2013年03月21日(木)09時14分

回転翼機の市場も回復基調へ

ビジネス機の需要予測で名が知られるHoneywell社は、3月4~6日Las Vegasで開催されたHeli-Expo 2013 で米国の需要家が5年振りに買い意向に転じ、市場も回復基調に乗り始めたとの認識を示した。同社は、毎年5年間の先行予測を発表するが、今年度は2013~2017年の新規購入予測を4,900~5,600機としたが、昨年の2012~2016年予測より200~400機の増加を見込んで居り、市場も持ち直しの兆しが見えて来たと予測した。

Expoの参加者は23,000人と盛況で会場での成約は下記の通り。

 

Eurocopter

46

Sikorsky

46

Bell

30

Augusta Westwind

16

MD Helicopters

2

合  計

140

 

l  Eurocopter EC-175は本年度より本格的な受渡しが開始されるが、7トン級のutility機で中国のAvicとの共同開発。欧米では民間機としての市場を狙っているが、中国では軍事用としてZ-15と多少仕様を代えた機材が利用される。2008年のExpoで新鋭機が発表された時点で、13顧客より111機の購入意思表示のLetter of Intentが交わされた。同年の中国でのエアショ-では中国のZongken General Aviation CorporationがZ-15購入予約のLetter of Intentを交した。

l  SikorskyのS-76Dは2012年2月のシンガポ-ルでのエアショ-で海上保安庁も購入した新鋭機で本年後半より受渡しが始まる。 Expo期間中23機の受注が有った。

l  Augusta 社は主力のAW139シリ-ズが好調。

 

上記は、軍需・民需仕様の中型回転翼機だが、ビジネス機の視点で見ると、リ-マンショック以降購入先は、中国、産油国の超富裕層向けの高級機材と一般のビジネス客が利用する低価格帯機材の2極化が進んだ。ビジネス機が「金持ちの道楽」か「企業のビジネスツ-ル」かの古典的論議も今回のグロ-バルな経済不況下で利用層の違いで、機材の分化が顕著と成った。ビジネスジェット機で言えば前者は数千万㌦のHeavy Jet からA-380の2.5憶㌦、後者はマイクロジェット機の3~4.5百万㌦、回転翼機であれば0.5~2.5百万㌦と明確な2極化の線引きが見られる。

当然注目の的は、2011年後半より受渡しが始まったRobinson社の単発タ-ビン機のR-66の動向で受渡実績は191機、2013年も類似の販売予測と発表された。同社の場合、生産能力は増強したが、生産機材の型式証明取得の手続きが追い付かずこれがネックと成っている。Robinson社はこの課題を充分認識して居り、2013年度の業務目標として、型式証明取得の迅速化を挙げている。尚最近は、R-66に限らず、全ての低価格帯小型機、回転翼機はGarmin社のGPS機器を搭載、計器飛行に備え予め型式証明を取得している。最大の関心事は、ライバルBell社の動向。Bell社の206Bは日本でも広く使われて来たが、価格は1.2百万㌦程度。(中古品で有れば70万ドル台の物も市場に出回っている)。Robinson社の創業者は元Bell社の従業員で、一般利用者が手の届く価格のヘリコプタ-の開発を始め22万ドルのレシプロ機を世に出し市場に衝撃を与えた。2011年後半より単発タ-ビン機R-66の受渡しを始め(2013年1月15日時点でのリストプライス83万ドル)、供給が需要に追い付かない。ExpoではBell社のJohn Garrison CEOがR-66機の対抗馬(価格百万㌦以下)を上市する意志が有るかと聞かれ、その可能性を否定しなかった為、種々の憶測が市場に流れた。

何れにせよ、富裕層はより高級な機種を追い求め最新、最大の商用機A-380をプライベ-トビジネス機として発注する一方、その1/250の価格の低価格帯回転翼機が一般ビジネスマンの足として求められている。海の向うの話は別として、海外では極めて稀な「平均化社会」「横並び社会」の日本で一般ビジネスマンが数千万㌦もするHeavy Jetを利用するか、その数十分の一の百万㌦以下の機材を選択するかを冷静且つ慎重に判断し、日本の文化、風土に馴染む機材、用途、市場開発に注力する「発想の転換」が求められて居る。

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