2014年01月20日(月)12時30分

(14-2) 日本に於けるビジネス機の一般利用普及と課題

 2013年度は首題に就き31本のレポ-トを本サイトに掲載した。従って2014年度は必要に応じ過去のレポ-トを参照戴くにしても反復はレポ-トの冗長を招くので省略する。

過去のレポ-トはサイト上部のライブラリ-をクリックすれば、レポ-ト、トピックスが表示され、何れかをクリックすれば収録されているレポ-トのタイトルが現れる。必要なタイトルをクリックすれば全文が表示される。

2014年に公開されるレポ-ト、トピックスは従来通りサイト上部のレポ-ト、トピックスをクリックすれば公開された日付けの降順でタイトルが表示され、閲覧したいタイトルをクリックすれば全文が表示される。2014年度は、「一般論」「全体論」は必要最低限に止め、日本のビジネス機の現実的な利用の可能性、選択肢に就き模索を試みる。目標達成には読者の参画が必要。

サイト上部のディスカッションの項をクリック、「百花斉放、百家争鳴」で賛否や参考と成るアイデアを長短の別なくお寄せ下さい。本稿は取敢えず過去の論議を総括、参照すべき資料はライブラリの資料番号を付記したのでそれを参照願う。

 

要  約

ビジネス機は「金持の道楽」か企業マンの合理的な「ビジネスツ-ル」か?

両者共正しいがリ-マンショックより5年続いたビジネス機業界の大不況で、富裕層の利用にはさしたる影響が無く一般企業マンの利用の落ち込みが激しく、両者の対照的な対応が浮き彫りに成った。本サイトのメインテ-マでもある、一般ビジネスマンにビジネス機を使って貰う為には欧米でさえ、一段の工夫が必要との認識が高まった。

欧米ビジネスマンがビジネス機で世界を駆け廻るが日本企業が利用しないのは何故?

一般的なイメ-ジに過ぎない。欧米の大手企業の幹部も圧倒的多数が商用機を利用、ほんの一握りのカリズマ的経営者以外遠隔地飛行にビジネス機は利用しない。海外ではビジネス機は交通のアクセスの悪い地域に短距離、短時間利用するのが定石だが、日本の海外進出企業も必要に応じビジネス機を利用している。日本企業の方が「費用対効果」の合理的判断で商用機、ビジネス機を巧みに使い分けている。

No Plane, No Gain”ビジネス機利用の擁護(”Advocacy”

ビジネス機プロモ-ションの スロ-ガンとして用いられるが、日本の大手企業が海外旅行や国内出張でビジネス機は使わない故に、日本企業は世界の敗残者で事業成長は望めない訳ではない。スロ-ガンで有る事を認識し、過度に神経質になる事は無い。日本の大手企業は中/遠距離飛行用のビジネスジェット機を1機も所有しないNo Plane” 状態だが、代りに世界中の大手航空会社が世界の主要都市にビジネス機の1/50~100の運賃で利用客を運んで呉れるのでビジネス機を利用するよりコスト節減を図り事業収益を伸ばせるとの逆の発想も出来る。海外ではニ-ズに応じ日本より遥かに安い運賃のビジネス機を利用し、状況に応じ上手に両者の長所を使い分けている。

公的規制の障害

如何なる場合でも多少の積残しは残るが2013年度粗方の規制緩和が実現。逆にビジネス機が利用されない真因の商用機とビジネス機の運賃格差が浮き彫りに成った。

日本でビジネス機が利用されない真因(商用機との運賃格差)

無意識/意図的に曖昧化されて来た商用機とビジネス機の運賃格差が公的規制の障害が除かれ好む好まざるに関らず表面化した。海外旅行に必要な中/遠距離飛行では商用機¥25~50/㎞、ビジネス機¥1,500~2,000/㎞、国内の利用支払い実績は商用機 ¥12~15/㎞、コミュ-タ-機 ¥20/㎞。ビジネス機は¥1,200~1,500/㎞と推定され、算出手法による金額の多寡があっても利用者が真面目に比較評価する価格差水準ではない。最も単純化して素人分りする様にすればビジネス機の運賃は内外共に商用機の50~100のレベル。

ビジネスマンの「2点間移動」

ビジネス機は様々な用途があるが、論点の焦点は一般ビジネスマンの「2点間移動」の為の利用。利用の最も安い小型固定翼機、回転翼機でも機材の用途として利用顧客の「2点間移動」は、国内では最も少ない用途で取るに足りない。海外旅行ではほぼ皆無。

集約化,「協働」の必要性

航空機事業はビジネス機を含め「資本集約的」事業。元々大きくないパイの取合いでは機材の稼働率は低く採算分岐点は高止まり。コストが高ければ利用者も寄り付かない悪循環。「小異を捨てて大同に付く」、業務の集約化、「協働」が実現しなければ、日本でのビジネス機事業は実現しない。大手航空会社では企業間の統合・集約、グロ-バルアライアンスにより機材の稼働率向上、機種統一による保守・整備費の合理化等先例・手本もあり、立派に効果を挙げている。

 

 

ビジネス機の一般利用に関する論議の整理と総括

ビジネス機は「金持の道楽」か企業マンの「ビジネスツ-ル」か?

