2013年10月30日(水)01時56分

(30)中国のビジネス機事情

要    約

1.本年4月中旬、中国上海で開催されたABACE (Asian Business Aviation Conference & Exihibition),中国が 2012年にビジネス機の最上位機種を中心に96機を購入した事が知られ、欧米からの参加者も激増、アジアでのビジネス機の中心が従来のシンガポ-ルより完全に中国にシフトした事を印象付けた。

2.広報効果を狙い、この様な機会に多くの纏った商談の結果が発表する事は恒例ながら、単なるビジネス機の商談結果だけではなく、関連業界との合弁や戦略的提携と言う広範な国際的「協働」の成果も明らかと成り、中国がアジアに於けるビジネス機事業のリ-ダ-に成長しつつある事を実感させた。

3.値の張るビジネス機の最上位機種を買い捲った為、リ-マンショック以降ビジネス機の販売機数が半減すると言う未曽有の業界の低迷が続く中で、中国は産油国の富豪と並び「地獄に仏」と「救世主」視された。

4.この様な劇的な発展を遂げつつある中国に業界の熱い視線が集まる事は当然としても、中国ウォッチャ-は2000年始めより中国に注目して居た。日本に比較すれば広大な国土を擁し、地上交通網が未開発、然も経済力の急速な発展で、航空機の利用人口も爆発的に増えて行くと予想されれば尚更な事。植民地時代より、マカオ、香港は宗主国のビジネス機が飛来し、欧米のビジンス機関連のサ-ビス提供インフラも構築されて居た。更に、日本を遥かに上回る、中国富裕層の子弟が米国に留学、ビジネス機の利用実態にも精通している人材が多い。中国の「富と権力の集中」の環境下でビジネス機利用の地合いは全て整って居た。

5.日本企業も「知る人ぞ知る」で2000年代の早い時期より中国企業と提携、日本では数少ない超富裕層、セレブ、VIPの「特権階層」のニ-ズに応え、中国より必要なビジネス機をチャ-タ-する仕組みを作り、2000年半ばには、中/遠距離に飛行可能な機材は全て日本の民間より姿を消し、必要に応じ中国を含めた近隣諸国より取寄せると言う形態に移行した。

6.これは、中国が富裕層を含む「特権階層」の「ステ-タスシンボル」としてのビジネス機市場を追って居るのと、その対極にある日本は「一般企業マンの足」或いは「ビジネスツ-ル」としてのビジネス機の普及を目標として居る為で、その善悪是非論は脇に置き、目指す目的は180°異る。結果として、中国の2012年末のビジネスジェット機336機の内1機20百万㌦以上の上位機種が大半を占める一方、日本の民間には20百万ドル以上の上位機種は皆無と言う極端な現象が見られた。2012年末日本が保有するビジネスジェット機は24機、それも全て7~15百万㌦の下位機種で、2機は4百万㌦以下のマイクロジェット機。これでさえ、一般がチャ-タ-可能な機材は\1,200~1,500/㎞位の利用料で商用機のフルコストの\25~50/㎞との比較でも、或いは国交省が発表する一般利用者の払う運賃\12~15/㎞の50~100倍もすると言う現状では、海外からのビジネス機利用者が日本国内の移動に利用するとか、金に糸目を付けない日本国内の「特権階層」以外の利用者は居ない。

7.リ-マンショックより丸4年ビジネス機業界は低迷より抜け出せないが、この間新たに認識された事は、市場が120百万㌦以上の上位機種を望む富裕層を中心とした「特権階層」と1~4百万㌦程度の低価格帯機材を追う一般市場(無論その中間の市場も存在するが)に2極化した事である。然も回転翼機の場合は1百万ドル前後の攻防戦と成っている。日本はビジネス機の一般企業マンの利用を目指して居るので無論後者の選択と成るが、日本の「広義のビジネス機」市場は過去四半世紀、30~100万円の低価格帯機材の利用に徹し、時流を遥か以前より先取りしている。

8.ここで気を付けなければ成らないのは、目標として居るのは「一般企業マン」の「2点間移動の足」である。日本でも過去四半世紀ビジネス機は多岐の分野で利用されて来た。

