2013年04月21日(日)10時17分

(22) 日本のビジネス機2012年統計

 

要    約

 

日本でビジネス機は使われて居るのか?海外に大きく遅れを取って居るのか?

 

1.日本のビジネス機を狭義の双発タ-ボ機、ジェット機で民間で使われているビジネス機に絞れば、夫々10機、24機 計34機(2011年44機)とインド、中国にも大差を付けられ、2012年のグロ-バルの統計が出れば、2012~13年にはインドネシアやフィリッピンにも抜かれ様。但し、日本は、軍用、公用に他国に類例を見ないビジネス機が多数使われ、2011年末の軍用・公用機でを加算すると、夫々74機、73機 計147機と全く異った絵が描かれる。

2.日本には、中/遠距離飛行可能なビジネス機は1機もなく、海外に飛行可能な機材と言っても極く近場に飛べる程度で、これも7~8回/年と無きに等しい。但し、軍用、公用に夫々64機、49機 計113機と中/遠距離飛行用の機材を含め代表的なビジネス機の上位機種が綺羅星の様に並んでいる。

3.更に、国際的にも認められるビジネス機の定義に当て嵌まる民間機は日本の民間機総数2,000機の55%にも上る1,100機。この内、ピストン単発の500機の内3割がレジャ-等個人的な趣味で使われて居るとしても950機以上が事業目的に利用されて居ると推定される。上記34機は950機の3.6%。この様な「事実」を踏まえれば、日本でビジネス機が利用されていないと言うのは事実を反映して居ない。

4.一方、JA機による海外飛行は無きに等しいと言う批判はあるが、これも次の諸点を考慮に入れるべき。

a.日本は戦後国策として「大量輸送」による航空機の利用コストの低減に努めた。1978年から始まった「空の自由化」の恩恵で、「競争原理」が導入され、利用コストを含め利用者の選択肢は格段に増えた。航空会社間の競争激化で業界再編、就中、グロ-バルアライアンスが形成されコ-ドシェアリングで訪問先都市や路線も飛躍的に拡大した。最大の恩恵を蒙ったのは、世界の経済中心地より最も遠い日本であった。商用便は「大量輸送」による利用者一人当たりのコストの軽減を図るのに対し、ビジネス機は機材を独占するメリットはあっても運航コストの全てを利用者が自己負担する。日本の様に、欧米の中心都市に飛行するのに往復ニ十数時間を要する場合、商用便・ビジネス機の利用コスト格差は「禁止的格差」に達する。

b.中国、韓国、インド等でも中/遠距離の飛行に「禁止的格差」が有るビジネス機を乗り廻すビジネスマンも少なくないが、これは一部超富裕層、特権階層の利用によるもので、日本の様な「一億総中流」「サラリ-マン経営者」の国には馴染まない。逆に身分、所得の格差が少なく、サラリ-マン経営者が社内規定の縛りで利用コストの格差に配慮する事は誇るべき事であっても、恥じるいわれは全くない。

c.厳然たる「身分・所得格差」と「適者生存」の競争に打ち勝ったカリズマ的経営者の輩出が良いのか、出来るだけ勝者敗者を明かにせず平均的経営者を育てる社会の方が良いのか、本サイトの目的では無いので論じ無いが、「禁止的格差」のあるビジネス機を自由自在に操るにはそれなりのカリズマ的経営者の」乗り手」が必要。

d.但し此処で大きく落ち抜けて居るのが、海外での日本のビジネスマンのビジネス機の利用である。海外の主要空港迄商用便、そこから先の交通のアクセスが悪い地域にビジネス機を利用する事は少なくとも四半世紀、企業によっては半世紀近く定着している慣習。現地のコストの安いビジネス機を短距離、短時間利用する事でコスト負担も少なく、時間/人件費を含めた「費用対効果」でもビジネス機の利用が正当化される場合が多い。日本のビジネスマンは、過去四半世紀~半世紀、キチンと商用便とビジネス機を合理的に使い分けて来た事は「知る人ぞ知る」である。米国のビジネス機の利用料は日本の1/3位と言われて来たが、これは平均を取っての比較で、一般ビジネスマンが利用する機材で有れば日本の1/10以下。それも往復の平均利用時間が1.8時間と片道精々50分程度。片道30分以下の距離が大半ではないか?巡航速度500㎞/時程度の機材(中古のタ-ボ機で充分)で250㎞。東京から福島、新潟、富山、名古屋位をカバ-出来る距離。

e.最も見過ごされて居る事は、ビジネス機 = エアショ-に展示される格好良い新鋭のビジネスジェット機と自ら規定する事で生ずる思い違い。特に日本では双発タ-ボ機、ジェット機34機に対して、950機余の航空機がビジネス機の定義に当て嵌まると見られる。ビジネス機として日本で利用されている航空機の圧倒的多数が、各地のエアショ-に展示される最新鋭のビジネスジェット機とは無縁の機材。

f.エアショ-に展示される新鋭機に拘るのであれば、軍用、公用でビジネス機の定義から外れるが、自衛隊、海上保安庁、国土交通省が133機と民間のビジネス機の4倍近い新鋭ビジネス機を保有している。