1.ビジネス機が当初富裕層の占有物であった事は誰も否定しない事実。

2.米国の広大な国土で他の適当な交通手段が無く、自家用機所有のニ-ズも有った。

3.但し地方の大農場主(播種、薬剤・肥料散布)中小企業オ-ナ-の様な資産家に限定

4.80年代半ば航空機を分割所有するFractional Ownershipが考案され急速に普及。

5.企業も所得の増加、企業活動領域の地理的拡大で利用ニ-ズが高まった。

6.90年代後半から需要は急増2008年には1,000機/年程度の販売が見られた。

7.2008年秋のリ-マンショックの影響でビジネス機の受渡し機数は約半減。

8.2013年はピ-クの6割位に回復、底入れは見られる。

9.一方、産油国、中国を含む超富裕層は上位機種を買い続け売上高では2割減程度。

10.市場は20百万㌦以上の上位機種と1~4百万㌦の低価格帯機材を購入する2極に分化

11.欧米のビジネス協会の最大の課題はビジネス機の利用は生産性向上に繋るとの広報

12.「ステ-タスシンボル」的利用とは別に事業収益の向上の貢献が見逃がされている。

13.ビジネス機の利用は大企業より中小企業、企業幹部より中堅スタッフの方が多い。

14.この種主張を客観的デ-タ-を添えてビジネス機の利用を擁護(”Advocacy”)

15.5年越しのビジネス機不況で市場が2分化し永年の努力の「糊付け

説明が綻びた。

16.中東産油国に加え2012~13年の中国の最上位機種の買い捲りが「火に油を注いだ」

17.オバマ大頭領が予算不足の資に贅沢なビジネス機の課税強化を唱え問題は政治化。

18.2013年EBACEで中小企業は富裕なオ-ナ-企業、社費利用企業者は激減との報告

19.結局20百万㌦の上位機種選好の富裕層と1~4百万㌦の低価格帯機材の市場へと分化

20.各国のビジネス機推進団体もビジネス機利用の”Advocacy”の理論再構築に懸命。

21.落し処は二つの市場の現実を是認、ビジネス機利用の妥当性は従来通り不変と主張。

22.日本は20百万㌦以上の上位機種は民間になく低価格帯機材のみなので問題はない。

(2013年トピックスT3参照)

欧米ビジネスマンがビジネス機で世界を駆け廻るが日本企業が利用しないのは何故?

1.最大の「思い違い」は欧米の企業マンが世界を股にビジネス機を駆使して居るとの誤認。

2.米国ではビジネス機の1回の利用時間平均は1.9時間、世界等駆け廻れない。

3.利用時間9時間以上の利用者は僅か1%。日本-米国東岸・欧州往復は25時間余。

4.2012年の北米、欧州の日本への飛来機は夫々363機と77 機。

5.これには各国VIP, セレブ, 富豪も含まれビジネスマンは極く一部。

6.米国/EU-日本間ビジネス訪問客は2百万人/年と言われビジネス機利用者は一握り。

7.圧倒的多数の米国・EU企業のトップ、幹部も商用機を利用する。

8.逆に日本でも新興企業の富裕層、セレブでは海外渡航にビジネス機利用する人もいる

9.日本大手企業は社内規定の縛りで大手企業社員は幹部を含め商用便以外使わない。

10.日本企業は海外幹線航路は商用便、補完的に海外でビジネス機を半世紀も活用。

11.海外は殆どが「格差社会」、日本は「平均化社会」の相違はあるが両者さして変らない

12.日本は商用便とビジネス機を「世界市場は一つ」と認識必要に応じ賢く使い分けている。

(2013年レポ-トR10R11参照)

No Plane, No Gain”ビジネス機利用の擁護(”Advocacy”