然し、民間ビジネス機で最も安い回転翼機でさえ数多の用途の中で、「旅客の2点間輸送」が一番少ない。日本では競合交通機関が高度に発達して居る為、ビジネス機による「旅客の2点間輸送」は最も踏み込み難い領域である。そもそも商用機、コミュ-タ-機が網目の様に日本国中に張り巡らされている折に、これの50~100倍の利用料を提示しても社内の旅費規程の縛りがある「一般企業マン」がビジネス機を利用する筈もない。

9.日本のビジネス機業界は現在正念場を迎えている。

a日本.は中国、米国、EU、ロシア、豪州の様な大陸国では無く、狭い国土に凡る交通網が国中に張り巡らされ、高額のビジネス機の必要は無い。最上位のビジネス機を駆使出来なければ「人に非ず」との大手航空機メ-カ-の「呪縛」より解放される事が先決。

b.日本で最も競合が激しい「一般企業マン」の「2点間輸送」には、海外のエアショ-で華やかにディスプレ-される1機数千万円~1億円強の豪奢なビジネス機は必要無く、過去四半世紀日本が利用して来た130~100百万円の機材で充分であり、これさえも本サイトで繰り返し述べて来た様に「一般企業マン」に使って貰う為には様々な工夫が必要と成る。(無論越え難い障壁ではないが)日本にはこの様な機材が1,100機以上「広義のビジネス機」として存在し、「青い鳥」は現に日本に存在する。他国の動向に「眩惑」される事無く、「広義のビジネス機」は「眼中にない」の態度を改め、自らの「アイデンティティ-」に目覚めるべき時が来た。

10.最後に中国とは共棲すれば良い。日本から中国へは安価な商用便を利用、奥地の交通のアクセスの悪い地域は現地のビジネス機をチャ-タ-すれば良い。日本から海外に出張するのにビジネス機を利用したい「特権階層」には中国より必要な機材を取り寄せれば良いし、日本は過去10年それで済まし、何の不便も生じて居ない。但し、中国のビジネス機事業の現段階は「所得格差」「地位格差」に立脚して居り「ベルリンの壁崩壊」「独裁政権の突然の消滅」と背中合せのリスクがある事は頭の片隅に置く必要があろう。

日中のビジネス機利用環境の相違

日本と中国では国土の広さ、人口密度、政治・経済環境も異るので、単純なビジネスジェット機の多寡の比較で優劣を判断するのは意味がなく、その是非を論じる事も本サイトの目的でもないのでその相違点のみの記載に止める。

ビジネス機利用の基本的スタンス

日本 : 一般ビジネスマン(上級管理層、実務スタッフ、プロフェッショナル)の業務効率改善による「生産性向上」の為の「ビジネスツ-ル」としてのビジネス機の普及。

中国 : 広い国土、海外訪問に必要な「足の確保」。但し、当面一般ビジネスマンは対象に成らず、指導層、富裕層の「ステ-タスシンボル」としての利用色彩が強い。

所得格差

日本 : 一億総中流を目標に、明治維新以来の「四民平等」、終戦時の進駐軍による社会改革、廃墟と化した国家再生に社会主義的な計画経済を導入、「階級格差」、「所得格差」は世界的にも又アジア諸国との比較でも相対的に少ない。過去百年、「資本と経営の分離」も進み、大手企業の幹部と言えどもサラリ-マン社員、社内規定の縛りで公共交通手段の低額の利用料を大きく上回るビジネス機の利用は実質上出来ない。日本の超富裕層は純金融資産5億円以上(外国に比較すれば小金持ち程度)が5万世帯と5千万所帯強の0.1%弱が総金融資産額1,138兆円の3.9%弱の44兆円を保有している。

