたが殆ど業界に見るべきインパクトが無かったLCCがその後グロ-バル的にも大きな影響力を持った事である。

3.更に2000年半ば頃よりアラビア湾岸の新興航空会社が石油収入による豊富な資金力と、安価な自国の石油資源を武器に急成長、エミレ-ツ航空は旅客輸送㎞で2011年既存の大手航空会社を抜き去り堂々のランキング一位を占めた。

4.此処では、Emirates, Qatar, Etihadの3社を紹介するがQatarは2010~11年2年連続で航空会社のベスト・オブ・イア-(サ-ビス、顧客の評判等)のトップの栄誉に輝き、他の2社も10指に入る健闘ぶり。

5.昨年Airbus A-380を日本に就航させたが、相対的に安い運賃で最高の機内サ-ビスを提供する事で欧州市場を席巻し、既にEUはダンピング訴訟を提起する貿易摩擦に発展している。無論、中東は航空機の最良の顧客。EUの経済危機、エネルギ-安全保障には中東の金融力、石油・ガス資源力は不可欠なのでまともな喧嘩は出来ないが。

5.ビジネス機の観点より見れば、成田-ドバイ往復ファ-ストで100万円。A-380の広いスペ-スを最大限に活用し、ファ-ストはパ-ティションで個室使用も可能、シャワ-付き、広い商談、社交の場としてのラウンジ付きとビジネス機を上回る高品質サ-ビスが提供される。ビジネス機は、成田-ドバイ往復35~40百万円(距離的には米国東岸、欧州とさして変わらない)運賃はビジネス機利用の何十分の一と機内サ-ビス面も対等以上とあれば、比較の対象にも成らない。

6.本サイトはビジネス利用客の視点よりの評価故、斯かる展開は商用便による「大量輸送方式」の日本の国策に沿った動きであり、利用者には「良かろう」「安かろう」の新たな選択肢を提供するものと評価される。他方それでは、日本のビジネスマンは益々中/遠距離飛行にビジネス機を利用しなくなるとの懸念は出ようが、日本のビジネスマンは過去四半世紀~半世紀、中/遠距離飛行には商用機を利用しビジネス機を利用して来なかった実績に照らせば、実質的なインパクトは無い。

7.中東のドバイ、ド-ハ、アブダビには多様なビジネス機が用意されて居るので、中/遠距離は商用機、目的地近隣の空港よりビジネス機の補完利用と言う永年の日本企業マンの慣習は強化される事はあっても、負のインパクトは無い。

 

 

 

1978年米国より始った航空業界の規制緩和、自由競争による自然淘汰、航空会社の統合、連衡合従は35年を経て、米国、欧州では3大企業グル-プに、グロ-バルには3大アライアンスへの集約が実現した。米国では、AmericanとUS Airの合併が合意され、本年第3四半期には、独禁法上の可否により、3大グル-プへの米国航空企業の再編成の劇的展開も大団円を迎える。これで業界再編も幕を閉じるのかが業界の大きな関心時では在るが、更なる展開も今後の動向により否定は出来ない。大きなうねりとしては、LCCの進出が挙げられる。1978年には既に米国ではSouthwestが誕生して居たが、誰が現在の欧州、米国での3大企業グル-プや3大アライアンスさえ揺るがすLCCの進出を予測したであろうか。米国では、SouthwestがAir-Transを呑み込み、既に第4勢力として成長して来た。即ち、既存航空機企業はLegacy Carrierと呼ばれ、Legacy Carrier対LCCと言った構図も15年位前迄には全く予想外であった。欧州では、3大企業グル-プへの統合劇は未だ終焉せず、中小国家のナショナルキャリア-が経営破綻に直面、これらの統合劇が依然進行中。今一つ、誰も予測しなかった台風の目が、中東の航空会社の台頭で大きな影響を受けるEUでは、EU対中東の大きな貿易摩擦に発展している。EUは、産油国が安価な石油を武器にEUに殴り込みを図ったと、反ダンピング訴訟を起したが、何しろ相手の中東はAirbusの最大の得意先で、石油供給国、欧州金融危機の金融支援の助け神で有れば、振り上げた拳も自然に下げざるを得ない状況で中東勢の進出を有効的に阻む方策は無い。日本にとり、中東は遠い国ではあるが、最大のエミレ-ツ航空は昨年成田にAirbus A-380を就航させ、羽田にもBoeing 777機を就航させている。原発再開反対で日本は益々中東に原油、天然ガスの供給で依存を強める一方、中東の石油精製、天然ガス設備、石油化学工場の建設、インフラ構築等日本企業には垂涎の商機が満ち溢れ、ビジネスマンの交流は活発に成ると思われるので、ビジネス機の利用と絡めて触れて見る。

