2013年04月07日(日)04時05分

戦国時代の続く航空業界

 

昨年後半、過去何回も破産裁判所を出入りして来たUSAirとAmericanが統合に合意し、1978年、米国で航空産業の自由化が打ち出されてから35年を経て、米国の大手航空企業も巷間噂されて来た、3大企業に集約された。USAirは度重なる経営危機にも関わらず、首都ワシントンの足として、政府、政治家、海外公館員等が日々利用して居るので、取り潰す訳には行かず、さりとて「火中の栗」を拾う先もないと言うのが、過去の歴史であった。然し、企業同士が統合に合意しても、今後独禁法上の調査が行われるので、実際の統合は本年第3四半期以降と言われている。米国に端を発した「空の自由化」の波は世界中を呑み込み、欧州も3大グル-プに集約(統合劇は現在も進行形)、更に、グロ-バルには3大アライアンスに発展した。現在も連衡合従は進行形で栄枯盛衰は世の常なので、誰も未来予測は出来ないが、最近の現状と巷間の論調をスナップショットとして纏めた。市場の関心は;

(1)  これで統合劇も一段落するのか? 欧州での金融危機、中国の体制変化、米国発のバブルの崩壊等でリ-マンショックの再発が起これば、更なる再編も否定出来ない。

(2)  35年再編劇が進行している間、当初は問題にされなかったLCCが大きく勢力を伸ばし、その大半はアライアンスの勢力範囲外。

(3)  石油価格の高止まりで、産油国の力が相対的に増大。産油国は石油・ガス資源枯渇に備え航空業(第3次産業)に戦略的に進出、侮り難い勢力に成長。

(4)  今後の市場はアジアに大きくシフトし、就中、中国、インド、東南アジアの目覚ましい経済発展で航空機利用者が急速に伸びるとの予測。

(5)  上記の様な、グロ-バルなマクロ的要因がどの様な展開になるかで、航空産業の将来も大きく左右される。

(6)  無論、極東の日本は航空業を含め世界的地位は年々相対的に低下、「世界がくしゃみをすれば風邪を引く」ので、グロ-バルな進展からは目を離せない。ビジネス機は、更にそのSub, Sub Categoryで未だ見るべき規模では無いが、それでもグロ-バルな航空産業の一部に組み入れられて居るとの自覚を持ち、世界のマクロ的な動向に関心を払う必要がある。本サイトもそのささやかな一助。

最近のアライアンスの話題

One World

1.司令塔のAmericanの破産裁判所への駆け込み、JALの破綻とDeltaの救援の誘い、参加が予測されたインドKingfisherの運航停止、等散々な状態に陥った。

2.結果的には、AmeiricanのChapter 11よりの再生とUS Airとの統合、JALとAmericanの提携関係の持続とJAL業績のV字回復、Qatar航空の参画,更には、Malaysia, SriLanka航空の参加も取沙汰されている。

3.2012年3月欧州No.4の航空会社Air BerlinがOne Worldに参加したが格安航空会社のAir Berlinのアライアンス参加は大きな話題となった。Air BerlinはQatar航空が資金援助の為資本注入を行い傘下に収めたが、これがQatar航空のOne World参加に繋がったとの見方もある。

Star Alliance

世界最強のアライアンスを誇って来たが、此処に来てAmeican-US Airの統合でUS AirはOne Worldに、更にLANとTAMの統合により(LATAM),TAMのOne Worldの移行が決定的と成り、中南米路線に大きな空白が生じた。

流動的要因

1.インドのビ-ル会社傘下のKingfisherは2011年頃より資金繰りに窮し、一部運航停止等を繰り返して来たが、昨秋のストライキを機に全面運航停止を余儀なくされ運航許可も取り消され、再生も厳しい状況。但し、国営のAir Indiaも赤字垂れ流し。インドの航空会社は、どのアライアンスにも属さず、中国をも人口で追い抜き、経済的にも航空機の利用客の増加が期待される成長市場として国外からも虎視眈々と狙われている。救援の最右翼は中東湾岸のEtihad, Qatarと言われオイルマネ-とインドとの地理的関係より、かなり突っ込んだ話し合いが進んで居ると見られている。

2.近年その存在が益々大きく成る中東湾岸のEmirates, Qatar, Etihadの3社はグロ-バルアライアンス参加には距離を置いて来たが、QatarがOne Worldに参加する事でその一角が大きく崩れた。中東とインドとの関係が深まれば、当然3大アライアンスの角遂は激しく成ろうが、欧米主導のアライアンスを嫌い、従来通り必要に応じ、個別に各国の航空会社との連携を組む選択も残っている。

3.欧州の中小航空会社も淘汰の過程にある。スペインのSpanairは昨年1月、ハンガリ-のMalevも昨年2月に運航停止した。現在は、ポ-ランドのLOT, ル-マニアのTarom チェッコのCzech Airlineも経営が危殆に瀕している。国営企業の場合は、国が持株の一部を放出する選択もある。大韓航空がCzech Airlineの44%の株式を取得する合意が出来たとの報もある。

4.欧州の場合、淘汰、連衡合従は未だ進行中で夫々の進展で、今後各アライアンスへの出入りも、各アライアンスの陣取り合戦も続くと見られる。

他方、American-US Air統合が実現した場合の3大グル-プにTrans-Worldを呑み込んだ Southwestの第4勢力の分布は下記。但し、数値は2012年12月末現在値。

Delta

American+US Air

United

Southwest

利用乗客数

164.6百万人

140.6

140.4

134

所有機数

717+568(地域)

948+563

702+551

694

ハブ空港+

主要利用空港

Atlanta,Cincinnati,

Detroit,Minneapolis,

NY JFK, La Guadia

Los Angeles, Memphis, Salt Lake City, Narita

Charlotte,Chicago, Dallas,Los Angeles,

Miami, NY JFK, La Guadia,Philadelphia,

Phoenix,Washington National

Chicago,Cleveland,

Denver,Guam, Houston,LosAngeles,

Newark,SanFrancisco,

Washington Dulles, Narita

Atlanta, Baltimore, Chicago Midway, Dallas Love  Field, Denver, Houston Hobby, Las Vegas, Los Angeles, Orlando

強 み

米国東北、南部、中部、西岸、アジア、北大西洋

米国東北、南部、中西部、西岸、北大西洋、ラ米

米国東北、中西部、西岸、アジア、北大西洋、南米

米国全土に平均的に分布

弱 点

米国西岸、南米アライアンス

米国西岸、アジア、大洋州

米国南部と南米

国際線網と米国東岸主要空港

尚上記に較べ、2010年の保有機数はJAL 180機ANA 224機, 旅客数は2011年実績で、JAL 30百万人,ANA 44.5百万人。日本の強味はアジア・太平洋経済圏の中央に位置すると言う地政学的な優位性と世界第3位の経済国に127百万人の人口を抱えて居る事である。弱点は、国際線の利用客はJAL 6.6百万人、ANA 5.6百万人計12百万人強と2011年度の日本人出国者数17百万人、外国人訪問客6.2百万人(2010年北東アジア訪問客数は111.6百万人)と比較しても相対的に少ない事である。

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