中国 : 共産党一党支配の国家故、独裁国家の欠点である「チェック・アンド・バランス」の仕組みが欠除、資本主義経済でも見られない「富の集中・偏在」が顕著。日本を遥かに凌ぐGDPを誇りながら、僅か1%の富裕層が国富の60%を所有すると言う「超格差社会主義国」と成った。2011年のWorld Wealth Reportでは中国の純資産50億円以上の超富裕層は4,700人、1,000億円以上のビリオンネア-が315名。1位は不動産企業のオ-ナ-王健林氏で220億ドル(22000億円)。日本は10憶㌦長者が22名。筆頭はユニクロの柳井会長で世界ランキング66位。「社会紛争が多発する危険水域」のジニ係数は0.41に近い程問題が大きい)。中国では一説では0.61と世界でも最悪の水準。日本を始め多くの先進国は0.25~0.35の間。これが中国の抱える最大の時限爆弾。「べルリンの壁崩壊」以前のソ連と較べても現在は比較に成らない「情報社会」で国民に事実を隠し抑え続ける事は不可能。中国のビジネス機の興隆が「格差社会」に根差しているが故に大きなリスクが介在する。

格差に根差す先進ビジネス機利用諸国の課題

欧米の「ビジネス機協会」もビジネス機の利用者が富裕層に多い事は否定しないが「一般ビジネスマン」の「ビジネスツ-ル」としての側面を強調したビジネス機の利用・促進を進め、一般企業マンのビジネス機の利用を「擁護」(Advocacy)する事を最重要の使命として来た。リ-マンショック以降の世界的な経済停滞はビジネス機の価格が20百万㌦以上の上位機種を利用する「特権階層-Privileged People」と1~4百万㌦程度の低価格帯機材を必要とする「一般企業利用者」との二極化を鮮明にした。更に、ビジネス機の利用者は大手企業より、中小企業が多いとの「擁護」も自己の金と意思でビジネス機を所有出来る中小オ-ナ-企業と、社内規定の縛りで高額のビジネス利用料が払えない大手企業社員の利用者の格差も炙り出して仕舞った。欧米諸国では「所得格差」に加え日本の「四民平等」では考えられない「階級格差」が現存する為「ビジネス機像」の再構築に頭を悩ましている。アジアでは日本は2012年末時点で中国、インドに「双発タ-ボ機+ジェット機」の「狭義のビジネス機」で大きく引離され、フィリッピン、インドネシア、タイの後塵を拝し第6位だが、2013年にはマレ-シア他にも抜かれランキングは更に落ちると予測される。その一方「広義のビジネス機」である小型固定翼機、回転翼機を1,100機以上保有、ビジネス機の保有機数ではアジアでも断トツの「ビジネス機大国」ではあるが、「高額のビジネスジェット機を所有しなければ人に在らず」との大手ビジネス機メ-カ-の掛けた呪縛から解放されない限り、日本はアジア内でも問題に成らない「ビジネス機貧困国」との自虐に苛まされる事と成る。全てのアジア諸国で日本人の想像を超える「所得格差」「階級格差」が存在し、ビジネス機を所有して居るのは一握りの「特権階層」に過ぎない。日本の民間に120百万㌦を越えるビジネス機の上位機種が1機も存在せず、大手企業はマイクロジェット機を含めた「狭義のビジネス機」を1機と言えども所有して居ないと言う事は、日本が「平等社会」であり、企業は「コストマインド」に徹し「ステ-タスシンボル」等と言った「見得・外聞」に踊らされる事無く、組織の規律を遵守する「遵法精神」に徹して居る事は称賛に値しても恥じる事は一切ない。

コストマインド

日本 : 高度成長期の終焉と、石油危機による原材料価格の高騰は日本企業を直撃し、企業は生き残りを賭けてTQC (Total Quality Control) を導入、徹底的なコスト合理化を図った。「トヨタ看板方式」、JIT (Just-in-Time) 等代表的な例だが、その後米国を含め多くの海外企業がコスト合理化のモデルとして用いた。この様な徹底したコスト合理化の洗礼を受けた日本大手企業が内外の出張に商用機の運賃の数十倍もするビジネス機を「ステ-タスシンボル」として利用する事は考えられず、過去四半世紀~半世紀、日本のビジネスマンの海外出張の機会は激増したが、ビジネス機の利用は全く見られない。但し、戦前/戦後を通じ日本は人口過剰に悩み、その後「完全雇用」を目指した為、従業員のコストは遊んでいれば「ただ」と言う観念が蔓延した。TQCが定着した一部先進企業では、従業員の全てに間接費を配賦、大手企業の従業員コストは平均\30~50,000/時と言う数字も認識されているが(日本の法定最低賃金\700/時強の数十倍)この人件費に関するコスト認識が定着しないと「広義のビジネス機」と言えども使われない。ビジネス機の利用は「金で時間を買う」行為だが、ビジネス機利用による時間節減を定量化するには「節減時間x利用者の人件費コスト」による「費用対効果」の評価が必須。

