2013年05月02日(木)01時46分

ABACE (Asian Business Aviation Conference & Exhibition) III

上海で4月16~18日に開催されたABACEは現在の「中国フィ-バ-」を反映して大盛況であったが、閉会して2週間、興奮も醒め、よりク-ルな論評も聞かれる様に成った。

最大の指摘は、盛況ではあったが、アジアのビジネス機の祭典としては、東南アジア、インド、豪州の参画が無かった事で中国より古くから開かれて来たシンガポ-ルとは異ると言う、日本的な表現をすれば「中華思想」的発想への論評。又、会期中にも指摘された、「超富裕層」「特権階層」を意識したビジネス機を臆面もなく前面に押し出した事に対する違和感を指摘する向きもあった。NBAA (全米ビジネス航空協会) の協賛者であるAsBAA (Asian Business Aviation Association-アジア「亜州」ビジネス航空協会)はしばしば中国側の海外でのプリゼンテ-ションでは「亜州」が「中国」に置き換えられて居る通り、現在は中国を代表するビジネス航空協会。2001年JBAA (日本ビジネス航空協会)と香港のGulfstream社退職者、香港最大手のビジネス機運航会社Metrojetが発起人と成りアジア15ヶ国が参加結成された。2003年、JBAAの推薦で世界のビジネス航空機協会の集まりであるIBAC (International Business Aviation Council-カナダ モントリオ-ルに本拠を置く世界のビジネス機協会15団体の評議会)のオブザ-バ-と成った。然しアジア諸国のビジネス機事業の発展段階の格差、文化・国情の違い、JBAAの人員交代で一旦休眠状態に入り、中国企業が再組織した為「アジア」の名を冠してはいるが事実上中国のビジネス機関係者を代表している。アジア・オセアニアの参画が乏しいとの指摘はこの辺に根差す。但し、AsBAAの会長は米国Cessna社の現地法人のKevin Wu社長.

処で、本サイトでは「中国」は中国本土、香港、マカオ、台湾を包括的に扱っているが、中国のビジネス機は欧州の植民地であった、香港、マカオが先駆者であり、これらを分けた論評も見られるので此処でも地域を分けて表示する。

出典 JP Biz-Jet 2012

本土

香港

マカオ

台湾

タ-ボプロップ機

軍 用

民 間

合 計

0

9

9

0

0

0

0

0

0

14

1

15

ジェット機

軍 用

民 間

合 計

26

122

148

0

30

30

0

10

10

1

5

6

 

 

 

中国全土

日 本

備    考

タ-ボプロップ機

軍 用

民 間

合 計

14

10

24

50

10(16)

76

 

日本は諸外国に比しても軍用が圧倒的に多い

16機が海上保安庁等公用で除外

ジェット機

軍 用

民 間

合 計

26

122

148

55

24(11)

90

 

日本は諸外国に比しても軍用が圧倒的に多い

11機が海上保安庁、国交省等公用で除外

合  計

軍 用

民 間

合 計

26

131

157

105

34(27)

166

日本で登録されている民間のタ-ボ-プロップ機は123機(単発26機、双発97機) ジェット双発は513機 計636機。狭義のビジネス機の定義に該当するのは34機。他に、ピストン機555機、回転翼機789機

