2013年05月05日(日)12時53分

ブラジルEnbraer社NetJets社に最初のPhenom 300引渡し完了

ブラジルEmbraer社は5月1日世界最大のFractional Ownershipのプロバイダ-のNetJets社に最初のPhenom 300を引渡したと発表した。その意義は;

(1)Embraer社は商用機の圧倒的な製造メ- カ- であるBoeing, Airbus 2社の間隙を縫ってRegional JetやBusinessJet機を生産しているが、似た様な企業としてはカナダのBombardier社がある。ブラジル、カナダに共通して居る事は共に大陸国故に広大な国土に日本の様に津々浦々迄公共交通網を張り巡らす事は出来ないので地域航空のニ-ズが高い。

(2)Phenom 300の価格はリストプライスで5百万㌦とマイクロジェットのホンダジェットの4.5百万㌦とさして変わらないが (1ランク下のPhenom 100で3百万ドル)、NetJets社は多数の機材を一括発注する事で大きなディスカウントを獲得、これを顧客に分割所有させる事で利益を稼ぐと言うビジネスモデルで知られている。Fractional Ownershipは機材を1/2, 1/4 ,1/8, 1/16、極端なケ-スでは1/32もあるが、要は、一般利用者でも手の届く価格で航空機を所有出来る便法と言える。Phenom 300は航続距離3,650km、最大飛行速度834km、乗客6人、2012年末で117機を出荷している。

(3)今回もNetJets社は50機の確定注文と75機のオプション購入で125機を一括発注している。然も、機材の生産地はオ-ストラリア。豪州も大陸国でアジア・オセアニアの中でビジネス機の利用の歴史も長く、ビジネス機の保有機数も域内でダントツに多い。総括すると、豪州と言うビジネス機の大きな市場での現地生産を行い、NetJets社と言う世界最大のビジネス機の購入者(現在700機を所有する)からの大量発注で豪州での現地生産の経済基盤を固めたと見るべき。NetJets社は既に中国で現地企業と合弁を設立済み。

(4)本サイトの中国でのビジネス機事情や最近のトピックスで取り上げたABACE (Asian Business Aviation Conference & Exhibition) でレポ-トした通り、中国はアジア・オセアニアの域内からPhenom 300を調達出来るだけでなく、Embraer社自身中国でPhenom の現地生産を発表している。航空業界ではラウンチ顧客と言う言葉があるが、誰かがリスクを踏んで纏った発注ををしなければ製造メ-カ-も生産を開始出来ない。Boeing 787機はANA,JALがラウンチ顧客と成った。その背景には機材の1/3以上がMade in Japan. 日本は悲願であった航空機製造への参入をBoeing社との戦略的提携で果した。故に経済産業省と言う国のバックアップも得られた。三菱重工、ホンダは世界の市場中心地米国で(MRJ-Mitsubishi Regional Jet) とホンダジェットの現地生産を開始するが、後者は間もなく処女機の出荷が予定されている。ANAはMRJのラウンチ顧客の一社であり、米国製のMRJが日本で飛ぶのもそう遠くない先。また国内、近隣諸国に飛ぶ政府専用機も現在使われているBoeing機の後継機としてMRJも話題に上っている。中国はEurocopter社のEC-120を中国で現地生産させる為150機を発注した。

(5)以上はよそ様の国の話題ではあるが、日本として参考に出来るのは、

a.交通大国としてあらゆる交通網が国中に張り巡らされ(利用度が低く経済性が成り立たない地方での道路建設、整備新幹線の延長、98の空港の大半が赤字垂れ流しの批判の中で)商用便であればファ-ストフルフェア-で¥50/㎞、新幹線のぞみのグリ-ン車で¥35/㎞で利用可能な国で、高額なビジネス機は超富裕層、セレブ、VIP等の特権階層以外利用不可能。本サイトはこの様な特権階層を対象にせず、「費用対効果」の「説明責任」を株主等に負う「企業サラリ-マン」の「ビジネス顧客」でも手の届くビジネス機サ-ビスを如何ににして提供するかを考えるサイト。最高でもHeavy Jetの1/10の5億円 (Phenom 300はその上限).現実的には1~3億円を上限として更にその1/2~1/3の低価格帯機材ではなかろうか。日本でも過去20年ビジネス機として最も使われて来た小型ピストン機等Heavy Jetの1/100~1/200のコストの物迄ある。(言葉を換えればHeavy Jet 1機の金でピストン機100~200機が買える)

b.但し、ビジネス顧客が利用可能な利用料を提供するには機材のコストと並んで利用率の向上が機材コスト以上に重要。日本ではFractional Ownershipは馴染まないが、(必要ならNetJetsが中国で現地企業との合弁で業務を開始するのでそれを利用すれば済む)民間の共同保有機構が一括購入(適当な機種があれば合弁で日本で生産)整備・運航も受託出来ればコスト、安全性、信頼度でも大手企業が安心して社員に利用させよう。但し、安い機材は遠距離飛行には利用出来ないので、国内出張で地方で短距離・短時間 AirTaxi 的に利用する事と成る。米国のビジネス機の平均利用時間は1回1.8時間。片道50分強で、中古の機材を退職したパイロットが運航する事で一般ビジネスマンが利用可能な利用料が提されている

c.ジェネアビ用の法制整備、有視界飛行に代えた計器飛行、都市部でのヘリポ-ト設置許可等様々な障害はあるが、個別企業、業界団体が幾ら詳細な「要望書」を提出しても事は運ばない。業界団体、経済諸団体の戦略的アライアンス、海外関係諸団体の協力・支援による「3本矢」の「協働」が必須。NBAA(米国ビジネス航空協会),GAMA(米国ジェネアビ機製造業者協会),EBAA(欧州ビジネス航空協会),IBAC(国際ビジネス航空協会評議会),HAA(米国ヘリコプタ-協会)FAA(米国連邦航空局)等に依頼すれば悦んで支持・協力の手を差し延えよう。(求めよさらば与えられん)これも連合軍を結成させグロ-バルな実情けを国土交通省場合によっては安陪総理、オリンピック招致に熱心な猪瀬東京都知事にアッピ-ルする方策もある。そもそも日本にビジネス機の関心を持たせる為発端に成ったのは、米国運輸長官の訪日の際、時の二階運輸相に話を付け、その後日米財界人会議の議題に乗せ、米国より26機のビジネス機を飛ばし(ビジネス機受入れを許可しなかった羽田、成田は一夜で方針変更)森総理に日米財界人会議に日本でのビジネス機受入れの要望書を手渡したのが切っ掛け。この時はNBAA傘下のブル-チップ企業77社の企業トップの署名入りの要望書をNBAAが取り纏め添付した。日本だけでなく米国でも全く同じであるが、国を動かすのであれば、一企業、一業界団体の要望では問題は取り上げられない。日本の企業、関係団体でビジネス機を利用し、ビジネスマンの生産性向上が図られるのであれば誰も反対する者等いない。TPPの交渉の様に農業団体との軋轢等は全く存在しない。

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