2015年04月29日(水)11時22分

(15-08) ABACE 2015

 

ABACE (Asian Business Aviation Conference & Exhibition) は4月14~16日中国の上海 で開催された。今回で10周年を迎え、逐年参加者も増え最近は8,000人を越える参加者で5月19~21日ジュネ-ブで開催されるEBAA (European Business Aviation Conference & Exhibitio )と11月17~19日ラスベガスでの開催予定のBACE (Business Aviation Conference & Exhibition=NBAA Convention) と並んで世界の3大ビジネス機ショ-として定着した。EBAAは12,000人 ,BACE は25,000人程度の参加者が居るので一廻り規模は小さいとは言え、中国、東南アジアはビジネス機の高度成長市場で有り、熱い視線が注がられている。主催者側は今回のABACEは「最も良かった」”Best Yet”と自画自賛した。遠距離飛行用のHeavy Jetよりピストン機、ヘリコプタ-迄38機が出展され、昨年と同じ数では有るが10年前の3倍と成った。出展企業は183社と初回の5倍に成長した。参加国企業は40ヶ国を越えたが、今回はその40%が近隣諸国であった。ABACE はAsBAA (Asian Business Aviation Association-アジアの名は冠しているが中国ビジネス航空協会)とNBAA (全米ビジネス航空協会)の協賛で中国、米国の政府高官も顔を見せた。又今後暫く、東/東南アジアが世界のビジネ機の成長の牽引車に成るとの予測でも見解が一致している。

この種業界のエアショ-は世界中より関係者が集まるので絶好の広報の場でもあり、大型成約もこの機会に発表する事で広報効果を倍加させるのが慣例だが、中国等への目立つ成約は、成約の時点で話題が少ないメ-カ-は随時発表する故目新しいニュ-スは少なく、加えて本サイトでも紹介したASGがHeli-Expo 2015の開催日 に合せて3月3日、、ABACE 2015も開催日の4月14日に前者は回転翼機、後者は域内のビジネス機に関する詳細なレポ-トを公表して居るので関係者の多くは域内の実情を把握して居り、ショ-そのものは盛会であっても、目立ったサプライズは聞かれなかった。尚来年度の域内の大きなイベントとは、隔年開催のシンガポ-ルエアショ-が2016年2月16~21日、ABACE 2016は4月12~14日が予定されている。以下簡単に幾つかの話題を拾って提供する。

 

(1)本サイトでも紹介したASGのレポ-トは詳細な記述で「地域」の実情を適確且つ包括的に記述しているが、ビジネス機の領域ではビジネスジェット機と回転翼機が中心でタ-ボ機、ピストン機を含めたより包括的な絵は描き切れていない。それ以上に、通常はアジア-太平洋圏は一地域として纏めて統計が発表されるが、域内のビジネス機大国の豪州、インドそしてニュ-ジ-ランドが欠落して居ると言う欠陥がある。主要な2014年末の世界統計は集計されてはいるが、各デ-タ-間に大きなばらつきが有り、現在問合中で回答を得次第本サイトでレポ-トするが、業界一流のデ-タ-も拾い方でかなり大きなばらつきが見られる事は本サイトでもリマインドして来た。

(2)総括としては東・東南アジアのビジネスジェット機数は2014年744機と前年の647の15%増。但し、昨年のシンガポ-ルエアショ-当時のFlightglobal誌の域内のジェット機+ターボ機の「狭義のビジネス機」の推定値は1,200~1,500機、GAMA推定で750~1,500機と幅が広く公的な国別登録やTax Havenに隠されている機材や域外からチャ-タ-される機材が混淆して居り、国別の保有機統計がどの程度の意味を持つかの見直しも必要。「厳格」な拾い方をすれば日本の2014年末の「狭義のビジネス機」は61機とグロ-バルな統計の「誤差範囲」に留まる。

(3)ASGはこの点に気付き域外に所有する機材を補完したが、本サイトで指摘した通り「意気込みは良し」としても中途半端で参考の資としても問題が大きい。

(4)回転翼機は域内(大洋州、インドは除く)は2014年末2,463機と前年の2,254機の10.9%の伸びで、今後更に伸びると予測されている。今回Bell社は来年末上市予定のBell 505 Jet Ranger X 5機のL/I (Letter of Intent)を会期中取付けたと胸を張った。

(5)Cessna社が中国のCAIGA (China Aviation Industry General Aviation Company, Ltd) と2012年に合弁企業 Cessna-AVIC Co., Ltd.を設立、中国内で組立てられたCitation XLSの処女機を本年末に受渡すと発表話題と成った。

(6)この様にアジアはビジネス機の急成長市場として目覚ましい発展を遂げている中でJA機の登録機数、ビジネス機の「ビジネス客の2点間輸送」では対極的な停滞に甘んじて居るとの印象も受け様が、ASGは国別の利用状況に就いて「地域内での利用は地理、経済発展度、地域特性により多様な利用形態/成長の違いが有る。」と指摘、日本に就いては「域内で最も成熟した利用と発展段階を示す」と前向きに評価。更に回転翼機に就いては「35%が救助、緊急医療、法執行(海上保安庁、警察等)に利用されるが、22%は企業の輸送業務や私有機として利用される」と評価。

(7)やや「勇み足」だが、スイスのJet Aviation (親会社はGulfstream社と同じGeneral Dynamics社)や中国の大手チャ-タ-サ-ビス提供業者Asia Jetが成田でビジネス機の最上位機種Airbus ACI318, Boeing BBJ, Bombardier Global 6000,Gulfstream G-650を用意して、日本の超富裕層、セレブ、VIPのニ-ズに応えられる事もレポ-トに記載。

(8)即ち、海外の第3者の目からも、日本の「特権階層」のニ-ズには充分応じられる事、現地出張でオンデマンドチャ-タリングをする為の体制は着実に整備されつつある事、国内の回転翼機の利用は「救助、緊急医療、法執行(海上保安庁、警察、企業の輸送業務、私有機)として高度利用されているとして高く評価している。

(9)残る課題は、これらの分野での機材の「共同所有・運航」によるコストの合理化、これに合せて積年の課題であり乍ら未達成の「ビジネスマンのビジネスツ-ル」として「2点間移動の足」を提供する事で米国等では数十年前から当り前に使われて来たAir Taxiの導入を工夫する事だが、近々Air Taxiを主題としたレポ-トを纏めサイトに公開する。

(10)最後に、欧米の参加者の一般的感触は「中国のビジネス機購入意欲は今後暫く続くがピ-クは過ぎより慎重に成ろう」「露骨な富の誇示は政権の腐敗取締り強化で陰を潜め様」「中古機の購入が増え様」「既に市場は供給過剰で需要不足と見られる」

 

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