2012年のSkytrax社が発表した”Airline of the Year”のトップ10社は全て中東・アジア勢で占められているが、急速に存在感を増しているアラビア(ペルシャ)湾岸3社が1,6,8位に食い込んでいる。

 

1位

Qatar

5位

ANA

9位

Thai

2位

Asiana

6位

Etihad

10位

Malaysia

3位

Singapore

7位

Turkey    

4位

Cathay Pacific

8位

Emirates    

 

一方、国際線での旅客キロ数より見た世界ランキングは下記。Emiratesは堂々の世界第1位。Qatar, EtihadもJAL,ANAを既に追い抜いて居り、隔差は今後益々開くと予測される。

(単位 : 百万㎞)

世界ランキング

航 空 会 社 名

旅客キロ数

Emirates

153,264

Lufthansa

135,479

Delta

124,415

Air   France

123,106

British   Airways

114,158

Ryanair

93,858

Cathay   Pacific

91,990

Singapore

86,400

American

83,643

10

KLM

82,047

 

Qatar

61,603

 

Etihad

38,678

 

JAL

29,167

 

ANA

24,181

IATA World Air Transport Statistics 2011

 

 

Emirates

Qatar

Etihad

設 立 日

1985年

1993年

2003年

本 拠 地

UAEドバイ

UAEカタ-ル

UAEアブダビ

ハブ空港

ドバイ国際空港

ド-ハ国際空港

アブダビ国際空港

同  盟

アラブ航空会社機構

One   World

未加盟

コ-ドシェア-

JAL

ANA(国内)

ANA(マイレ-ジ)

就 航 地

62ヶ国101都市

120都市

77都市

日本路線就航

2006年6月

2010年

2010年2月

就航空港

関空、成田、羽田

関空、成田

関空、成田、中部

 

 

保有機材数

 

 

 

 

168機

Airbus   A-380 31機

発注済 59機

Boeing   B-777 50機

18億㌦を発注Boeing社史上最大の1社よりの発注額

111機(平均年齢4年以下)

発注済 250機

発注金額 500億㌦ Airbus A-380 13機

Boeing   B-777 29機

2010年3月時点

保有機42機

発注済 108機

Airbus   A-380 10機

Boeing   B-787 41機

2014~19年中に787の世界最大保有会社に

各社のホ-ムペ-ジ、業界誌報道より合成

 

一方、ビジネス機年鑑に収録されている中東及びアジアのビジネス機は下記。

 

国 名

タ-ボ

ジェット

国 名

タ-ボ

ジェット

サウデイ

23

78

101

インド

134

81

215

UAE

5

69

74

中 国

9

159

168

Israel

7

25

32

フィリッピン

53

0

53

Iran

4

13

17

日 本

17

27

44

Qatar

0

11

11

インドネシア

23

19

42

JP Biz-Jet 2012記載数値より軍用機を除外

 

