2015年07月01日(水)07時45分

(15-07) 低価格帯機材の総括

 

要     約

 

1.本サイトでは日本の国情に馴染むビジネス機の機材を取り上げ検討して来た。

2.20年間官民挙げての普及努力の結果、日本の国情に馴染まない上位機種は淘汰された。

3.現在民間の運航会社が所有する最も高額な機材はCitation 680で約18百万㌦。

4.上位機種の主体は50~100百万㌦で日本のビジネスジェット機の主体は4~15百万㌦。

5.これも24機と日本のビジネス機総数約800機の極く一部。

6.中小個人オ-ナ-企業の所有機と報道関係を除けばチャ-タ-可能な機材は数機。

7.これも利用運賃は商用機、コミュ-タ-機の50~100倍で「特権階層」以外利用は無い。

8.所期の目的の一般ビジネスマンの「2点間移動」の「ビジネスツ-ル」は忘れ去られた。

9.ビジネス機の利用を声高に推奨する当事者も運賃が高過ぎて決して利用する事は無い。

10.過去30年間日本で利用された機材は0.3~2.5百万円の低価格機材で約800機で推移。

11.国交省も2013年数千万㌦する上位機種4機の退役、7.5百万㌦3機の買替えを決定。

12.中国を始め近隣諸国が上位機種を買捲るので利用希望の向きは何時でも取寄せ可能。

13.2年半に亘り日本の国情に馴染む低価格機材機への絞込みを試み、これがその総括。

14.低価格機材に就いて多くのレポ-トを公開して来たがこれを本稿に集約・再編集。

15.大半は過去の記述を流用して居るので目新しい事は無いが部分的手直し、更新はある

16.全ての空港にコミュ-タ-機が運航して居り固定翼ビジネス機との運賃格差は大きい

17.空港の利用は地理的に出発地/訪問先が近ければ良いが幹線鉄道の方が利便性が高い。

18.ヘリコプタ-は「場外」のヘリポ-トは設置可能で空港迄の移動の手間暇は不要。

19.企業マンの「2点間移動の足」としての時間・人件費節減のメリットが生まれ易い。

20.統計値の差異が前提の与件の違いで生ずるのでFAA(米国航空局)のデ-タ-を流用。

21.33,000機近い回転翼機を網羅2~3ヶ月のタイムラグはあるが絶えず更新されている。

22.何れにせよ、この先は「一般論」では無く現実に即した「費用対効果」の評価が必要。

23.机上の空論や一般論は排し、実情に即したCase Specificの評価・選択が全ての出発点。

 日本では海外で喧伝される中/遠距離飛行に必要なMid~Heavy Jetは民間に1機も存在しない事は本サイトでも度々指摘した通り。無論、代表的なHeavy Jetは14機存在するが、自衛隊、海上保安庁、国交省が所有する「軍用・公用機」でビジネス機の範疇より外れるので日本ではビジネス機の象徴的なMid~Heavy Jetは民間に1機も存在しない先進国として甚だ恥しい国との声も聞かれる。より価格が安いLight, Micro Jetは民間に24機存在するが(訓練用機を除く)、5機は報道関係(読売、朝日、毎日、中日)、10機は地方の中小オ-ナ-企業の所有機で残り9機は運航会社4社の所有機と、一般大手企業の所有機は1機もなくこれも問題視されて来た。日本で一番安いビジネスジェット機はマイクロジェットのCitation 510 (Mustang) だがこれでも3百万㌦以上はする。より高性能なホンダジェットで有れば4.5百万㌦。大陸国(米国、EU、カナダ、豪州、ロシア、中国、ブラジル)の様に広大な国土で日本の様に網目の様に交通網を建設出来ない国では、空運に依存せざるを得ず、それ以上に日本の様な「平等社会」では想像も出来ない「格差社会」で旧社会主義国のロシアはプ-チン大統領が国富の2/3を7人が掌握して居ると嘆き、「共産党一党独裁」の中国は1%の富裕層が日本を遥かに凌ぐGDPの60%を抑えると言う「超格差社会主義国」。日本は国際的に指折りの「交通大国」「平等社会」で有り、胸を張って誇れる事で有っても高額のMid~Heavy Jetが民間に1機もないと恥じる事は全くない。