上記の如く統計の拾い方で大きな差異が生じるし、ビジネス機の定義の仕方で評価結果も根本的に変る。

  •   中国は超富裕層、セレブ、VIPへのサ-ビス提供が現在の最先端目標。日本は一般民間ビジネスマンの利用が目的。合理的な経済原則に従えば、日本の様に地上交通機関が高度に発達し、商用便(大量輸送による低コスト旅客輸送)が全世界の主要都市に繋がっている国ではビジネス機の利用は中/遠距離では成り立たないし、国内でも極く短距離、短時間しか使えない。従って、日本では中/遠距離用の民間保有のビジネスジェット機は皆無、全てが軍用、公用(海上保安庁、国交省で国家予算で賄う)と成っている。
  •   他方、タ-ボプロップ機も76機の内66機が軍用・公用。但し、統計の取り方の差で日本での登録機は123機。日本で狭義のビジネス機は双発タ-ボプロップ機10機しかない。訓練用教材の機材も除いてあるが)。更に日本では一般民間の利用が目的なので狭義のビジネス機より遥かに安い(遠距離飛行用のHeavy Jetの 1/100~1/200の価格の機材)のピストン機、555機、回転翼機789機計1,340機が存在するが、公用(警察、消防、自治体所有機)と趣味・レジャ-的な用途の機材を除いた推定(かなり乱暴な憶測)で950機が広義のビジネス機と本サイトでは述べている。中国はこの種分野は未開拓。日本の場合、地域で利用される小型コミュ-タ-機や回転翼機(新中央航空は八丈島、三宅島より御蔵島にコミュ-タ-用のヘリサ-ビスを提供している)が相当数利用されているが、これはコミュ-タ-機としてビジネス機より外してあるが、中間に幅広いグレ-ゾ-ンが存在し、短絡的な数値比較は出来ない。日本は、日本の国情に沿った交通機関大国であり続ける。
  •   羽田―北京間のファ-ストフルフェア-運賃は往復30万円、ビジネスクラス20万円。ビジネス機で1,000~1,500万円位なので「費用対効果」の「説明責任」を負う大手企業の「サラリ-マン経営者」がビジネス機を利用する事は考えられない。特に羽田の場合、ビジネス機は深夜~早朝に利用が限定されるが、商用便は昼間の使い勝手の良い時間帯が利用出来る。飛行速度も、商用便の8~900㎞/時に対し近距離飛行用のLight Jetは700㎞/時位なので時間節減は望めない。コストが問題でない富裕層やセレブは日本より相対的に安い中国ビジネス機の復路を利用し、安いコストでビジネス機を利用可能。日本の商社、チャ-タ-業者、旅行代理店等は過去10年以上中国の関連業者と合弁或いは業務提携をして居り利用者が不便する事は無い。中国のビジネス機の急成長は日本にも大きな便宜を供与する。特に、日本企業は今後中国奥地、蒙古等に企業進出すれば中国の主要空港迄商用便を利用、そこよりビジネス機を利用する機会も増え様。中国のビジネス機の興隆を「脅威」と受け取らず、上手に利用すれば日本企業の取っても大きなベネフィットと成る。

最後に2~3の話題を付け加える。

  •   米国のヘリコプタ-会社で日本でも名が知られるエンストロ-ム社は金融危機に見舞われ中国資本に救済を求めたが、この程1千万㌦の融資が決定、エンストロ-ム社は設備増強を発表した。中国が製品の引き取りを行い、将来は中国での生産も念頭にある由。中国も、より低コストの機材による市場開発にも手を付ける。
  •   AsBAAの会長はCessna社の現地法人のトップが兼任しているが、昨年3月中国で同社の最新鋭機のCitation LatitudeとSovereignの現地組立生産に関する仮覚書を交わしたと伝えられたが、期限内に合意に至らず仮覚書は失効したと発表された。但し、中国のCAIGAとはCitation XLS+とCaravanの合弁による組立生産は決定している。今後もCitation LatitudeとSovereignに就いてはAVIC (CAIGAの親会社)との交渉は続行される。
  • lブラジルのEmbraer社はハルピン市で進めているLegacy 650の生産計画は順調に進展、2014年第一4半期から出荷可能の由。生産能力は年産20機。中国より同社はビジネス機29機を受注している。
  •   香港のMetrojet社は中国本土へのビジネス機運航の事業展開に乗り出し、広東省珠海市に現地企業との合弁でMetrojet Hanxingを設立したと発表。香港と中国本土との相互乗り入れも今後活発化しよう。

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