  •   日本は欧米とは比較に成らないが、中東、アジアと較べても保有機数で見劣りがする。
  •   但し、ビジネス機はピストン機や回転翼機も含む。日本は2011年の時点でピストン機361機、回転翼機777機と1,100機を越える小型機を有している。このうちどの程度がビジネス目的に供されているかは不詳だが、日本の狭い国土と高度に発達した商用便網、地上交通網を勘案すれば恥ずる事は無く、コンプレックスに陥るいわれも無い。
  •   諸外国に比して日本は中/遠距離飛行用のMid/Heavy Jetが1機も存在しない事が顕著だが、これも世界の主要空港に大量輸送による安いコストで定期商用便網が発達し、然も、「空の自由化」の恩恵で、安いコストが更に安く成り、ビジネス・ファ-ストの顧客でも大幅に安くなった運賃に加え、機内サ-ビスもビジネス機を上回る高品質のサ-ビスが受けられる時代。「1億総中流」「大手企業幹部もサラリ-マン」の「無格差・均質社会」の日本人ビジネスマンが経済的合理性よりPrivate Heavy Jetに代えて、定期商用便を利用する事は賞賛に値しても批判されるべきいわれは無い。
  •   因みに、エミレ-ツ航空の場合、成田、関空はAirbus A-380, 羽田は空港のハンドリング事情でBoeing 777が就航しているが、A-380のファ-スト・ビジネスはシャワ-付き、社交用のラウンジ付き、ファ-ストはパ-ティションで個室的なプライバシ-も確保、座席は180度倒れベッドとしても利用可能、個人用テレビ付き、食時は豊富なメニュ-の選択があり、食事時間も自由に指定可能。
  •   成田-ドバイ間の飛行距離は往復約20,000kmと米国東岸、欧州とさして変わらない。ビジネスジェット機を利用すれば往復35~40百万円 エミレ-ツ航空のファ-ストで約100万円、プライベ-トビジネスジェット機利用の何十分の一。日本のビジネスマンが定期商用便を利用しない手はない。
  •   更に、Qatarのド-ハ空港は贅を尽くしたVIPタ-ミナルを完成、ファ-スト、ビジネス、ゴ-ルドカ-ド顧客は利用可能。市内迄の送迎のリモジンサ-ビス、空港から近隣に飛ぶHeavy/Mid/Lightのビジネス機のラインアップも完備している。
  •   UAEは欧州、アジア、アフリカの結節点として、地中海沿岸、中/東欧、旧ソ連南部、アフリカ北東部等へのハブ空港としては北廻りの欧州経由より便利。日本のこの一帯の資源開発に不可欠のル-ト。UAEのハブ空港よりニ-ズに応じ、目的地近辺の中都市に商用便を利用したり、直接目的地のジェネアビ空港にビジネス機で乗り入れても良い。日本のビジネスマンは過去4半世紀~半世紀北米ではこの様な手段を用いて来たので、特に違和感を感ずる事は無い。
  •   最後に、湾岸の航空会社が商用機にせよビジネス機にせよ最高額の最高機種を大量に発注する事に日本人は目を見張り「何を仕出すか分からない」と驚くが、これは、彼我が置かれた歴史的、地政学的、文化的相違よりそもそが発想が異り日本人が無意識に持っている「己の物差し」で相手の行動を推し量ろうとするから理解を越える羽目に陥る。最後に参考として日本と中東の発想の差異を一表に纏めた。

 

湾岸諸国の国家戦略・国策

1石油・ガス資源は早晩枯渇。これに代る収入源が必要。

2.物造りは、技術もこれを支える労働者も市場も不足。従って二次産業依存は不可能。

3.一次産業の鉱物資源依存より一足飛びに、三次産業への移行。

4.豊富なオイルマネ-を活かした金融業への移行。将来は利子・配当収入に依存。

5.ドバイを中東の金融センタ-に育成する。

6.欧州、アジア、アフリカの結節点として空運のハブと成る。人口不足を補う為、石油掘削、油田管理・維持、金融専門家、空港建設等インフラの整備に必要な人材確保と先進諸国との人的交流に空運の育成・整備は絶対不可欠。

7.オイルマネ-を武器とした安い金融、自国石油を利用した航空燃料での絶対的優位性、これにAirbus A-380等の大型新鋭機による「大量輸送」のメリットをフルに活用。

8.先進国の経済停滞、LCCの追い上げ、燃料費の高騰に苦しむ大手Legacy Carrierの苦境は湾岸諸国に取っては市場席巻の千載の一遇。

9.中東の観光の中心として、リゾ-トの構築、各種娯楽設備の充実により、欧米のテ-マパ-クを凌駕する地上の「エデンの園」に観光客を誘致。観光立国と、これに必要な観光客の足としての航空業の育成。高品質、低価格によるサ-ビス提供が売り物。

10.明確なビジョン、国家的な将来の生存を賭けた強固な国策のバックボ-ンの存在。

意思決定方式の差(中東の発想は演繹的、トップダウン)

