2013年06月28日(金)09時00分
パリ-エアショ-2013
航空業界の一大イベントであるパリ-のエアショ-は、6月17~23日パリ-のle Bourget空港で開催されたが、世界最大のエアショ-の50周年と言う事もあり大きな盛り上がりを見せた。但し、本ショ-は全ての航空機を網羅して居り、ABACE, EBACE, NBAA Conventionの様にビジネス機に特化したものではなく、軍用機、商用機、ビジネス機の最上位機種等が主役の為、日本のビジネス機の太宗を占める低格帯のビジネス機等は殆ど話題にも成らない。本サイトはビジネス機を論じる事が目的故に、商用機の話題は列挙するに止める。
1.Airbus A-380 対Boeing 787 : Airbus A-380の受注は最大の顧客で有る中東の当初の大規模な発注で沸いたが、此処3年やや足踏み状態。それを上回るBoeing 787は日本でも超大型ジャンボ機による幹線航路の「大量輸送」によるコストカットか787による2点間直行による利点かの業界の論議は続くが、787再就航と並行して、330席のBoeing 787-10が初めて姿を現し話題を浚った。実際に市場に出るのは2016年だが、この新発表でBoeing株は26%も値上りした。A-380の搭乗率が低い事が問題として指摘されるが、高性能だが小型で空席を減らせ且つ機材も1/3以上がMade in Japanとあれば、当面日本の行った選択は日本の置かれた環境にマッチして居ると見ても誤りでは無いのではなかろうか。
2. Airbus A-350対Boeing 777X : Boeing 747-400或いは777の対抗馬として期待を集めたAirbus A-350は、A-350-1000,900,800の3機種を用意し既に637機の確定注文を受けているが、完成は遅れ、エアショ-直前に処女飛行が行われ最初の受渡しは当初予定の18カ月遅れの2017年にずれ込んでいる。一方のBoeing 787-10とは別にA-350の対抗馬としての777Xの発表が待たれたが、Boeing社は事業化のBoardの承認は得たものの、上市の時期に就いては明らかにしていない。Boeing社としては787の事故もあり凡る技術的な確実性を慎重に検討している結果と発表し、市場は上市が遅れても在来種の生産を繋ぎとして続ける可能性も残されていると市場も観て居るので余り騒がない。Boeing 777-10X ,777-9X, 777-9Xは全て2020年迄には運航されて居ると見られている。ANA,JALもBritish Airwaysと並んで777Xのラウンチカストマ-との風評も流れたが、Boeing社は在来種の大手顧客には開発段階より参画して貰って居り、日本も重要な顧客とコメントするに留つている。
3. CSeries対Embraer対MRJ : Bombardier社のCSeriesも開発が遅れ気味で有ったが、5月末迄に7回の試験飛行を終え、110~125席のCS100は2014年半ば、130~160席のCS300は2014年末に上市されると発表された。これも予定より遅れているMRJの受渡しは2015年半ば~末、Embraer社のE-Jetの改良種を2018年には運航を予定する等Regional Jet間の競合も熱を帯び始めている。これ以外にも中国のC919, ロシアのSukhoi, NG AircraftのFokker 100手直し機等比較的高い成長が予測される市場領域だけに競争も激化の傾向。
4. COMACと MRJ:設立5年の航空界の新参企業である中国COMACは中国製の国産機ARJ21の型式証明を本年上半期に中国当局より受け、ラウンチカストマ-としてChengdu Airlineが居ると発表、その後158席のリ-ジョナルジェットC919の開発に注力し2016年に処女機を受渡すと中国の航空機製造事業への参入の強い意欲を示した。三菱重工もMRJの広報に努め、既に165機を受注済み。東洋2社の市場参入として話題に上った。
5 .London Heathrow空港 :Quatar航空が中東/ EU間の航空貿易摩擦に直接言及を避け乍らも同社がOne Worldに参加する事でアライアンスを通じてHeathrow空港にアクセスが出来たが、スロットが取れないとやんわり欧州の中東航空会社 への問題提起を行い眠って居たHeathrow拡張問題に火を付けた。Heathrowは第3滑走路の建設か、全く新規の空港建設かで揺れているが再び論議が活発化するとの見方も出て来た。日本は首都圏空港の拡張を終えた処だが、それ迄海外の航空会社がスロット枠を取得する為長蛇の列を為した。同じ様な事象が欧州でも起っている。
6.Helicopter
a.Augusta Westland AW 189:海外では、洋上での油田・ガス田探索や掘削に回転翼機が洋上リグへの要員・資材の運搬に幅広く使われている。日本も今後メタンハイドレ-ト、レア-ス等海底資源の開発が課題。AW 189はこの種需要が伸びて居り、本機種はその為に開発された理想的な機種との広報に努めた。
b. Eurocopter EC-225 : Eurocopter社が上記の対抗機種として開発した。上記に較べ500㎏程度搭載可能重量は劣るが、逆に飛行速度は46㎞/時程度早い。16人乗りでキャビンスペ-スは12.3㎡と発表されベトナム向けに15機が成約したが、今後中国が大きな市場と成ろうとの期待も示された。Eurocopter社は既に中国瀋陽に中国企業と合弁で生産拠点を設けている。当初はEC-120の生産を予定、中国より150機の確定注文を確保している。
c. 米/仏へリ業界の交流:世界最大の回転翼機メ-カ-のEurocopter社を擁するフランスと世界最大の民間向け回転翼機メ-カ-Robinson社を擁する米国の夫々のヘリコプタ- 協会の合同の会合が開かれ幅広い意見交換が行われたが、日本でも今後重要と成る都市市街地での回転翼機の利用や騒音問題も重要なアジェンダに上った。日本も今後この種海外の業界団体との交流を深め、広くグロ-バルな知見を共有・摂取する事が肝要。
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