2016年09月26日(月)09時06分

(16-17) ビジネス機は「金持ちの道楽」か「企業のビジネスツ-ル」か?

 

要     約

 

1.首題はビジネス機関連の「内外」の業界、関係者の「永遠のテ-マ」。

2.「内外」と事更強調したのはこれは米国・欧州は勿論日本に於いても重要なテ-マ。

3.米国の共和党トランプ大統領候補は自分の名前を大きく描いたビジネス機で全国行脚。

4.中にキングサイズのベッドとシャワ-を完備、移動中は美女とセックスを楽しむ。

5.カジノを経営、マンハッタンの中心部のトランプタワ-の超豪華マンションの所有者。

6.「如何にして百万長者」に成るかのテレビ番組を持ち貧困白人に「叶わぬ夢」を売る。

7.一方、自動車”Big 3” トップが議会での公聴会に揃ってビジネス機で飛来。

8.Big 3”の驕りに世論が強く反発して開かれた公聴会で「火に油を注ぐ」結果と成った。

9.一昔前の話だが、リ-マンショック以降ビジネス機の出荷は半分に激減。

10.未曾有の業界大不況の中で中小メ-カ-は破綻・集約、一部は中国系企業が買収。

11.名門Beechcraft-Hawkerも破綻、CitationCessna社とTextron 傘下で集約・統合。

12.EU では社費(Expense Account) でビジネス機を利用して来た企業マンは激減。

13.他方、経済不況等「何処吹く風」とビジネス機の最上位機種は影響が少なかった。

14.顧客はトランプ氏の様な「超富豪」、中東産油国, 中国の富豪層。

15.こちらは「高かろう、良かろう」と上位機種の性能アップした機材を買い漁った。

16.「シェ-ルオイル潰し」でサウディが仕掛けた石油価格戦争で石油価格は暴落。

17.習近平の権力基盤強化の為の「蠅も虎も叩く」「汚職撲滅」と併せバブルは弾けた。

18.上記の動きはビジネス機は富裕層、VIPの「特権階層」の所有物の印象を裏書きした。

19.NBAAの最大の使命はビジネス機の利用を擁護 (Advocacy) する立ち場。

20.過去25NBAAはビジネス機の利用は利用企業の「ビジネスツ-ル」と位置付けた。

21.世論調査機関Harris社に依頼ビジネス機を利用する企業の収益性が高い事を立証。

22.利用者は巷間考える企業幹部より中間管理層、特殊技能保持者である事も顕在・証明。

23.ビジネス機無くして企業収益向上無し”No Plane,No Gain” を過去10年旗印にした。

24.何れが正しい正しくないではなくビジネス機の利用には両側面がある。

25.但し、ピケテイ-の指摘する所得格差の拡大「パナマ文章」の様な所得隠しもある。

26.本稿では「富裕層の実態」「富の偏在」とビジネスジェット機の関連性を検証する。

27.本サイトは一貫してビジネス機の利用に両側面がある

立場で何れをも排除しない。

28.然も、利用者の価値観、文化、利用環境に根差す問題で「善悪是非」は論じない。

29.世界、日本の貧富の差を各種のデ-タ-で比較、日本は平均的な処に位置する。

30.日本は先進諸国の中で中/長距離飛行用のビジネス機を所有しない例外的な国。

31.15世紀30年戦争の後誕生した「主権国家」の概念で捉える試みは誤認を産む。

32.日本の多国籍企業はグロ-バルでの事業活動展開で経済的合理性に応じ活用。

世界の10億㌦長者トップ10

                             Forbus2015

順 位

氏 名

Net Worth

国 籍

事 業 名

1

Bill Gates

$79.2 Billion

米 国

Microsoft

2

Amancio Ortega

76.5

スペイン

Inditex

3

Jeff Bezos

66.7

米 国

Amazon.com

4

Warren Buffett

72.7

米 国

Berkshire Hethaway

5

Mark Zuckerberg

53.7

米 国

Facebook

6

Larry Ellison

51.6

米 国

Oracle Corporation

7

Carlos Slim

50.0

メキシコ

Telmex,Grupo Carso

8

Michael Bloomberg

49.4

米 国

Bloomberg L.P.

