2013年03月20日(水)09時00分

中国のビジネス機自国生産計画

広大な国土に日本の様な地上交通インフラが網目の様に張り巡らされていない中国では、空運の果たす役割は大きい。然も、人口の1%の指導層が日本のGDPを遥かに凌ぐ(特に購買力平価で換算した場合)国富の60%を抑えると言う超格差社会に於いては、ビジネス機の出番は大きい。地方空港・航路の開放、ビジネス機の利用促進策を講ずる事は、一党独裁で国家権力がこの1%の指導層に握られて居るのであれば尚更である。中国は、欧米のビジネス機関連企業の関心を引き、中国に誘致するのに、超富豪層が急増している国情を恥ずかしげもなく前面に押し出している。更に、近々1,500~3,000機のビジネス機市場に成長する事が予測され、この「美味しい」商権を利に敏い指導層が見逃す筈がない。

当然、ビジネス機の自国生産は政府傘下の企業が独占的に行う事が既に決まって居り、政府傘下のAAT (Avic Aviation Techniques) が総重量20㌧以上、Caigaはそれ以下の小型ビジネス機の開発と生産を分担する。とは言え、中国は民間機、特にビジネス機の設計、開発、製造、運航に関する知見もノウハウを全く持たない。他の先進産業と同じく、海外企業との合弁による知見・ノウハウの取得を最重点戦略とし、世界の全てのビジネス機メ-カ-に中国でのビジネス機生産の誘いを懸けた。

  •   世界最大のビジネス機メ-カ-Gulfstream社はこれ以上ビジネス機メ-カ-を増やすメリットは無いとして断り、Dasault, Embraerの2社もほぼ同じスタンス。
  •  但し、Embraer社のERJ 135, Bombardier社のCRJ200, Challenger 300, Learjet 85に関しては、交渉が持たれて居ると言われる。
  •   Hawker Beech社は中国が買収したものの、国防上の理由で米政府の認可が得られなかったが、単発ピストン機のCirrus社は2011年に買収に成功している。
  •   Chapter 11より再生したBeech社とはタ-ボプロップ機の中国での合弁による組立てに合意し、Cessna社ともCitation Latitudeの合弁による組立ての同意も出来ている。更に、Hawker社がHawker 4000の生産打ち切りを表明したのに対し、中国が色気を示しているとも言われる。他方、Hawker Pacific社は、FBOとして中国に進出し、業務の拡大を図る一方、中国側は、FBO業務の吸収・習得に資すると話を進めている。
  •   イスラエルのIAI (Israel Aerospace Industries) も中国との提携を模索している。
  •   Eurocopter社は低価格のヘリコプタ-EC-120を中国との合弁で瀋陽で生産する事で昨年合意に達したが、本年に入り1959年に設立された名門Enstrom Helicopter CorporationをChongquing Helicopter Investment Companyが買収、回転翼機の分野でも中国は確実に歩を進めている。遅れじと、Agusto Westland社も中国の民間企業と合弁で組立てを行うべく話を進めている。
  •  本サイトのトピックス欄でも紹介したが、中国は航空機のファイナンスに就いては世界第2位のAIG傘下の航空機ファイナンス企業の90%の株式を取得し、世界最大のFractional Ownershipの運営会社のNetJetsと合弁で中国に同社の知見とノウハウを吸収・習得する手も打ち終わった。
  •   これらのビジネス機に関する凡る知見/ノウハウを習得した上で、自国製のビジネス機の生産・販売を目指している。昨年Avic Lin Zuoming社長は初めてBJS-200と言う中国製のビジネスジェット機のデザインを公開し、将来中国がビジネス機の自国生産する意思を、世界に宣言した。

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