中国 : 中国は民営化が大幅に普及したとは言え国営企業は日本で言う「お役所仕事」の「官体質」で、TQCによりコストマインドを磨いた日本企業とは雲泥の差の「肥満体質」。「ステ-タスシンボル」としてのビジネス機利用には熱心だが、利用コストは利用者の懐が痛まない「税金」を流用する為、コストに対する認識は薄い。

これと対極の立場は、一部カリズマ的民間経営者が自らトップダウンで企業判断を下し、自らの責任で事業展開を図る中国での事例。欧米のビジネス機利用者のカリズマ的経営者と同レベルの話。アジア諸国の華僑、印僑、や財閥(韓国サムソン等代表例)のリ-ダ-に共通する資質で「集団的意思決定」、「コンセンサス経営」の企業文化を尊ぶ日本ではこの種カリズマ的企業リ-ダ-は育ち難い。「ボトムアップ」が定石の日本と「トップダウン」が当り前の海外企業のビジネス機利用に関する発想は根本的に異る。

規制コスト

日本 : 日本ではビジネス機の普及に規制コストの障壁が大きく立ちはだかると言われる。いわく羽田の空港利用料は海外に較べて3倍、ジェネアビ用の法制例えば米国のFAR Part 135に準ずる法制が不在な為全てのコストが割高と成り国際競争力で海外に決定的な遅れを取って居ると言われる。既に国交省は羽田の利用料の段階的な引下げを発表して居り、法制も年末に向け整備の作業が進んでいるが、仮にこれらの規制緩和が理想的に実現しても、その背後にある遥かに大きな規制コストが横たわる為一朝一夕で事態の改善は図れない。昨今最も喧しい論議が交わされる、TPP,FTAは自由化による規制コストの削減と保護規制による既得権の維持の攻めぎ合いで、本サイトではその善悪是非は論じないが、日本の2013年の実質GDP の予測を530兆円と仮に置き、米ドルより換算した購買力平価で算出したGDP473兆円とすれば57兆円の差が生ずる。為替交換レ-トによるバイアスや他の要因も加味しなければ短絡的な結論は出せないが、規制によるコスト差が或程度反映されていると考えられる。国民的論議を呼んでいる消費税率の引上げは1%の税率引上げで2兆円の税収増加効果があると言われる。57兆円が全て規制コストによるものではないとしても、規制コストの大きさは理解出来よう。これらの規制コストで、世界に冠たる「国民皆保険制度」、海外に例を見ない「治安の安定・維持」等多くのメリットはあるが、全てにコストがある事は認識して置かねば成らない。

中国 : 中国の規制の最大の障害は空域が軍事用に規制され民間機の利用が制限されて居る事だが(空域の70%が民間には開放されて居ないと言われる)、これは国家安全保障の政治的配慮が全てに優先するので簡単には解決し難い問題。但し、中国は明治維新同様、出遅れている分野では「お雇い外人」を大掛かりに利用している。Boeing, Airbus両社は政治が絡む軍事問題には関わらないものの、空域の合理的利用に関する助言を与え、他のビジネス航空機メ-カ-、海外運航業者、チャ-タ-斡旋業者等の関連企業も種々の助言をしている。逆に日本の様に官僚機構が整備され、関係企業や業者の秩序が確立されている国では外国勢の出番は少ないが、外からの助言は別の切口での新鮮な発想も生まれる。日本でも海外のビジネス機関連の諸業界団体に積極的に支援・助言を求め新たな「日本モデル」を構築する事が望まれる。本サイトもその一助。

