2016年05月27日(金)08時05分

(16-07) EBACE 2016

 

EBACE (European Business Aviation Conference & Exihibition)524~26日、例年通りスイスGenevaで開催された。ビジネス機関連の国際的集いとしては春中国上海で開催されるABACE、初夏のEBACE、締め括りとしての秋のBACE ( NBAA Convention)とアジア、欧州、米国の3大陸での開催が恒例化している。最近はビジネス機利用の成長が著しい中南米でもLABACE が開催され本年はブラジルSan Paulo823~25日開催予定。ピ-ク時3万人を超える参加者もあったBACEは、会場・宿泊施設の関係でLas Vegas, Orlando で開催される事が多いが、本年は111~3FloridaOrlandoでの開催が決って居る。Las Vegas, OrlandoはカジノやDisney World等観光施設が多く、世界主要都市よりの商用便のアクセスも良く、大規模会場・ホテル・商業・娯楽設備も完備している。

2016年度のトップ関心事はABACEは中国の「汚職撲滅}と経済成長減速で過去3~4年世界のビジネス機の高度成長市場を支えたバブルが弾け、EBACEはギリシャ経済の救済、難民受入れ問題、英国のEU離脱の是非を問う投票で欧州も大揺れだが、ビジネス機に限れば、欧州の牽引車であったロシアが石油価格の暴落で経済危機に直面。ロシアを含め東欧圏も欧州のビジネス機成長に寄与して来たが、アジアの中国依存と同様、東欧圏のロシア経済依存も裏目に出た。但し、「パナマ文書」の公開で富裕層、アングラマネ-の実態も一部暴露されたが、ビジネス機もケイマン諸島や英国のアイルランド沖合のIsle of Manがタックスヘイブンとして知られるが、中国、アジアのビジネス機上位機種も匿名で登録されている事が多く、国別のビジネス機保有数と実際の運航機数の間に大きなギャップが見られ問題と成っている。

 

本年度のビジネス機のマクロ的課題

 

1.ビジネス機は90年代のFractional Ownershipに象徴される分割所有や運航委託で一本調子の右肩上がりの急成長が続いたが、2008年秋のリ-マンショックの到来で急ブレ-キが懸り、その後2~3年機材の新規受渡しは半減、米国南西部の砂漠地帯は運休したビジネス機の駐機場と化した。

2,「ピケティ-リポ-ト」や「パナマ文書」で表に出た、「富の格差」や「富の隠蔽」により数千万㌦~1億㌦もするビジネス機上位機種の機数は減ったが、それでも上位機種に注文が殺到、金額的にはさして落ち込みは少なかった。上位機種が売物のGulfstream社の業績への影響は少かったが、中/下位機種のメ-カ-は経営危機に陥り「業界再編」に発展した。

3./小型機メ-カ-の名門HawkerBeechcraft社は小型機の老舗Cessna社と小型ジェット機の大手Citation社を傘下に持つTextron社の下に集約された。但し、3社は異った分野での特色を生かし、夫々別会社として運営されて居る。

4.ビジネス機の育成に注力する中国は一時期HawkerBeechcraft社の買収に成功したが、国防上の懸念から買収の許可が下りず, 代りにAir Taxi用として業績を伸ばしているCyruss, ヘリコプタ-の老舗Enstrom社を買収、傘下に収めた。かっての小型機の名門Piper社もブルネイ/シンガポ-ルの投資ファンドに買収されたが、小型機の需要が多いアジアでは「所得格差」が著しく「特権階層」は高かろう、良かろうで最上位機種を買い捲る一方、利に敏い民間資本は低価格帯機材メ-カ-への投資を進めて来た。

5.EBACE 2016でも数千万㌦のBombardier Global Express 7000, Gulfstream G-650もデイスプレ-される一方、 Dassault Falcon 8X”SUV of Sky”の謳い文句で華々しくお披露目を行った。この種最上位機種も一定の需要は必ずあるが、「特権階層」の「富と権力」の誇示は民主主義の時代の潮流の中で或る程度抑制されるとのコメントも聞かれた。

6.米国も、欧州でも「足が地に就いた」低価格帯単発タ-ボ機にも注目が集まった。

Cessna 208 Caravan

$1.95百万

Cessna Grand Caravan EX

$2.4百万

Daher (Sokota) IBM 900

3.8

Daher (Sokota) TBM 930

4.1

Daiaond DA50-JPT

1.1

Epic E1000

2.95

Pilatus PC-12NG

4.9

Piper M500

2

Piper M600

2.9

Quest Kodiak

2

7.日本はビジネス機の上位機種は民間に1機も無い反面、Cessna, Sokota, Piper等の機材は25~30年前より広く利用されて来たし現存する。Diamond, Pilatusの機材も輸入されている。それ故に、「特権階層」の”Excess” (過剰自己顯示)の嵐の影響の圏外にあり、低価格帯機材への注力でビジネス機の利用の裾野を拡げる事を可能にする土壌も整って居る。

 

個別トピックス

 

1.上位機種3社の2015年度の受渡は7機と前年8%減、2016年は更に減少が予測される。

2.ビジネス機の成長はEUGDPと連動して来たが2015年はGDP1.8%増ビジネス機2%減。

3.リ-マンショック後の2008年、2011年そして上記の乖離は3回目の鍋底の兆しか?

4.石油価格崩落でロシアのビジネス機の出発は40%、ウクライナ57%、ベラル-シ72%減。

5.英国、フランスは横這い、漸増だが、域内は過去5年で平均4.5%減少した。

6. 最上位機種Falcon 8Xの試乗も行われ11,900㎞の長距離飛行用としては高い評価を得た。

7.この航続距離であれば米国東海岸-ドバイ、シンガポ-ル-欧州迄乗り継ぎ無しで飛べる。

8.長距離用の上位機種の需要は今後も残ろうが、過去のピ-ク時は去ったとの観測。

9.上位機種の牽引役であったBRICsや産油国の経済低迷がグロ-バルにも影を落とす。

10.ホンダジェットはEBACEの会場でEUの型式証明を手渡された。

11.富裕層、VIP等用上位機種と一般利用の低価格帯機材の二極分化現象は欧州でも鮮明化。

12.欧州のAir Taxi会社Global Airと米国のJetSuiteが提携関係を樹立した。

13.両社は欧州/米国のAir Taxi先駆者でGlobal Airは中古機を含めVLJ650//年稼働。

14.JetSuiteVLJPhenom 100の低価格帯機材の高稼働で収益を得るビジネスモデル。

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