2015年10月06日(火)06時51分

(15-20) 無尽航空機 (UAV-Unmanned Aerial Vehicle)

 

総理大臣官邸屋上に放射性物質を付着させた「ドロ-ン」が落下暫く誰も氣付かなかった為、大きな社会問題と成り、政府も改正航空法で規制に乗り出し、衆参両院の満場一致で10月4日に可決された。無人航空機は第一次大戦の頃よりアイデアとしては存在したが、実用化の段階に入ったのは第二次大戦以降で、マスコミを賑やかす様に成ったのは、イラク戦争やアフガニスタンで米国が実戦に無人航空機を投入しそれが報道されたからである。一方無人航空機の範疇に入る「ドロ-ン」は米国議会近辺、ホワイトハウスの芝生、メルケル独首相の身辺近くに落下、日本では総理大臣官邸の屋上に意図的に墜落させた事により一般の関心を集める事と成った。実は、最近各地で開催されるエアショ-や航空機関連のConventionでも UAV (Unmanned Aerial Vehicle-無人航空機) の軍事用に開発された技術の民間への技術移転で一般的利用の検討も進み、関連業界者の大きな関心を呼んでいる。この様な背景を踏まえ、時事トピックスとして取り上げた。

無人航空機は第二次大戦以降次第に実用化の段階に入ったと述べたが、軍事面では有人機であればパイロットの養成が必要であり、撃墜されれば貴重なパイロットの損耗にも繋がり、無人化のニ-ズが高まった。第二次大戦ではドイツはV-8ロケットを開発、爆撃機を使わずロンドンを攻撃したが、これがミサイルへと進化した。更に標的に対してpin-point攻撃をする為、様々な制御法やセンサ-付きのミサイルが開発された。一方航空機は民間でも広く利用され、安全性の確保が最重要課題で、今日の航空機は鉄道、自動車に比較しても桁違いに安全性の高い交通手段と成った。然し、最近民間商用機の大きな事故として報道されたマレ-シア航空のウクライナ上空での事故、或いは北京行きの便が豪州近くの海域で墜落した事、更にはLufthansa傘下のLCC機の仏領の山岳地帯での墜落は何れも航空機のメカニカルトラブルでは無く、原因は人為的なロシア軍による撃墜、ハイジャック、パイロットの精神異常等が取沙汰された。真偽は兎も角、機材の安全性より “Man to Machine” の課題がクロ-ズアップされた。日本的な発想枠外かも知れないが、無人の商用機を地上より衛星のGPS機能を利用、運航する事も真剣に検討されている。最近安倍首相もオリンピック開催時の2020年迄に安全性の高いコンピュ-タ制御自動車の開発構想を打ち出したが、人的ミスによる「人災」を避ける為、無人の鉄道、高速バス、船舶、そして航空機の実用化は最早奇想天外な構想では無く開発専門業界では視野に入り始めている。我国に目を転じれば、農薬散布に無人機が利用されるが、一説では現在2,700機が存在すると言われている。「無人」探査機ハヤブサは2005年より約5年地上よりの遠隔操作で運航されたが、更に進化したハヤブサ2も打ち上げられて早1年近く成る。日本も決して世界に遅れて居る訳ではない。最近社会問題化されたドロ-ンもラジコンとして日本で親しまれて来た小型機の派生品でカメラを搭載、手軽に「空撮」が出来、数千円から1万円以下でAmazonであればワンクリックで24時間中に宅配される。英国で開発された無線操縦機Queen Bee (女王蜂)の対句として雄蜂のDrone (ドロ-ン)に成ったとか、飛行する際の音が蜂の羽音に似ているとか様々な説があるが、ラジコンは遠隔操作の模型機として楽しまれるが、ドロ-ンはスマホでお馴染みの小型カメラを搭載、空撮が出来る故に、人の集まるイベント現場で使われ、墜落すれば事故にも繋がり兼ねないので、人が集まる処での使用は危険と飛行禁止区域が設けられる。米国、カナダでは厳しい規制は無く、欧州でも規制は後追いに成っている。本稿ではTeal Groupの統計デ-タ-の一部を紹介するに留めるが「無人機」は軍事用の開発が進み、民間への技術移転も進み、既に実用化の初期段階に入っている。

Teal Group 資料 (単位 : 機数 金額 百万米㌦)

2015

2016

2017

2018

2019

2020

米   国

その他地域

研究開発予算合計百万㌦

4,671百万㌦

805

5,476

4,272

850

5,122

4,241

910

5,151

4,573

1,000

5,573

3,926

1,150

5,076

米  国

その他地域

購入予測金額合計

 

2,764百万㌦

2.432

5,197

2,029

2,671

4,640

3,270

3,702

6,972

4,635

3,296

7,931

4,565

3,973

8,536

米  国

その他地域

生産予測機数合計

内アジア・太平洋圏

世界シェア-(%)

米  国

その他地域

生産予測金額合計

内アジア・太平洋圏

世界シェア-(%)

1,296機

1,108

2,377

369

15.5

1,245百万㌦

1,286

2,531

459

18.1

963

1,085

2,048

337

16.5

955

1,705

2,660

513

19.3

1,483

1,667

3,150

694

22.0

1,675

2,211

3,886

1,033

26.6

1,783

1,493

3,276

716

21.9

1,685

2,373

4,058

1,289

31.7

2,079

2,201

4,280

1,040

24.3

3,225

3,365

6,590

1,798

27.3

2,276

2,175

4,453

978

22.0

3,478

2,996

6,474

1,574

24.3

米  国

その他地域

民間ミニ/小型機合計

米  国

その他地域

民間ミニ/小型機金額合計

50機

350

400

3百万㌦

21

24

100

550

650

6

33

39

500

900

1,400

30

54

84

1,000

1,500

2,500

60

90

150

1,500

2,000

3,500

60

120

180

2,000

2,200

4,200

72

132

204

1.Teal Groupは軍用機の調査機関で無人機の研究開発予算の3/4は軍事用の開発予算。

2.日本では農薬散布用の無人機のみで2,700機と言われるが上記のデ-タ-とは喰い違う。

3.模型小型機的なドロ-ンは当然集計の対象外と推測される。

4.何れにせよ、Tealのデ-タ-はマクロ的な傾向を示す事が目的で細部に拘る必要は無い。

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