1「.砂漠の民」は自立・独立精神旺盛な「部族」の集団。これの統率には強力なリ-ダ-シップが必要。モ-ゼ、キリスト、モハメットに見られるカリズマ的指導者(牧者)。

2.強力なカリズマ性を具備する為全て「神の名」による「絶対帰依」、「絶対服従」が原則。故に中東はユダヤ、キリスト、回教の世界3大宗教の発祥地。

3.湾岸諸国は「首長」による絶対的な「トップダウン」政治。トップが重要政策を即断、即決出来る。日本の様に「決められない政治」では治まらない。

4.強いカリズマ的指導者の決断は「ブレ無い」。「モ-ゼの十戒」、旧/新約聖書、コ-ランは今日でも「金科玉条」で墨守される。1日5回のアラ-の礼拝は回教徒の義務。

ブレ-ンとしての「お雇い外人」

1.トップダウンの政策立案は欧米先進国のシンクタンク、コンサルタント、関連企業のトップの人材が起用され、幾つかの選択肢が用意され指導者が最終選択をする。

2.異民族、異文化の交流、混淆は有史以前よりの常態。

3.日本の明治維新を想起。帝国大学(東大)も一時千人を越える「お雇い外人」教師が居た。欧米を見倣う為、岩倉具視率いる遣欧使節の派遣も行われた。

4.中東も将来が嘱望される若者は欧米の一流教育機関で教育を受け、帰国後は自国の政府機関、企業の「お雇い外人」の上司の下で確り訓練を受けトップのブレ-ン、スタッフとして育成される。モデルは明治の日本。極東の片隅の小国が世界の列強に伍し得たのは教育の賜物と強調される。

5.Ex-Patriate   (エクスパト)と呼ばれる「お雇い外人」部隊は秘密警察の監視下で真摯に中東の国造りに貢献し得るか、「食い物」にされるか篩に懸けられる。

6.中東の人間は絶対に他人を信用しないと言われるが、動物的本能で嗅ぎ分けを行い、信用出来ると見れば思い切って「権限委譲」する。明治の時代でも。幕府や、薩長に武器を売って巨利を博した外国商人も居れば、近代日本の成長に多大な貢献をした「お雇い外人」で今日でもその名が語れる人も数多く居た。

中東と欧米の共通点

1.善悪是非は別として厳然たる階級・格差社会。

2.指導層は「体制維持」の為子弟にエリ-ト教育を施す。日本でも戦前は欧米に子弟を留学させたが、戦後は格差が無く成っても「奨学金」支給等で有為な人材育成に努めた。中東は寧ろ明治時代の日本に近い。

3.指導層は先進知識を吸収する事も重要だが「ノブレスオブ-リ-ジ 高貴なる社会責務」も教え込まれる。明治の元勲が欧州で受け入れられたのは、日本の「武士道」が欧米の「騎士道」「紳士道」スポ-ツの「フェア-プレ-精神」に通ずるものがあったから。中東ではコ-ランの教えが生活の隅々迄行き亘り、敬虔で立派な人間も多い。

4.欧米、中東もトップダウン志向故トップの決断で大きな商談がパット纏まる。

5.ビジネス機は正にトップダウンによる意思決定が出来るカリズマ的指導者の足で、中東のトップが移動する時には一連隊のブレ-ンを同伴する為、ビジネス機は「空飛ぶエグゼチブオフィス」に変貌する。日本は基本的にボトムアップ、コンセンサス方式の意思決定が行なわれ、大企業の幹部も「御神輿」に乗せられスタッフに問題を「丸投げ」するだけなのでビジネス機の本来の目的を活かす事は出来ず、商用便とビジネス機の運賃比較をすれば、余りにも格差が大きいのでビジネス機を利用する術もなくメリットも見出せない。

6.但し一番大きな問題は、日本は敗戦で全ての価値観が否定され、これに代わる教育が為され無い為、企業トップと言えども海外より見れば、個人的信条やビジョンに欠けトップとして即決即断の意思決定も出来ずまともに相手にされない。「回転ドア」の様に変わるリ-ダ-、民主党政権では与党のコンセンサスさえ纏められず、何事も「決められない」リ-ダ-シップでは自国民に愛想を尽かされるだけでなく、海外からは一人前のリ-ダ-としても扱って貰えない。

中東の地理的特性

1.前の安倍政権時代に打ち出された「アジアゲ-トウエ-構想」は成長著しい環太平洋経済圏の中枢に位置する日本が関空、中部、羽田、成田の容量増強によりアジアのハブ空港としての地位を確固とする事を狙い実際に目標とした容量増強は実現したが、その間のアジア諸国の目覚しい経済成長と、日本経済の停滞でアジアに於ける日本の相対的存在感は大きく後退した。