その代りに、日本は過去四半世紀1機数千万㌦するHeavy Jetでは無く、その1/100程度の価格の小型固定翼機や回転翼機を利用し、今日でもこれら「広義のビジネス機」は800機余も現存する。但し、この種低価格帯のビジネス機でさえ、競合交通機関との比較で「費用対効果」を「正当化」して一般企業の「ビジネスマンの足」或いは「ビジネスツ-ル」として「2点間輸送」に利用するには、尚様々な工夫を要する。幸い、欧米でもリ-マンショックを機に超富裕層、セレブ、VIP等の「特権階層」の利用と「一般企業マン」の利用の2極化が進みビジネス機の利用は「金持の道楽」では無いとビジネス機の利用を擁護(Advocacy)する事を最大の使命とするNBAA (米国ビジネス航空協会)を悩ましている。財源不足に悩むオバマ大統領がビジネス機への課税強化の方針を打ち出し、NBAAの憂慮は現実化しつつある。然し、そこは流石に米国、過去10年、大手ビジネス機製造メ-カ-に拮抗して、一般企業マンでも利用可能な低価格帯の各種ビジネス機(マイクロジェット機もあるが寧ろ小型固定翼機や回転翼機)も続々と市場に姿を現している。又日本により馴染み易いAir Taxiもカナダ、英国、最近ではトルコでも使われ始めている。「新し物好き」で未だ市場開発段階のものに飛び付く事はないが、本サイトもこれらグロ-バルな潮流をフォロ-アップする事で、日本でのビジネス機発展の一助に資する事を願っている。

 

低価格帯機材(5百万㌦-5億円以下)

機  種

リスト価格

備     考

マイクロジェット

Eclipse 550

Citation Mustang

Phenom 100

Citation M2

Honda Jet

(100万㌦)

2.8

3.4

4.4

4.5

4.5

マイクロジェット機の航続距離は2.000km以上。日本での利用は300~700㎞の短距離が中心と成ろう。飛行速度は600~700㎞/時位。この程度の距離で飛行時間は30~60分程度と性能的には充分と思われる。但し、ジェット機を含めた全ての固定翼機は98空港しか離発着陸出来ないと言う構造的な制約がある。

小型固定翼機

Cyruss SR-22

Corvalis TTx

Nextant 400XT

Baron G-58

Beech C90GTx

0.57

0.73

0.75

1.4

3.8

小型固定翼機の航続距離は6~700km。日本での利用は300~700㎞の短距離が中心と成ろう。飛行速度は300~700㎞/時位は有るが平均500㎞/時と置いて飛行時間は35~60分程度と性能的には充分と思われる。但し、上記マイクロジェット機同様全ての固定翼機は98空港しか離発着陸出来ない構造的な制約がある。

軽ヘリコプタ-

Robinson R-22

R-44 Raven II

R-66

Bell 505

Airbus EC120

AS-350 B3/ EC-130

0.28

0.45

0.84

1.1

1.4

2.5

軽ヘリコプタ-の航続距離は6~700km。日本での利用は50~150㎞程度の短距離が中心と成ろう。飛行速度は200㎞/時以上だが200㎞/時と置いて50~150kmの飛行時間は15~45分程度で性能的には充分と思われる。全国30,000と言われるヘリポ-トと90日程度で要件満して居れば新たな「場外」の許可も取れる。

低価格帯ヘリコプタ-

機 種

Robinson R-44 Raven II

Robinson R-66

Bell

505

Eurocopter

EC-120

Eurocopter AS-350 B3

リスト価格

$442,000

830,000

1,100,00

1,400,000

2,605,000

航続距離

556㎞

602

667

710

641

飛行速度

215㎞/時

232

232

223

226

乗 客 数

3人

4~5

4~5

4~5

4~6

登録機数(日本)

98

5

0

3

94

生産機数(世界)

9.974

460

0

604

1,030

運航機数(世界)

