2015年12月24日(木)02時31分

(15-23) MRJ (三菱リージョナルジェット機)

 

20151111日名古屋空港からMRJが洋上で基本動作の試験も行い1時間27分の初飛行を成功裡に終え業界、マスコミも1973年生産を中止したYS-11以来40年ぶりの「日の丸航空機」の出現に沸いた。処が、僅か1か月後、4度目の納入延期を発表された。20089月の時点では、2011年初飛行、2013年納入開始の予定であったが、途中で設計変更、開発並びに製造作業の進捗の遅れより、3回に亘り完成が遅れ、これ以上の遅れは顧客離れが起こると言う事で進捗状況を逐一報告、これ以上の遅延が起きないとの広報に努めて来た。最近では、NBAA Convention, ドバイエアショ-でも工期の順調な進捗振りをアッピ-ルして来たが、20174~6月に予定して居たラウンチカストマ-ANAへの処女機の受渡が18年後半にずれ込む模様に成ってきた。無論、何処の航空会社も設計の変更や試験中の不具合への対処等で完成時期がずれ込む事は珍しくないが、航空機メ-カ-としての技術力は業界でも十分認識されては居るが、既に受注分の内「オプション」「購入権」と呼ばれる部分は契約がキャンセル可能に成って居り、最大の顧客のSky Westは前回の工期遅延発表の際、ブラジルのEmbraer社に発注を分けた。MRJが当初発表した計画では経産省の後押しもあり「環境適応型高性能小型航空機」を看板に性能面でも一日の長があったが、Embraer社は改良機種を2018年市場に出す予定で、三菱重工の4回に亘る完成の先延ばしで先行メリットは殆ど無くなったとの観測もある。然も、ロシア、中国等の新興勢力も先を越して完成機を市場に出し始めた。Embraer社とRegional Jetの市場を2分して来たカナダのBombardier社は資金不足で改良機種のC-Seriesの開発が遅れ、三菱重工による救済も話題と上ったが、三菱重工はMRJ開発に注力、「2兎は追えない」と市場の噂を否定している。MRJに対する市場の期待も大きいだけに、年末を控え市場に話題を提供している。海外の業界誌が報ずるMRJの受注残は下記の通り確定受注は223機と成っている。

                           Flight International

会 社 名

確定注文

オプション

備   考

SkyWest Airways

100

100

Embraer社にも一部発注済

Trans State Holdings

50

50

傘下にCompassGoJet Airlines

J A L

32

 

最初の受渡20215

Eastern Air Lines

20

20

 

A N A

15

10

ラウンチオペレ-タ-

Air Mandalay

6

4

 

合  計

223

184

 

 

MRJ 9090席前後のRegional Jet機だが最近の話題は中国が6年前に初飛行したComacARJ21201412月中国の型式証明を取得、ラウンチカストマ-のChengdu Airlines11月末引渡しが完了,MRJクラスのRegional Jetの国際的競合は激化している。

                                                        Flight International

会社名

国 名

航続距離

座席数

受注残

価 格

ATR

ATR 72-600

米国

1,665㎞

74~78

214

$24.7百万㌦

Bombardier

CRJ900

CRJ1000

カナダ

3,340㎞

2,840㎞

86

100

32

28

$38.9百万㌦

$46.4百万㌦

Comac

ARJ21-700

ARJ21-900

中 国

2,200㎞

3,300㎞

98

98

0

0

$30.5百万㌦

Embraer

E-190

E-195

E-175-E2

E-190-E2

E-195-E2

ブラジル

4,445㎞

4,074㎞

3,815㎞

5,186㎞

3,704㎞

100

116

88

106

132

143

114

$32百万㌦

$40百万㌦

$46.8百万㌦

$47百万㌦

60.4百万㌦

三菱MRJ

米国(日本)

2,130㎞

88

407

42百万㌦

Sukhoi

SSJ100-95

SSJ100-95LR

米露共同開発

 

 

3,048

4,578

 

98

98

 

44

54

 

35.4百万㌦

$36.2百万㌦

 

不慣れ米国での型式証明取得の試み故に尚多くの難関が残されている。ここで「日の丸飛行機」と言う概念に一言言及する。ホンダジェットは一足先に12月初旬米国の型式証明を取得したが、藤野社長は市場に送り出すホンダジェット機を「日の丸飛行機」とは決して言わないし寧ろこの様に喧伝する日本の業界やマスコミに素朴な疑問を投げ掛けている。ホンダエアクラフト社は米国法人であり研究開発も米国に大きく依存して来た。小型ジェット機として始めて自前のエンジンを搭載しているが、これも米国GEとの共同開発。従業員1,500人は35カ国を超える外国人で日本のメ-カ-から調達する部品は十数%。市場・顧客は圧倒的に米国を始めとする日本以外の市場で、日本での販売は当面念頭にない。日本の航空技術者は構造設計や空力性能等の理論を良く勉強しているが、技術とユ-ザ-を繋ぐ部分の経験が少ない。ホンダジェットはMade in Japanとは呼べないが、日本企業の持ち込んだ概念と信念に多国籍の技術者が共鳴、多様性が齎したグロ-バル時代の賜物。何処の国の物と言うより日本人のコアコンセプトがグロ-バル市場に受け容れられる航空機を産んだと考えるのがグロ-バル時代の思考。以上が全てを語っている。

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