1.“No Plane, No Gain”は国土の広い大陸国では意味もあろうが日本には馴染まない。

2.日本の大手企業はビジネス機を所有/利用しないが,業績を確り伸す企業も多い。

3.「百歩譲っても」日本企業は「一つの世界市場」内の海外では永年利用実績を持つ。

4.日本でも一部新興企業の富裕層やタレント、スポ-ツ選手が利用するが極めて稀。

5.利用を税金の無駄使いと追及された故中川金融相の手前、政府関係者も利用を憚る。

6.利用者のライブドア堀江社長等は不祥事等で結局所有機手離す事を余儀なくされた。

7.現在ソフトバンク孫社長、楽天三木谷会長等10憶㌦長者に限られ一般企業ではない

8.日本も運賃の多寡に関係ない超富裕者、セレブ、VIPは居るが本サイトの検討対象外。

9.本サイトの目的は如何にして「費用対効果」に配慮する利用者の利用を図るかが目的。

10.日本では大手企業が「金持の道楽」と混同をする乱用は無く擁護の必要性も無い。

11.海外で擁護論理再構築に、企業利用は「特権階層」と別の正当性を主張すれば済む。

公的規制の障害

1.TPP/FTAの論議に見られる通り各種規制が利用者の利用障害に成って居る事は事実。

2.ビジネス機に関する日本・海外の経済摩擦は日本の受入れ体制の不備が発端。

3.1996年秋成田に3枠/日のビジネス機離発着枠が認められた。

4.2000年半ばには地方空港の全面開放、その後成田は12枠/日に拡大。

5.羽田も第4滑走路の完成に伴い深夜~早朝のビジネス機利用が認められた。

6.成田/羽田共便宜の良い時間帯は商用便が抑えるが茨城空港活用も提案されている。

7.現実は、成田/羽田共用意された離発着枠は大幅未利用、離発着枠不足は障害ではない。

8.首都圏空港利用の事前予告期間の短縮、駐機制限緩和等最近大幅な改善が見られる。

9.2013年10月末より海外ビジネス機利用者の日本国内での搭乗機移動が認められた。

10.2013年末最大の懸案事項であったジェネアビ運航用の法制が整備された。

11.90年代後半法的規制が最大の障害と言われたが、商用便との運賃格差が最大の障害

12.公的規制の障害は一要因乍ら真因では無く、運賃格差カバ-の口実として使われた。

13.多少の積残しは有るが、公的規制の大半が緩和され口実としての利用は出来ない。

日本でビジネス機が利用されない真因(商用機との運賃格差)

1.運賃格差が決定的要因であり、その他の要因は相対的には副次的要因。

2.国際幹線航路の商用便ビジネス料金は¥25~40/㎞、ビジネス機では¥1,500~2000/㎞。

3.国内では商用便¥15/㎞、ビジネスジェット機 ¥1,200~1,500/㎞で比較検討に値しない

4.海外への渡航は高い単価が距離に乗じて算出され商用便に対抗する方策は無い。

5.国内便は地方の横移動等で低価格帯機材の利用と様々な工夫で利用の可能性は残る。

(2013年レポ-トR9R29参照)

ビジネスマンの「2点間移動」

1.論議で大きく抜け落ちて来たのが、ビジネス機利用の目的の特定。

2.日本でも「広義のビジネス機」は資機材輸送、薬剤散布、報道等に使われて来た。

3.ビジネス機仕様の航空機も軍用、公用(警察。消防、自治体)で使われて来た。

4.又「飛行機マニア」が自家用機で空を飛ぶ趣味的レジャ-にも使われて来た。

5.本サイトでも「ビジネス機の定義・コンセプト」で3~4項はビジネス機範疇外と明記。

6.利用コストが問題無い「特権階層」の利用は普及活動と無関係に実現して居る。

7.日本人の「特権階層」の利用は特殊な例外で利用コストとは無関係で使用される。

8.要は、幹部、上級管理者、特殊技能者に限定しても企業マンの足としての利用が目的。

9.目的を特定すれば、一般ビジネスマンの「2点間移動」の足としての利用が真の課題。

10.2014年度は「選択と集中」で此処に焦点を当て問題を特定して俎上に乗せる。

集約化,「協働」の必要性

1.航空機産業は「資本集約的産業」。機材の稼働率、利用率がコスト引下げの鍵。

2.機材のコストが一番安い回転翼機でも利用者の「2点間輸送」は極く僅か。

3.回転翼機の最大手運航業者も年間稼働実績は260時間と採算分岐点の300時間を割る

4.処方箋は大手航空会社の四半世紀に亘る合併・統合、アライアンスの先例が手本。

5.サプライサイドの運航会社とデマンドサイドの利用者の「協働」が必須。

6.更に運航業者間でも「小異を捨てて大同に付く」同時並行的な「協働」も必要。

7.モデルはFractional Ownershipに見られる機材の一括大量買い付けと分割所有。

8.タイムシェアリング、On-Demandチャ-タリング等多様な選択肢の準用と提供。

9.様々な選択肢を読者、特に潜在的利用者に提供、相互に模索するのが本サイトの目的。

10.2014年度は模索に必要な叩き台のアイデアを提供、多いに叩き鍛えて戴く。

 

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