3,452

380

0

389

(2,313)

2015年予測

11,604

785

0

697

1,546

世界の回転翼機の地域分布

                                                       FAA Database April 2015

総 計

北 米

欧 州

アジア-大洋州

中南米

その他

32,830

19,505

5,832

4,432

1,678

1,383

Share

59.4%

17.8

13.5

5.1

4.2

l  北米(米国、カナダ)欧州で世界の77.2%のシェア-を持つ。

l  アジア・太平洋圏は10%程度のシェア-より急成長シェア-を伸している。

トップ15ヶ国の回転翼機保有数

                                                       FAA Database April 2015

順 

国 

保有機

順 

国 

保有機

1

U.S.A.

17,132

9

Japan

677

2

Canada

2,373

9

Kazakhstan

677

3

U. K.

1,796

11

Italy

670

4

Australia

1,483

12

Brazil

555

5

South Africa

793

13

Mexico

381

6

New Zealand

756

14

Switzerland

296

7

France

753

15

India

259

8

Germany

682

Top 15

29,283

89.2%

アジア・大洋州圏内の順位と回転機翼数

                         FAA Database April 2015 (Asian Sky Group Feb. 2015)

順 

国 

保有機

順 

国 

保有機

1

Australia

(Asian Sky Group)

1,796

6

Indonesia

115

(179)

2

New Zealand

756

7

Philippines

84

(179)

3

Japan

677

(800)

8

Thailand

83

(115)

4

India

259

9

Malaysia

68

(173)

5

China

Mainland

Hong Kong

Macau

Taiwan

221

(655)

214

(583)

3

4

(31)

(41)

10

 

 

Top   10

 

 

Others

域内合計

域内シェア-

 

373

(362)

4,432

91.5%

 

 

 

日本の回転翼機数

 

日本での登録機

Asian   Sky Group end Year 2014

FAA   Database 2015

合計 811

ピストン単発  177

タ-ビン単発  175

タ-ビン双発  459

800

677

l  日本、中国は政府が関わる統計が正確。海外の一流の調査機関でも機数は大きく異る。

 

市場の回転翼機メ-カ-別機数

                                                     FAA Database April 2015

Total

Bell

USA

Canada

Robinson

Airbus

Aerospatiale

Eurocopter

独Eurocopter

Hughes

Sikorsky

Agusta

Others

32,830

10,502

(8,791

(1,711)

7,075

6,373

(3,459)

(1,938)

(976)

2,618

1,438

890

3,934

Share

32.0%

21.6

19.4

8.0

4.4

2.7

11.9

 日本で多く利用される低価挌帯回転翼機の機数

              日本航空機全集2015  FAA Database April 2015

機  種

日 本

米 国

世界全体

Airbus

AS-350/ EC-130 Series

EC-120 Series

97

94

3

2,348

2,125

223

3,895

3,503

392

Bell 206 Series

42

4,279

4,619

Robinson

R-22 Series

R-44/ R-44 II

R-66

163

61

97

5

4,918

2,310

2,174

434

7,412

3,233

3,719

460

2014年末の日本の低価格帯ヘリコプタ-保有数

                              日本航空機全集2015

登録機数

R-22

R-44

R-66

Bell 206

EC-120

AS-350/EC-130

ピストン機

総数177機

61機

34.5%

97

54.8

タ-ビン単発総数175機

5

2.9%

42

24.0

3

1.7

94

53.7

(1) Robinson 社は当初$276,000のR-22を世に出し、業界に大きな衝撃を与え、日本でも相当機数が利用された。然し、その後R-44の上位機種を$442,000で販売を開始した為、R-22からの乗り換えが起き、日本市場でも同様な現象が見られ、ここ何年か、日本に於けるR-22の登録機数は減少、R-44は逆に増加、近年登録機数は逆転した。2014年末の登録機数はR-22 61機, R-44 98機。R-22は個人が所有したり、訓練機として利用されたりで、厳密なビジネス機の範疇外の物も多く、本サイトでも触れる事はあっても軸足はR-44以上のビジネス客の「2点間輸送」の便に供し得る機材に移す。但し、R-22は乗客1人しか乗せられないが、地方への出張でAir Taxiとして手軽に利用出来る潜在的なポテンシアリティ-は残されている。

