2016年11月13日(日)02時24分

(16-15) TiltrotorとV/STOL Aircraft

 

業界の関係者は除き一般の方にはTiltrotorV/STOL (Vertical Short Takeoff and Landing) Aircraftは聞き慣れない名前であろう。但し、現在最も普及して居るTiltrotor Osprey V-22と言えばマスコミでも良く話題と成る「あのオスプレ-」の事かとお分かりの方も多かろう。本サイトのトピックスの無人飛行機UAV (Unmanned Aerial Vehicle) 共密接に関連するので敢てトピックスとして取上げた。特に後述する様に本サイトでも何回か取り上げたAir Taxi関連でVTOLの利用ビジョンの「白書」も公開されたのでご紹介する。

Tiltrotor, VTOL, UAV全てに共通するのは垂直離着航空機でヘリコプタ-と同じ原理。UAVは無人飛行機だがVTOLも将来は無人飛行も視野の中。何れも、滑走路が必要な空港は必要とせず、ヘリパット的な狭い場所 (Vertiports)で離着陸可能。国土面積が狭く、これ以上の空港建設が不可能な日本では「垂直離発着」可能な航空機への関心がもっと高まっても良いのではないか?日本の空港は土地価格、騒音を含め住民の同意を得る為にも中都市等でも遠隔地に空港が建設され、都市中央迄バスやタクシで4560分位の距離に位置するものが多く、新幹線の様に直接都市中央にアクセスは出来ず、利用料金もさる事乍ら空港へのアクセス時間や空港、滑走路での待合時間も勘案すると必要時間は嵩み、出発地より700㎞以内は鉄道の方が航空機より有利と言われて来た。ビジネス機は商用機の50100倍の運賃故に一般の利用実績は皆無に近い。本サイトでも提言して来た日本で現実的にビジネス機として利用可能なのは低価格帯回転翼機の短距離、短時間のAir Taxi的利用であるが、此処に来てVTOL,UAVの如き垂直離着航空機の実用計画も具体化し始めて来た。垂直離着航空機の開発は意外に第一次大戦前に遡り100年弱の歴史を有するが、ヘリコプタ-の出現で表舞台より姿を消し、軍用としてはヘリコプタ-は垂直離発着は出来ても飛行速度は理論的には290/時が上限と言われ、単発へりでは巡航速度は200/時を上回るが離発着の為の減速やホバリングの時間も勘案して本サイトでは計算の便宜上200/時を流用している。これでは戦場に到達するのに時間が懸り過ぎる。Tiltrotorは垂直離発着機だが一定の高度で垂直の羽を水平にしてヘリコプタ-の倍以上の飛行速度が得られる。オスプレ-も開発段階で羽を垂直より水平に変える段階で不具合が生じ事故もあったが、現段階では改善の結果安全性は他の軍用ヘリと同等或いはそれ以上と成っている。尚V/STOLは既に実用段階に入り、開発中の機種もネット上で90機種余を数えるが、本稿ではUber ElTechnologiesAir TaxiVTOLの開発ビジョンをに絞って紹介する。

 

基本的コンセプト

小型電気航空機のVTOL (垂直離着機)によるAir Taxiサ-ビスの提供。顧客・利用者のデマンドサイドの視点に立った一般が利用可能なマス交通の手段提供により、都市圏に於ける自家用車利用による交通渋滞の緩和、環境保全の改善、時間節減によるメリット供与を官民一体の「協働」で実現する媒体として発足。

デマンドサイドに立つ

Air Taxiを含むビジネス機利用の推進は機材メ-カ-、運航企業等のサプライサイドの視点より進められて来たが、実際の利用者・顧客のニ-ズに必ずしもマッチしていない。利用者側の視点に立った180度発想転換でのコンセプトを提供。

利用機材

利用機材の基本設計は既に終了、これを希望する機材メ-カ-に委託製造させる。Uberは機材の製造は行わないが、製造された機材を購入、運航する。機材は自動運航可能な4人乗りVTOLで当初はパイロットにより操縦されるが将来は無人飛行も視野に入る。機材メ-カ-の選定、基本設計に基く生産、型式証明取得は5年以内を見込んでいる。。

都市型Air Taxiの意味

米国ではNew York等一部都市を除き鉄道、メテロ等公共交通機関は無く殆どが自家用車を利用。ガソリンや排気ガスの抑制の為、車の相乗りも行われるがラッシュアワ-の交通渋滞、都心部の駐車スペ-スの不足等永年の懸案をAir Taxi利用で2次元空間を3次元で利用、交通渋滞で1時間の通勤時間を9分に短縮、同時に駐車スペ-スの不足も緩和。

Air Taxiの利用コスト

一般利用者の最も気になるのは利用コスト。機材コストは当初11.2百万㌦ 中期的には500/年生産で60万㌦、長期的には20万㌦目標。運賃は機材の稼働率に左右されるが、通常のヘリの損益分岐点300/年に対して2,080/年目標で機材の耐用時間は25,00027,000時、耐用年数13年。運航コストは¥22/(35 cents/mile) で山手線の運賃並み。

安全性

最新鋭の自動運転装置を装備当初はパイロットが操縦するが、当初の安全性の目標はPart 135Air Taxi用規制値の1/4. 電気駆動である事も貢献要因。

騒音・環境保全

都市圏での利用の最大の障害は騒音。電気駆動の為静かで当初の目標は高度250フィートで67デシベル。Robinson R-441/4。将来は都市の自然騒音に埋没するレベル。都市圏の自動車排気ガスによる大気汚染もVTOLは電気駆動で大幅削減。

官民一体の「協働」

航空機産業は元々軍事用の開発技術・利用が民間に移転された歴史もあり、Tiltrotor, VTO, UAVの開発、技術利用にはNASA (米宇宙航空局), DARPA (米国防高等研究計画局)、FAA (連邦航空局) も初期段階より深く関わって来た。Oberは官民一体の「協働」の媒体としての能動的な役割を担うと明言して居るが「官」側も前向きの協力姿勢を示している。

 

本サイト上で提案した1億円前後の低価格帯ヘリ利用によるAir Taxi事業も当面は良いとしても中長期的には米国での成否を見守る必要はあるがVTOL利用も念頭に置く必要も出て来た。

 

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