航空機の自前生産

日本 : 終戦後航空機産業の復活には多くの制約が課せられた。国産機YS-11も生産されたが、国際分業でBoeing, Airbus等への機材・部品供給等を優先されて来た。Boeing 787機では機材の1/3を日本メ-カ

が供給し特に複合材料の主翼を納入する等準国産機の様相を呈している。無論、Boeing社に限定される事無く、日本の高品質の航空部品は世界の主要航空会社が採用している。但し、日本の航空機メ-カ-も自前の航空機生産の夢は捨て切れず、三菱重工は米国でリ-ジョナルジェット機の生産計画を進め、自動車メ-カ-のホンダはエンジンを含めてビジネス機の米国での現地生産を目指している。日本とは比較に成らない市場の裾野の拡がりを持つ米国への進出は、野球選手が米国のメジャ-の檜舞台で活躍する事を夢見るのと同じ理屈だが、狭い日本では得られない広範な技術や顧客のニ-ズを汲み上げると言う、大きな果実も期待出来る。

中国 : 中国は未開拓の広大な国土で地上交通網も整備が遅れて居る為、当初は外国機を購入するとしても、何れはビジネス機の自前生産を行う事を目標に、米国のビジネス機の中国での組立・生産の戦略を一歩一歩着実に推し進めている。詳細に就いては次項に記載する。

中国の航空機産業育成の長期的ビジョンと施策

中国は北に大国ロシアを控え、南は米国及び米国の同盟国と対峙して居る為、広大な国土の防衛に空軍の早期育成が必要。国力の充実、日本を抜いて世界第2位の経済大国に躍進した事もあり、国防費の増加は周辺諸国より実質上の国防上の脅威が無いにも関わらず2桁台の増加が続いている。中国政府が特にビジネス機産業育成に関心を示している訳ではないが、日本同様欧米の政治・経済中心地より離れ、然も広大な国土と近隣諸国との交流に、航空機の利用は必須。然し、日本程、全世界の主要都市に強固な航空ネットワ-クが構築されて居ない事もあり、航空機産業の育成は喫緊の課題。中国のビジネス機ブ-ムは国際的にも業界のホットな話題では有るが、この分野のみを虫眼鏡で拡大して見ると全体像を見失う。

ビジネス機の領域に限れば、国際的な出遅れは12分に認識して居り、日本の明治維新開国時と同様、海外より全て一括導入する事で短時日で欧米にキャッチアップする事を策し、全般論、一般論では、既に日本は中国の足元にも及ばない格差が付き、数年後日本は中国との比較の対象にさえ成り得ない位の格差が付くと思われる。中国の航空機産業は国防力強化、広大な国土の交通インフラの構築(米国、EU、ロシア、カナダ、豪州、インド、ブラジル等の大陸国を見習いキャッチアップに努めている)、新鋭機の海外よりの購入、海外航空機メ-カ

との提携で中国国内で当初は組立、将来は合弁による国内生産を行う。海外の経営基盤の弱い航空機メ-カ

、部品メ-カ

、関連サ-ビス企業の買収、技術・ソフトのノウハウを短時日で吸収すると言った総合的な戦略を2007年頃より企画立案し、既にここ数年これを「有言実行」に移している。無論、国防上のニ-ズに加え、国内の航空インフラの構築の為には、国内の航空機製造・関連産業の育成が究極の目的。正にこの方向で着々と手を打っている。ビジネス機の領域もその全体像の中で捉えられるべきもの。

国防上の問題

日本 : 20123月末の日本の軍用航空機保有機数は陸上自衛隊448機、海上自衛隊176機、航空自衛隊452機、合計1,076機と2,012年版の「防衛白書」が記載。これに日本の米軍基地、或いは周辺基地の航空機を加えれば、航空機の性能、パイロットの質より中国との実力格差は存在する。尖閣諸島に見られる際どい接触は有っても、中国が日本/米国相手に戦争を仕掛けるとは思われない。(現段階では抑止力が効いて居る)