2.他方、中国を始めとするアジア諸国は所得の増加により海外旅行者が急増した為、航空インフラの整備を急ぎ,結果として日本の主要空港を上回る容量・設備を整えた空港が次々とお目見得した。更に大型長距離輸送可能なAirbus A-380の出現により、アジア諸国は「大量輸送」による低コストで中継ぎハブなくして欧米に直行可能と成った。利用客の中心がアジア大陸にシフト、日本はA-380の購入を控えた為、日本のアジアのハブとしての地位は相対的に低下、「ゲ-トウエ-構想」も練り直しの必要に迫られている。観光立国として見込んだ2千万人の観光客も震災、円高の影響で大幅未達の状況。

3.中東は歴史的に欧州、アジア、アフリカの3大陸の結節点として重要な役割を果たして来た。ナイル、チグリス・ユ-フラテス、インダス河流域に誕生した3大文明を結ぶ交通の要衝として知られる。この地理的要件を空運に転用しても不思議はない。

4.中東は砂漠(土漠)地帯が多く日本の様に空港インフラ構築に土地の制限や、住民の反対等は無い。トップダウンで政策を決めれば即実行に移せる。

5.アジアからの南廻りでアフリカ、地中海沿岸、中央アジア等にアクセス可能。

6.中東の航空会社は、日本径由の米国西岸、ブラジルへの就航も始めており、今後低コストのファイナンスや燃料費そして高品質のサ-ビス提供で日本への影響も出る事が考えられる。

中東と日本のコスト意識の相違

1.中東のオイルマネ-富豪は最高級の飛行サ-ビスを知り尽くしている。それも多面的に研究し尽くしている。プライバシ-を望む顧客には、パ-ティションの戸を閉めれば個室仕様に成るし、人的交流を望むなら、広いラウンジで商談、社交も楽しめる。「大量輸送」による低コストでパ-ソナルニ-ズに応じた多様なサ-ビスが提供される。「費用対効果」では理想的なコンビネ-ションと言える。

2.彼らはビジネス機を乗り廻し、その長所を全て呑込み済み。その上で、これを上廻るサ-ビスを何十分の一のコストで提供するのが新しいビジネスコンセプト。これは、豊富な金融力で最高級機種を何十機も纏め買いする事で大きなディスカウントを得、原油からの垂直統合により運航コストの大きな要素である燃料費を圧縮し、更に大型機材を利用した「大量輸送」のメリットをフルに活かすビジネスモデル。エミレ-ツ航空の場合、提供客席数の70%以上の満たすのが社内原則。

3.中/遠距離用ビジネス機の運賃は¥2,000/㎞。成田-ドバイ間のファ-ストの運賃は僅かに¥50/㎞でビジネス機のサ-ビスと比肩するか凌駕するサ-ビス提供で、高単価ビジネス客を一網打尽に取込むと言う、日本的常識では測れないスケ-ルの大きい構想。

4.この程度のコストで有れば、ビジネスマンもビジネス機対商用機のコスト比較をする必要は無く、企業幹部で無くとも遠距離飛行をする一般ビジネス利用客でも、気兼ねなく社費で落せる運賃。

5.今後、発注済みの機材の受渡しが行われ、湾岸の航空会社がどんどん路線や便数を拡張すれば、元々中/遠距離飛行にビジネス機を利用して来なかった日本のビジネスマンが敢てビジネス機を利用する事由も必要性も無く成る。

6.その一方でビジネス機を使い慣れて居る彼らは、中東のハブ空港より近隣の商用便のアクセスの悪い空港にはビジネス機を利用する事は日常茶飯事で、小規模なジェネアビ空港も数多く散在するのでビジネスマンの足には不足は無い。中東の各都市は、広漠たる砂漠の中に浮かぶ孤島とのイメ-ジを描けば、日本列島の離島への航空便サ-ビスの提供と同じ原理。日本では交通の便の悪い地方の市町村にもバス路線が用意される様に、中東では長い距離とまばらな人口を補う為、航空機が利用されるだけの事。

7.中東、中国の航空機の機材、インフラの充実を日本の脅威と見るか、永年中/遠距離飛行に商用便を利用し、現地で安価なビジネス機を利用して来た日本のビジネスマンには朗報と聞えるかは、視座の置き方一つ。「利用者本位」、「市場本位、顧客優先」の現代企業に求められる「Market-In」の視点からは、中/遠距離飛行に従来なかった快適性や高品質サ-ビスを一般ビジネスマンでも充分手の届くコストで提供するのであれば「渡りに船」と歓迎すべき出来事。オイルマネ-の安い金融と燃料費で、中東の国造りに協力する日本ビジネスマンに利益還元をすると考えれば理想的なWin-Winの施策。

 

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