2016年10月14日(金)07時24分

(16-13) American AirlinesとUS Airwaysとの合併

 

US Airwaysは米国の主都ワシントンと米国東南部特にBoston, New Yorkを結ぶシャトル便 (30分毎の定期便) を運航、中枢都市を結ぶ大動脈を抑え、航空会社のドル箱でもある。Pittsburghを中心とした米国中東部のRust Belt  (鉄鋼、自動車生産地域) Allegheny航空と南部を拠点とするPiedmont航空との3社合併で米国東岸よりカリブ海迄の航路を抑えているが、業界再編の激動の中何回も破産裁判所の駆込み寺の厄介に成って来た。大手航空会社が次々と集約・合併を進める中で弱小の落ち零れと見られた時もある。そのUS Airwaysが米国最大の航空会社American Airwaysを呑み込む統合提案を行い業界より”Audacious” (豪胆、ずうずうしい) 提案と瞠目された。当然American経営陣は断固拒否。何回か破綻、再生を果して来たUS Airは敵対関係にあるAmericanの経営陣と組合を説得する自信があり、先ず組合側を説得 (30億㌦の給与・福利厚生の引上げ) 組合を味方に付けた。組合側の積極的な合併支援で経営側も最終的に折れた。更に、3社の地域航空会社の合併で誕生したUS Airは合併時の大きな障害となるコンピュ-タ-システムの統合の実績を有していた。2012年より始まった統合の動きは結局Americanの企業名は残したがUS AirCEO Doug Parkerの提案通りの統合シナリオで世界最大の航空会社が誕生した。201510月予約システムの統合が終わった時点でUS Airのブランド名は消えたが、Parkerは「実を取って名を捨てた」。American2013129日以来ParkerCEOとして統合のシナリオを実行に移して来た。American-US Airの統合の成否は野球に喩えれば6イニングで未だ「胸突き八丁」が残っているが”So far so good” (先ずは良し) と言う評価。好奇心もあろうが、日本にも参考になる点もあるのでトピックスとして取上げた。

(1)統合・合併の大きな障害は経営陣の身分保障、権力基盤の変化だが、US Airは度重なる破綻/再生で得た体験で合理化に抵抗する組合を先ず味方に付けAmericanの経営陣を内部より突き崩した。American経営陣の頑な反対も内部からの造反で脆くも崩壊した。

(2)システム統合は企業合併の成否を握る。日本でもみずほ銀行は3銀行の統合のアキレス腱が今でもシステム統合だが、航空事業では予約システムの統合は困難を極める。US Airは地域航空3企業の統合に加えUS Air-AmericanWest Airwaysの統合でSharesと言うソフトを完成させた。Delta-Northwestのシステム統合は比較的スム-スに進められたがUnited –Continentalは失敗例に挙げられている。

(3)但し、American-US Airは現在1000機に近い航空機を運航して居り古いMD-800の整理、膨大な新規発注残の受容れもありその運行管理のシステム統合では正に実力が試される「胸突き八丁」に差し掛かる。

(4)更に大きなチャレンジはパイロット、乗務員の統合トレ-ニング。現在は訓練・運航マニュアルも異り、旧American機のパイロットがUS Air機を操縦する事は出来ない。添乗員も然り。これの統合が果たされない限り合併効果はフルに顯現されない。時間的には34年は要すると言われている。

(5)当初Parkerも予測し得なかった合併メリットはアジア・太平路洋線の強化。この市場は航空業界にとっては最成長市場。Parkerも当初PanAmNorthwestが永年構築して来たアジア・太平洋路線をAmerican-US Airの統合企業が複製する事は不可能と明言して来た。然し、現実はAmerican Los AngelesをハブとしてJALQantasとの提携で日本路線とオセアニア路線の拡大に成功した。アジア・太平洋路線はLos Angelesを拠点としているが、JALは再建途上でDeltaAmericanの間を迷走、稲盛会長の鶴の一声でAmericanとの提携を維持したが、結果としてAmerican/JAL両社に太平洋路線強化の基盤を提供した。統合完了後、AmericanLos Angelesより24都市への新路線を開拓、その中にはSydney, Aucklandも含まれる。AmericanLos Angelesでの最大のCarrierと成ったが、多少急ぎ過ぎて6月の定時の離発着率は6572%と低迷。American-US Airの統合で, US AirStar Allianceを離れOne Worldに参加したが、Americanは元々中南米航路で強くUS Airは南部フロリダやカリブ海の保養地への運航を得意とし、米国東岸の諸都市よりの優位性も加え両社の相乗効果は現実化。

(6)Americanは旧Americanより引継いだChicago, Dallas/Fort Worth, Los Angeles, Miami, New York (Kennedy, La Guadia半々)に加え、US Airより引継いだCharlotte, Philadelphia, Phoenix, Washington National9港をハブ空港に持つに至った。

(7)Americanの本年第四四半期の航空機保有数は925機と推測され、JAL237機の4倍に近く、今後一週間に1機程度の割合での新鋭機の受入れが予定されている。

 

 

2015

20161Q 

20162Q

20163Q

(予測)

20164Q

(予測)

 

 

Airbus

A319

A320

A321

A330-200

A-330-300

125

55

174

15

9

125

51

180

15

9

125

51

187

15

9

125

51

192

15

9

125

51

199

15

9

 

 

 

Boeing

737-800

757

767-300

77-200

77-300

787-800

787-900

MD-80

264

64

45

47

18

13

97

269

57

40

47

20

15

94

274

55

40

47

20

17

87

279

53

35

47

20

17

1

53

284

51

31

47

20

17

4

52

Embraer

E-190

20

20

20

20

20

合 計

 

946

942

947

917

925

 

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