2013年03月06日(水)09時32分

2012年中国のビジネス機購入実績

2012年の米国でのビジネス機の受渡機数は、リ-マンショック以前の2008年の半減と言う惨憺たる状態。2011年比僅かに伸びて居るので最悪期は抜け出し、2013年は回復基調が強まると見られているが、この様な状況下で、中国と豊富なオイルマネ-を使った両地域が「救世主」として注目を浴びた。(利用したレポ-トの数値はコンサルタントのAsian Sky Groupが纏めたもの) 両地域に共通する事は、「格差社会」により生じた超富裕層による高額なビジネス機の購入でビジネス機製造メ-カ-は受渡機数と言う量的な側面では半減と成ったが、高単価の機材の販売により収入は20%減に止まった、特に中国は日本では想像も付かない富の集中により「超格差社会主義国」を実現、その格差故に最も高額なビジネス機の買手である事を臆面もなく誇示して居る。結果としては、中/遠距離飛行に利用されるHeavy Jetの製造メ-カ-である、米国Gulfstream社とカナダのBombardier社は「我世の春」を謳歌し、単価の安い中小機を製造しているHawker Beechcraft社は経営破綻、Chapter 11よりの再生は果したがビジネスジェット機の生産より撤退した。Cessna社も苦しい経営を強いられているが、この様な業界事情を端的に反映して居るのが2012年の中国市場のビジネスジェット機の受渡実績。

  1. 中国本土、香港、マカオ、台湾を含むGreater Chinaのビジネスジェット機は2011年比40%増の336機に成長。(日本の2011年のビジネスジェット機は27機)
  2. 2012年の受渡実績は96機で91%がビジネスジェト機の最上位機種(large, supe-large, ultra-long range, corporate airliners)でGulfstream社36機 (G-550 22機, G-450 12機)Bombardier社 (Global Express 9機, Challenger 22機)。因みに、日本では自衛隊とJCABがこの種機材を数機保有して居るが、民間は2000年代半ばに規制コストの負担が少ない海外に拠点を移し、民間が保有する中/遠距離飛行可能な機材はJA機としては現在皆無。
  3. 上記と対象的なのは、カナダのBombardier社の中/軽ジェット機のLearjetシリ-ズで売込みははかばかしくなく、Cessna社は2010年1機、2011年2機と販売は振るわず、2015~2017年にお目見得予定のCitation Latitudeを中国で組立てる予定。日本の民間が保有するビジネスジェット機27機は全てLight Jetに分類される。
  4. Beechcraft社は中国でタ-ボプロップ機を、Eurocopter社は低価格帯ヘリコプタ-のEC-120を現地生産する等、将来利用機数の増大が見込まれるよりコストの安い機材は現地生産する事が見込まれ、これの普及を支援するリ-ス会社、Fractional Ownershipに就いては米国企業の買収・合弁の手も打ったが、中国自身が小型ビジネスジェット機を自国生産する計画も進められている。
  5. 日本は平均化社会で超富裕層の数は限定されて居り(それも富裕度では中国の足元にも及ばない)、狭い国土を凡る地上交通機関網が縦横に走り、海外への中/遠距離飛行には国策で安価な大量輸送方式が確立され、LCCの追い上げで定期商用便各社はビジネス利用客を中心とする高単価顧客の取り込みに高品質化を目指し、一部ではビジネス機を上回る高品質サ-ビスを提供し始めたので、中国で見られるビジネス機の展開は望むべきもない。
  6. 但し、平均化社会や大量輸送方式による国民全員が「空の旅」を満喫出来るのは民意の反映であり、高度の地上交通網の整備は「ばらまき」の批判もあるが利用者の便宜には貢献している。幸い、この様な中国のビジネス機の発展は早くから予測され、日本の大手商社、運航会社、旅行代理店等は2000年代半ば迄に中国企業と提携を済ませて居り、中国のビジネス機ブ-ムの余恵に与れる体制は出来上がっている。羽田-北京間のビジネスクラスの商用便の往復運賃は20万円程度。ビジネス機は往復で1500万円位はするのでチョイスは単純。羽田-北京は商用便、北京より奥地の交通のアクセスが悪い地域は中国の安い、選択肢の豊富なビジネス機を利用すれば良い。日本企業が提携している中国企業も多く、特に乗継ぎの手配が問題に成る事はない。日本企業は過去4半世紀~半世紀、欧米で利用して来た手法・方式に共通したもので特に違和感はないと思われる。

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