2013年10月13日(日)12時28分
(29) ビジネス機対商用機/コミュ-タ-機のコスト比較
(29)日本に於けるビジネス機対商用/コミュ-タ-機のコスト比較
総 括
1.90代年半ばより、日本に本格的なビジネスジェット機を普及させようとの機運が高まり、1996年5月日本ビジネス航空協会が発足した。爾来17年の歳月を経たが、先ず海外への中/遠距離飛行可能なMid~Heavy Jetは全て民間より姿を消した。更に「狭義のビジネス機」と呼ばれる「双発タ-ボ機+ジェット機」も半減した。ビジネスジェット機は今日でも24機は存在するが7割以上が協会発足以前よりの機材所有者で、今日でも日本の大手企業でビジネスジェット機を所有している企業は皆無。 2.理由は本サイトでも度々言及して来たが、種々の論議を避け「核心」と成る1点に焦点を絞れば、利用料が桁違いに高く、トップ、幹部を含め一般企業利用者が従来より利用して来た商用機、コミュ-タ-機、地上交通機関に較べ、論議の余地を残さぬ、「決定的」な「運賃格差」が存在するからである。本稿ではこの点に焦点を当て具体的な数値的、定量的な比較を試みる。官僚も大手企業のスタッフ(民僚)も秀才が多いので「こうあるべき」と言う「当為論」が先行する。「高度成長期」が終焉、企業は生き残りを賭けて企業再生を図ったが、ここでは「当為論」を排し、謙虚に市場の現実に目を向け「事実を以って語らしめる」声に耳を傾ける重要性が認識され、これを実践した企業が「勝ち組」として新しい企業環境に適応した。 3.鏡に映った「現実の姿」は必ずしも美しくない。なれど、現実に向き合わねば将来の展望は描けない。 4.「自虐」や「自己満」と言った「情緒論」を排し「雑念を捨て」冷静に現実を観察すれば、日本の企業マンの「叡智」を読み解く事が出来る。日本の企業マンは「ビジネスジェットを駆使して世界を股に懸け活躍する」と言った謳い文句に踊らせられる事無く、冷静なコスト比較に基きベストの選択をして来た。 5.ベストの選択とは、中/遠距離飛行には「大量輸送」のメリットをフルに生かした商用便を使い、現地で交通アクセスが悪い目的地には現地の安いビジネス機を補完的に利用して来た。国内も同様で、目的地に近い地点迄は幹線鉄道、幹線商用便、その先は支線鉄道、コミュ-タ-機を利用、最後に短距離、短時間タクシ-と言った最も高い交通手段を補完的に利用して来た。本サイトも、最後の地上ハイヤ-、タクシ-を一部エアハイヤ-、エアタクシ-で補完する事を提案している。米国ではエアハイヤ-、エアタクシ-は1950年代より使われて居り、特に地方空港のタ-ミナルビルの外にタクシ-で待って居ない処も多く、エアタ-クシ-のカウンタ-で目的地を伝えれば、コンバスで距離を測り、その場で運賃を提示し合意すれば即目的地迄連れて行ってくれる。ヘリであれば、ハイウェイ-に面したモテルの駐車場の片隅迄運んで呉れる。 6.海外の場合、日本の様に痒い処迄手の届く様なコミュ-タ-サ-ビスは存在しないので、そこがビジネス機を含めたジェネアビ機の出番となる。広大な国土では「一寸そこ迄」と言っても何百キロにも成るので速度の速いジェット機のニ-ズがある。日本ではコミュ-タ-機を利用しても200㎞程度で済むし、飛行距離/時間も短いのでそれ程の速度も必要とされない。ビジネス機が日本で補完的に利用されるのはその先の50~100㎞程度で、然も空港もない山間地や離島なので、ヘリパッドを置き場外ヘリポ-トを設置する程度で済み、利用可能な低価格帯ヘリコプタ-を使えば済む。。 7.但し、ヘリコプタ-による「旅客の2点間輸送」もヘリの各種用途の中で最も少ないと言う事は低価格帯のヘリコプタ-でさえ競合交通機関と対抗するには、現在より更に多くの創意工夫が必要。日本での利用料は欧米の3~5倍と言われる原因究明のメスを入れれば、改善の余地も見出される。 8.出来るだけ「観念論」「当為論」を排する意味で本稿は具体的な「事実」を記載した。 9.比較し易い様、㎞当りの単価を表示したが、ビジネス機のコストは既に本サイトでも度々記述して来たが海外への中/遠距離飛行で¥1,750~2,000/㎞、国内で¥1,000~1,500/㎞はする。面倒な論議を避ければビジネスジェット機の利用料は商用機や他の競合地上交通機関利用料の50~100倍位と論議の対象にも成らない水準。 10.その一方、「日本ビジネス航空協会」設立以前より、地上タクシ-より割安な小型航空機のチャ-タ-料も存在する。セスナの3人乗りCE-172のチャ-タ-料は¥55,000/時、巡航速度200㎞/時として¥275/㎞、¥92/㎞/人。