2016年08月05日(金)08時22分
(16-13) 低価格帯機材利用の世界・日本の現状
要 約
1.日本でビジネス機を一般に普及させる試みは過去20~25年続けられたが成果はない。 2.事由は過去30年以上ビジネス機は日本でも使われて来たが中核は低価格帯機材。 3.低価格帯機材とは$0.3~2.5百万㌦だがより焦点を絞れば$0.3~1百万㌦程度の機材。 4.90年代より欧米機材供給メ₋カ₋の慫慂でこの50~100倍価格の機材の導入が進められた。 5.日本は国策として商用便による「大量輸送」で中/遠距離の航空運賃を低く抑えた。 6結果としてビジネス、ファ-スト運賃でビジネスジェット機の1/50~1/100 の運賃。 7限定的な.新興企業トップ、セレブの利用者は居るが公益としての一般普及の対象外。 8.20~25年後の今日、ビジネスジェット機の上位機種は日本の民間より全て姿を消した。 9.色々の論議を交わすより、業界の実績を洗えば「事実」が全てを語って呉れる。 10.世界的なデ-タ-ベ-スは多々あるが今回はForecast Int’lの2016年版を流用。 11.各種のデ₋タ₋ベ-スを継ぎ接ぎすると混乱するのでForecast Int’lを中心に置いた。 12.統計数値の正確性より「全体と部分」の整合性で日本の立ち位置を明確化した。 13.海外で話題を提供、業界誌で紹介される高額の上位機種は極く一部で日本には無縁。 14.グロ-バルにはCessna, Beech,Piper他の安い小型機が世界に現存する機材の2/3。 15.Gulfsream,Bombardier, Falconの上位機種メ₋カ₋も上位機種の販売は全体の一部。 16.この辺を確り理解し認識しないと「木を見て森を見ざる」陥穽に陥る。 17.又海外の出荷も、固定翼機はリ₋マンショック時の44.3%%、回転翼機37.9%の水準。 18.浮わついた「幻想」を捨て去り確り現実と向き合い日本に馴染む利用法を確立する。 |
グロ-バルビジネス機出荷実績
Flight International 2016 デ-タ-
年度 |
固定翼機 |
回転翼機 |
年度 |
固定翼機 |
回転翼機 |
2000 |
734機 |
668機 |
2008 |
1,239 |
1,101 |
2001 |
847 |
598 |
2009 |
786 |
632 |
2002 |
736 |
578 |
2010 |
608 |
486 |
2003 |
537 |
666 |
2011 |
567 |
487 |
2004 |
640 |
886 |
2012 |
588 |
523 |
2005 |
832 |
1,075 |
2013 |
624 |
618 |
2006 |
979 |
1,160 |
2014 |
555 |
441 |
2007 |
1,226 |
1,165 |
|
|
|
1.上記民間機の中には商用機やコミュ-タ-機も一部包含されこちらは成長を続けている。
2.ビジネス機の高額上位機種は中国経済成長の鈍化、原油価格の暴落でバブルは弾けた。
3.中国の「汚職撲滅」、中東の石油収入激減で「特権階層」の上位機種買い漁りは停滞。
4.リ-マンショック以降出荷機数は半減上位機種が売れ総販売額は2~3割の減収に留った。
5.最近Bombardier社が発表した2016~2025年の下記予測が全てを語っている。
|
Light Jet |
Medium Jet |
Large Jet |
販売予測機数 |
3,100機 |
2,800 |
2,400 |
シェア-% |
37% |
34% |
29% |
販売予測金額 |
360億㌦ |
840 |
1,300 |
シェア-% |
14% |
34% |
52% |
6.Large Jetの10年間の販売予測機数のシェア-は3割を切るが販売額では5割を越える。
7.逆にLight + Medium Jetは機数では7割を越えるが、金額的には5割を割り込む。
8.但し、Large Jetも ($0.5~1億㌦)も政府専用機で有れば商用機1.5∼2億㌦より安く上がる。
9.何れにせよ日本は過去7年にLight Jet 中心に5機を購入しただけで上記の予測とは無縁。
ジェネアビ固定翼機の国別シェア-
Flight International 2016 デ-タ-