9

Charles Koch

44.6

米 国

Koch Industries

9

David Koch

44.6

米 国

Koch Industries

1.    首位のBill Gatesは今回で16回目。Amazon, Facebook, Oracleの創業者も名を連ねる。

2.    4位のWarren Buffettはビジネス機のFractional Ownership最大手NetJetsの出資者。

3.    世界的な株高で10億㌦長者は1,826人、女性も197人と過去最高。

 

日本人の10億㌦長者トップ10

                              Forbus2015

順位

世界順位

氏 名

Net Worth

事 業 名

1

41

柳井 正

$20.2 Billion

ユニクロ

2

75

遜 正義

14.1

ソフトバンク

3

151

三木谷浩史

8.7

楽 天

4

174

滝崎武光

6.9

キ-エンス

5

265

高原慶一朗

5.6

ユニ・チャ-ム

6

360

毒島邦雄

4.5

パチンコ SANKYO

7

393

韓 昌祐

4.2

パチンコ マルハン

8

462

森 章

3.7

森トラスト

9

512

伊藤雅俊

3.4

セブン&アイ・ホ-ルデイングス

10

534

三木正浩

3.3

ABCマ-ト

1.日本人の10億㌦長者も世界的に見れば相対的に粒が小さい。

2.上記は¥120/$で換算¥80/$で換算すれば順位は大きく変わる。

 

アジア・太平洋圏の10億㌦長者数

                          ASG 2016年夏季レポ-ト

 

中国

印度

香港

シンガポ-ル

豪州

日本

インドネシア

タイ

200~500億㌦

 

1

3

 

 

 

 

1

100~200

12

5

3

 

1

1

1

1

50~100

13

6

10

2

2

3

2

4

20~50

76

27

31

9

10

9

8

4

10~20

159

51

42

26

17

14

14

14

合 計

260

90

89

37

30

27

25

24

OEM Size Category

Corp. Airliner

Long Range

Large

Mid-Size

Light

Very Light

 

4

16

26

11

 

2

6

19

16

14

3

 

3

4

 

1

3

 

 

 

3

3

4

1

 

 

7

11

7

23

7

 

1

6

1

3

 

 

 

 

 

9

5

2

 

 

1

 

9

6

2

合  計

57

60

15

11

55

11

16

18

1.中国は台湾は抜けているが本土、香港、マカオで349人、華僑を含めれば1/3に達しよう。

2.孫社長も三木谷会長もビジネス機を常用するが海外で運航委託に出している。

3日本で採算分岐点と言われる500時間/年は使いこなせず、海外での運航委託を活用。

4.司直の捜査で有罪に成ったライブドア堀江社長、マンション偽装事件の小嶋社長も同様。

5.日本の民間の上位機種保有はゼロ。Mid-Size 2機、Light 22機計24機でASGと異る。

6.又仮に近隣諸国の取寄機を勘定するなら欧米で日系企業が利用する機材も勘定が必要。

7.日産ゴ-ンズ会長の利用機は米国日産本社近隣の空港に定置、米国籍として登録。

8.ASGは機材の国籍と実態を混同するので日本側のJA機の登録機との間に乖離が生ずる。

 

世界の金融100万㌦長者数ランキング

                             Global Wealth 2013

ランキング

国 名

人 数

ランキング

国 名

人 数

1

U.S.A.

5,876千人

9

Italy

274

2

Japan

1,460

10

France

256

3

China

1,304

11

Hong Kong

231

4

U.K.

509

12

Netherland

191

5

Switzerland

395

13

Russia

180

6

Canada

373

14

Australia

178

7

Germany

362

15

India

164

8

Taiwan

312

 

 

 

1.    本件のデ-タ-は2013(実質2012)で各国の通貨の為替交換率も現在とは異る。

2.    統計作成者のデ-タ-の蒐集・拾い方も異るので違う統計間の単純比較は危険。

3.    この種統計は飽く迄参考値としてあまり数値その物の絶対値に拘らない事が肝要。

 

日本の純金融資産保有層の分布

                         野村総合研究所2013資料

 

純金融資産保有額

保有金額

世帯数

比率(%)

