2015年11月24日(火)11時08分

(15-22) 米国の Air Taxi 会社 Imagine Air

 

恒例のNBAA Convention (前回のトピックス参照)は11月19日無事閉幕、参加者も例年25,000人程度が27,000人と盛況裡に終わった。但し、リ-マンショック以前は30,000人を越える参加者も有ったが、ビジネス機の売上げも当分2008年のピ-ク時を大きく下回る事が予測され、然も最近のビジネス機業界の活況はBRICs, 産油国、欧米の富裕層による上位機種の買い漁りによるもので、BRICsの経済的冷却傾向、石油価格の崩落により陰りが見られる。ビジネス機業界の救世主中国も「腐敗撲滅」の嵐の中で高額な上位機種の買い漁りは止まり、アジア市場をモニタ-するAsian Sky Groupもアジアの将来のビジネス機の成長予測を大幅に引き下げた。その一方、Honeywell社の今後の10年予測では、今後のビジネス機の需要の50%強は高額なHeavy Jetに集中すると言うご託宣である。ビジネス機は「金持ちの道楽」かビジネスマンの「ビジネスツ-ル」かの業界の永遠のテ-マは相対的に所得が平均化し、「格差社会」を嫌う日本の土壌では明確に後者にウェィトが必要。その結果、10年前には値が張る中/上位機種の殆どが日本の民間より姿を消し、僅か24機の低価挌帯のLight-Micro Jetが細々と生き残り、それも中小のオ-ナ-企業で大手の企業では無い。これを経済大国日本の恥辱と見るか、成熟社会の「良識」と見るかは脇に置き、米国でもビジネス機更に絞り込めばAir Taxiをより身近な物にする努力も続けられている。本サイトでも度々紹介して来たRobinsonの低価格帯ヘリコプタ-も一技術者が一般でも利用出来る25万㌦の機材を世に出し業界に大旋風を巻き起こした。流石に、旅客の輸送にはより高性能な機材が求められ45万㌦のR-44,タ-ビン機のR-66、これと対抗する107万㌦のBell 505 (日本でのデビュ-は2017年)に熱い視線が注がれ本サイトでは纏めて1機1百万㌦前後の機材として扱っているが、低価格帯機材と併せて「発想の転換」が不可欠。商売である以上、如何にして付加価値の高い「高単価商品」を開発するかは必然の企業努力。その一方、一般(マス)が利用出来るシステムを開発市場のパイを拡大、顧客に利便性を提供する一方、サプライサイドも潤うと言うのが時流。大量輸送による利用単価の引き下げで一般が利用出来る運賃を提供す事が戦後の日本の国策。更に、「空の自由化」を旗印として航空機の一般利用を促進した米国の音頭取りで航空会社の再編成、集約化、国際的なアライアンスの結成、そしてLCCの抬頭を容認市場は大きく拡大した。これら一連の動きが無ければ、現在の日本を潤す外国人観光客の増加や「爆買い」等は実現しなかった。羽田―福岡の商用便運賃の半分位の運賃で距離的には2倍の茨城―上海間を運航する中国のLCCさえある。長々と業界の長期トレンドに触れたのも、Air Taxi市場もこの時流に乗り始めたからである。NBAA Conventionでは当然高価格のHeavy Jetに話題が集まるが、地味な低価格帯機材の利用に就いても決しておろそかにされている訳ではない。過去10年NBAAもマイクロジェットや低価格帯機材普及に関するセミナ-や会合も催して来た。今回も此処で紹介するImagine AirもAir Taxi関係者の間では話題を提供した。

Imagine Airは元々南部Georgia州Lawrencevilleで2007年にAir Taxiの運航を開始した。2014年には、北部New Englandに本拠を置くKavoo社と合併、米国東海岸の市場の開発に乗り出した。日本と異り国土が広いので利用する機材は単発ピストン機のCyrrus 22。更にCyrrus社は低格帯小型ジェット機SF 50の開発に乗り出したが資金不足で計画は頓挫。此処で救世主として現れたのが中国のCAIGA (China Aviation Industry General Aircraft) で2012年Cyruss社に資金を注入500機の発注を行った。これにより地方自治体も資金を提供して工場を建設試験飛行を終えてHonda Jet同様本年末迄に型式証明を取得出荷開始予定。価格はHonda Jet 4.5百万㌦の半値以下の1.96百万㌦。標的は従来のAir Taxiを利用して来た富裕層より、自家用車で何時間懸けて目的地迄自分で運転する事業者或いは一般利用者。既に中国の500機に加え50機の確定注文を受注している。

 

価 格

機 種

航続距離

飛行速度

乗客数

Cyruss 22

$499,900

ピストン単発

1,943/㎞

339/㎞

4~5

SF 50

$1,960,000

Very Light Jet

556/㎞

6~7

Imagine Airは現在Cyrrus 22 11機を運航しているが来年は30機、その翌年は20機、更にSF 50の運航実績を見て購入も検討する。既に25,000時間の飛行実績を持ち、年間30%の需要の伸びが有る。1回の平均運航時間は1時間20分、利用乗客1.8人/回。

日本として参考に出来る諸点は;

1.一般(年収中の上以上)の利用には低価格帯機材が不可欠、上位機種では採算が取れない。

2.関東一円で飛行距離は150㎞以内。2,000kmの様な航続距離は不要。

3.ヘリコプタ-の巡航速度200㎞/時として100~200㎞の所要時間は30~45分で充分。

4.関東地区でも北部2/3には着地点の空港が無くヘリコプタ-の方が適している。

5.パイロットは1人なので運航以外にも顧客との対人折衝の円滑さが必要。

6.パイロットは全て退職者で経験は充分あるが給与は低く抑えられる。

7.社長が経営全般を把握して居り「小さな政府」で販管費を抑えている。

8.販売はネットで行う直売方式、料金体系や見積りはネット上で丁寧な対応が必要。

9.典型的なLCC手法で「顧客本位」の対応に徹している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*