地上タクシ-で¥333/㎞(¥300/900m)。それでも固定翼機は離発着に空港が必要、顧客が目的地空港周辺に居なければ使えないと言う「構造的限界」がある。日本には「ビジネスジェット機」は24機しかないが、低価格帯の小型固定翼機、回転翼機の「広義のビジネス機」は1,000機以上存在する合理的な「ビジネス機大国」である事を忘れては成らない。 11.尚記載されている商用機、コミュ-タ-機の運賃は片道フルフェア-でこれを払う利用者は少ないが、高いと言ってもこの程度が目安の上限に成る。 12.出来るだけ観念論を排する為、現実のデ-タ-を流用「事実を以って語らしめる」。結論としてビジネスジェット機、小型固定翼機、回転翼機の何れの選択を問わず、「消費者が王様」。利用者である顧客が財布と相談して決める事。但し、過去の歴史的「事実」が国内でも幹線航路は商用便、その先はコミュ-タ-機でビジネス機的な利用はその又その先の地上ハイヤ-、タクシ-の代替利用。回転翼機は2点間の直線距離の飛行可能、飛行巡航速度が地上車に較べ早い、地上の交通信号や渋滞が避けられる等で時間節減が図れる事は誰でも理解出来る。要は、最後の距離を、徒歩、路線バスを利用するかタクシ-を利用するかの選択と同じだが、此処では地上タクシ-、離島で有ればフェリ-に代えて小型固定翼機、回転翼機を使うかの選択。日本でも米国の利用運賃の倍位に運賃設定を抑える事は工夫次第で可能と思われるが、このレベルで有れば、ビジネス出張者の手の届く範囲。因みに米国では、一般企業マンが利用する小型機、回転翼機は7~12万円/時。巡航速度200㎞/時と見れば350~600/㎞。25㎞利用なら¥8,750~15,000.3人の利用で有れば¥2,920~5,000/人、米国の倍額でもコミュ-タ-機に払う運賃の相対比較を見ても、日本の企業マンの利用者は出よう。本サイトはこれによるビジネス出張客の「ビジネスツ-ル」としての利用と彼らが家族とリフレッシするレジャ-の足としての利用を提案している。都会のサラリ-マンが地方出張を効率的に進め、且つ余暇は家族ともども地方の良さを満喫し、この複合効果で地方経済が活性化されればWin-Winの関係が生まれる。利用料を引き下げる大きな要因は機材の利用度だが、利用率が向上すれば、コストも下がると言う望ましいスパイラルに期待したい。 |
商用便ANA
飛行区間 |
飛行距離 |
飛行時間 |
飛行速度 |
運賃 |
運賃単価 |
備 考 |
羽田-新千歳 |
894㎞ |
90分 |
596㎞/時 |
¥34,000 |
¥38/㎞ |
片道普通運賃フルフェア- |
羽田-福岡 |
1,041 |
105 |
595 |
36,870 |
35 |
片道普通運賃フルフェア- |
羽田-高知 |
824 |
85 |
582 |
31,570 |
38 |
片道普通運賃フルフェア- |
羽田-鹿児島 |
1,111 |
105 |
634 |
39,070 |
35 |
片道普通運賃フルフェア- |
羽田-那覇 |
1,687 |
150 |
675 |
40,970 |
24 |
片道普通運賃フルフェア- |
国交省発表のデ-タ-では国内商用便の利用単価の平均は¥15/㎞以下だが、此処では片道運賃のフルフェア-を記載した故に高く出る。ビジネスジェットの目標値の¥1,000/㎞は実際には達成困難であるが、¥1,000/㎞でも¥15/㎞の67倍、一口で言えばビジネスジェット機の利用運賃は商用機の50~100倍。
伊豆諸島航空便
飛行区間 |
飛行距離 |
飛行時間 |
飛行速度 |
運賃 |
運賃単価 |
備 考 |
羽田-大島 |
118㎞ |
40分 |
177㎞/時 |
¥10,970 |
¥93/㎞ |
ANA 片道普通運賃 |
羽田-三宅島 |
184 |
45 |
245 |
24,940 |
136 |
ANA 片道普通運賃 |
羽田-八丈島 |
283 |
55 |
308 |
26,340 |
93 |
ANA 片道普通運賃 |
調布-大島 |
118 |
25 |
283 |
21,400 |
181 |
新中央航空 片道普通運賃 |
調布-新島 |
150 |
40 |
225 |
25,000 |
167 |
新中央航空 片道普通運賃 |
調布-神津島 |
175 |
45 |
233 |
27,000 |
154 |
新中央航空 片道普通運賃 |
八丈島-青ヶ島 |
72 |
20 |
216 |
11,210 |
156 |
東邦航空 片道普通運賃 |