超富裕層

純金融資産5億円以上

73兆円

5.4万世帯

1.0

富裕層

1億円~5億円未満

168兆円

95.3世帯

1.8

準富裕層

5千万~1億円未満

242兆円

315.2万世帯

6.0

アッパ-マス層

3千万~5千万円未満

264兆円

651.7

12.4

マス層

3千万円未満

539兆円

4,182.7

79.7

1.純金融資産は預貯金、株式、債券、投資信託、生命・年金保険額の総額。

2.日本人資産額の大きな部分を占める不動産はマイホ-ム的な自己住宅で収益は産まない。

3.従って、日本人の富裕率の評価には純金融資産額の流用がより適切。

4.相続税の支払額で地方の資産家が上位に出る場合が多いが山林等の不動産を相続する故。

5.上記で評価すると超富裕層は世帯数の1%、準富裕層を含めた富裕世帯は8.8%。

6.1億総中流」と言う言葉が使われた時代もあったが、マス層の比率は92.1%。

7.日本にも10億㌦長者もホ-ムレスも居るが国際的に見れば、相対的に「平均化社会」

 

主要国の富の集中度

 

米国 : リ-マンショック以後、金融工学で富の集中が行われ、ピケテイ-の指摘を待つ迄も無く10%の富裕層が国富の90%を抑え、10%の国富を90%の大衆が分かち合うと言う現実が、弱者への配慮を信念とする民主党政権下で実現した。ビジネス機の売上げは半減と言う業界の未曾有の不況の中で上位機種の売上げはさほど落ちず上位機種製造メ-カ-は打撃が少なかったが、中/低価格帯機材メ-カは破綻、集約・統合、中国の買収等で業界再編成が進んだ。

ブラジル : 広大な大陸国で国内の移動は勿論、近隣諸国への移動にも、幹線航路を外れれば、商用機の便宜も決して良くない。植民地として旧支配国の定住者は支配階級としての地位も確立して居り、ビジネス機を所有する事は自然なステ-タスシンボル。故にEmbraer社と言う国産のリ-ジョナル機やビジネス機の製造メ-カ-が国内市場の基盤もあり、世界市場の一角を占めるに至った。

ロシア ; 旧ソ連邦の瓦解と国営企業民営化でオルガルヒと呼ばれる権力中枢の少数により、国営企業は安値で民営化、国営企業と言っても国際競争力を有するのは石油・ガス等のエネルギ-資源故に寡占化が進み、プ-チン大統領をして「ロシアの国富の2/37人が抑えて居る」と嘆かしたが、その後大統領自身が石油企業のトップを断罪、その権益を手中にして権力基盤を構築。現在石油価格暴落で経済的危機に直面している。。

中国 ; 中国もロシアの後追いで共産党一党独裁の政治体制の中で資本主義的な自由経済に移行、国営企業の民営化や不動産事業の興隆で権力中枢への富の集中が進んだ。更にゾンビ的な国営企業の既得権やこれに絡む贈収賄、「パナマ文書、バハマ文書」の公開で国富の海外への逃避の実態も浮かび上がっている。2007年、富の集中が進む中国は早晩米国を抜くビジネス機大国と成る目標を立て、リ-マンショック以降のビジネス機業界の大不況下で上位/最上位機種を買い漁り業界の「救世主」と成った。習近平政権下で大幅な「汚職撲滅」の動きで中国によるビジネス機上位機種の買い漁りに急ブレ-キが懸り業界のバブルも弾けた。但し「汚職撲滅」の対象は政敵の抹殺が目的で、権力中枢の贈収賄や汚職は後を絶たない。中国ベ-スの ASG (Asian Sky Group) 2016年の夏季号のレポ-トで世界の10億㌦長者の番付けと、関係の深いアジア・太平洋圏のビジネスジェット機の関連性を記述、中国 (香港、マカオを含む)のビジネス機所有数の域内での圧倒的シェア-を誇示している。中国には台湾は含まれず、アジア諸国の華僑も含めTax Havenに登録している機数を含めれば機数は更に膨らむであろう。富の公平な分配と享受を謳い文句としたマルクス主義の本拠ロシアと中国で資本主義先進国でも類を見ない「富の集中」が出現した。ビジネス機は企業の生産性向上の「ビジネスツ-ル」として必死でビジネス機の利用を擁護(Advocacy) して来たIBAC, NBAA, JBAAには誠に皮肉な「現実展開」と成って仕舞った。

印度 : インドはカ-スト制度の伝統で階級格差、所得格差が大きく、階級格差に根差したアングロ・サクソンの伝統もあり富の集中度も高くビジネスジェット機の利用も抵抗なく定着して居る。国内に90人の10億㌦長者が存在、200500億㌦長者も1人居る。ビジネスジェット機も60機と中国に次ぐ域内第2位。欧米や近隣と言っても移動距離が大きく、43機はMid~Heavy Jet.