(2) Robinson R-66は2010年末に受渡しが開始、日本への輸入は2012年、日本で型式

証明が取れたのは2013年6月。世界で最も注目されている百万㌦を割るタ-ビン単発機だが、Robinson社自体は新興ベンチャ-企業で生産能力に限界があり、供給が需要の後追いの状況が続くと見られている。Bell社は競合出来ず生産を打ち切った Bell 206B JetRangerの代替機としてHeli-Expo 2014で後継機Bell 505を発表した。価格も1.1百万㌦に抑えたが、開発の過程でこの種低価格帯ヘリコプタ-が如何に価挌センシチブか痛感したと述懐した。

(3) Eurocopter社はこの種低価格帯ヘリコプタ-の対抗機種としてEC-120を上市したが安い機種でも1.4百万㌦を越え競争力が乏しい為、製造費の安い中国に進出、ハルピンで2013年末より生産すると発表、進出の条件として150機の受注を前提としたが、この条件は満たされたが、此処暫く中国市場の需要の充足に追われ様。

(4)Bell 505の前身であるBell 206 (2014年末で日本での登録機は42機) Eurocopter EC-120, Robinson R-66は何れもEntry LevelのLight Helicopterに分類されて居り、日本では単純な「旅客の2点間輸送」以外の多様な業務がこなせる上位機種のAS-350の需要も大きく今後も利用と伸びが期待される。

(5) 日本では、低価格帯機種で実績のあるRobinson機と上位機種としてこれも実績のあるEurocopter AS-350機を中心に利用が進み、その間中国で生産されるEC-120の日本市場への供給の可否、価格、又Bell 505機の「費用対効果」と日本への供給可否等を勘案した展開と成ろう。何れにしても、Bell, Eurocopter, Robinson社の三つ巴の競争の幕開けを迎え日本もこの好機を捉えない理由は無い。市場で未知の新鋭機がどの様に市場を席巻するかは予測が難しいが、Foecast International社の2011年半ばの予測資料は下記。この時点ではBell社は206Bの生産を打切って居り、後継機の505の生産計画を発表して居ないので、3社三つ巴の市場予測は2015年位迄は「推測」「憶測」も出来ない事は予め念頭に置く必要がある。

                                             Forecast International 2011 Data

機 種

Bell   206B

EC-120/130  

AS-350

R-44

R-66

生産予測(2012~21)

155機

856

2,257

3,982

1,735

市場シェア-(2021年)

2.4%

13.2

34.7

(68.6%)

27.5

(1)  米国Bell社は206シリ-ズの生産を打切って居り、表記の数値はBell Helicopter Textron Canada, Ltdの生産・販売予測。Bell社は2013年のパリ-エアショ-で後継機505の企業化計画を発表、性能の開示とモデル機の出展を2014年2月のHeli-Expo 2014で果した。型式証明取得・商業的受渡しは2016年後半を目指しているが既に300機以上の顧客よりのL/I (購入意思表示)を取得している。日本からも2機の購入意思表示があった。この為、2014年にはRobinson R-66の買い控えも起きているが、日本への受渡しは2017年以降と成ろうが既に市場では色々の思惑が交錯している。

(2)  Eurocopter EC-120はRobinson社の低価格ヘリコプタ-を念頭に置いたものでは有るが、価格的には競合出来ず ($1.4~1.8百万㌦) 、生産コストの安い中国での生産に踏み切った。中国でのコストが幾らに成るのか、その低コストを利用して日本を含む海外市場でも販売するか現段階では未定。但し、日本には悪い話ではない。

(3)  尚上記の市場シェア-は2012~21年の10年間でピストン単発ヘリコプタ-の生産/販売予測を5,803機を母数として算出。ピストン単発ではRobinson社は既に市場の85~90%を抑えるほぼ独占的供給者。対抗馬のEnstrom社は中国に買収された。

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