2016年02月04日(木)02時23分

(16-03) Airbus A-380

 

Airbus A-380は EUの威信を賭けた世界初の総2階建てのジェット旅客機で所期の構想から2005年4月の初飛行迄16年の歳月を要した。世界の航空機史上最大且つ最高額の旅客機である事は広く知られている。メ-カ-のリスト価格は現在414.4百万㌦、¥120/$の為替レ-トで換算すると1機500億円はする。本サイトで日本に馴染むAir Taxi用の低価格帯ヘリコプタ-は1機1億円と記して来たが、A-380 1機を購入する価格で低価格帯ヘリコプタ-であれば500機が購入出来る。

A-380の利点に就いては書き尽くされているが、エコノミ-席のみにすれば800人近くの旅客を乗せられ「大量輸送」のメリットをフルに享受出来る。航続距離は15,200㎞ありシンガポ-ル等欧米遠隔地飛行が必要な先は従来の乗り継ぎが不要と成り、直行便で時間、手間等が大幅に軽減される。シンガポ-ル-ロンドン間は10,900㎞、ニュ-ヨ-クで15,350㎞、米国西岸への飛行であれば、成田空港の中継ハブは不要と成る。従って、シンガポ-ル航空がラウンチカストマ-と成り2007年10月、30か月の試験飛行を重ねた後、処女機がシンガポ-ルに引渡された。同月、シンガポ-ル-シドニ-間に就航、カンガル-ル-ト呼ばれるドル箱航路が整備された。日本の場合は、成田―ワシントン間10,920㎞、ロンドン9,580㎞、豪州メルボルン8,200㎞で航続距離14,200~15,200㎞のBoeing 787の開発に関わり、然も旅客積載数は200人強(国際線)と300人強(国内線)で価格も185百万㌦の値頃の機材で、2点間を出来るだけ空席を少なくして運航するビジネスモデルを選択した為、A-380の購入には食指を動かす事は無かった。そこに、スカイマ-クが目を付けニュ-ヨ-ク、ロンドン等旅客数が多い航路で15%程度割安に成る運賃で旅客獲得を目指した。欧米への長距離飛行はビジネスマンの利用者が多く広いスペ-スを割いてビジネス、ファ-スト顧客の取り込みを策するのが常である。通常の商用便ではビジネス、ファ-ストの高単価顧客の運賃負担額がエコノミ-に比し不釣り合いに高いにも関わらず、サ-ビス面での格差が少なく高単価顧客の不満の的だが、スペ-スが取れるA-380でサ-ビス格差を付け、収益に直結する高単価顧客を取り込もうとした。A-380をエコノミ-のみにすれば800席近くに成るが、2階席の相当部分をファ-スト、ビジネス仕様にすれば、500席余だが、後者のオプションの方がポピュラ-。例えばエミレ-ツの場合、成田-ドバイ間はニュ-ヨ-クとほぼ同じ距離の10,000㎞でファ-ストの往復運賃は1百万円。ドバイ空港にはVIPタ-ミナルを建設、機内食は各種の選択を増やし希望の時間にサ-ブ、各席は高いパ-テイションで仕切られ、ドアを閉めれば個室と成り、各室テレビ、冷蔵機付き。利用時間の予約は必要だがシャワ-も用意、寝る時に電気を消せば天井に満点の星空が映される。正に中東の富豪の夢を満たしている。ビジネス・ファ-スト客が交流出来るラウンジも準備され、スナック・飲料はフリ-。慎ましい日本人の「発想外」の工夫だが、プライベ-トジェット機の利用者であればさして驚かないが、運賃は、プライ-ベ-トビジネスジェット機で40百万円とエミレ-ツのファ-スト運賃の40倍。1/40の運賃で高単価顧客のステ-タスに対する自尊心と優越感を擽るのには充分であり、日本の企業幹部でも社内の出張旅費規程の縛りがあっても、A-380のファ-ストであれば利用可能の上、充分満足感を満たせるであろう。

スカイマ-クの目の付け処は悪くないが、これを支えるだけの企業基盤には欠けて居た為、一旦発注した注文を取り消したが、Airbusの日本人スタッフが事前に予測された事態が発生しても、契約のキャンセルに対しての違約金支払い等の規定はキチンと挿入され、スカイマ-クとしてはこれの支払いに応ずる体力はなく経営破綻した。その再生にはAirbusがANAの後押しした経緯もあり、巨額の違約金や賠償金を払うよりスカイマ-クの契約を一部引き継いだ方がベタ-との思惑も走ったと思われる。ANAもスカイマ-クの契約不履行がA-380 3機の引き取りに関連した事は認めて居る。違約金は当初最大700億円と報じられたが、キャンセルした機材の転売先が見付かり200億円に下がったとも言われるが、当事者間の契約問題でもありマスコミの各種報道も推測の域を出ない。A-380の搭乗率を向上させる為には旅客が大量に動く航路で就航する必要があり、予ねてよりハワイ航路が取沙汰されていたが、ANAの発表もその通りと成った。大型機による運賃面での優位性で遅れが目立つハワイ航路のシェア-を伸ばせるかは今後の動向を見守る以外ないが、2018年位に機材の受渡しが行われると報道されている。色々話題を呼ぶ機材の2016年1月末の受注、オプション、引渡し状況は下記。

 

会 社 名

発注機数

オプション

受渡機数

エミレ-ツ

140

73

シンガポ-ル航空

24

1

19

カンタス航空

20

4

12

アメデオ(リ-ス会社)

20

未定

ルフトハンザ

14

14

Air France

12

2

10

British Airways

12

7

10

エジハド

10

5

3

カタ-ル

10

3

6

そ の 他 9社

57

6

32

合  計

319

28

179

 

A-380の此処2~3年の受注は先細りで受注残は年々減少している。年間30機の新規受注が採算的に必要とされるが、ANAの3機の発注もスカイマ-クの注文の肩替りで受注の純増には繋がらない。Airbus自身は30機/年の受注には自信を示しているが、市場は懐疑的で業界雀の話題を賑わすが、今後2~3年の実績が事実を語ろう。

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