5.何故この様な事態が存在するかは単純明快。民間は「費用対効果」の「説明責任」を負うので中/遠距離の飛行には商用便を利用し、ビジネス機と利用コスト差の「禁止的格差」を負担する事はしない。従って、中/遠距離飛行は商用便、海外の交通のアクセスが悪い目的地には、近隣の商用港から短距離、短時間 現地の安いビジネス機を利用すると言う合理的な使い分けを行って来た。逆に高額な新鋭ビジネス機は、国防、国内治安、緊急災害・人命救助の為、金で評価出来ない公共目的があり、国或いは地方自治体が国民の税金で賄って来た。

6.日本のビジネス機事情の当否を論議する場合、双発タ-ボ機、ジェット機34機に絞って国際比較を行い一喜一憂するのは適切ではない。上記の様な、多面的且つ多様な要因を勘案した検討が不可欠。

2012年の航空機統計

 

「日本航空機全集2013」記載の航空局登録航空機一覧表の統計を流用。日本の統計には軍用の記載が無いので、jp Biz-Jet2012の記載を流用。(全世界の統計を集計するので発刊が5~6月に成り、数値は2011年のもの)

 

総機数

ビジネス機対象

除外機数

比率 %

ピストン単発

503機

455

48

90.5

ピストン双発

52

38

14

73.1

タ-ビン単発

26

21

5

80.8

タ-ビン双発

97

10

87

10.3

ジェット双発

513

24

489

4.7

ジェット多発

17

0

17

0

飛行機合計

1,208

548

660

45.4

 

ピストン単発

182

176

6

96.7

タ-ビン単発

176

156

20

88.6

タ-ビン双発

431

209

222

48.5

回転翼機合計

789

541

248

68.6

 

総  計

1,997

1,089

908

54.5

飛 行 機

備    考

 

 

 

タ-ビン双発

機数97機(これ以外に軍用50機がある)の内ビジネス機対象機は10機と僅か10.3%。除外された主たる機材は, 海上保安庁22機、国土交通省 3機、商用機 (ANA 21機、JAC 8機)、その他コミュ-タ-機31機。軍用は日本側統計より外されている

海上自衛隊:King Air   C-90/90-1/90A/90B/90GT  34機

陸上自衛隊:MU-2C 9機, King Air 350 7機

民間所有のビジネス機 :Beech B200 3機, B300, 90A各2機

Cessna 425, Piper-PA-42-1000, Gulfstream   Commander 695 各1機 計10機

 

 

 

 

 

ジェット双発

機数513機の内ビジネス機対象機は24機と僅か4.7%。圧倒的多数はBoeing, Airbus等の商用便機材。日本で民間に中/遠距離飛行可能なビジネス機は皆無と良く問題に成るが、軍用と公共(国土交通省、海上保安庁)が所有する機材は、ビジネス機の定義より外れるが、代表的ビジネス機の上位機種が多数日本に存在する。

防衛省:Boeing 747-47C 2機(政府専用機)、Gulfstream IV-

MPA  4機, Hawker 125-800B  31機, Bombardier Learjet 36  4機,  Beechjet 400T  13機

国土交通省:Gulfsream V  2機、 Gulfstream IV,IV-SP各1機,  Bombardier Global Express  2機

海上保安庁: Falcon 900  2機

宇宙航空研究開発機構 : Citation Sovereign  1機, Citation CJ2  1機

民間所有のビジネス機 :Cessna 501 1機, 510 4機, 525 8機, 560 7機, Beech 400A, Learjet 31A, グラマンG-1159, 三菱MU-300各1機 計24機

回転翼機

 

ピストン単発

機数182機の内Robinson R-22  66機, R-44  99機    計165機と90.7%を占める圧倒的シェア-。$20万/$40万の低価格帯 (Heavy Jetの1/100~1/250の価格) で日本でも利用が急速に拡っている。Heavy Jet1機の金で本機材なら200機調達可能。

 

 

 

 

 

 

タ-ビン単発

生産が需要に追い付かず未だ日本市場にはお目見得しないが (2機が試験的に輸入されているが)、Robinson R-66の価格は$830,000と今迄に無い価格で、欧米では大人気。従来機ではEurocopter  AS-350シリ-ズ (Aerospatiale社の名で日本では知られており価格は2~2.3百万㌦とやや高い) とEurocopter社の代替機EC-120/130  (中国瀋陽で低コストの機材を生産する計画)。 ベ-スと成る150機の中国側からの受注は完了したと言われる。 本機材の総機数176機の内AS-350 シリ-ズ87機、EC-120/130  9機 計 96機が市場の54.5%を抑え、Bell 206シリ-ズ(0.9~1.3百万㌦)の49機と合せると、市場の82.4%に達する。Bellは206-3シリ-ズの生産打ち切りを決めて居り、今後は、Robinson社のR-66と中国製のEC-120の一億円台の攻防と、上位機種の2億円台のAS-350の低価格帯市場の棲分けが起き様。

 

 

タ-ビン双発

機数431機の内ビジネス機対象機は209機と約半数。431機は軍用を含まないが、国土交通省、海上保安庁、警察、消防、自治体、訓練機等222機が公共として除外される。

主たるものは、国土交通省    7機、海上保安庁  34機、警察  79機、消防  8機、自治体  66機

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*