国名 |
保有機数 |
シェア-% |
国名 |
保有機数 |
シェア-% |
U.S.A |
30,403 |
75% |
Germany |
495 |
1 |
Canada |
1,398 |
3 |
U.K. |
451 |
1 |
Australia |
957 |
2 |
Venezuela |
281 |
1 |
Mexico |
920 |
2 |
Others |
4,262 |
11 |
Brazil |
789 |
2 |
Total |
40,659 |
100 |
South Africa |
603 |
2 |
|
|
|
1.米国、カナダ、メキシコの北米圏の世界シェア-は80%と圧倒的。
2.米国、カナダ、豪州、南ア、英国のアングロサクソン系5カ国の世界シェア-は83%。
3.メキシコ、ブラジル、ベネズエラのスペイン系ラテン3カ国の産油国シェア-は5%。
4.共通するのは何れも「階級格差」が現存。但し、米国、カナダ、豪州では低格機材も普及。
5.「大陸国」「産油国」でもなく「階級格差」も少ない日本は日本に馴染む方式を構築する。
代表的なビジネスジェット機上位機種
Flight International 2016 デ-タ-
メ-カ-・機種 |
世界総機数 |
リスト価格 |
シェア-% |
中 国 |
日 本 |
Gulfstream G-IV G-V G-550 G-650 |
2,703機 649 400 203 82 |
(百万㌦) 43.15 44.65 61.5 66.8 |
24% 15 7.5 3 |
0 1 3 6 |
0 0 0 0 |
Bombardier Global Express Global Express 5000 Global Express 6000 |
1,596 302 145 29 |
50.441 62.31 |
19 9 2 |
0 2 7 |
0 0 0 |
Dassault Falcon 7X |
1,834 110 |
57.5 |
6 |
1 |
0 |
1.代表的な長距離飛行用のビジネスジェット機の上位機種は1機数千万㌦以上する。
2.単価が高いので供給メ-カ-も買手も成約・所有に関して広報的な報道をする。
3.エアショ-、Conventionでも関係者の集まる場での発表を行い広報効果を高める。
4.上記の表の様に派手に宣伝される上位機種はメ-カ-の品揃えの一部にしか過ぎない。
5.高級ブランド品は「富と権勢」のステ-タスシンボルとして誇示され勝ちである。
6.日本は「成熟した経済大国」として経済合理性に乏しい上位機種は民間では所有しない、
7.これを日本は「経済大国として不相応」と見るか「合理的判断」と見るか見方は別れる。
8.過去20年経済合理性を重んじる大手企業はビジネスジェット機を所有する事はなかった。
9.ビジネスジェット機の1/100程度の低価格機材を工夫して使いこなす検討が進んでいる。
ジェネアビ固定翼機の市場シェア-
Flight International 2016 デ-タ-
メ-カ-名 |
機 数 |
市場シェア- |
メ-カ-名 |
機 数 |
市場シェア- |
Cessna |
12,427機 |
31% |
Dassault |
1,834機 |
4% |
Beechcraft |
8,631 |
21 |
Bombardier |
1,596 |
4 |
Piper |
4,191 |
10 |
British Aerospace |
1,170 |
3 |
Gulfstream |
2,703 |
8 |
Others |
3,154 |
8 |
Raytheon |
2,666 |
6 |
Total |
46,659 |
100 |
Learjet |
2,287 |
6 |
|
|
|
1.世界各地で開催されるエアショ-で高額の上位機種の成約が華々しく喧伝される。
2,上記の表が示す如くCessna, Beech,Piper,Othersの低価格小型機が市場の2/3を占める。
3.象徴的上位機種のGulfstream G-650は82機、Bombardier Global Express 6000は29機。
4.ジェネアビ固定翼機市場の「全体」「俯瞰」的視点より見れば一握りにしか過ぎない。