中国 : 米防衛誌は中国は2020年迄に1000機の戦闘機を持つ現代的な一体化空軍を建設すると報じて居る一方、ロシアの軍事誌は中国がロシアの新鋭機を購入既にこれを国産して居ると伝え、数年内に量的・質的にも米露を凌駕するとも報じている。

商用機

中国でも14.3億人の人口の内、急速に航空機を利用する中間層が増えて居り、インド、東南ア諸国を含め世界最大の成長市場と目されている。商用機の自国生産は過去30年以上続けられているが、成功の兆しは見られず、Boeing, Airbus2社体制は揺らがないと見られている。その半面、Embraer, Bombadierのリ-ジョナル航空機も既に中国で足場を築いているが、中国はAvic Commercial Aircraft社が2016年にRegional Jet C919を生産すると発表

。海外からは疑問視する声も聞えるが、中国側は計画を推進中。

海外航空機・部品メ-カ-の買収

Brantly : 2007Qingdao Haili Helicopterが買収。軽ピストンヘリコプタ-B2BQingdaoで生産。無人ヘリコプタ-も開発。

Epic Air : Caigaが破産したEpic Airよりデザインを2010年に買い取り自社のタ-ボ機を開発。Epic社自身はロシアが買収。

Cyrrus : Cyrrus R-20,R-22のメ-カ-として日本でも知られるが、2011Caigaが買収、中国で同機の生産を開始。最新鋭機SF50は中国の資金提供で2015年に運航開始。

Continental/Theilert : Continental Motors2010年にTeledyneより、Theilert Aircraft Engines20137月に買収、Avicが両社を統合させた。

Enstrom : 日本にも同社の軽ヘリコプタ

が導入されているが、Chongqing Helicopter201212月に買収、中国の資金援助で中国にヘリコプタ

を供給する。

Supeior Air Parts : Superior Aviation Beijing が米国のピストンエンジンと部品メ-カ-を2008年に買収、2011年上記Brantly社と統合させた。

海外ビジネス航空機メ-カ

との提携

Agusta Westland : 2005Changhe Aircraft Industry との合弁でAW109及び軽ヘリコプタ-の現地生産を開始。

Cessna : Caigaと合弁で CaravanShijiazhuangで組立、更にCitation XLS+ZhuhaiATTChengduCitation Sovereignを組立てる等中国進出活動は活発。

Diamond : 軽双発機DA40 TDIShndong Bin Ao Aitcraftが組立てアジア諸国に販売。

Embraer : 2013年末Avicとの合弁のHarbin Embraer Aircraft Industryでビジネスジェット機のLegacy 650を生産する。

Eurocopter : AvicopterEC-175の共同開発を開始2005AC532 として発売。Harbin Aircraft Industry 2013年末より EC-120,HC-120を生産開始する。

Flight Design : Taiwan Aero Jonesとドイツの軽飛行機CTLSC42015年より生産。

Pilatus : 20137Beijing Tian Xing Yu ScienceChongqingPC-6, PC-12の組立を行う事で合意。

Sikorsky : 2007年よりS-76の機体をChanghe Aircraftが供給。S-76Dの機体も供給する事が20139月に合意された。

金融供与、ソフト部門での提携

ILFC (International Lease Finance Corporation) : 中国の民間の投資家グル-プがリ-マンショックの影響を受け危殆に瀕したAIGより世界第2位の航空機のリ-スファイナンス提供会社のILFC80.1%の株式を201212月に取得(AIGも株式の保有は続けるが)航空機の急増が期待出来る中国の航空機のリ

スファイナンスの足場を固めた。

NetJetsWarren Buffet 傘下の世界最大のFractional Ownership provider NetJets201211Hony Jinsi Investment Management (Beijing)との合弁でNetJets China Business Aviation, Ltdを広東省珠江に設立、中国でFractional Ownershipの提供の足場を固めた。NetJetsは米国、欧州、中東に拠点を持ち340機のビジネスジェット機を擁しているが、アジアでは将来一番有望な中国に拠点を設けた意義は大きい。