八丈島-御蔵島 |
87 |
25 |
209 |
12,230 |
141 |
東邦航空 片道普通運賃 |
御蔵島-三宅島 |
25 |
10 |
150 |
5,610 |
224 |
東邦航空 片道普通運賃 |
大島-三宅島 |
80 |
20 |
240 |
11,340 |
142 |
東邦航空 片道普通運賃 |
大島-利島 |
30 |
10 |
180 |
7.030 |
234 |
東邦航空 片道普通運賃 |
日本は島嶼国でフェリ-等の海運は古くから発達しているが、一般国民の所得も増え時間的に遥かに早い地域航空の利用も少なくない。利用者は幹線航路の様に多くないのでコストが割高に成る事は避けられないが、¥1,000/㎞の水準さえ割り込めないビジネスジェット機に較べれば大幅なコスト安。それ以前の問題として、離島の場合ジェット機が離着陸可能な1,000m以上の滑走路が無い処も多い、或いは固定翼機を離発着させる空港さえない事例もある。この様なケ-スではヘリコプタ-に頼るしかないが、観光旅行で一時的に財布の紐が緩む観光客は兎も角、ビジネス出張者が旅費精算出来る範囲とそれ以上に、離島住民の生活の足としての航空便の利用には尚一層の工夫が必要。
北海道エアシステム
飛行区間 |
飛行距離 |
飛行時間 |
飛行速度 |
運賃 |
運賃単価 |
備 考 |
丘珠-函館 |
257 |
40分 |
386 |
¥8,500 |
¥33/㎞ |
片道普通運賃 |
丘珠-釧路 |
282 |
45 |
376 |
9,500 |
37 |
片道普通運賃 |
丘珠-三沢 |
260 |
60 |
260 |
15,000 |
58 |
片道普通運賃 |
丘珠-利尻 |
238 |
60 |
238 |
15,000 |
63 |
片道普通運賃 |
国内の主要空港から新千歳、函館、旭川、釧路等の道内主要空港に商用便の定期便が用意されているが、道内の横の移動はコミュ-タ機が必要。北海道は日本では大陸国に近い地理的要件を備え、道内に14空港が存在するがコミュ-タ-機さえない空港間の移動はジェネアビ機に依存するか、地上交通機関に頼る以外ない。これとて、近くに固定翼機が離発着可能な空港が存在しない処も多い。これを繋ぐ航空便はヘリコプタ-以外ない。その一方道内の面積が広いと言って時速700~800㎞/時の高コストのジェット機の利用者は少ない。1機百万㌦前後の機材で充分ニ-ズは充足出来るだけでなく、利用者が負担可能なコストに運賃設定が為さらねば、何事も始まらない。
オリエンタルエアブリッジ
飛行区間 |
飛行距離 |
飛行時間 |
飛行速度 |
運賃 |
運賃単価 |
備 考 |
|
長崎-宮崎 |
173 |
40分 |
260 |
¥17,900 |
103 |
片道普通運賃 |
|
長崎-鹿児島 |
165 |
35 |
283 |
14,900 |
90 |
片道普通運賃 |
|
熊本―天草 |
119 |
35 |
204 |
12,800 |
108 |
天草ライン 片道運賃 | |
九州、四国も横の移動はコミュ-タ-機が必要だが、離発着可能な空港がなければ固定翼機は使えない。長崎県の上五島や小値賀空港の様な離島空港はジェット機を受け入れられる滑走路を持たない。利用される頻度や季節変動も考えればヘリコプタ-によるオンデマンドのエアハイヤ-、エアタクシ-の出番領域と考えられる。
琉球コミュ-タ-沖縄諸島航空便
飛行区間 |
飛行距離 |
飛行時間 |
飛行速度 |
運賃 |
運賃単価 |
備 考 |
那覇-与論島 |
277㎞ |
40分 |
416 |
¥14,200 |
¥51/㎞ |
片道普通運賃 |
那覇-久米島 |
357 |
35 |
612 |
24,300 |
68 |
片道普通運賃 |
那覇-石垣島 |
283 |
55 |
308 |
17,500 |
62 |
片道普通運賃 |
那覇-南大東島 |
357 |
75 |
306 |
24,900 |
70 |
片道普通運賃 |
那覇-与那国島 |
507 |
95 |
320 |
31,700 |
63 |
片道普通運賃 |
沖縄列島は鹿児島市より南端与那国島迄約1,100㎞と羽田-鹿児島に近い距離がある。那覇は鹿児島と与那国島のほぼ中間に位置するが、距離的には510㎞。航空便で1時間35分、片道¥34,800、飛行運賃単価は¥68/㎞と住民の経済負担を考慮し低く抑えられている。
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