5.機材供給メ₋カ₋が高額、利幅が大きく広報価値の高い機材を宣伝するのは「当然」の事。
6,利用者側は市場に馴染まない選択を避けるべきだが、幸い日本は自らの選択を心得ている。
2015年末の日本の民間のビジネス機保有数
日本航空機全集2016
機 種 |
総機数 |
ビジネス機 |
官公需 |
商用・コミュ-タ- |
個人・他 |
ジェット機 双 発 多 発 |
602 587 15 |
24 24 0 |
12 10 2 |
565 552 13 |
1 1 0 |
タ-ボ機 単 発 双 発 |
132 30 102 |
39 27 12 |
30 1 29 |
60 0 60 |
3 2 1 |
狭義のビジネス機 |
734 |
63 |
42 |
625 |
4 |
ピストン機 単 発 双 発 |
543 488 55 |
255 240 15 |
5 4 1 |
30 9 21 |
253 235 18 |
回転翼機 ピストン単発 タ-ビン単発 タ-ビン双発 |
801 172 170 459 |
508 113 142 263 |
169 0 12 157 |
49 3 16 30 |
75 61 5 9 |
計 |
1,344 |
763 |
174 |
79 |
328 |
広義のビジネス機 |
2,078 |
826 |
216 |
704 |
332 |
1.日本はビジネス機を使わないと言うが民間機2,078機の内最低826機40%がビジネス機。
2.ジェット+タ-ボ機の「狭義のビジネス機」は63機とビジェネス機の僅か7.6%。
3.日本は低価格帯機材の小型ピストン+ヘリコプター763機の92.4%がビジネス機の主体。
4.関係者であれば「知らぬ人は居ない事実」だが低価格帯機材は「二流市民」で「視野の外」。
低価格帯機材(5百万㌦~5億円以下)
機 種 |
リスト価格 |
備 考 |
マイクロジェット Ecipse 550 Citation Mustang Phenom 100 Citation M2 Honda Jet |
(100万㌦) 2.8 3.4 4.4 4.5 4.5 |
マイクロジェット機の航続距離は2.000km以上。日本での利用は300~700㎞の短距離が中心と成ろう。飛行速度は600~700㎞/時位。この程度の距離で飛行時間は30~60分程度と性能的には充分と思われる。但し、ジェット機を含めた全ての固定翼機は98空港しか離発着陸出来ないと言う構造的な制約がある。 |
小型固定翼機 Cyruss SR-22 Corvalis TTx Nextant 400XT Baron G-58 Beech C90GTx |
0.57 0.73 0.75 1.4 3.8 |
小型固定翼機の航続距離は6~700km。日本での利用は300~700㎞の短距離が中心と成ろう。飛行速度は300~700㎞/時位は有るが平均500㎞/時と置いて飛行時間は35~60分程度と性能的には充分と思われる。但し、上記マイクロジェット機同様全ての固定翼機は98空港しか離発着陸出来ない構造的な制約がある。 |
軽ヘリコプタ- Robinson R-22 R-44 Raven II R-66 Bell 505 Airbus Heli EC120 AS-350 B3/ EC-130 |
0.28 0.45 0.84 1.1 1.4 2.4 |
軽ヘリコプタ-の航続距離は6~700km。日本での利用は50~150㎞程度の短距離が中心と成ろう。飛行速度は200㎞/時以上だが200㎞/時と置いて50~150kmの飛行時間は15~45分程度で性能的には充分と思われる。全国30,000と言われるヘリポ-トと90日程度で要件満して居れば新たな「場外」の許可も取れる。 |
1.マイクロジェット機Mustangは日本に3機。個人、個人企業、スカイマ-クが所有。
2.日本の低価格ジェネアビの草分けの本田もホンダジェットの日本での販売は計画に無い。
3.新鋭の小型固定翼機も一部使われるが、伝統的な低価格機材が下表の如く圧倒的シェア-。
日本の主要ピストン単発機の2015年末保有数
日本航空機全集2016
機 種 |
機 数 |
シェア₋ |
価 格 |
航続距離 |
巡航速度 |
乗客数 |
Cessna 172 Series Cessna機 合計 |
165機 215 |
76.7% 44.1% |