Jet Aviation/TAG AviationJet Aviationはスイス Zurichに本拠を置く国際的なビジネス機の運航業者(親会社は米国General Dynamics)で200機のビジネス機を運航している。TAG Aviationはサウディアラビアの富豪が始めた投資会社が母体ではあるが、ビジネス機の運航はスイスGeneveを本拠とし、米国での拠点はSan Francisco 英国はロンドン郊外の Farnborough空港、中国では香港と手広い事業展開を行っている。カナダBombardier社との関係が深い。

Avpro, Inc : 米国ワシントン郊外に本拠を置く世界最大のビジネス機売買の斡旋企業で年商15億㌦、年間90~100機の売買を行う。香港ベ-スのASG (Asian Sky Group) 2012年末より提携、機材の売買は勿論、ビジネス機関連の広範な関連業務を手掛け始めたが、市場調査も行い、本稿の多くのデ-タ-も同社の提供による。

何れにせよ、世界的にも指折りのビジネス機関連企業がずらりと中国に勢揃いする圧巻の出来事が短期間に次々と実現して居る。

ビジネス機用インフラ

中国の香港、マカオは植民地時代より宗主国がビジネス機を利用する基地を構築、早い時期よりビジネス機が利用されて来た。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博で海外からのビジネス機訪問客の受入れの為のインフラが整備された為、ビジネス機受入れのインフラ面は日本に先行している。又海外機を受入れる為、FAR Part 135も以前より準用されている為、日本以上にビジネス機の運航面でのインフラも整っている。

商用機が使われる空港としては北京が2012年世界ランキング2位の82百万人(羽田は4位の66.6百万人)香港12位の56百万人、広州18位の48.5百万人、上海21位の48.9百万人と上位に名を連ねているが、成田32.8百万人はトップ30位のランキング外。中国の上記主要空港は容量が不足気味で何れも野心的な容量拡大、新空港建設等の計画を発表している。北京空港はここ1~2年で1億人を越え世界ランキング1位に成る事は時間の問題と見られている。

 

中国のビジネス機の保有状況

中国の「双発タ-ボ機+ジェット機」の「狭義のビジネス機」の保有数は2007年頃迄特に注目を集める存在ではなかったが、2008~9年頃より増加を始め、2012年はリ-マンショックの後遺症で喘ぐ米国のビジネス機メ-カ-より高額の最上位機種を買い捲った為、「地獄に仏」の「救世主」的存在と成った。上位価格の顧客として産油国富豪と並ぶ最上顧客であり、中国もそれを意識して将来の自国生産に繋がる、中国でのビジネス機の組立、合弁による中国での生産を求めビジネス機メ-カ

もこれに応じざるを得ない状況下にある。

2012年は「ビジネスジェット機」のみで前年の240機が336機と96機が加わり、前年比40%の増加と世界の耳目を驚かしたが、実際には下記の通り成長率は鈍化している。

年度

2008

2009

2010

2011

2012

2013上半期

成長率%

64.3

32.6

55.7

45.3

39.9

年度予測18

一歩下って見ると、2012年末の世界の「ジェット+タ-ボ機」の「狭義のビジネス機」は約30,000機、この内東西アジアで1,000機、中国は300機余で世界シェア-は1%と未だ問題に成らない。日本は35機と0.1%強と全く問題に成らないが、35機の「狭義のビジネス機」は日本の「広義のビジネス機

1,100機の3%強なので、日本は97%弱のリザ-ブがあり単純比較は出来ない。中国にもタ-ボ機、小型固定翼機、回転翼機は存在するが、「軍用・公用」を除けば物の数に入らない。但し、小型機、回転翼機メ-カ

も争って中国市場に進出して居り、短時日で状況は大きく変わろう。当面は、ビジネス機の最上位機種を「ステ-タスシンボル」として購入している段階。

機  種

中  国

%

日  本

Airliner

31(13)

10

民間に存在しない

0

Ultra-Long Range

88 (53)

29

民間に存在しない

0

Super-Large

53 (39)

17

民間に存在しない

0

Large

64 (44)