日本 :日本は域内で中国に次ぐ経済大国で欧米並みの企業先進国。それが、ビジネスジェット機の日本国籍登録は24 (ASGレポ-トでは27) だが、内容的には22機がジェット機で最も低価格のLight Jetで、域内で泰国と並ぶ第6位。おそらく本年末には泰国に抜かれインドネシア、フィリッピンにも抜かれよう。 然も24機は日本のビジネス機と目される826機の僅か2.9%。97.1%はLight Jetの何十分の一の低価格帯機材で過去30年以上日本に存在する。一方大企業はジェット機や低価格帯機材を含めビジネス機を所有・運行はせず国内でも、又海外渡航にも利用しない。この謎が多くの混乱を招いて来たが別項を設けて記述する。但し、「解」は単純。国内移動は、海外並みの運賃で短距離移動のAir Taxiなら潜在的市場はあり得よう。海外渡航は、幹線航路はビジネス機の1/50~1/100 の運賃の商用機が過去50年利用され今後もこの様な商慣行は一部「特権階層」を除き継続されよう。一方海外で商用便、コミュ-タ-便、他の競合する交通機関の便が悪い地域では状況に応じビジネス機も活用される。日本の多国籍企業は過去50年必要に応じ海外でビジネス機を利用して来たし、今後も同様に利用し続けるであろう。

 

国の所得格差

                                Wikipedia

国名

Norway

France

Japan

U.S.A,

China

Mexico

国連貧富比両端10

6.1

9.1

4.5

15.9

21.6

21.6

CIA貧富比両端10

6.0

2000

8.3

2004

4.5

1993

15.0

2007 Est

21.8

2004

24.6

2004

世銀ジニ係数

25.8

2000

32.7

2008

38.1

2002

48

2014

47.0

2007

47.0

2012

CIAジニ係数

25.0

2008

32.7

2008

37.6

2008

45.0

2007

47.4

2012

51.7

2008

OECDジニ係数

26.1

90年代後半

27.3

90年代後半

31.38

90年代後半

35.67

90年代後半

 

47.97

90年代後半

1.    ジニ係数(Gini Coefficient) 1936年考案の社会所得分布の不平等さを測る指標。

2.0~1の範囲の値を取り1に近い値程不平等、所得格差が顕著な事を示す。

3.北欧のDenmark 24.0,Sweden 25.0,Norway 25.8,Finland 26.9と低い。

4.但し、見返りとしてDenmark, Sweden共付加価値税率25%で所得再配分

5.大多数の国は0.30.4の範囲内で、0.4が警戒線/0.5は危険線/0.6以上で社会不安が発生。

6.日本は中間位で所得分布の不平等性は平均的だが世界で最も平均化社会でもない。

7.ピケテイ-はWall Street Journalの取材に対し日本は例外でここ数年格差縮小と答えた。

8.日本側独自の測定では僅かにジニ係数は上っているが高齢化が原因と言われる。

9.中国は0.5の社会不安の赤信号が灯り西南経済大学2013年の論文で0.61と問題提起。

10. 中国での暴動発生数は公表されないが、年間30万件それでは済まないとの予測もある。

11. 何れにせよ権力中枢への富の集積とビジネス機上位機種の激増の関連はASG指摘通り。

12. 日本でも超富裕層のビジネス機取り寄せ需要は有るが、一部に限られ例外的な利用。

13Wikipediaは各種統計を集めたが拾い方、統計作成時期が異る数値を単純比較するのは危険。

14.統計年次の相違は異るデ-タ-をその時点での為替レ-トでドル表示、バイアスが更に懸る。

15.飽く迄大まかな参考値に留め統計の絶対値の亡者と成らぬ様な配慮が肝要。

纏  め

1.ビジネス機の高額上位機種を富裕層VIPが所有・利用して来た事は偽わらざる事実。

2.サプライサイドのメ-カ-、運航会社がこれを煽って来た事も否定出来ない事実。

3.90年代より経済大国日本を有望市場として拡販の努力を傾注したが「笛吹けど踊らず」

4.その先兵は大手商社航空機部門だが総合商社は過去50年の実体験で使い分けを修得。

5.従って内外の出張が生業の商社マンは国内は勿論海外の主要都市への移動にも使わず。

6.海外での移動手段として必要な折には適宜利用する便法にも50年の歴史的体験あり。

7.日本が中/遠距離ビジネス機を民間大手企業も持たないのは長い歴史と実体験の集積結果。

 

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