2015年09月24日(木)01時50分

(15-18) マンハッタン島と空港間のAir Taxi

 

 

New Yorkの中心街はEast RiverとHudson河に挟まれた中州のマンハッタン島で有る事は良く知られている。オランダ人が植民地として移住してきた時代、マンハッタン島の南端をインディアンから買い取りNew Amsterdamと名付けた。島の南端は三方河で守られ、島の北部に壁を設け、北よりのインディアンの襲撃に備えた。今でも、島の東西を走る防禦壁の跡地はNew Yorkの金融街の中心であるWall Streetに名を残している。開拓時代の砦としては有効な選択では有ったがその後の発展で、Wall Streetは兜町同様証券取引場と金融機関の世界の中枢機能を果たす事に成った。一般企業はマンハッタン島の真中に在るMid-Townに集中するが、東京駅に相当するGrand Central StationとPenn Stationがあり、両駅は地下鉄のシャトル便が往復している。のPenn Stationの近くの45番街寄りにブロ-ドウェイの劇場街、Grand Central Stationの周囲に大手企業の本社や国連がある。当然ホテル、レストラン、土産物屋もこの近辺に集中する。New Yorkは東京同様、昼夜の人口は大きく変わるが、New Yorkの場合は岩盤の上に建てられた摩天楼のアパ-トに住む人が多く、マンハッタン島を縦横に繋ぐ地下鉄、バスの公共交通機関を移動の際利用するのが一般的。この様な歴史と環境下で航空機時代を迎えた。人口密度が高いマンハッタン島に空港を建設する余地は無く、東側対岸10㎞の位置に国内便用のLa Guadia,21km離れた処に国際便が多く離発着するJ.F.Kennedy 空港、西側対岸のNew Jersey州に11㎞離れたNewark 空港がある。距離は直線距離だが、何れも日本の様に鉄道が無く空港バス、タクシ-、自家用車等でアクセスする。交通渋滞が全く無ければLa Guadia ,Newarkは30分, Kennedyでも45分位で行けるが、マンハッタン島はインディアンの襲撃に備えた砦だけに、外部からの出入りは川底のトンネルか橋を使う事に成り、此処がボトルネックと成り、朝晩のラッシュアワ-やハイウェイが混む時はトンネルを抜けるだけでも30~60分位を要し、予定した航空便に乗る為には相当の時間の余裕を見なければならない。悪天候や事故が重なれば、移動時間は「神頼み」と成る。当然多忙な人の為、当初はGrand Central Stationの真上に聳える旧パンアメリカンビル(現在は国連の近くに移転)と西側のハドソン川沿い、Wall Streetの川縁りにヘリポ-トがありJFK,Newark空港へのヘリサ-ビスがある。但し、かってサ-ビスを提供したNew York Airways、 New York Helicopters, Pan Am Helicopters, US Helicoptersは充分な顧客層が集められず、失敗に終わっている。本年初めベンチャ-企業の Gotham Airが新しいアイデアでサ-ビス提供を始めたが、日本でもAir Taxiの導入を検討中なので、参考とする側面も多くトピックスとして紹介する。但し、New Yorkでの先例を其の儘日本に流用するには無理が有り、類似点と相違点を列挙する事で日本の環境に馴染まない「猿真似」は避けなければならない。

                                          類似点従って日本の参考に成る諸点

1.Gotham Air のTim Hayes CEOは過去の失敗は利用層の参画が無かった事に帰した。

2.Hayes氏は利用層の「手の届く」運賃の提供が出来なければ成功は無いと喝破。

3.焦点を多忙な中流階層に絞ったがこの階層の「手の届く」運賃の提供可否が鍵。。

4.日本でもAir Taxiを利用するのは学生や、新入社員では無く働き盛りの中堅以上の社員。

5.更に、一般の利用者も金銭的に家族や、同伴者とAir Taxi料を払える階層と成る。

6.富裕層やセレブ等の何時でも利用出来る「特権階層」では無く”Middle Class”が標的。

7.この為には”Middle Class”が払える“Affordable”な料金設定が成功の鍵を握る。

8.利用顧客の大手企業に積極的に投資家に成って貰い、顧客層の集客基盤を構築した。

9.Gothamの経営陣は顧客と直接対話出来るマ-ケテイングを得意とする人材で固めた。

10.運航には、New Yorkを地盤とする運航企業で現実を知り尽くしたと業者と提携した。

11.顧客1人当りの運賃を下げる為「乗り合い」とし6~7人乗りで最低4人の乗客が必要。

12.4人弱の乗客の場合24時間前に予約者に運航取り消しを通知他の交通手段を使って貰う。

13.何れの空港迄の飛行時間も6分以内。交通渋滞でJFKは最悪3時間と言う事例もある。

14.多忙な利用者の時間節減で人件費節減を図れれば多少高い料金の支払いは正当化可能。

15.利用料金の絶対額の比較では無く多忙な人が「時間を金で買う」基本を前面に打出した。

                                                   相違点従って日本には馴染まない諸点.

1.利用機材はSikorsky S-76,Airbus EC-130,Bell 427等1~2ランク上位機種で6~7人乗り。

2.New York は各空港に鉄道が無い故にバス、タクシ-、自家用車以外の交通手段はない。

3.従って、競合交通手段は道路渋滞等で時間的信頼性が薄く、時間節減で勝負が可能。

4.空港への飛行時間は僅か6分。時間節減以上に交通渋滞リスク排除のメリットが大きい。

5.日本は鉄道が自動車より時間的信頼性が高くコスト安。Air Taxiは地上タクシ-の補完。

6.日本では3~5人乗りの低価格帯機材で充分。上位機種ではコストが高く利用者は居ない。

7.JFK空港迄地上タクシ-$60~80、ハイヤ-$100~150でGothamのAir Taxiで$219.

8.地上タクシ-3倍の料金でも交通渋滞で予定した商用便をミスするリスクは回避出来る。

9.このNew Yorkと東京の交通選択肢の相違性を見誤らない様にする事が肝要。

10.日本はタクシ-利用が空港利用客の3%でAir Taxiに馴染みも無く米国とは異る環境。

                                                               日本が参考し得る諸点

1.事業性の決め手はどの程度利用者を取り込めるか?Air Taxiは日本では馴染の薄い領域。

2.利用者の集客には利用者の「手の届く」料金の提供が必要だが日本では一層重要な要因。

3.日本では競合する地上タクシ-代の3倍は無理。1.5~2倍負担能力の限界と思われる。

4.6分で$219、1時間換算$2,190.\100/$で\219,000/時。低価格帯機材の上位機種でこれ。

5. SikorskyS-76 の機材価格は13.6百万㌦Bell 427 7.3百万㌦Airbus EC-130 3.6百万㌦.

6. 日本は1百万㌦の低価格帯機材とGotham Airの1/3.6~1/13.6の金額の機材を利用予定。

7. 成田空港-都心の定額タクシ-2万円とほぼ同等。これの1.5~2倍に収める努力をする。

8.Gotham Airが言う様に利用企業の参画が集客の為の切り札であり決め手でもある。

9.金融業、運航業者、利用者との接点を持つマ-ケテイングの重要性は日本でも全く同じ。

10.従来の反省として先ず、利用者側の意向を汲み上げその参画による「協働」が不可欠。

11.高度成長の終焉で日本でも「供給者優位」から「顧客本位」に重点が移行した。

12.米国も”Customer is King”を唱え乍ら顧客の意向は無視。今回はその反面鏡を活用。。

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