21

民間に存在しない

0

Super-Mid-Size

36 (30)

12

Mid-Size Citation 680 1

4

Super-Light

16 (14)

5

Light Jet 総計21

88

Light

19 (18)

6

Very-Light

1 (1)

Citation Mustang 2

8

  ( 註 : 中国のカッコ内は2011年数値)

メ-カ-別機数と市場シェア-

ASG資料

Gulfstream

Bombardier

Cessna

Hawker

Falcon

Airbus

Boeing

Embraer

機数

122

97

33

27

20

18

11

8

36

29

10

8

6

5

3

3

市場別シェア-

ASG資料

中国本土

香 港

マカオ

台 湾

市場シェア-%

57

33

5

3

中国と日本は対照的。中国は現段階では「ステ-タスシンボル」として「高かろう、良かろう」で機材の機能、用途に合せた「利用適正」とは関わりが薄いブランド志向の購入。

日本はその対極の存在。「費用対効果」を重視する民間には上位機種は皆無。機材そのものは無論存在するが、国土交通省(含む外局としての海上保安庁)と自衛隊機でビジネス機の範疇外。Mid-Sizeは中国内陸部への飛行には必要だが運航業者朝日航洋が1機所有するのみ。Light Jet 21機も報道関係(読売、朝日、毎日、中日) 5機、運航業者4社が計9機、中小オ-ナ

企業が7機。Very Light JetCitation Mustang はエスケ-プラント、タケダの中小プラントエンジニアリング会社のオ-ナ-企業2機に限定される。「費用対効果」を重視する民間大手企業の所有機はマイクロジェットを含め値が張るジェット機は皆無と言うのも日本の徹底した「合理化精神」の表れとも言える。海外出張で有れば幹線航路は商用便、もしビジネス機の利用が必要なら目的地で現地の割安のビジネス機をチャ-タ

すると言うのが永年の定着した商慣行。中国も北京、上海、香港等には幾らでもビジネス機が用意されて居るので、日本よりこれら主要空港迄商用便、内陸地の交通の便の悪い目的地には現地でビジネス機をチャ-タ-すれば済む。今後も日本に一定機数のビジネスジェット機は存在し続けるが、近年高性能の新鋭小型固定翼機、回転翼機等低価格帯機材が次々と市場に投入され、これへの買い替えシフトも見られる。

2013年上半期の特色

  • 中国政府の金融引締政策、経済成長の鈍化でビジネス機の成長率は年間18%16~20%)と昨年の半分に落ちると予測されている。(ビジネス機の機数が増えれば成長率割出しの分母も増えるので当然だが)2013年上半期のビジネスジェット機の純増は37機。
  • 新規購入にはより「費用対効果」の「投資効率」を勘案する“Educated Buyer”が増加。
  • トップの購入に続き一ランク下の階層が利用する”Second Aircraft”の需要が見込まれ始めた。
  • 中古機の価値に対する認識の高まりが見られる。(中古機購入の兆しが見られる)
  • 既購入者が遊休期間中機材を貸出す違法の「海賊商法」が横行し始め、チャ-タ-料の低下を招いている。(購入したビジネス機を充分自家利用出来ず知人に貸して所有コストの軽減を図っている)
  • Gulfstream, Bombardierの優勢は変わらないがDassault, Embraer社の進出が見られる。特にDassault社の最新鋭、最上位機種Falcon 7X (52.2百万㌦)7機が受渡され業界の耳目を集めた。
  • 本年末より低価格帯の小型固定予期や回転翼機の海外企業との合弁により中国で生産が始まるが、市場の受入れ反応に関心が集っている。Eurocopter社は1機百万㌦を遥かに切る低価格帯回転翼機を世に出し業界に激震を与えたRobinson社(日本でも最新鋭のタ-ビン機R-66価格83万㌦が導入され本夏、導入した2社に日本の型式証明が付与されたが、既に世界20ヶ国の型式証明が取得され生産が需要に追い付かない盛況)に対抗する為EC-120を本年末よりハルピンで生産するが、生産開始の条件とした中国側の150機の発注は既にクリア-している。

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