$270∼300,000 |
1,200㎞ |
220㎞/時 |
3 |
Piper-PA-28 Series Piper機 合計 |
58 76 |
63.2 15.6% |
470,000 |
740㎞ |
170㎞/時 |
1 |
Beech A36 Series Beech機 合計 |
54 74 |
73.0 15.2% |
700,000 |
1,400㎞ |
310㎞/時 |
5 |
単発ピストン機合計 |
488 |
100.0% |
|
|
|
|
機 種 |
価 格 |
世 界 |
日 本 |
日本のシェアー |
ピストン単発 Cessna 172‘s Piper-PA-28 ‘s Beech A36 ‘s |
0.27∼3百万㌦ 0.47 0.7 |
生産総数43,000機 生産総数32,778機 生産総数17,000機 |
488機 165機 58 54 |
|
低価格帯回転翼機 ピストン単発 Robinson R-22 Robinson R-44 タ-ビン単発 Robinson R-66 Airbus EC-120 Airbus AS-350’s |
0.28百万㌦ 0.45
0.84百万㌦ 1.4 2.4 |
3,155 3,749
236 397 755 |
172機 62 100 170機 6 3 86 |
2% 2.7
2.5 0.8 11.4 |
低価格帯ヘリコプタ-
機 種 |
Robinson R-44 Raven II |
Robinson R-66 |
Bell 505 |
Eurocopter EC-120 |
Eurocopter AS-350 B3 |
リスト価格 |
$442,000 |
830,000 |
1,100,00 |
1,400,000 |
2,605,000 |
航続距離 |
556㎞ |
602 |
667 |
710 |
641 |
飛行速度 |
215㎞/時 |
232 |
232 |
223 |
226 |
乗 客 数 |
3人 |
4~5 |
4 |
4 |
4~6 |
登録機数(日本) |
98 |
5 |
0 |
3 |
94 |
生産機数(世界) |
9.974 |
100 |
0 |
604 |
1,030 |
運航機数(世界) |
3,452 |
380 |
0 |
389 |
(2,313) |
2015年予測 |
11,604 |
785 |
0 |
697 |
1,546 |
2015年末の回転翼機と所有者分類 (日本登録機)
日本航空機全集 2016
機種 |
総機数 |
ビジネス機 |
官公需 |
商用・コミュ-タ- |
個人所有 |
ピストン機 |
172 (12)機 |
110 |
0 |
0 |
62 |
タ-ビン機 単発 双/多発 |
170 459 |
152 272 |
8 174 |
8 13 |
2 0 |
合 計 |
801 |
534 |
182 |
21 |
64 |
日本のビジネス機としての単発回転翼機数
日本航空機全集2016
機 種 |
総 機 数 |
機材価格 |
比 率 |
ビジネス機 |
比 率 |
ピストン単発 R-22 R-44 Robinson その他 |
172 (177)機 62 (61) 100 (95) 162 (156) 10 (17) |
$288,000 $461,000 |
94.2%(90.5) 5.8% (9.5) |
110(106) (32) (58) (90) (16) |
59.2
84,9% 15.1 |
タ-ビン単発 AS-350 Airbusその他 Airbus Heli 計 Bell Helicopter Robinson R-66 その他 |
170 (175) 86 (88) 15 (17) 101 (105) 49 (58) 6 (5) 14 (11) |
$2,500,000
$869,000 |
59.4%(58.7) 28.8(32.4) 3.5%( 2.8) 8.3% (6.1) |
152 (156) 84 16 100 42 4 10 |
87.2
64.1% 26.9% 2.6% 6.4% |
括弧内機数は2014年末 (前年) の登録機数。世界の現存総機数43,000機
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