2015年05月19日(火)05時39分

(15-09) 低価格帯小型機のトピックス2題

 

 

リ-マンショック以降、ビジネス機業界では超富裕層、セレブ、VIP等の「特権階層」が利用する豪奢・高額のビジネスク機の上位機種と一般企業が利用する中/低価格帯の機種の間に大きな明暗が見られた。ピケテイ-が述べる様に、2000年代の金融バブルで国によっては貧富の格差が大きく拡がり、社会主義国では標榜するイデオロギ-の対極の極端な貧富の格差が産まれた。本サイトでも述べて来た様に共産党一党独裁の中国では一部「特権階層」の極端な富の集中がビジネス機業界を驚かす最上位機種の買い漁りと成り、東南アのCrony Capitalism では、一部の財閥が富を集積、欧米を真似て「特権階層」がビジネス機の上位機種を争って買ったので、これにより世界のビジネス機業界は息を吹き返すと言う皮肉な結果と成った。他方、一般が利用可能な中/低価格帯の機種は未だリ-マショックの打撃より立ち直れず、存続を賭けて懸命な起死回生策に取り組んでいる。日本の民間に現存する低価格帯の大半を供給するビジネスジェット機メ-カ-のCitation、これにBeechcraft,Cessnaと言った名門もTextron傘下に集約された。それでも、名門メ-カ-は救世主が出るから企業の存続は保証されるが、90年代後半より輩出した創造的な低価格帯機材を市場に送り注目を集めた小規模ベンチャ-企業は不況の荒波に呑まれその多くは破綻して姿を消した。広い世界では、それを惜しみ、援助するスポンサ-も現れる。

本サイトは、如何にして日本でもビジネス機を企業マン或いは一般利用者の「2点間移動の足」として利用し得るかを考える事が目的だが、ビジネス機は「特権階層」が「富と権力の象徴」の基盤維持・発展の為の手段として、又一般ビジネスマンの「2点間移動の足」として「生産性向上」の為の「ビジネスツ-ル」の利用すると言う2面性を是認し乍らも、後者に的を絞って来た。幸い、日本の企業マンの良識が高額な上位機種を利用する選択に走らなかった為、ビジネス機業界の根底を揺るがす激震の影響は受けて居ないが、一方では国情の違いを勘案しても、底辺の低価格帯機材さえも一般の「2点間移動の足」として使われないと言う現状は国際的な先進経済大国としては異常な事態である。運好く、低価格帯機材の市場への登場を活用した起死回生策は日本がこれを最も必要とする時にピッタシ符号して居るので、日本将来のビジネス機の在り方に就いての参考の資として提供する。一言で言えば低底価格帯機材の活用と集約メリットを活かした利用の参考の資とする。

One Aviation

 

ビジネス機のメ-カ-として、Airbus, Boeing, Bombardier, Dassault, Embraer, Gulfstream等 は業界関係者で有れば誰でも知る処で有り、上記のBeechcraft, Cessna, Citationの知名度も高いが、他に10社位の名を挙げられる方も多かろう。他方、 One Aviationの名を知る方は何人居られるであろうか?One AviationはTextron同様瀕死の重傷を負ったEclipse Aerospace社とKestrel Aircraft社を集約した持株会社である。何れが他を吸収合併した訳では無く、傘下2社が持株会社に入り持株会社の株主と成る事で話し合いが進められている。One Aviation は2014年Eclipse Aerospace双発VLJ (Very Light Jet) EA-500 12機を出荷したが、これを24~48機/年に増やし、それによるキャッシフロ-でCirrus Aircraftを退職Kestrel Aircraftを興したAlan Klapmeierが開発中の単発タ-ボプロップ機のK-350の開発費用に充て様と言う構想。 両機種とも価格は3百万㌦前後だが、米国でも、一般に利用させる為には、5百万㌦以下の機材が必要と言われて居り、VLJの最上位機種のホンダジェットで4.5百万㌦、日本にも入っているCitation Mustangで3.5百万㌦。広大な米国では一寸そこ迄と言っても数百㎞に成るのでジェット・タ-ボ機が必要と成るが、日本は精々25~50㎞、関東経済圏の端でも150㎞あれば充分で、離発着に空港を必要とする固定翼機に代えて、場外ヘリポ-トで済み、機材価格も1百万ドル前後の低価格帯ヘリコプタ-の方が使われ易いが、これでも「共同所有・共同運航」の集約化によるコスト合理化が必須。

 

Cirrus Aircraft SF50

 

Cirrus Aircraft社は日本にも輸入されているSR-20と上位機種のSR-22の供給メ-カ-で、海外ではAir Taxiとして使われ、上位機種のSF50(価格2百万㌦)も開発、2008年初飛行に成功している。その直後のリ-マンショックの激流に一気に押し流された。弱肉強食の競争社会米国では、金融機関が弱者の生命維持ラインの融資を容赦なく引き上げるが、新規参入の企業等が先ずリストラの対象と成る。同社はその後、大規模な社内リストラを断行、訴訟にも巻込まれ2009年企業の存続さえ危ぶまれたが、2011年2月中国のCAIGA (China Aviation Industry General Aviation) が210百万㌦で同社を買収した。CAIGAはAVIC (Aviation Industry Corporation of China) 傘下の企業だが、AVIC は中国政府100%所有の国営企業。SF50は試験飛行実施中で既に400時間の飛行を終えている。2017年には年間125機の生産も予定している。尚、Cirrus Aircraft社は1984年の創業以来2015年2月迄に5,600機の出荷実績を持つが、これはSR-20,SR-22でSF50は型式証明取得手続進行中。尚創業者で永年トップでCirrus Aircraft社を育てたAlan Klapmeierは上記の様にKestrel Aircraft 社とOne Aviation社の経営に関って居る。その一方、中国は低価格帯小型機のCirrus Aircraft社と日本でもお馴染みのヘリコプタ-生産メ-カ-Enstrom社も買収、国を挙げてこの分野の技術、ノウハウを入手、自国での利用普及を策している。中国人は「危機」と言うのは「危ない -リスク」と「機会 - Opportunity」とが裏腹と成っていると認識している。如何なる機種がいか程使われるかは国土・人口の規模等の国情にもよるが、中国が国を挙げて対応して居る折に日本が業界の「協働」でビジネス機の一般利用を図らねば、世界はおろか、アジアでも独り取り残され事に成り兼ねない。

 

 

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